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エターナルトラベラー

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第四十六話

さて、次の日。

俺はソラ達にリオの護衛を任せてひとっ走りマサドラへ。

途中なにやら岩場を人力でくり貫かれた跡が多数存在しているけれど… 誰だよ、こんな事したのは。

さらに出くわしたモンスターを片付けて資金源を増やしつつ、ようやくマサドラへと到着した。

たどり着いたカードショップで手持ちのモンスターカードを換金して、さて買うかと言う時、俺の予想を裏切る事態が展開されていた。

「は?…スペルカードが売り切れた?」

「はい、次回の入荷は未定です」

俺の魂が抜けたような問いかけに律儀に返してくれたショップのNPC。

売り切れだとぉ!?

マジで?

俺は目の前が真っ暗になった。



…取り合えず呆けていても仕方がないと、俺は来た道を引き返し、アントキバへともどり、ソラたちが待つ宿屋を目指した。

ガチャ

ドアノブを捻り、入室する。

「た、…ただいま」

「あ、お兄ちゃん。お帰りなさい」

なのはが出迎えてくれた。

他のメンバーはと視線を向けると、自然体で立ち、『堅』の修行中のフェイトの姿と、それのコーチをしているソラ。

そして。

「……リオは何しているの?」

リオの隣に居たソラに声を掛けた。

「あ、アオお帰り」

「あ、うん。それで?」

「見たら分るでしょ。『纏』の練習」

そうなのだ。

リオに目をやると、深く目を閉じて瞑想するような感じで自身のオーラを纏っている。

『纏』だ。

「それは分るけれど、どうして?」

教えたのか、とソラに問いかけた。

「この世界(グリード・アイランド)に居るのなら最低『纏』が出来ないと、相手の念には無防備になっちゃうし、フェイトの修行を始めたらどうやらオーラが見えているみたいだったからね。精孔は曲がりなりにも開いていたみたい」

