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魔界転生(幕末編)

作者:焼肉定食
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第7話 悪魔の要求

後藤家屋敷はまさに地獄絵図と化していた。
50人いた護衛は2人の男によって全滅の危機にさらされていた。いや、正確には一人の男の手によってと言わざるを得ない。
その男の動きは風のごとく早く、背中に生える刀を飛ばし、ある時は体を丸くして転がり、護衛を切り刻んでいった。
隙をみてもう一人の男にかかっていった護衛もまるで簡単に真っ二つにされた。
決着がついたのはあっという間の出来事だった。

ひたひたと象二郎がいる居間に足音が聞こえて来ていた。
「旦那様」
危機を伝えた老人が象二郎の後ろに隠れ震えていた。
象二郎は刀を抜き正面に構え敵の襲来に備えた。
どかっと乱暴に襖が開き二人の男が入ってきた。
「ば、馬鹿な。お前たちは・・・・・・・」
象二郎の顔から血の気が引いた。
「久しぶりだな、象二郎」
ハリネズミのような男を後ろに従えて象二郎に立ちふさがったのは見覚えがある顔だった。
まして、自分が吟味し処刑した男たち。
「た、武市、以蔵。な、何故、お前たちが・・・・・・・・」
象二郎は絶句した。生きているわけがない二人。
「フフフフフ。地獄から蘇ってきたんぜよ」
ハリネズミのような男の目が金色に輝いていた。
「そ、そんな馬鹿なことが。生き返るなぞ信じられん」
象二郎は腰が抜けそうなのを気力で抑え、刀を構えた。
「象二郎、お前など我らの敵ではない。もし、我らの願いを聞き入れるなら命は助けてやる。そうでなければ、一族一党すべて惨殺してやる」
黒い洋服を纏った長身の男が唇を曲げて微笑んだ。
「なんだ、それは?」
象二郎の声がかすんでいった。口の中はカラカラに乾いてた。
「山内容堂公に我らの願いをかなえてくれる為に会見を開くこと」
「ば、ばかな!!そんなことできるわけなかろう」
象二郎は大声を張り上げた。
「では、死んでもらうことにしよう。我らの力ならば城を襲撃しようと思えば簡単だからな」
長身の男は後ろを向いた。と同時にハリネズミのような男が一歩前にでた。
「たとえ、お前たちが強くて城を二人で落とせるわけは出来ない。私の家を落とすのとわけが違うのだぞ」
「キキキキキ、簡単ぜよ」
男は不気味に笑い片方の手に刀を垂れ下げ象二郎と対峙した。
「家族と一緒に死んで行くがよい」
長身の男は象二郎に背を向けて立ち去ろうと歩き始めた。
「ま、まて、武市。わ、わかった。殿に会せよう」
象二郎は唇をかんだ。
「クククク、殊勝な答えだ、象二郎。では、行くか」
武市は歩き出した。
「な、なに?今からなのか?」
象二郎は慌てて言った。
「勿論だ。今いかずにいつ行くのだ?」
武市は正面を向き微笑んだ。
「む、無理だ。この時間ではたとえ私でも殿に面会などできぬ」
象二郎の刀を握る手に力が込められて爪が皮膚に食い込み血が流れた。
「では、死んでもらうだけだ」
武市は再び背を向けようとしたとき。
「ま、待て。わ、わかった。会見を開かせよう」
象二郎は俯いた。
「では、行こう。容堂の元に」
武市は再度後ろを向き歩き出した。
「ま、待て」
「まだ、何か?」
武市は象二郎の再度の呼びかけに足をとめ、苛立つことのない冷静な口調で言った。
「支度をさせてくれ」
象二郎はなるべく時間をかけたかった。
「そのままでよい。それとも、まだぐずるようなら」
武市は顎でハリネズミのような男に合図を送った。と当時に象二郎は風を感じたように思えた。そして、下を見ると後ろで震えたいた老人の首が転がっていた。
「ご、ごすけ」
象二郎は後ろを向くと手をばたばたさせ首を探しているような老人の姿を見た。
「う、うわぁー」
象二郎が飛び退くと同時に首から大量の血が噴き出した。
「さぁ、行こうか。象二郎」
顔を引きつかせて固まっている象二郎の肩をつつくようにハリネズミの男が押した。
「い、以蔵」
象二郎はにやにやと笑っている以蔵の顔をじっと見つめた。
 
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