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エターナルトラベラー

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第五十四話

それから直ぐに六課隊長陣、八神一家、フォワード陣に俺達を加えた魔導師戦力は全員会議室に集まった。

一同席に着くと、部隊長であるはやてさんがこれからの任務について話し出す。

どうやら少ない戦力を更に分けて3面に送り込むらしい。

一つは市街地へと攻め入っている戦闘機人と言われている少女達の捕縛。

一つは犯罪者の首魁と思われるジュエルスカリエッティの捕縛。

そして聖王のゆりかごと言われている巨大戦艦の沈黙、及びヴィヴィオの救出。

俺たちはと言うと、俺はなのはさんの指揮下の元ゆりかごへ、ソラはフェイトさんに随行して首魁のアジトへの潜入、なのはとフェイトはティアナ達に同行し市街地の防衛に当たるため三手に別れる事になった。

ヴィヴィオを助けるための協力がしたいと言うのは俺の我がままだからと、ソラは一緒に死線をいくつも越えてきた仲だからともかく、なのはとフェイトを説得したのだけれど、どうあっても自分たちもと譲らなかった。

はやてさんに保護してもらった御礼もしてないし、エリオ達すら出撃するのに、とも。

こういう所はなのはもフェイトも頑固だ。

本当は何がなんでも止めなければならないのだが、結局折れたのは俺だ。

出撃前に神酒を希釈した物を二人に渡し、大怪我を負ったら迷わずに使えと言いつける。

これで最悪の事態は回避できるだろう。

それにいざとなったら口寄せで手元に手繰り寄せればいい。

互いに口寄せ契約をそれぞれしている俺達は、いざとなったら互いを口寄せできる。これならば例え離れていても一瞬で駆けつけれるし、手繰り寄せることも出来る。

空が飛べる俺達はアースラからダイレクトに飛んで現場に向かう事になった。


それぞれ別れて各々の現場へ。

現場に着くと多数のガジェットがゴミのように漂う中を悠然とその姿を見せ付けるかのようにゆっくりと飛翔している聖王のゆりかご。

不断の努力とソルの力を借りてkmに届いた『円』を広げる。

生命(オーラの)反応は三つ、中には三人しか居ない…か」

「三人?なんで分るの!?」

併走して飛んでいたなのはさんが問いかけた。

戦闘機人と言って機械パーツが多いといってもその素体は人間。多少なりともオーラは出ている。

「相手の生命力を感知する技術もあるんです。それによれば生命反応は前半部に集中してるよ」

「って事は、ヴィヴィオも?」

「多分ね」

と、位置が分ったとしても進入経路が確保されてない。

なのはさんと併走しつつ、迫り来るガジェットの数を減らす。

大体、何故こんな巨大飛行物体が悠々と市街地まで飛んでこれたかと言えば、アインヘリアルとか言う巨大砲塔が潰されたからだ。

こんな時のために税金使って製作したのに、日の目を見れないとか…無駄の境地。

しかし、実際にこんな事態になったのだからその製作事態は無駄ではなかった。ただ、それ自体の防衛に裂く人員が少なかっただけ。

やはり少数で一施設を撃破できるような力が反乱しているこの世界は怖いな。

地球が恋しい。

あそこも理不尽に命が奪われる所は覆らない世界だけど、歩く決戦兵器が数多く闊歩しているココよりは優しい世界だろう。特に日本は治安が良くて大変住みやすいし。

さて、ガジェットを一機一機潰していくと言う面倒な事を何故やっているのか。

おそらくAMFが実装してあるだろうけれど、それこそ束になってブレイカークラスの砲撃を当て続ければ落とせそうな気がするのだが、やらないのにも理由は有るのだろう。

市街地上空を飛行しているために、kmにも及ぶ巨大物体が落ちたときの衝撃と被害は凄まじい。

とは言え、大多数の人命と天秤にかければさっさと撃ち落してしまった方がいいのだけれど。

