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ホワイトハウス

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2部分:第二章


第二章

「だとしたら困ったな」
「だよな。折角幽霊がいるんならな」
「しかもそれが大統領の幽霊ならな」
「絶対に見たいしな」
「だからこうして探してるんだからな」
 こう話してだ。彼等は本来の見学の目的から逸脱している見学を続けていた。そうしてその中でだ。白人の学生がだ。こう仲間達に言ってきた。
「建物の中だけじゃなくてな」
「外か?」
「外もか」
「ああ。ホワイトハウスっていっても庭もだろ」
 だからだというのである。
「庭も見てみないか?」
「そうだよな。言われてみればな」
「庭だってあるしな」
「幽霊も建物にだけ出る訳じゃないしな」
「庭とかにも普通に出るよな」
「だったらな」
 学友達も彼の言葉に頷いてだ。そうしてだった。
 彼等は実際に今度はホワイトハウスの庭に出てみた。そこは白い建物とはコントラストなまでに見事な緑だ。しかも草はよく刈られている。
 その庭の中を見回しはじめてだ。彼等は話す。
「いるか?」
「いや、いないぜ」
「やたらと背が大きくて黒い顎鬚と頬髯がつながった人な」
「しかも痩せていて手が大きい」
「目立つ人だよな」
 リンカーンは長身だった。しかもレスラーをしていたこともある。体格もよかった。
「いないよな。そういう人」
「太ってる人は多いけれどな」
 アメリカの肥満は問題になり続けている。
「けどそんな人いないよな」
「大体髭生やしてる人もいないぜ」
「一人もな」 
 リンカーンのトレードマークのそれすらも見られなかった。それでだ。
 アジア系の顔の学生がだ。遂にこう言ったのだった。
「やっぱりいないんじゃないのか?」
「大統領の幽霊はか」
「いないのか?やっぱり」
「そうなのか」
 誰もがそう考えたしかしだった。
 ここでだ。彼等に対してこう声がかかったのである。
「そこの若者達」
「んっ、俺達か?」
「俺達なのかな」
「そう。君達だ」
 まさに彼等だというのだ。
「君達は誰を探してるのかね」
「誰って言われてもですね」
「大統領ですけれど」
「ふむ。どの大統領か」
 声はまた彼等に尋ねてきた。
「一体誰なのかな、それは」
「ああ、リンカーン大統領です」
「あの人ですけれど」
「ふむ、彼か」
 それを聞いてだ。納得した声の主だった。
「彼なら今はいないぞ」
「えっ、けれど大統領ですよね」
「でしたらやっぱり」
「大統領はホワイトハウスにいるとは限らないだろう」
 声の主はこう言ってきた。
「そうではないのか?」
「言われてみればそうだよな」
「確かにな」
 彼等も声の主のその言葉に頷く。言われてみrばその通りだった。
「じゃあ今はここにいないんだな」
「そうなんだな」
「彼は今ゲティスバーグに行っている」
 そこだというのだ。彼が演説したあの場所だ。
「だからここにはいない」
「そうか。じゃあ探しても仕方ないな」
「そうだよな」
 彼等も納得した。しかしだ。
 
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