| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

アインクラッド編~頂に立つ存在~
  閑話 咎を背負う者

「ヒャッハアアアァァァァァアアア」

「オラオラ、死ねやぁ!!!」

「けひひひひ、その程度かよォ!!!」

「ギャハハハハァァ、モット、モット殺させろやァ!!!!?」

「後退だ、後退しろ!!」

「HPがヤバい!回復してくれ!!」

「無理だ!?結晶は残り僅かなんだぞ!!」

そのフィールドは阿鼻叫喚としていた。絶えず響く怒号のような叫び。切羽詰まったような叫びに悲愴感に満ちた叫び声を出すものもいる。挙句の果てに、恐慌状態に陥るものまで出てきて混沌と化していた。



事の始まりは、ラフィン・コフィンのメンバーの一人が攻略組にラフィン・コフィンのことを密告したことである。
デスゲーム開始から一年がたった大晦日の夜に野外パーティーを楽しんでいた小規模ギルドを襲い、全員殺害されたという事件が起こった。その事件の犯人たちは自らをレッドギルドと称し、≪ラフィン・コフィン≫なるギルドの結成が情報屋を通じて告知された。それをまとめていたのが≪PoH≫というプレイヤーである。血盟騎士団団長≪聖騎士≫ヒースクリフとは異なるカリスマ性を持ち、徐々に仲間の心理リミッターを緩めていったのである。その情報を得た攻略組は即座に情報屋たちに≪ラフィン・コフィン≫のアジトを探すように依頼し、第一層からしらみつぶしに捜索にあたっていたがそれが発見されることはなかった。

しかし、今回の密告者のおかげで≪ラフィン・コフィン≫のアジトが判明した。そのため、聖竜連合をはじめ、血盟騎士団などの有力ギルドからソロプレイヤーまで召集され、大規模な≪ラフィン・コフィン≫討伐隊が結成され、そのための作戦が立てられた。

そして、八月某日 午前三時。犯罪ギルド≪ラフィン・コフィン≫の討伐作戦当日。

部隊の人数も平均レベルも≪ラフィン・コフィン≫を大きく上回っているであろう討伐隊は、アジトとなっている低層のフロアダンジョンの安全地帯の出入り口をふさぎ、≪ラフィン・コフィン≫の討伐作戦が始まった。

―――――しかし、世の中そう上手くことが進まないのが常である。

突入した安全地帯の大部屋に≪ラフィン・コフィン≫のメンバーは一人もいなかった。それを疑問に思う攻略組だったが、その疑問はすぐに解決された。≪ラフィン・コフィン≫のメンバーはダンジョンの枝道に隠れ、突入した攻略組を背後から奇襲したのである。

結果的に深夜に強襲する作戦が逆手に取られてしまった。≪ラフィン・コフィン≫のアジトが攻略組に密告されたように、攻略組の討伐作戦も≪ラフィン・コフィン≫側に密告されていたのである。

それは罠、毒、目晦ましといった、ありとあらゆる準備を整えたうえでの不意打ちだった。しかし、そこはさすがの攻略組というべきか、すぐさま状況に対応していき、体勢を立て直すとすぐさま猛然と反撃に出た。

―――――だが、討伐隊と≪ラフィン・コフィン≫の間には決定的な差が存在していた。

それは、殺人に対する忌避感の有無であった。狂騒状態の≪ラフィン・コフィン≫のメンバーはHPが削れようとも降参することなく討伐隊を殺しにかかってくる。

そして、現在の討伐隊はとどめをさせずにいるため、徐々に防戦一方となっていた。



「ぎゃははっははははぁぁぁ、死ねぇっ、死ねぇぇぇぇぇぇっ!!!!?」

「sだffっふぃえあおえだ@おrgdふぁうおd!!!」

「下品な言葉、だね・・・。それに、もうなに言ってるか、わからないよ!!」

殺しにかかってくる≪ラフィン・コフィン≫メンバー二人を相手にルナは持ち前の見切りを生かして、その攻撃を避けていく。しかし、その表情は優れず焦燥感にかられている。周りを見渡すと、HPゲージが赤くなった≪ラフィン・コフィン≫のメンバーが、そんなことは気にせず狂乱と討伐隊を殺しにかかっていたり、それを迎え撃つ討伐隊だが殺すことをためらい攻撃できずに防戦一方な姿が見えた。

