| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ三 由利鎌之助その十一

「忍術と剣術に秀でていまして特に剣の腕は天下無双」
「そこまで凄いのか」
「百度の果し合いで負けを知りませぬ」
「そこまで凄いのか」
「この者、戦国の世にありながら律儀で融通が利かず」
 それで、というのだ。
「これまで確かな主を見付けられませんでした」
「この戦国の世で義を通していたのか」
「はい、ですから誰にも仕えず岐阜で道場を開き剣を教えています」
「では岐阜に行けばか」
「その者に会えるかと」
「わかった、では岐阜に向かう」
 まさにその国にというのだった、幸村も。
「そしてそこでその根津甚八という者に会おう」
「さすれば」
「では皆の者よいな」 
 幸村はあらためて自分の家臣達に告げた。
「我等はこれより岐阜に向かうぞ」
「はい、それでは」
「これより」
 穴山と由利も応えた、そしてだった。 
 一行は木曽の山から岐阜に向かうことにした、木曽その山道を進むが。
 海野は幸村にだ、微笑み言った。
「水のことならお任せ下さい」
「そなたは水練を極めておるそうじゃな」
「はい、水の術も」
 それもとだ、海野は右手を拳にして幸村に答えた。
「そして水を見付ける方法も」
「知っておるか」
「例えばこの山の中ですが」
「ここでか」
「水を見付けることが出来ます」
「そうなのか」
「穴を掘りその上に布を敷けばその布に水が付くのです」
 このことをだ、海野は幸村に話すのだった。
「いざという時はそうして水を手に入れ飲めばいいのです」
「それは面白いのう」
「水に関することで知らぬことはありませぬ」
 海野はこうまで言った。
「ですから何かあればお任せ下さい」
「そうさせてもらうぞ」
「それがしは河童です」
 自分のことをだ、海野は笑ってこう言った。
「水はそれがしの世界です」
「ふむ、河童か」
「では手が伸びたりするのか」
 穴山と由利は海野の話を聞いてこんなことを言った。
「だと余計に凄いは」
「流石にそれはないな」
「いや、関節を外すことは得意じゃ」
 海野はこう言って実際に左手の関節を外してみせた、するとその手が伸びた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