そりゃ事故だったにしろ、念が使えなければこのゲームをプレイする事は出来ないのだけれど。

「だから、リオにも基本の四大行を覚えてもらおうと思って。…まあ最低『纏』は出来てもらわないと」

しかし、ソラの言っている事も分る。

リオの事は出来る限り守るつもりだが、念攻撃に対して自身でレジスト出来れば生存確率はグッと上がるのは確実だ。

しかも、スペルカードの取得を失敗した今となっては特に。

「…そうだね。それが良いと俺も思うよ。まあそれはさておき。
皆聞いてくれ」

さて、リオの事は置いておいて、スペルカードについて話をしないとね。

俺は皆の注目を集めるように言葉を発した。

俺の言葉に纏をしていたリオはビクっとして纏が解けてしまったようだが、フェイトは堅を維持したまま俺の方を向く。

ソラとなのはも同様だ。

「スペルカードを買いにマサドラまで行って来た訳だけど…」

「あ、そうだったね。お兄ちゃん、そのリーブ(離脱)のスペルカードはゲット出来たの?」

なのはが代表して俺に問いかけた。

「…残念だけど、一枚もスペルカードを入手できなかった」

「え?」
「どういう事?」
「うん?」

なのは、フェイトが顔を歪め、リオは昨日の話を聞いていなかった為意味が分らないと言った顔だ。

「……一枚も?一個も無かったの?」

ソラが真剣な表情で聞き返した。

「ああ、残念ながら…」

「そう…」

「えっと…つまり…どういう事?」

混乱したなのはが聞き返す。

「…プレイヤー人口が多すぎてカードの需要が追いついていないか…後は」

ソラの言葉を引きついて俺が答える。

「どこかのギルドが独占したか」

「ギルド?」

フェイトはこう言ったゲーム用語に弱いな。

「同じ目的を持った多人数の集団と言ったところか?スペルカードの独占が出来る規模となると相当の人数が居るのだろうね」

スペルカードの保持に使うフリーポケットはマックスで一人40個分。

スペルカード全ての限度化枚数は…幾つだったか思い出せないが、膨大な量には違いない。

「だとしたらリーブの入手は正規の方法では困難」

「だねぇ」

攻撃呪文も独占していれば、自分たちに使われることもない。

スペルの中には当然相手のカードを奪うものもあるのだから、防御スペルは当然ながら、攻撃スペルの独占も意味はある。

リーブ(離脱)も、この世界から逃げられない状況であるならば、自分たちが相手からカードを奪う機会も無くならないしね。

「と、すれば、後は挫折の弓と言う事になるけれど…」

「そ、ソレが問題だ」

「問題?」

何が問題なの?と、なのは。

「正直挫折の弓を取るのは時間が掛かる」

「…どれくらい?」

フェイトが聞き返す。

「どんなに頑張っても一月以上はかかる」

「一月…」

一月で済まないかもしれない。

一月とは全力で寝る間も惜しんでこの世界を駆けずり回ってようやくと言った所だ。

指定カードである挫折の弓は限度化枚数も少なめだが、それと同等に入手難度が上がる。

さらに挫折の弓のフラグは一度指定ポケットを50枚以上収めた状態からバインダーを0に…全てのカードを具現化すること。

一度何も無くなるのだから本当に挫折してしまいそうになる。

入手しても、リオを送り返すためにはそれを使わなければならないとは…

せめて、スペルカードが買えれば…

擬態(トランスフォーム)』か『複製(クローン)』が欲しい所だ。

と言うか、スペルカードが買えればリーブの入手が可能なのだから、考えるだけ無駄か…

攻略組の人達も当然居るだろうから、何とか交換で手に入らないだろうか…

他者との接触は危険も伴うけれどね。

トレードでリーブの入手が出来れば手っ取り早いのだけれど…

その辺は臨機応変に情報が増えたら再考するしかないか。

挫折の弓入手のための条件を皆に伝えると、皆の顔に少し厳しい表情が浮かんだ。

まあ、クリアの半分まで到達した上で全て放棄しなければならないとかは、流石に辛い。

取り合えず、リオの護衛をソラとフェイト。カードの収集を俺となのはが行う事になった。


グリード・アイランドを始めて二週間。

俺たちの集めた指定ポケットのカードは19枚。

比較的入手難度の低いカードを狙っているのだが、中々集まらない。

今日は二日ぶりにアントキバへと戻り、ソラ達と合流した。

「ただいま~」

「お帰り、なのは」

「今帰った」

