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バカとテストと召喚獣あふたー!

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第一章 僕と進級と試召戦争
  第一話

 
前書き
はじめまして、グラフィアです。
このバカテスあふたーが初投稿ですが、何卒宜しくお願いします。 

 
バカテスト 化学
問 以下の問に答えなさい
『調理のために火にかける鍋を製作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、調理を始めると問題が発生した。この時の問題点と、マグネシウムの代わりに用いるべき金属合金の例をひとつあげなさい』

久保良光の答え
問題点・・・マグネシウムを火にかけると、激しく酸素と反応して危険である点
合金例・・・ジュラルミン

教師のコメント
正解です。合金なので『鉄』は駄目という引っ掛け問題でしたが、やはり久保君は引っかかりませんでしたね。
 
赤崎真一の答え
問題点・・・酸素と反応し、激しく火花を散らすため、危険
合金例 ・・・ステンレス鋼

教師のコメント
こちらでも正解です。流石は真一君と言ったところでしょうか

藤堂牡丹の答え
問題点・・・重量を軽くしようと
考えるその貧弱な発想と
マグネシウムを火にかけた時の酸素との反応率の高さ
合金例・・・ジュラルミン

教師のコメント
一言余計です

 荻原千春の答え
問題点・・・マグネシウムの錬金に失敗したこと
合金例・・・ウルトラハイパー合金(とにかく強い)

教師のコメント
同じような回答を以前目にした気がします。






桜舞い散る春。僕は学校へ向かう道を歩いていた。
普段であれば、この桜に魅入ってしまってもおかしくないのかもしれない。
しかし、僕の頭にあるのは今年一年を共に戦いぬく教室。つまりは新たなクラスの事で一杯だった。



「久保、いつも早いな。感心だ。」

玄関の前で、低く強く響く声に呼び止められる。声の主は…ああ、なるほど。生徒から『鉄人(てつじん)』と呼ばれ、畏怖される生活指導の鬼、西村教諭だった。浅黒い肌に単発、趣味はトライアスロンと…まあ、皆が鉄人と呼ぶのも納得できるかもしれない。

「おはようございます、西村先生。」

「ああ、おはよう。それにしても振り分け試験は残念だったな。学園長に掛け合ってはみたんだが…」

「いえ、良いんです。僕自身が選んだんですから。」

そう、僕は振り分け試験を受けてすらいない。
試験当日、友達と示し合わせて来ることになっていたのだが…彼女は来なかった。事故にでも遭っていないかと探すうち、試験はいつの間にか終わっていた。
結局、腰を悪くしたお婆さんを抱え、家まで連れ帰っていただけだったという。それも隣町まで。

「ふむ…そうか。とりあえず、受け取れ。」

先生が箱から封筒を取り出す。宛名には僕の名前。
結果は分かりきっているから別に見なくても良いんだけど…
「有り難うございます先生。それじゃ、僕行きます。」

「おう、頑張れよ。」

久保良光(くぼよしみつ)・・・Fクラス』



「そう言えばここ、見学の時に見に来たな…」

3階に上がると、まず目に付くのはAクラス。
中を覗くとまだホームルームは始まっていなかったようで、生徒たちが忙しそうに準備をしている。
やっぱりAクラスの設備は凄まじいな…ここだけでいくら掛かっているんだ…?
巨大プラズマディスプレイだけでも相当な値段だろうに、ノートパソコン、個人エアコン、冷蔵庫、リクライニングシートまで完備されているらしい。
ここだけ見れば、どこかの高級ホテルと見紛うほどだ。

「………おい、他のクラスの男がここで何をしてるんだ…です?」

「うわっ!?」

唐突に後ろから話し掛けられ、思わず振り向く。
短めの髪に、中性的な顔立ち。見た目だけでは男子のように見えるが、声の質からして女子なのだろう。

「覗きとは良い趣味してんじゃ…していますね」

…今言い直したよね?
してんじゃねえか!っていうところを抑え込んだよね?
まずい。あんまり関わらない方がいいのかも知れない。

「誤解させてしまったなら申し訳ない。僕はただ自分のクラスを探していただけだよ。」

「コホン…誤解だったのなら失礼しました。私は根崎寧々(ねざきねね)、あなたは?」

「僕は久保良光。よろしく。」

取り敢えず挨拶を交わす。…さっきのは気のせいだったのか?