無理もない、とその姿を見たルナは思う。このデスゲームはゲームのアバターのHPが全損すると現実の自分も死ぬ、ということになっている。それを言い換えると、このゲームの中でプレイヤーを殺すことは、現実での殺人を犯したのと変わらない意味を持っている。殺人を快楽としている≪ラフィン・コフィン≫のように、精神のたがが外れた者ならいざ知らず、討伐隊に所属している真っ当な人間に人を殺せ、といってもすぐに実行できるものはいないだろう。
現にルナも目の前の二人を殺せずにいる。真っ当な精神を持つがゆえに。人を殺すことへの拒絶がゆえに。そのため、これからどうすればいいのかまったくといっていいほど思い浮かばないでいた。
そんな時、第六感というべき何かが警鐘を鳴らした。

「っ!?」

その第六感に従い即座にその場を退くと、その瞬間、今までルナがいた場所に一筋の剣閃が走りぬけた。ぎりぎりのところでそれを避けたルナは即座に体勢を立て直し、その方向を向くとそこには意外な人物が立っていた。

「・・・PoH!?」

「Wow、よく避けられたものだな、流水」

≪ラフィン・コフィン≫のリーダーの登場に驚くルナをよそに、PoHが登場したことにより、今までルナの相手をしていたメンバーの二人は他の討伐隊のプレイヤーへと標的を変えていた。だが、そんなことを気にしている余裕はルナにはなかった。

「ずいぶんと遅いご登場ね・・・。てっきり尻尾巻いて逃げたのかと思ったよ」

「なかなかinterestingなことを言ってくれるじゃねぇか。あの時は剣聖が邪魔でお前をhuntできなかったからな。もう一度聞くが何か希望はあるか?」

何を、とは聞くまでもないだろう。その言葉を受けた流水はPoHを見据えながら口を開いた。しかし、その口から出た言葉は虚勢がいいところだった。

「前と同じ言葉を返すよ。あなたたちが私たちに捕まるって言うのはどう?」

「くっくっくっ、そのbluffがいつまで続くか、見ものだな、流水!!」

PoHが愛用している武器≪友斬包丁≫を構え、ルナに向かって突進してくる。先制攻撃はPoHから始まった。横なぎに払われる大型のダガーを避けると、そのまま切りかかっていく。ルナの顔には極度の焦りがあるのに対して、反撃に出られたPoHは獰猛な笑みを浮かべていた。ただでさえ危機的状況にあるのにもかかわらず、強敵であるPoHの相手をしなければならないのだ。焦るな、というのが無理な話である。
何か打開策がないか考えようとするが、目の前の相手がそれをさせてくれない。今のルナはそんな八方塞な状態のさなかであった。



ルナがPoHとやり始める少し前、アスナは・・・いや、アスナも焦っていた。
討伐隊の勢力を考えて無血投降させることも十分可能と考えていたが、今の状況になって初めてそれが不可能であると理解していた。
戦況を見てみれば、防戦一方になっているだけでなく所々崩され始めている。このままいけば死者が出てしまうだろう。故にアスナは焦っていた。

今の状況をどう打開すればいいのか頭をフル回転させるが、いい案が思い浮かばない。単純なレベルの差で無血投降が可能などと甘い考えをしていた過去の自分を殴り飛ばしたいと考えてしまうアスナであったが、それがいけなかった。

考え事をしていたアスナは無防備とはいかないまでも、致命的な一瞬の隙を相手に与えてしまう。その一瞬を見逃してくれるほど相手はおろかではなく、軽装備の片手剣使いに懐に入られてしまう。即座に迎撃しようとするが、相手のHPが危険域にあるのを見たアスナは迎撃の手を止めてしまう。
しかし、そんなことに構わず、軽装備の片手剣使いはアスナの細剣を跳ね上げるように片手剣を切り上げた。それにより細剣は弾き飛ばされ、腕を跳ね上げられた無防備な状態になってしまい、思わず声を上げてしまう。

