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詩集「棘」

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偽りの夏



ラジオをつけたら悪いニュース
外は雨降り 溜め息一つ…

濡れる紫陽花 寂しげで
暫く眺めていたけど
僕とは違う美しい花に
少しだけ嫉妬したよ…

露の空はまるで 今を隠すように
想いの中へと彷徨わせた…

淋しさに追いつかれないように
足早に歩いてく 月影の中
いつまで想えば 想い返してくれる?
今年は君のいない 偽りの夏


指の隙間から零れ落ちてく
時間がまるで砂のように…

渇いた心 罅割れて
流れる想いは止まらない
君は都会に魅了されて行き
もう戻りはしないよね…

ペンダントをまるでロザリオのように
君を想っては触れる日々…

切なさも哀しみも脱ぎ捨てて
この広い大地へと踏み出せたなら…
もうすぐ梅雨も去り 青い空笑うけど
ただ過ぎ行くだけの 偽りの夏

君の手を握って歩けないの?
蝉時雨の響く 午後の一時
海にも川にも どこへ行ったとしても
君がいるはずもない 偽りの夏



 
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