「あなたは…どのクラスの人か知らないけど、そろそろホームルームが始まる時間…急いだ方が良いと思いますよ」

「ああ、ありがとう。それじゃあまた。」

なんだかこの人とはまたいつか縁がある気がする。
できればそれが気のせいであって欲しい…僕は普通の学園生活を送りたいのだから。
僕は少し急ぎ気味に廊下を進んで行った






二年F組と書かれたプレートのある教室の扉の前に立ち、少し扉の様子を見る。
去年からずっと思っていたけど…修理とかはしないのか?今にも壊れそうでとてつもなく不安なんだが。
不安を押し殺し、扉を開ける。バキィッ!という音が響いた気がするのは気のせいであって欲しい。

「………お前もFか、久保」

高い身長の赤茶けた髪をした男が、僕にやれやれといった表情を向けている。
彼は赤崎真一(あかざきしんいち)。僕の友人の一人だ。

「えっ、嘘お!?久保くん!?」

そして机の上で変身のようなポーズを決めている少女もこちらを向く。彼女は荻原千春(おぎわらちはる)。一応、僕の友人としておこう。
彼女は…とにかくバカだ。去年の吉井先輩にも匹敵するレベルじゃないのか、なんて噂は耐える事はない。



「真一…なぜ君が?荻原さんは合点が行くけど…」

「待って久保くん、それって私がバカだって言いたいの?」

そうだと去年から何度も言っている気がするんだが…どうやら彼女には理解してもらえなかったようだ。
荻原さんはまだしも、真一はここに居るべきではないように思う。
Aまではわからないが、少なくともCクラス程にいるだろうと踏んでいたのだが…

「テストより人助けを優先しただけだ。」

そういって目を伏せる真一。うーん格好良い…何故ここまで男らしいのか。

「すまない、少しどいてくれ。」

この声は…先程も会った西村先生か。一昨年の先輩方が酷かったせいで、2-Fの担任は西村先生で固定らしい。

「それと、すぐ席につくように。今からHRだ。」

「分かりました。」

「はいはいっと…」

「はーいっ!」

僕たちはそれぞれ返事をし、席のような何かに付く。
…いやこれ席とは呼べないだろう…今にも足の折れそうな卓袱台に、綿のない座布団。座り心地や勉強の環境においても酷すぎる。

「俺がFクラス担任、西村宗一(にしむらそういち)だ。設備に不備があれば申し出るように。」

「先生、座布団に綿がないのと、窓が割れてて寒いです。」
誰かがそんな声を上げる。僕も同じ意見だ。

「我慢するように。」

まさかの西村先生の一言。
これで我慢しろ!?あまりに酷いんじゃないか!?
…Aクラスの設備を見た後だからだろうか。より格差社会について深く考えさせられる…

「それでは自己紹介を始める。廊下側から頼むぞ。」

「はーいっ!荻原千春です!趣味は特撮鑑賞!気軽に『ハニー』って呼んでくださいね♪」

「「「ハニィィィィィィッ!!!!」」」

男子生徒たちのシャウトが教室に響く。ひどく気分を害された…吐き気を我慢しつつ、なんとか荻原さんを見る。

「…ごめんなさい、忘れて下さい。とにかく宜しくお願いします!」

引きつった顔で自己紹介を終わらせた荻原さん。
完全に自業自得と言うべきだろう。
そして次の生徒が自己紹介を始める。

「あたしは瀬田七海(せだななみ)。今夜のオ…ぶべらっ!」
真一が卓袱台を投擲して、なんとか言葉をキャンセル。
危ない。あれ以上喋らせると湯水のように下ネタが湧き続けるぞ…
セミロングの髪に、口に覗く八重歯。彼女の名前は瀬田七海。友人と呼ぶのは少しばかり厳しいところだ。

瀬田さんの番が終わったと思われたのか、次は僕にみんなの視線が集まる。

「久保良光です。よろしく。」

端的に自己紹介をすませ、即座に座る。あまり喋りすぎると、誰がさんのようにとてつもない地雷を踏んでしまいそうだ。

皆同じように考えたのか、端的に名前だけ告げるだけの行為がしばらく続く。いい加減眠くなった頃、急に扉が開く。

「はぁっ…はぁっ…遅れてすみません…」

短めの髪に、すらりとした手足。
そう、彼女こそ、振り分け試験当日僕が探していた土屋日向さんその人だ。

土屋日向(つちやひなた)ですっ…宜しくお願いします。」

走ってきたのだろうか。少し息を荒らげつつ、自己紹介をして僕のちょうど隣へ座る。

「やっぱり久保くんもFクラス(ここ)なんだ。ごめんね、私のせいで…」

「気にすることはないさ。僕が勝手にしたことだからね。」

少ししゅんとした顔をする土屋さん。自分のせいで僕が振り分け試験を受けられなかった事で、自分を責めているらしい。別に、僕が好きでしただけなんだけどな…

ふと思いたった。
それなら、Aクラスの設備を手に入れればいいんじゃないだろうか。そうすれば設備に関して気にすることはないし、彼女の持つ自責の念を払拭できるんじゃないか。

全員の自己紹介が終わり、休憩時間。僕は1つ提案をするため、ある人物の所へ足を運ぶのだった。 
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