「あっ・・・」

それを見た軽装備の片手剣使いは、狂った笑みを浮かべながら片手剣に赤いライトエフェクトを纏わせると、ジェットエンジンめいた轟音を立てながら鋭い突きが放たれる。武器がないアスナには攻撃をはじくこともガードすることもできず、迫り来る死の刃を直視しないように目を瞑ることしかできなかった。しかし、目を瞑ったアスナに死の刃が届くことはなく、代わりに届いたのは

「おおおおぉぉぉぉ!!」

という声であった。そして、その直後にポリゴンの破砕音があたりに響き渡った。恐る恐る目を開けると、目の前にはアスナを庇うように立っている黒衣の剣士がいた。しかし、その表情を見る限り自責の念に駆られているようだった。ここが乱戦のさなかだということを忘れて、アスナを助けた黒衣の剣士、キリトは呆然としていた。その表情を見てしまったアスナは何も言うことができずにいた。その時、遠くからキリトに向かって叫んだプレイヤーがいた。

「なにボサっとしてやがンだ、キリト!!気をつけろ、そっちに厄介なのがいったぞっ!!」

叫んだプレイヤー、クラインの声に反応して我に返ったキリトが周りを見回すと、キリトに向かって武器を振るうものがいた。咄嗟にそれを剣で受けると、相手は舌打ちをして距離を取る。そのことにより相手の顔を確認できたキリトは、驚きのあまり大声を上げた。

「・・・・・ザザっ!?」

「ひさし、ぶり、だな、黒の剣士」

不意打ちじみた攻撃でキリトを狙ったのが独特の喋り方で会話するエストック使いの≪赤眼のザザ≫であった。そのわきにはもう一人プレイヤーがいた。毒の塗られたダガーを持つそのプレイヤーの名は≪ジョニー・ブラック≫。毒ダガー使いとして有名であり、赤眼のザザの相方でもある。

「トップスリーが今頃お出ましかよ・・・。PoHはどうした?」

「くっくっくっ、さぁ、な」

「ヘッドのこと気にする余裕があるのかよっ!!?」

そういって攻撃を仕掛けてくるジョニー・ブラック。それに続くように赤眼のザザも攻撃を繰り出してくる。手加減が効く相手でもないので、キリトとアスナは全力で迎え撃っていく。



何合うちあったかなど数えるのが馬鹿馬鹿しいほど剣戟を繰り広げているが、依然としてルナの表情から焦りが消えることはなかった。剣を打ち合いながらも打開策を探そうとしたが、やはりというべきか、それはかなわなかった。
大型のダガーから繰り出される攻撃は、ルナの空所を的確に狙っている。それを流水の如き動きでギリギリで回避して得意のカウンターを仕掛けようとするルナだが、ダガーの長所でもある取り回しの良さを生かされて簡単に防がれてしまい、逆にカウンターをもらってしまう始末である。自分の得意技が封じられるという精神的に辛い状況になっている。それだけではなく、さらに追い打ちがかけられている。それがPoHのもつ大型のダガー≪友斬包丁≫である。それはソードアート・オンラインの中でも最高峰の切れ味を誇り、プレイヤーメイドの武器をしのぐほどのものと言われている。そんな武器と何合も打ち合えばこちらの武器が危うい。武器をなくせば身を守るものがなくなり、目の前の相手がそうやすやすと見逃してくれるはずもないので、殺されるだけとなってしまう。それだけは絶対に避けたいルナであった。

―――――それでも現実とは残酷なものである。

何十合打ち合い、PoHの下段からの切り上げを防いだとき信じたくないことが起こった。PoHの大型のダガーがルナの愛刀の刀身を折ったのだ。砕けた刀身が宙を舞い、地面に突き刺さるとポリゴン片になって消えてしまう。それに呼応するように持っていた刀身が折れた刀の方もポリゴン片となって消えていく。

「っ!?」

信じられないものを見たルナは驚きで目を見開き硬直してしまう。それが決定的な隙となってしまうほどに。その隙をPoHが見逃すとは考えられない。嘲笑うかのごとき笑みを浮かべ、今度は上段から袈裟切りを放とうと構え、振り下す。反射的に目を瞑るルナ。そんなルナを見てPoHは笑みを一層濃くした。