うお、今なんか俺、自宅に帰った亭主のような発言をしてしまった。

恥ずかしい。

「お帰りなさい、アオ。指定カードは取れた?」

「ああ、二枚増やせたよ」

「そう、良かった」

「あ、アオお兄ちゃん。お帰りなさい。なのはお姉ちゃんもおかえりなさい」

「お…おかえりなさい。アオ…なのは」

部屋の少し奥からリオとフェイトが出迎えた。

「ただいま。…それにしても、綺麗な纏だね」

「え?えへへ。ありがとうございます」

念の基礎の修行を始めて二週間、リオはようやく纏を自分の物にしたようだ。

喜んでいるリオの隣には何故かボロ雑巾のようにくたびれたフェイトの姿が。

「…フェイトは今日も下水管工事のバイト?」

「うん…スコップで延々と下水管工事の為の穴掘り…『周』の鍛錬には丁度いいってソラに言われたし、確かに納得もしてるけど…すごく疲れた」

あー、アレは俺も経験した。

実際『周』の訓練には持って来いだったし、あの後念を教える事になった人達も同じような事をやらせたね。

「わたしも昔同じような事をやったから、頑張って!フェイトちゃん」

「ありがと、なのは」

なのはがフェイトをはげました。


夕食を済ませた後のまったりとした時間。

「二週間で19枚…残り31枚ね」

と、ソラ。

「ああ。二ヶ月は掛からないと思いたいね」

「そろそろ私もカード集めの方に協力したい」

そう言い出したのはフェイトだ。

彼女の場合は念の修行と言う意味合いもあるからカード集めはいい訓練になるのだが…

「ソラ、フェイトにはまだ『硬』と『流』を教えていなかったよね?」

「うん、まだだよ。…フェイトは物覚えが良いから、そろそろ教えてもいい頃だとは思ってたけど」

「そっか。ならばそれが及第点になったらだね。纏、練、絶、発と応用の凝、周、堅、硬、流、が使えればこのゲームで取れないカードは一応無いはずだから」

「私が教えてもらったのは四大行と周と堅…まだ他に2つもあるんだ」

「まだその他に円と隠がある。フェイト、一通り見せてあげる」

そう言ってフェイトを招きよせると、なぜかリオも付いて来た。

リオに見せても理解できるか分らないけれど、まあいいか。

「先ずは基本の『纏』」

オーラを身に纏う。

「纏の応用技の『周』」

身近に有った紙をオーラで包み込んでみせる。

「精孔を閉じ、気配を立つ『絶』」

「そして通常よりも多いオーラを出す『練』と、応用技の『堅』」

迸るオーラを持続させる。

「オーラを操り自分にあった必殺技や能力を行使する『発』」

俺は植木鉢に植えてあったパンジーに手をかざすと、そのパンジーが急成長する。

「アオの能力って…」

「俺の能力は触れたものの時間を操る『クロックマスター(星の懐中時計)』。進めたり、戻したり、止めたりね」

「凄い能力…」

まあね、俺もそう思う。

俺の潜在的な心理ストレス等が原因になったのは間違いないと思う。

未来を知っている自分がどう動くのか、慎重に行動してきたが、やはり後悔の連続だった。

そんな俺のやり直したいとか、あの時ああしていれば、とか何度思ったことか。

「オーラを目に集めて相手の念能力を看破するのが『凝』」

俺の場合勝手に写輪眼が発動してしまうけれど。

「『凝』の応用技が『流』」

目以外の場所、今回は右手にオーラを集める。

「それが、『流』…」

「そして、纏、絶、練、発、凝の複合技、『硬』」

右手以外の精孔を閉じ、右手に纏ったオーラが膨れ上がる。

「…すごいオーラ」

「この状態で普通の人間を殴ればトマトを潰すよりも簡単に中身が飛び出るからね」

俺の言葉に息を呑むフェイト。

「纏の応用技で『円』これは範囲内のレーダーみたいなものだね。円の中ならば死角はほぼ無くなると言って良い」

オーラを部屋を包むくらいまで広げて維持。

「最後は絶の応用技の『隠』」

「それは?」

「凝で俺の指先を見てごらん?」

フェイトは言われたとおり凝で俺の指先をみる。

「数字の1」

「正解。オーラを見えにくくする技術」

指先から放出していたオーラを止める。

「大体こんな感じ。『堅』と『流』この二つが出来れば取り合えず一通りの戦闘を行う事ができる。
この二つの修行は影分身を使ってやれば比較的短時間で及第点はあげられるんじゃないかな。フェイトの努力次第だけどね」

「頑張る」

うん、がんばれー。ってその前に影分身って教えてたっけ?忍術に対するレクチャーをした覚えが無いような?

