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大陸の妖精

作者:sinの妖精
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やさしい言葉



「・・・ぐっ・・ここは・・!?」


傷だらけのエルフマンの意識が戻った


辺りを見渡し、壊れた石橋と自分の近くに座っているアルトに目を向ける



「よかった、目が覚めたかエルフマン」


「アルト・・?ここは、どこだ・・姉ちゃんは・・無事なのか・・・!?」


「ミラさんなら今、フリードと戦ってる」


「何、だと・・!!?」


アルトの言葉を聞いてエルフマンは目を見開いて驚いた


今となっては力を失ってしまった姉が、よりによって雷神衆と戦っていると聞いて居ても立ってもいられない様子だ



「何・・のんきに座ってやがるアルト!!姉ちゃんを・・助けねえと!!」


自由が利かないはずの体を無理に動かし、なんとか立ちあがろうとするエルフマン


それを見たアルトがエルフマンの肩を掴んで止める



「今のお前が行ったところで無駄だ、座ってろ」


「俺とお前が・・行かねえで、誰が・・姉ちゃんを守るんだよ!!?」


エルフマンがかすれた声で怒鳴りつける


しかしアルトは至って冷静な表情で言う



「ミラさんなら心配いらない」


「・・・!?」


再び、そこらへんに転がっている瓦礫に腰を下ろすアルト


歓喜と恐怖が入り混じった複雑な表情で笑う



「かわいそうにな・・・フリード」


同情めいた声でそう呟いた
















バトル・オブ・フェアリーテイルが始まり数時間たった今


マグノリアの街の一部では壮絶かつ一方的な戦いが繰り広げられていた



「ぐほぁっ」


サタンソウルを解放したミラの蹴りを腹部に食らい、フリードは苦しそうな声を漏らした


レイピアが右手から離れ、宙を舞う


攻撃は止むことなく叩き込まれ、痛ましい効果音と共にフリードの体は地上へと押し込まれる



「くっ」


背に生えた羽を使い、体を旋回させ崩れた石橋の中をくぐる


それを見たミラはフリードが通った道をなぞるように追いかけた



「禁じ手だが仕方あるまい」


徐々に距離を詰められているのを見て、フリードは焦った様子でそう呟いた


すると、指二本で刀印を結び、ミラの方へと視線を向ける



「〝魔〟には〝魔〟をもって制す、闇の文字(エクリテュール)・・・」


刀印を胸の前あたりで動かし、文字を描く



「〝暗黒〟!!!!」


胸に〝暗黒〟という文字が刻んだフリードの姿が一変した


長髪が逆立ち、鋭い爪と禍々しい角が生えている


変身を遂げたフリードは体の向きを変え、ミラの方へと飛ぶ



次の瞬間、超高速で突進を仕掛けるミラとフリードの左拳が激突した


互いの凄まじい闘気がぶつかり合い、一進一退の攻防が続く



ゴッ――という鈍い音を立て、フリードの拳がミラの顔面を打ち抜く


しかし、すぐさま体制を立て直したミラのひざがフリードの顎を蹴りあげた



互いに一歩も引かぬ空中戦だったが、フリードがとうとうミラの尻尾を捉えた



「つあっ!!!!」


力の籠った声を上げ、ミラを川の方へと投げ飛ばす


すると突如、川の水が巨大な渦を巻きはじめる



「(川の水をまとって・・・!!?どれだけの魔力なんだ!!?)」


その光景を見たフリードは驚愕の表情を浮かべる


鋭い目つきで狙いを定めたミラは、まとった川水の渦を一気にフリードへとぶつけた



「ごあぁぁっ」


吹き飛ばされたフリードをミラは頭突きで追いこむ


更に両腕に魔力を込め、無慈悲な眼光を向ける


フリードの表情は徐々に恐怖で塗り替えられ、戦意を失っていく



ミラは無言で魔力の球を放つ


爆撃音が辺り一帯に響き、魔力に呑まれたフリードの姿が徐々に消え、見えなくなっていく




「がはっ!!」


あまりのダメージに文字が剥がれて通常の姿へと戻るフリード


背に生えた翼も消え、地上へと勢いよく落ちる



「ひっ」


戦意を完全に失っているフリードは、目の前に立つミラを見て後ずさる


ミラは口元の牙を覗かせ、倒れているフリードの首元を掴む



「(か・・勝てる訳がない!!これが魔人の真の力!!)」


恐怖に顔を歪ませるフリードが体を震わせ息をのむ



「(こ・・・殺される!!!)」


ミラの振り上げられた拳がフリードへと放たれた、その時





拳はフリードの鼻先直前で動きを止める


その行為の真意が掴めずにいたフリードは見開いた目でミラを見据える