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

しかし、ルナが思っているほどの衝撃が来ることはなかった。恐る恐る目を開けてみると、そこには意外な人物がいた。

「・・・・・ずいぶん派手にやってんなぁ」

そう言葉を漏らしたのは、PoHの背後に立ち、袈裟切りを放とうとしていた腕をつかんでいたソレイユだった。いつ来たのか、どうしてここがわかったのか、なんでここにいるのかなど疑問は絶えないルナは一言だけもらすことしかできなかった。

「・・・ど、どうして・・・?」

「その『どうして』っていうのは、『どうしてここにいるのか』ということでいいのか?・・・それは内緒ってことでよろしく」

ルナの言葉に反応しておちゃらけた様に返すソレイユ。しかし、依然としてPoHの腕を握りっぱなしである。ソレイユがルナの問いに答え終わると、今度はPoHが苦虫を噛み潰したかのような表情で口を開いた。

「・・・剣・・・聖・・・っ!!」

「よう、PoH。久しぶりだな」

そういって、握っていた腕を自分の方に思いっきり引っ張る。いきなりのことだったが、何とか体勢を崩されずにこらえたが、次の瞬間には思いっきり蹴りとばされて放物線を描く様に宙を舞っていた。それを見ていたルナはなぜそんなことが起こったのかわからなかった。思いっきり蹴り飛ばしたからと言ってそんな簡単に人が放物線を描くほど宙を舞うだろうか。そんな疑問が尽きない。それが表情に出ていたのか、PoHを蹴り飛ばしたソレイユは足を戻しながらルナに向かって説明し始めた。

「なんであんなに吹っ飛んだのかわからないっていいたそうだな。簡単に言えば、ただ蹴り飛ばしただけじゃなくて、あの時には力学的な力が働いていたんだよ」

「・・・力学的な力?」

「ああ。いいか、おれが自分の方へPoHを引っ張った時に発生した力をAとしよう。しかし、あの時PoHはそうはさせまいと、このAに対して逆の力を加えることで体勢を崩されることを防ぎ、その場にとどまった。その時発生した力をBとする。その点はさすがというしかないが、ここに落とし穴があった。Aに流されずに体勢を保つということは、必然的にBはAと同じ力の大きさ、向きであるということ。所謂、力が釣り合っている状態であるということだ。ここまではわかったか?」

「う、うん・・・」

「なら、この力が釣り合っているところに更なる力を加えたらどうなる?簡単だ。力の均衡は崩れる。だが、問題はそこではない。AとBが釣り合っている状態のときにおれはPoHを蹴り飛ばした。その時の力をB´とする。B´が加えられたことにより、力の均衡が崩れたからPoHの踏ん張りが利かずに吹き飛んでしまったという訳だ」

「で、でも、だからって、あんなに・・・」

「そう、普通ならあんなに飛ぶことはない。ならばなぜあれほどまで吹っ飛んだのか。それはB´がBと同じ力の向きをしていたことに原因がある。簡単に言えば相乗効果だ。それにより、BとB´が合わさり、Aとの均衡をたやすく破りあそこまで吹き飛んだということだ。OK?」

ソレイユの説明に唯頷くことしかルナにはできなかった。言ってる本人は特にたいしたことをしていないというふうな感じだが、他人からしてみればそれをあの一瞬でそれをできてしまう力量に舌を巻くしかない。説明を終えたソレイユはPoHが吹き飛んでいった方向に悠然と歩いていく。ある程度距離が詰まると倒れていたPoHが立ち上がり、忌々しげにソレイユのことを睨みつけていた。そこでようやくソレイユが現れたことを討伐隊と≪ラフィン・コフィン≫認識した。今まで争っていた手を誰もが止め、双方とも黙ってソレイユのいる方向を向いた。注目を浴びるソレイユは溜息を吐きながら何度か首を横に振っている。しかし、その挙動とは裏腹にソレイユが醸し出す雰囲気にここにいる全員があてられていた。

