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美しき異形達

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第五十四話 山師の館その七

「先程の怪人達だけで全ての様ですね」
「お庭にいる怪人は」
「それでは」
「ええ、安心してね」
「門を開いて」
「中に入りましょう」
 こう話してだ、そしてだった。
 少女達は伯爵と共に前に進み扉のところまで来た、そしてその扉をだった。
 開いた、樫の扉は押すと静かに開いた。そうして中に入るとだった。
 屋敷の中はまずは大広間、舞踏の間があった。その舞踏の間を見てだった、薊はその目を鋭くさせて姉妹達に言った。
「ここで戦ったら面白いよな」
「どういう意味で、かしら」
 菖蒲が薊のその言葉に彼女の横から尋ねた。言葉を言いながらもその目は舞踏の間の上、見事なシャングリラも見ていた。
 そうしつつだ、薊に対して言ったのだ。
「その言葉は」
「だから言ったままだよ」
「ダンスをする様に、なのね」
「戦いが出来るからな」
「そうね、けれどね」
「けれど?」
「それだけでは物足りないわね」
 舞踏の間で舞う様に戦う、それだけでjはというのだ。
「まだね」
「もう一つ必要なものがあるか」
「音楽よ」
 それは何か、菖蒲は薊に告げた。
「それがないとね」
「ここで戦っても仕方ないか」
「そうよ、だからね」
「ここで戦ってもか」
「まだ足りないわ」
 こう話すのだった。
「だからここで戦っても完全ではないわ」
「そうなんだな、じゃあいいか」
「ええ、そして」
「遂に中に入ったからな」
 屋敷のだ、薊もその中を見回していた。舞踏の間の中は様々な、曲がった貝殻を思わせる装飾物が置かれ内装もそうした感じだ。
 白を主体にして金色が目立つ、そして銀も。
 シャングリラも上で輝いている、その中は小さな宮殿を思わせるものだった。
 その中を見回しつつだ、薊は間の隅の美女が薄い服を着た大理石の像も見て言った。
「ここには怪人はいないか?」
「気配は感じないわね」
 向日葵が薊に答えた。
「怪人のそれは」
「そうだよな」
「ええ、だからね」
 それでというのだ。
「ここでは戦いがないかも、けれど」
「それでもな」
「連中は急に出て来るし、幻術もね」
「それもあるよな」
「今私達が見ているものは」
「ひょっとしたらな」
「幻かもね」
 この危惧を言うのだった。
「これも」
「いや、今見えているものは」
 危惧する向日葵にだ、伯爵が答えた。
「大丈夫だよ」
「現実ですか」
「そうだよ」
 こう少女達に話した。
「この場はね」
「そうか、けれどな」
「必ず使っては来るよ」
 その幻術はというのだ。
「君達に対してね」
「そうですか、しかし」
 菖蒲も周囲を見回しつつ伯爵に応えた。 
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