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ソードアート・オンライン~雷皇の狩人と双棍の闘士~

作者:村雲恭夜
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B:黒い妖精

第二層ボスーーーーアステリオス王討伐から数日。
俺達は第三層のある区画を歩いていた。
「なぁ、キリト……。此処で何が起こるんだ?霧も深いし……」
「そこまで霧深くないでしょ。と言うかリンドウさん煩いです」
俺はそう言うと、マップを開く。
しかし、本来歩いた地点はくっきり3D表示されるはずだが、その表示は霧のかかったように薄い。この<迷い霧の森>はそんなフィールドなのだ。
「おい、キリト。そのクエストとやらは何処だ」
ソーマが少しだけイライラしながら問う。
「あー、多分もう少しの筈なんだが……」
と、この世界のアルゴのデータを見る。その内容は、この層から始まる大型キャンペーンクエストのスタートデータだ。勿論、複数におけるスタート位置が指定されている。その一つを現在目指しているわけだ。
「それより……」
チラッとサラディン達を見る。
「お前ら何してるんだよ」
「見ての通りトレント狩りだが?」
代わりにネフィリムが答える。
「……何で?」
「トレントから希にレア食材が落ちると言うことだったから」
と、リュートが言う。自由人過ぎると言うのは良いが、たまには団体行動もしてほしい。
と、そこで。
「あれ?リンドウさんは?」
キョロキョロと辺りを見回し、リンドウさんを探す。しかし、姿が見えない。
「……逃げたか?」
「いや、少し黒い炎が見えるよ」
最近少しはツンデレが落ち着いたサラディンが言う。
「お、サンキュー」
「別に君のために見つけた訳じゃない」
前言撤回、まだ痛いかも知れない。
「……」
俺は密かにため息を付くと、耳に何か聞こえる。
「!」
「どうした?」
「音がした。南西の方!」
リヴェンジャーをネフィリムに渡すと、最大出力で南西に向かって走る。
「おい!」
「チッ……追うぞ!」
その後に、リンドウを置いて他の皆が俺を追い掛けてくる。
しかし、俺は脇目もそらさず、南西に向かって走った。

















石畳から外れても、ふかふかの苔に覆われた地面は、僅かに弾む感覚が気になる程度でさして走りにくい事はない。持ち前の身体能力を生かし、木々を左右に蹴り飛ばしながら音源目指して飛ぶ。mobに出くわすと多少なり時間が取られ、音源を見失う事も考えられるので、索敵スキルに反応があったカーソルは遠回りで回避。<生えてるトレント>だけはいかんともし難いが、幸い出くわすことは無かった。
五分足らず飛ぶ間に、問題の金属音はボリュームを増し、剣戟の間の叫び声さえ届き始める。視界中央に二つのNPCカーソルが浮かび、次いで木々の幹に反射するライトエフェクトが視認される。
地面に脚を突き刺すように着地した俺の後ろから、他の皆が一斉に現れた。
「ったく、相変わらずだなおい!」
ソーマは息を切らして言うと、ネフィリムは俺のリヴェンジャーを投げ渡してくる。それを掴むと、リュートが言う。
「コイツは……」
リュートの見た先にいるのは、モンスターーーーー現時点ではNPCに違いないがーーーーが二人。それが問題の大型キャンペーンクエストのスタートNPCなのだ。
「さて、今から重大な選択をしてもらう」
俺は厳かに言う。
「今回のコイツは第九層まである大型キャンペーンクエストだ。どちらかに味方に付けばその時点でその時点でその陣営の味方になり、逆にもう一方は敵になる。途中でミスっても受け直し不可。当然対立ルート変更不可。選んだらそのまままっしぐら」
「……何が言いたい?」
ソーマは睨むと、あっけらかんと俺は言う。
「ぶっちゃけダークエルフかフォレストエルフ、どちらに付く?と言う簡単かつ重大な選択」
「決まってるな。うちのリーダーの色だ」
と、ソーマは言うと、全員が頷く。
「……そんな簡単に決めていいもん?」
「そうでもしなきゃ始まんねぇだろ。行くぞ」
神機を担いだソーマは言うと、仕方ないと言うように俺は一緒に外に出る。
同時、二人のエルフの頭上のマークが、クエスト進行を意味するマークに変わる。
「人族がこの森で何をしている!」と、フォレストエルフの男。
「邪魔立て無用!今すぐ立ち去れ!」と、ダークエルフのお姉さん。
勿論、退却するまでもなく、俺達は武器をフォレストエルフに構える。途端、フォレストエルフの顔が険しくなり、イベントmobのカラーカーソルに、敵対状況へと移行を警告する赤い枠が点滅する。
「愚かな……ダークエルフ「テメェのが最も愚かだよ!」……なら消えろ!!」
台詞を被らせた俺の視線の先で、フォレストエルフのカーソルが変わる。薄い黄色からーーーーどす黒いダーククリムゾンへ。
「良かろう、ならば「ご託は良いから来いよ!」やはり完全に殺してくれる!」
背後に炎のオーラが見える様な感覚に教われながらも、俺は叫ぶ。
「フォーメーションは何時ものブレイクダウン!良いか?絶対に誰も死ぬなよ!?」
『了解!!』
全員の叫び声が頼もしく思え、俺は久々に二刀神機を装備して、フォレストエルフに襲い掛かった。

























二十分後。
「ば……馬鹿な……」
そんな言葉を残し、どうっと倒れるフォレストエルフを見つめ、俺はぼやく。
「うん、まぁ……ドンマイ」
フォレストエルフのHPバーはゼロ。即ち討伐してしまったのだ。俺達全員のHPバーは軽微ながらも緑。しかも全員が戦闘のプロなら、当たり前と思ってしまう俺の思考は正しいのかと思うほど俺は自分を呆れる。
隣では、イェーイ!イェーイ!とハイタッチする組と、それを見る無関心組が、そして背後にはーーーー
「……」
黒い片手剣片手に、無言でフォレストエルフの骸を見下ろすダークエルフの姿がある。
どう声を掛けたら良いか分からずに居ると、ダークエルフの騎士ユーナさんは、ゆっくりと顔をあげて俺を見た。
緋色の瞳に、驚きと戸惑い、そして「あの、私はいったいどうすれば?」と言いたげな色を見た気がするのはゴッドイーターたる俺の勘がそうさせているのか。
取り合えず、これからどうするかと、俺は神機を肩に担ぎ、溜め息を付いた。 
 

 
後書き
はい!と言うことでBチームいきなりの完全勝利!
とまぁ、取り合えずフォレストエルフの骸の処理を追加で言ってしまうと、ゴッドイーターの皆さんに食べてもらいました。美味しくいただきましたよそれは。
と、言うことでキズメルに変わるキャラクター、ユーナさんの登場です!男にするかなと思ったりもしたのですが、脳内会議の結果女のままにしました。キャラクターネームは変えて、容姿も変えて。
と、こんな感じでダークエルフ側に全員を……と思ったりもするんですが、如何せんフォレストエルフ側のメンバーも書きたいので、どうするかなーと迷い中です。
と言うことで次回もお楽しみに!! 
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