しかし、それだと中に居るヴィヴィオの安全は保障されない。落下の衝撃で死んでしまうかもしれないし。

まあ、俺はあーだこーだ言える立場ではないし、作戦を立案するのはお偉いさんだ。

上がやらないと言っているのならばしょうがない。

「あー!もう、鬱陶しい!」

そう言いながらも俺は近くに居るガジェットを切り裂く。

そろそろイライラしてきた頃、なのはさんから通信が入る。

中に突入できそうな場所を発見、突入するから一緒に来てとの事。

さて、なのはさんとヴィータに合流して突入したゆりかご内部。

「AMF?」

それもかなり強力だ。あわや飛行魔法がキャンセルされそうになる。

『フライ』

すぐにソルが魔法を変更。ハルケギニア式ならばAMFで阻害される事は無い。

それにしても無駄に天井の高い通路だな。なんて見渡していると、この強力なAMFに飛行魔法の行使が辛くなったのか廊下に着地している二人。

「ちょっとー!アオ君、降りてきてくれないかな?」

AMF下でも問題なく飛行していた俺に、少し驚いたようだが、何処と無く理不尽を受け入れたような表情で俺を呼んだ。

スーっと勢いを殺しながら下降してなのはさんの前へと移動する。

「それじゃ、アオ君が頼りだから、道案内」

「は?」

「だってアオ君って何処に誰がいるか分るんでしょう?」

そりゃ円を広げれば感知できますが…それが誰かまでは分らない。

一応ヴィヴィオのオーラは微妙に覚えているから多分これかな?とは思える位だ。

「けっこうシンドイんだけど…」

と言う俺の呟きは聞き取られず、ソルの力を借りて広げた円で感知したゆりかご内部を3Dマッピングしてそれをなのはさんとヴィータに渡す。

こんな時優秀な相棒が居る事を頼もしく感じる。

マップが出来たからと言って何処に何が有るのかはわからない。

しかし、それらから予想を立てることは可能だ。

「駆動炉はきっとこっち側のこれだろう」

そうヴィータがモニタに映し出した3Dマップを眺めながら結論付けた。

「反対側だね」

何処とは言わないが、おそらくヴィヴィオが居るであろう玉座の間からだ。

「なのははヴィヴィオの所だ。駆動炉はあたしが行く。アオ、おめぇはなのはに付いてってやってくれ」

「ヴィータちゃん…」

「時間がねぇんだし。ヴィヴィオもなのはを待ってる」

そう言って踵を返すヴィータ。

「ちょっと待ってください」

「ああん?」

うわっ…ガラ悪っ!

気を取り直して俺は素早く印を組むと影分身を使う。

「シルエット?」

「俺と同等の戦闘能力を持った分身です」

「「はぁ!?」」

そりゃ驚くか。だけど。

「これなら二対二で別れられます。それにこのAMF下で二人は飛行魔法の使用も難しいのでは?」

「それはそうだが…」

「だから、俺と、俺の分身が担いで飛んだ方が早く付くはずです。俺は魔法(ミッド式、ベルカ式)を使わないでも飛行できますから」

ヴィータは少し躊躇っていた様だったから問答無用で俺の影分身が担ぎ上げて飛び上がる。

「ちょっ!てめぇ!」

抵抗する間に飛翔して飛んでいくヴィータと影分身を見送ってなのはさんに声を掛ける。

「俺たちも急ぎましょう」

「え?あっ…うん。え?ちょっとわたしは大丈夫、ちゃんと一人で飛べるよ!?」

なのはさんの背後に回りその両脇に腕を入れて飛び上がった途端に恥ずかしそうに抵抗された。

「そうかもしれないけれど、消費魔力は抑えた方がいいでしょう?」

「うっううっ…それはそうだけど…恥ずかしいよ」

最後の呟きは聞かなかった事にして俺はなのはさんを抱えて飛び上がるとヴィヴィオが居るであろう玉座の間目掛けて飛び立った。


side 御神フェイト

アオとソラと別れて市外地防衛へと回された私達。

アオからは念による直接攻撃は極力使わないようにと言われている。

ガジェットなどの機械類ならば構わない様だが、今回の戦闘機人って言ったかな?その敵への行使はよほどのことが無ければ使用禁止、実力差が有るならば構わず逃げろ。逃げて応援を呼ぶようにと言われている。