ミラは拳を納めるとテイクオーバーを解いた


悲しげな表情を浮かべ静かに口を開く



「こんな戦い・・・むなしいわね」


「勝者の驕りかミラジェーン・・・とどめをさせ・・・」


震えながらも決着をつけようとするフリードにミラは優しげな視線を向けて言う



「私たちは仲間よ・・同じギルドの仲間・・・一緒に笑って、一緒に騒いで・・・一緒に歩いて・・・」


青色の瞳を伏せ、寂しさを感じさせる笑みを浮かべるミラ



「う・・・うるさい!!オレの仲間はラクサス一人だ!!!!」


ミラの言葉をかき消すかのように声を荒げるフリード


意地を張るフリードに対し、ミラは優しい声で言った



「一人じゃないでしょ?あなたはとっくに気づいているわ」


その言葉に目を大きく見開いたフリード


ミラの言葉によって、今までのフェアリーテイルで過ごしてきた日々がフリードの脳裏に次々と浮かび上がった



「一人の人物に依存する事の全てを悪だとは思わないけど、あなたのまわりにはたくさんの人がいる」


ミラが言葉を紡ぐたび、フリードの口元が震えていく


そんなフリードの手を両手で包み、優しく微笑んだミラが言う



「ほら、手を伸ばせばこんなに近くに・・・一人が寂しいと気付いた時、人は優しくなれるの」


ミラの青い瞳には涙が浮かんでいた


先ほど感じた恐怖とは違う、その涙には優しさと温かさが込められていたのだ



フリードの目が潤む


歯を食いしばり、見開いた瞳でミラを見据える




「あなたはそれに気づいている」


そう言われた次の瞬間、フリードの瞳からは涙がこぼれおちる



「うぐっ・・・うぅ・・・」


嗚咽を漏らし、手で瞳を塞ぎ泣き始めたフリード



「こんな事・・・したくなかっ・・・たんだ・・・」


「うん・・・わかってるよ・・・来年こそは一緒に収穫祭を楽しもっ」


魔人の時の強面からは想像もつかない程の柔らかな笑顔をフリードへ向ける


そんなミラを遠くから見ていたアルトたちは笑顔を浮かべて言った



「かなわねぇなぁ・・・」



【フリードvs.ミラジェーン 共に戦意喪失】
















「ラクサスの居場所を教えてくれ」


涙を流すフリードにアルトが近付いて言う



「ラクサスなら・・・カルディア大聖堂にいる」


涙を拭いたフリードが立ち上がってそう言った


それを聞いたアルトが拳を合わせ、カルディア大聖堂の方へ体を向けると、不意にミラがアルトの腕をつかむ



「・・・ミラさん?」


「駄目よアルト・・・今のあなたがラクサスと戦ったら・・・本当に死んじゃうかもしれないわ・・・」


不安そうな表情のミラが声を震わせていう


アルトの身体には、エバーグリーンとの激戦で負った怪我に加え、ミラを庇いフリードに一方的につけられた傷が痛々しく刻まれていた



「今、ラクサスの元にはエルザたちが向かっているわ・・・アルトはこのままギルドに戻って傷を治した方が―――」


ミラが言葉を発する途中、アルトがミラの手を優しく払って言う



「ミラさん・・・俺はここに来るまで色んな人と戦ってきた、仲間同士で戦うなんて馬鹿げた事だと思ってた・・・だけど皆、仲間を助ける為にやむ負えず、必死で戦ってたんだ」


「!!」


アルトの言葉にミラが大きく反応する



「フェアリーテイルの強さは個々じゃなくて絆にあるんだってマスターが言ってた、俺もそう思う・・・だからこそ、その絆を利用して戦いを仕掛けたラクサスを簡単に許すわけにはいかない」


「で、でもっ・・!!」


「ミラさんたちは先にギルドに戻ってて・・・」


ミラ達に背を向け、再び歩き出すアルト


そのまま少し歩いたところで立ち止まると、身体に力を込めた


次の瞬間、アルトの身体からは大量の魔力が溢れる



「(あれだけの傷を負って・・・まだこれほどの力を・・・!!!)」


その光景を目にしたフリードがあまりの驚きに口を開け、目を見開きアルトを見る



「・・・心配しなくていい」


アルトが短く言葉を発する


その声をきいたフリードは体中の毛が逆立つような感覚に見舞われた



「ラクサスは俺が止める」


めいいっぱいの怒気がこもった声で言うアルト


先ほどのおだやかな表情とは打って変わって鋭い視線をカルディア大聖堂の方へ向けていた






【バトル・オブ・フェアリーテイル 残る敵はラクサスただ一人!!!!】


 
 

 
後書き
アルトよ・・もうこれタフってレベルじゃないよなぁ・・・(汗) 
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