「≪ラフィン・コフィン≫のメンバーに言っとく。警告は一度きり、だ。死にたい奴だけ武器を持て、死にたくねぇんなら武器を捨てて投降しろ」

いきなりの宣告にわけがわからない≪ラフィン・コフィン≫のメンバーたち。それは討伐隊も一緒だった。そんなことを言って≪ラフィン・コフィン≫のメンバーが投降すれば、苦労はないのである。現にソレイユの言葉を一番近くで聞いていた≪ラフィン・コフィン≫のメンバーの一人は狂った笑みを浮かべ、ソレイユの言葉を嘲笑うかのように武器を振りかざしてソレイユに突進していく。

「何言ってんだヴァーカっ!!殺せるもんなら殺してみろってんだぁ!!ああ!!?」

「・・・・・ハァ」

≪ラフィン・コフィン≫のメンバーの言葉を聞いたソレイユは一度だけ溜息をつくと何も感じさせない瞳でそのメンバーのことを見ていた。

「・・・警告は一度きり、といったはずなんだがな・・・」

突進してきたメンバーの攻撃を避けると、ソレイユはそのプレイヤーの首をめがけて抜刀した。それを防ぐことも避けることもできずに食らってしまったプレイヤーは、赤かったHPをゼロにしてこのゲームから永久に退場した。それを見つめるソレイユの瞳は悲しみも、怒りも、喜びも、後悔の念すら感じさせないほど無感情だった。ポリゴン片が完全になくなるとソレイユは一瞬だけ目を瞑り、PoHに向きなおると有無を言わせぬ口調で言った。

「誰も武器を捨てないということは、全員死を希望することと受け取ってもいいんだな・・・。」



現在の時刻はお昼を少し過ぎた頃であった。ルナやアスナ、キリトといった討伐隊に参加したメンバーは≪ラフィン・コフィン≫討伐作戦が終了後、各々帰路についた。休息を得てからいろいろ話し合うことにしていた。話し合う内容はソレイユの処罰に関することであった。

あれからソレイユが立ち回ったことにより≪ラフィン・コフィン≫を討伐することができたのだが、問題が発生した。それがソレイユの犯したことである。≪ラフィン・コフィン≫を討伐する際、ソレイユがメンバーを殺した数は十五名にも及んでいた。ソレイユは警告に従ったものは殺さずにいたが、それでもこの人数は多すぎた。そのことに関して厳しい意見が出たが、それは日を改めて、ということになった。
そして、≪ラフィン・コフィン≫討伐作戦が行われた次の日に再び一堂に集まりソレイユに対しての処罰を意見し合っていたが、処罰を与えるという声が上がっても、ルナの「誰かが背負わなければいけないことを彼一人に背負わせておいて、処罰まで降すのは間違っている」という言葉が響き渡ると、誰しもが言葉を失った。もちろん反対する者もいたが、ルナだけではなく、アスナやキリトといったソレイユを深く知る者たちがソレイユの弁護に回ったため、結局のところ、ソレイユに処罰は与えられなかった。

この時ソレイユの背負ったものの大きさは誰もわからなかった。人の命とはあまりにも脆く重いものなのだ。一緒に背負うなどだれもできないその重みを背負わせてしまった、という罪悪感がソレイユを深く知る者たちに与えてしまった。
なぜそうしたのか、それを理解できるプレイヤーがはたして何人いるのだろうか。そして、彼が≪ラフィン・コフィン≫討伐後にぼやいた言葉の意味を知るものは果たしているのだろうか。

「剣を握るのなら、覚悟くらい持てって話だ。それができないんだったら、剣なんか持つんじゃねぇよ」

咎を受けた太陽はどのような景色を見ているのか。それは本人しか知り得ない。
 
 

 
後書き
今回は十三話でルナが言っていた「ラフコフのとき」に関することでした。
当事者のソレイユさん。いまどのようなお気持ちですか?

ソレイユ「特に何も」

・・・・・・・・・
さっけないぞソレイユ!何かコメントしないとつまらないだろ!!

ソレイユ「・・・・・・・」

あっ、ちょっ、どこに行くんだ、ねぇ・・・。
・・・・ソレイユが帰っちゃったんで、今日はこの辺で失礼します
感想をお待ちしております 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