逃亡ではない!戦略的撤退だ!ってアオが言っていた。なんか屁理屈な気がしないでもない。

念を使用すれば何とかなるかもしれないが、魔法の非殺傷設定が推奨されているこの世界で、魔力ダメージによる失神以外だとそれなりに面倒な事になるそうだとアオに説明された。

市街地方面へと飛んでいる最中エリオとキャロが何かを見つけたのか戦線を離脱、反転していく。

それを止めるよりも早く私達の方にも敵が現れる。

行き成り此方に向かって放たれる砲撃を避ける。

「敵?っ危ない!」

なのはがティアナさんに迫ろうとしていた戦闘機人の攻撃をレイジングハートで受け止める。

敵の戦闘機人は二本のブレードを持っているのを見ると恐らくクロスレンジタイプ。

「何!?」

「やぁーーーーっ!」

レイジングハートを振りぬいて戦闘機人を吹き飛ばす。

「あ、ありがとう」

「うん!」

私もなのはに合流しようとした所で横からいつの間にか私に近づいてきていた戦闘機人。

蹴り!?

その攻撃といいデバイスといい、何処かスバルさんに似ている気がする。

『ディフェンサー』

私は気づくのが遅れたけれど、バルディッシュがいち早く気が付いて守ってくれた。

「うぅぅぅらぁぁぁぁぁっ!」

「くっ!」

余りの力にガードの上から弾き飛ばされてしまった。

「フェイトちゃん!?」

なのはが私に駆け寄ろうとしてくれたようだが、ツインブレードの敵に阻まれたようだ。

私はそのまま飛ばされて後ろの廃ビルへとぶつかりようやく止まった。

バルディッシュが頑張ってバリアジャケットの性能を上げてくれたお陰か、殆どダメージは無し。

ここに来てどうやら私達は1対1の状況に追い込まれたようだ。

いや、そうじゃないな。なのはだけは二人の戦闘機人を相手にしている。

私は目の前のスバル似の戦闘機人。

ティアナさんはボードを持っている人。

スバルさんはどうやらギンガさんが相手のようだ。

そしてなのははツインブレードの人と、最初に私達にビームを撃ってきた人の二人を相手にしている。

「バルディッシュ!」

『フォトンランサー』

「ファイヤっ!」

放たれる射撃魔法。

「そんなん当たるかよっ!」

牽制が目的だから当たらなくても良いの。

その隙に私は直ぐに空中へと飛び上がる。

「逃がすかっ!」

そう言うと敵の戦闘機人はスバルさんが使うウィングロードに似た魔法を展開して空を駆けてくる。

『フォトンランサー』

視線だけ後ろを振り返り、フォトンランサーで牽制。

勿論バリアで防御されたけれど、爆発が敵の視界を遮る。

私はその一瞬を逃さないように空中で反転。

「どこ!?」

慌てて此方の位置を探ろうとしたときには既に私は上空からの強襲の体制だ。

『ハーケンセイバー』

ガシャンと言う音を立ててバルディッシュが斧形態から変形し、鎌のような魔力ブレードが形成する。

「はあぁぁぁぁぁぁぁ!」

気合と共に振るった一撃。

「なめるなああぁぁぁぁぁぁぁっ!」

私の一撃は突き出した右手で張られた障壁でさえぎられ、反らされた瞬間に相手のローラーブーツの重量も加味された蹴りを懐にモロ食らってしまった。

「くっ!」

その威力に吹き飛ばされはしたものの、単純な物理ダメージだったためにその殆どはバリアジャケットを抜けることは無かったけれど、…相手の方が力量が上だと私は悟った。

相手は新しく魔法で道を作ると此方へ向かって空中を走ってくる。

私は直ぐに敵の射線上から移動しようと飛行魔法で吹き飛ばされた勢いのまま飛行しようとして、進行方向に現れた敵のウィングロードもどきに逃げ道を塞がれた。

「なっ!?まずぃっ!」

