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スケッチは二人で

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第五章

「一緒にいて話をして昼食を食べてだ」
「暇な時にゲーセン行ってか」
「御前格ゲーとかユーフォーキャッチャー好きだしな」
「あとギャンブル系な」
「金は賭けないけれどな」 
「お金を賭けるとだ」
 ギャングル系のゲームでそうすればどうなるか、庄汰はクラスメイト達に対してそのケースについても語った。
「破滅する」
「だよな」
「金賭けたらな」
「うちの祖父様それで家の蔵全部潰したぜ」
 クラスメイトの一人がこんなことを言った。
「で、祖母ちゃんに半殺しにされてな」
「以後博打禁止か」
「そうなったんだな」
「ああ、だから博打はな」
「金は賭けるな」
 庄汰はまた言った。
「好きだがな」
「それは賛成だな」
「金賭けたら負けるからな」
「そこに変な意地がかかってな」
「負けてもやるようになるしな」
「賭けるのなら勝とうと思わないことだ」
 ことギャンブルについてだ。
「そう思うから負ける」
「元阪急の足立さんか」
「あのアンダースローのな」
「あの人の言葉だよな、確か」
「とにかく金がかかるとか」
「勝とうと思わないことだ」
 また言った庄汰だった。
「そういうことだ」
「まあとにかく博打はか」
「金は賭けるな、か」
「それに限るか」
「それで御前はしているんだな」
「そうだ」
 こう言ってだ、早速だった。
 庄汰は自分の制服の懐からトランプのカードを出した。そのうえでクラスメイト達に対してあらためて言った。
「今からやるか」
「ポーカーか?」
「それともブラックジャックか?」
「ポーカーでどうだ」
 彼が勧めるのはそれだった。
「これから」
「よし、やるか」
「まああの娘のことはか」
「ただの友人か」
「それだけか」
「そうだ」
 またこう答える庄汰だった、そして。
 部活でもだ、実際にだった。
 潤子とは恋愛ではなく友人としてドライな感じで付き合っていた、隣同士になっているが距離は少し離れている。
 そうしてだ、自分のスケッチをしつつだった。
 そのうえでだ、隣にいる潤子に問うた。見れば彼女もスケッチをしている。
「赤い絵の具はあるか」
「油絵の具よね」
「それはあるか」
「どの赤?」
「普通の赤だ」
 スカーレッド等ではなく、というのだ。
「その赤はあるか」
「あるわよ」
「貸してくれるか」
 描きながらの言葉だった。
「切れてしまった」
「赤随分使っているのね」
「ピカソの青の時代の調子でな」
「赤ばかりにしてみているのね」
「そうしている」
「わかったわ、じゃあね」 
 そこまで聞いてだ、潤子は。
 その赤の絵の具のチューブを手に取ってそれをだ。 
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