さて、一通り見せたし話も終わりかなと思われた時、ソラが驚愕の声を上げて俺を呼んだ。

「っアオ!」

「何?」

ソラの方を振り返ると驚愕の表情で見つめるソラの先に居たのはリオ。

それだけならばソラはそこまで驚愕の声を上げないだろう。

しかし。

「写輪眼…」

「え?何ですか?…そう言えば少し体がダルイです」

リオの抜けた返事に一瞬俺の思考も止まりかけたが、何とか回避。

リオの両目は真紅に染まり、勾玉の模様が左に一つ、右に二つ浮かんでいた。

「あ、その目…」
「それって…アオ達の」

なのはとフェイトも俺とソラの態度が急変した事で事態を飲み込もうとリオを見たのだろう。

やはりその顔は驚愕の表情だ。

「そう、写輪眼。ある特定の血筋に稀に現れる瞳術。その瞳は全ての術を見抜くと言う」

「全ての術…だからお兄ちゃん達は一度見た技をすぐに真似できるんだ」

以前ソラがフェイトさんと戦った時の事を覚えていたか。

「それよりも、特定の血筋って?御神と不破?だったらなのはも使えるの?」

「いや、写輪眼はうちは一族の血継限界…特殊能力。だからなのはは使えないよ」

「え?じゃあ何でお兄ちゃんとソラちゃんは使えるの?」

まあ、当然その疑問にぶつかる訳だが、それにどう答えようかと悩んでいたところでリオから抗議の声が上がる。

「あ、あのっ!一体どういう事なんですか?あたしのことを話しているみたいなんですが、一体何を言われているのか分りません」

そうだったね。リオの事をのけ者したつもりは無かったんだけど、つい驚愕の事実に俺も冷静では要られなかったと言う訳だ。

取り合えず、部屋に備え付けられていた姿見の前へとリオを連れて移動する。

俺は姿見の前に立ったリオの肩に手を乗せ、少々拘束ぎみに自分の姿を覗かせた。

「いい?リオ。驚いてはいけない。それは決して病気ではないから」

「う、うん」

俺の方を見上げていたリオが、俺の言葉を聞いて姿見に視線を移す。

「こっ…これって…」

前もって心の準備をさせたからだろうか。驚愕の言葉を上げるリオだが、どうにか取り乱す事はなかった。

「写輪眼と言う。大丈夫だ。俺とソラも持っている」

そう言って写輪眼を発現させる。

「本当だ。…でも数が…違う?」

「本来は三つ巴の模様で、三つあるのが普通なんだよ」

「え?じゃあ、わたしのは…」

うーむ、そう言えば俺も移植したては二つだったっけ?