直ぐに反転するが敵の接近の方が早かった。

「おらぁっ!」

『ディフェンサー』

障壁を張るが、今度は自身から敵の攻撃を受け流した勢いでそのまま後方へと飛んで距離を開ける事に成功した。

『フォトンランサー』

魔法で牽制しつつ、どうやったら敵に勝てるか考える。

接近戦は多分相手のほうが上。

飛行魔法は使えないようだ。しかし、今もウィングロードもどきを使用して空中の私を追いかけてくるので空中戦が出来ない訳では無い。しかし、方向変換などは急には出来ないらしく、私の方が空中戦では有利だ。

射撃は得意ではないのかもっぱら近接戦闘を好むようだ。

その攻撃も私には余り効果が無い。

バリアジャケットの性能の上昇と『堅』による物理耐性。どちらかと言えば物理よりな彼女の攻撃は『堅』さえしっかりしていれば例え防御魔法を抜かれたとしても殆どダメージは無いといっていい。

しかしその『堅』も過信は出来ない。

私の『堅』の最大持続時間は一時間ほど。しかしそれは平常時での場合だ。戦闘にかかるストレスや疲労を考えれば念能力を使わずにも30分が限界だろう。

バインドを行使してみたけれど、力技で物の数秒で破棄される。他の魔法にスペックを裂かずにバインドのみに集中すれば動きを止め続ける事は出来るだろうが、その場合は完全にこう着状態。仲間は皆それぞれ戦闘中で援護は期待できないため、後は魔力量の勝負となる。

相手の魔力が上だった場合、私のバインドが切れた瞬間に私が落とされる。

あーっ!もうっ!私が二人居たらいいのにっ!そうしたら拘束と攻撃と両方出来るのにっ!

あれ?今、何か重要な事を言わなかったか?

私が二人?

あっそうだっ!

「ちょこまかとっ!」

敵がいい感じにじれてきて注意力が落ちてきている。

彼女の回し蹴りが迫る。

それをシールドで受ける。

「バルディッシュ!」

『バリアバースト』

ドゴンっ!

バリアに込めた魔力を炸裂させて爆風と共に視界を遮る。さらにっ!

「な?バインド?だが、こんな物!」

直ぐに私のバインドを力任せに破棄しようとするが…

「くっ次から次へと!」

破られた端から新しいバインドを展開する。

「こうなったら根競べか!」

「いいえ、終わりです」

「はっ!お前もバインドで手一杯じゃんかよ」

「それはどうでしょう?」

意味深に言い終えると私は視線を私に向ける。

その視線を追った戦闘機人の彼女は驚愕の表情だ。

「な?」

目の前に居たはずの私が魔法のチャージを終えて今にも撃ちだそうとしているのだから。

そう、私は敵の目をくらませた一瞬で影分身を使っていた。

影分身。この術はグリードアイランドに居たときに教えてもらったとっておき。

「シルエットじゃ…無い!?」

『サンダーレイジ』

「サンダーーーーーーーレーーーーイジっ!」

バリバリバリっ

頭上から襲い掛かる電気変換した私の魔力砲。

バインドを使っていたのは影分身の私でその間に本体の私は距離を取って必殺の一撃を狙ったのだ。

「きゃーーーーーっ…」

私の魔法に包まれる戦闘機人の彼女。

「はぁ、はぁ…はぁ…」

油断無くバルディッシュを構え敵が完全に沈黙したかを遠目に確かめる。

どうやら完全に失神したようだ。

勝った!

影分身がバインドをしたまま浮遊魔法を行使して地面へと敵を下ろすと、本体の私もバインドを行使した後影分身を解く。

さて、なのは達はと視線を移すとまさに今なのはが戦闘機人二人を無力化した所だった。

後はティアナさんとスバルさんか。

大丈夫かな。

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