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GE2RB ザ・ファーマー

作者:御門
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歩み

「資材?」

極東支部のラウンジで最近恒例になりつつあるシエル先生による勉強会をエリナとムツミと共にし終えた後、ジュリウスから頼まれ事をされた。

「ああ、聖域で扱う発電機に使う資材が足りないらしくてな。俺たちは思っていた以上にオラクル細胞由来の資材、アラガミに依存して日々を過ごしていたみたいだ」

「アラガミの脅威に怯えながら、その生活に関する事はアラガミ頼り。随分と皮肉が利いてるわね。それで、オラクル細胞の資材じゃないって事は用探すのは採取系よね?」

「ああ。『高品質カーボン』と『マホガニー原木』だ」

「その二つね。取り分け珍しい訳でも無いし、幾つかの候補地をアラガミ狩りしながら回れば見つかるでしょう」

「忙しい中、すまないな」

「こっちは構わないわよ。それに、忙しいっていうならブラッドの業務をしながら農業を一手に引き受けてる貴方の方が忙しいでしょう。こっちももっと手伝えればいいのだけど」

「元々俺が言い出した事だ。それに、今は技術班が必要な設備を整えてくれるまでは資料を閲覧したり、昔農業をしていた人を探して話を伺ったりして必要な情報をまとめたりしてるだけだからな。それと隊長、資材採取が終わった後も少し時間をくれないか?」

「勿論いいけど、資材回収以外にも何かあるのかしら?情報をまとめる手伝いならシエルにも頼めると思うけど」

「いや、俺が犠牲にした黒蛛病患者たちに謝罪するのに同行して欲しいんだ。……俺だけだと、会って貰えないかもしれないからな」

「……分かったわ。じゃあちゃっちゃと資材を集めましょうか」

「あっ!先輩!私も手伝いますよ!」

「私も、微力ながら力になれると思います」

「じゃあみんなの分のお弁当を用意するね」

ホワイトと同じテーブルに居たエリザとシエルも協力を申し出て、ゴッドイーターでないムツミはアナグラのお母さんとしての特技を生かしてお弁当を作ってくれる事になった。

「皆、ありがとう」

「じゃあ用意を済ませましょうか。準備が済んだらまたここに集合、後にムツミちゃんのお弁当を持って出撃よ」






ホワイト達が集まってたテーブルとバーを挟んで反対側にあるビリヤード台、そこで三人の男衆が遠目からその風景を見ていた。

「それにしてもあれだな。ブラッドの隊長さんはホント、顔や声には出さない割に雰囲気で色々と丸分かりだな」

「だよねぇ。俺、時々隊長のツインテールが犬の尻尾みたくパタパタ振ってる様に見えたりするもん。でも、仕事とかの時は別にそうでもなのになんでなんでもない時はああなるんだろ?」

「……さあな。何にしろ、機嫌がいいのは良い事だろうよ」

「その割にはギルのご機嫌が悪いみたいだけどな」

「ハルさん!」

「怒るなって。でも実際、そんな眉間に皺を寄せとくよりも自分から行った方が健康にはいいぞ?ストレスは美容だけじゃなく頭皮の敵でもあるからな。良い男はそこら辺もキッチリ管理しとくのがコツだぞ」

「確かにギルはいつもしかめっ面だもんなぁ。ハルさんの言う通りにもっと気を抜いた方がいいって」

「誰のせいだ。……ったく、むしろこの会話の方が頭皮に来そうですよ」

「おっ!言うようになったじゃないのギル。その調子で隊長さんにも言って来れたらいいのにな」

「ハルさん!!」







「何か、付き添いの私の方が緊張するわね……」

外部居住区の土剥き出しな道を歩きながらホワイトが呟く。

現在、シエルとエリナの協力もあって思っていたよりも早く素材を揃えられたホワイトとジュリウスは当初の目的通りに、当時黒蛛病患者でフライアに収容された人の下へ出向いて回っていた。

「だがやはり、ホワイトに付き添って貰って正解だった。彼等は意識を抑えられて何をされたかの認識すら無かったとはいえ、期待を裏切られた事による怒りや悲しみはまた別。実際に出向いて俺の浅慮がどれ程のものか実感させられた」

ジュリウスは顔には出さないもののその手は固く握りしめられ、彼の心情を表している。

「だからこそ、俺が彼らに出来る事をして返していかなければならない。聖域での農業復興はその第一歩だ」

「工場に頼らない、自然栽培での食糧の生産。まだ私は書類上でしか関わって無いから実感が薄いけど、榊博士の言う通り、聖域が拡大していく限りは間違いなく必要となる技術ではあるわよね」

「それと一つ考えている事があるんだ」

「考え?」

「聖域である程度の動力が確保できたとしても、聖域の環境保護からそれは農業の全てをカバー出来る程でじゃない。その大部分は人が自分の手で行っていかないといけない」

「ええ、だからこそ農業技術を中心に据えた計画ね」

「それには多くの人の手が必要だ。俺はその手を外部居住区の皆に求めたい」

「! ジュリウス、それは……」

「政治的問題も多く簡単じゃあないだろう。だが、農業技術を復興させて維持していくと考えれば、複数人が常にそれを行い伝えていくのが一番だ。人数の制限等は厳しいだろうが、小規模でも聖域に生活圏を置いて自給自足を行って貰えば技術の向上・伝承はより確実になる。それにフェンリルだけじゃなく、全ての人と協力し分け合ってこその希望だと思うんだ」

ジュリウスの声には強い意志が込められ、その眼は遠くの未来を見る眼差しだった。

この計画に参加してから常に自分に何が出来るか、どうすれば上手くいくかを常日頃から考え続けていたのだろう。

ホワイトが知るジュリウスはそういう、根っから真っ直ぐに真面目で真摯な男だった。

「……はぁ、問題が解決する前から次から次へと増えてくわね。でも、いいわ。やるからには完璧にやり遂げてやろうじゃない」

「ありがとう。助かる」

「別に私一人でする訳じゃない、というか仕事を振り分けてその手伝いをするぐらいよ。一先ずはシエルやソーマさんに相談したり、リヴィを通してフェルドマン局長に本部の方でも根回しをお願いしたりってとこかしらね」

「フッ、一年と少しで本当に頼もしくなったな、ホワイト。これからもよろしく頼む」

「ええ、任せなさい」
 
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