だいぶ昔の事だからよく覚えていないけれど。

だけど、まあ…

「覚醒したばかりでまだその力を全て発揮できていないか……あるいはそれが限界か。俺は前者だと思うけれど、ソラは?」

「私もそう思う。今はじめて発現したんだし、不安定なんだと思うわ」

「それじゃ、リオはその…うちは一族?の血が流れているの?」

と、フェイト。

「流れているよ、確実に」

まさかこの年で眼球の移植など行わないだろう。

「何代か前にうちはの人間と交わったか…あるいは…」

ソラが俺の言葉を継いだ。

「竜王の子孫」

「竜王の?」

「竜王ってあの本の?」

フェイトとなのはが驚くのも無理は無い。

何故そこに繋がるのか理解できないのだろう。

どう説明しようかと悩んでいた所、リオが声を出した。

「あのっ!皆さんはその…うちは一族?について詳しいんですか?」

「…まあ、ね」

俺とソラは。

「じゃ、じゃあっ!そのうちは一族って猫に変身したり出来たんですか!?」

「…なん…だと?」

「あ、あの…今でもあたし、信じられないんですけど…昨日わたし気が付いたら一瞬猫になっていたんです…だから」

「うん?動物に変身するくらい魔法でもできると思うよ」

それに答えたのはなのは。

「え?そうなんですか?」

「うん。たしかそんな魔法があるって前にお兄ちゃんが言ってたよ。ね?」

「あ、ああ」

ユーノがフェレットに変身できるのだ。俺たちはまだその術式を知らないが出来る事は確実だろう。

「あ、そうなんですか…良かった」

安心するリオ。

しかし、それで終わればうやむやになる所をソラの発言がそれを逃さなかった。

「リオはその変身術式を知っていたの?」

「え?知りませんよ?」

「比較的簡単なシューターのような放出系や先天性の魔力変換資質等は感覚的なもので割りと簡単に出来るだろうけど…変身魔法はそうは行かないと思うわ」

「え?…じゃあっ」

「落ち着いて、リオ。変身したのに戻れているんでしょ?だったら大丈夫。猫に変身できるのは珍しい事かもしれない。だけど大丈夫。私も出来るから」

「本当?」

「本当」

すっと溶けるように一瞬でソラの体が消える。

消えたわけではない。その証拠にソラのいた足元に一匹の子猫が居るのだから。

「わあっ猫ちゃんだ」
「かっかわいい」

驚きよりもかわいさに目を奪われたようだ。

俺は知っていたから驚かないし、なのはは変化の術か何かだと思っているようだった。

リオは駆け寄りソラを抱き上げる。

「ううーいいなっ!リオ、次私が抱っこしたい」

「うん、わかったよ。フェイトお姉ちゃん」

「あのね、私だからね、ソラ」

「きゃっ」

いきなりしゃべりだした猫に驚いて落としてしまったリオ。

ひらりと着地するとソラは一瞬で人間に戻った。

その後ろで「あぁっ」と残念そうな声を上げていたフェイトが印象的だった。

「リオ、一度猫に変身してみてくれない?」

「え?でも…」

「大丈夫。猫になろう、人間に戻ろうって気持ちがあれば大丈夫だから、ね?」

俺たちの変身については意思の力で戻れるからね。

しかしもしそれで変身できるのならば…

「…うん」

ソラに説得されてリオは静かに目を瞑る。

「ねこー、ねこー、にゃんにゃん」

イメージトレーニングだろうか、その口から漏れる言葉が可愛らしかった。

すっと体が溶けるように縮み、やはり足元に子猫が一匹現れる。

「にゃあ」

その体毛はアメリカンショートヘア。

ミッドチルダには居ない地球産の猫。

「わあ、かわいい!」

だっと走って抱き上げたのはフェイト。

「苦しいよ、フェイトお姉ちゃん」

その腕の中から抗議の声が上がる。

「あ、ごめんなさい」

そう言って拘束を緩めるフェイト。

「うん。そのくらいなら大丈夫」

しばらくしてようやくフェイトはリオを開放した。

開放されたリオは、今度は「にんげん~、にんげん~」と呟くと、その形を人へと戻した。

「…今のってソラちゃんのと同じ…」

なのはがその結論に至る。

「うん?」

言われたリオは分らないと言った表情。

「だろうね。
魔法陣は出なかったし、どちらかと言えば変化の術に近いだろうけど。…アオ、やっぱりリオは…」

「…竜王の子孫だろうね」

と言うか、確実に俺かソラの子孫。

あの変身能力は元は魔法薬だったのだけれど…子供にまで遺伝するなんて…なんて物を造ったんだドクター!?

いや、まあ、推測だが。母親の胎内で体内に溶けた魔法薬が血液中から移動したと考えた方が妥当か?

まあ、それだと直系の女性の子供にしか顕現しないとなるが、遺伝子に組み込まれていると考えるよりは説得力が…

まあ、どうでもいいか。

そんな所は考えなくてもいいよね。今現実に出来るか出来ないかと言う問題でしかないし。

と言うか、これでリオが竜王の直系…もしくは、どこか別の時代に転生した俺かソラの子孫と言う事だ。

「竜王って何ですか?」

「昔の王様だよ。古代ベルカ時代の」

「そうなんですか」

日記とユーノさんに調べてもらった限りそんな感じだったはずだ。

しかし、おかしな事になった物だ。

今までは仮定の内だったが、それがどうやら現実味を帯びた。

恐らく俺たちはまた転生するのだろう。

今度は過去、古代ベルカ時代。それも次は王族として。

となると、今俺が知った事実をこの先日記と言う形で書き残し、俺たちに届くのだろう…が、しかし。

それだとループだ。

一番最初が抜けている。

一体誰がこの方法を考え、残したのか。

とは言えコレも考えても答えが出ない類のものだ。

俺は考えるのを止めた。

「え?じゃあ、お兄ちゃんもソラちゃんも竜王の血が流れているの?」

「え?うん…そうだね」

と言うかたぶん本人です。

「とりあえず、リオには力の使い方を教えた方がいいかな?どう思うソラ。知らない方がいいと思うかな」

「もう使えているんだから、簡単にでも何が出来て、何をしてはいけないかは教えた方がいいと思う…制御できなければ今回みたいに意志とは別に発動してしまうかもしれないしね」

確かにそれは危険か。

マイノリティは受け入れられ辛い。

ミッドチルダは比較的にレアスキルと言う枠の認知度が高いからまだ大丈夫だろうか?

「…ソラの言うとおり、制御は覚えていた方がよさそうだ」

「?」

自分の事を、自分の意思の存在しない所で決定された事を理解できていないリオが不思議そうな顔をしていた。


さて、取り合えずリオの事はひと段落させて、一息ついてから話はもどって、これからの事だ。

「どうするの?拠点をマサドラに移したほうがスペルカードの入荷の確認が楽じゃないかな?」

と、俺に同行してグリード・アイランドを駆け巡っているなのはの意見。

「確かに、それはそうなんだけどね。逆にスペルカードの有用性からマサドラは人が絶えない。他のプレイヤーとの接触の場も多い…それ故カードのトレーディングの場としても機能しているが…やはりマサドラに移るのはリスクが大きい。リオを帰してからかな」

まあ、リオを帰したらそれこそ定住なんてせずに駆けずり回らなくてはならなくなるが。

そういった方向で話が纏まり、俺たちはまたカードを集める日々が続いた。 
 

 
後書き
挫折の弓。漫画では取るシーンも使うシーンも無かったので取得方法はオリジナルです。  
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