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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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寺坂の時間(2016/03/30 一部修正)

 
前書き
今話は今までで一番イッキがキレてる気がします。あと、イッキの神崎さんへの溺愛っぷりが半端ないです。


追伸

今話はキリのいい所で終わらせようとした結果、今までで最も短い文字数となっています。その点をご了承ください。 

 



【視点:樹】



E組でプール開きが行われた翌日。E組校舎の裏山にある専用プールで事件が起きた。何者かにビーチチェアや飛び込み台が破壊され、プール内には大量のゴミが投棄されていたんだ。

そのせいで今日からプールを利用しようとしていたビッチ先生が、自慢のセクシー水着を披露する機会を逃し、呆然としている。

まぁ、何者かと言ったものの犯人は分かり切っているんだけどな。犯人はあからさまにニヤついている寺坂だ。同じグループに属している村松と吉田もニヤついているが、この2人は少し後ろめたいといった感情が表情から読み取れる。

このことから主犯は寺坂、村松と吉田は仕方なしに付き合った共犯ってことも分かるな。


「あー、こりゃ大変」
「ま、いーんじゃね?プールとか正直かったるかったし」


いや、かったるいって思ってるならお前らだけ参加せずに灼熱地獄を味わってれば良かっただろうが。下らないことして、他の奴らに迷惑掛けてんじゃねぇよ。

俺がそんなことを思いながら寺坂達を見ていると、俺の視線に気付いた寺坂が近付いてきた。


「何見てんだよ、南!まさか、俺らが犯人とか思ってんのか?」
「はぁ?俺がお前らを見てる?自意識過剰にも程があるんじゃね?あと、胸倉掴んで見つめて来るの止めてくれ。俺、オスゴリラと見つめ合ってときめく趣味は無いんだ。それ以前に可愛い彼女もいるし」
「んだと、テメェ!!」


俺が軽く挑発すると、寺坂は拳を勢いよく振り降ろしてきた。まぁ、その拳が俺に届くより早く、胸倉を掴んでいる手を捻り、俺は背後へと回り込んで寺坂を押さえつけるんだけどな。


「やめろよ。普段、真面目に暗殺訓練もやらない上、カスデブ野郎の下らない恐怖支配に屈し掛けたゴリラ風情が、俺に勝てる訳ねぇだろ?」
「南ー!!」


俺の言葉に怒りを覚えた寺坂は拘束を振り解こうとするが、明王様の腕力――というか筋力がある俺を舐めて貰っては困る。


「イッキ君、寺坂君。喧嘩なんて下らないことは止めなさい」
「殺センセー。喧嘩ってのは対等の者同士がするもんだろ?だから、これは喧嘩じゃねぇよ」
「そんなことはどうでもいいです。兎に角、寺坂君を離しなさい。イッキ君。プールなら―――」


殺センセーは俺――いや、俺達にそう言うと触手をマッハで動かし、荒れたプールを高速修復した。


「この通り、元通りです。いつも通り、仲良く遊んで下さい」
「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」


プールが修復されたことで、クラスの大半は元気よく返事をし、寺坂グループは自分達のしたことが嫌がらせにもなっていないという事実に微妙な顔をしている。


「……良かったな、寺坂。殺センセーがマッハで動ける触手生物で。もしプールが高速修復されなかったら、クラスの大半が数少ない楽しみを奪った犯人を血眼になって探してただろうし」


俺はそう告げると、拘束していた寺坂を解放した。そして、寺坂は寺坂で舌打ちをしたかと思えば、吉田と村松を引き連れてプールから姿を消した。

それから間もなくして、グループ内で揉め事があったのか、村松が木に背を預ける形で座り込んでいるの見かけたり、教室内で騒ぎが起こった。

教室に着いた俺が目にしたのは、破壊された木製のバイクっぽいのと、有希子の近くに落ちていた殺虫剤のスプレー缶。そして、その教室内を未だ舞っているスプレー缶の中身と思しき薬剤だった。


「触んじゃねーよ、怪物。気持ち悪――」


殺センセーと口論している寺s――ゴリラに俺はイッキに近付き、頭を鷲掴みにした。


「おい、ゴリラ。てめぇ、有希子の近くで一体何の薬剤をぶち撒けた?」
「い、イッキ君!?止めなさい!!」


今の俺は堀部の触手を見た時の殺センセー並にキレているだろう。自分でも殺気立っていることが分かる。そして、その殺気に当てられゴリラの顔が青褪めている。

俺がキレていることを察した殺センセー先生が、触手を駆使して俺をゴリラから離そうとするが、俺は掴んだゴリラを離さない。


「何とか言えよ、クソゴリラ。簡単な質問だろうが。てめぇのブチ撒けた薬剤は何だ?」
「………」
「ゴリラには人間様の言語が難しいか?あ゛ぁ゛?」
「………イッキの奴、マジでキレてやがる」
「イッキ君!いい加減にしなさい」


殺気立っている俺から距離を取るクラスメイトと、俺と寺坂の遣り取りを必死に仲裁しようとする殺センセー。ってか、俺に絡みつく触手がウゼェ。

何も言わない寺坂と身体に絡む触手にうんざりした俺は、鷲掴みにしていた寺坂の頭を離してから、再度口を開いた。


「人間様の言語を理解しないクソゴリラに言っても意味が無いと思うけど、取り敢えず言っておく。てめぇの散布した薬剤のせいで有希子に何かしらの害があったら、てめぇのその体に道を刻み込んだ上で轢き潰す。そのことを肝に銘じておけ」


俺はゴリラにそう告げると換気をする為、教室の全ての窓を開けると、今の俺が居ても教室の空気が悪くなると判断し、教室から姿を消した。

そしてこの日1日、E組の雰囲気はギスギスしたものとなってしまった。


 
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