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エターナルトラベラー

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第三十七話

アースラに戻ってきた俺たち。

腕の中に抱えているフェイトを俺達が借りている部屋のベッドへと運びこむ。

その時俺の念で外傷を消す。

そう言えば語らなかったが、俺の念能力は触ったものの時間を操る「星の懐中時計(クロックマスター)

俺の念能力は治す能力ではない。

治すのではなく体表面の時間を操ってフェイトの肉体を少し戻した。

その結果、傷が塞がったのだ。

フェイトをアルフに頼み、ブリッジへ。

拘束はされていないが一応重要参考人として招待された母さんがクロノと話している。

「つまり貴方はプレシア・テスタロッサとの取引でジュエルシードを集めていたと」

「そうよ」

「アレがどういうものか分っていてですか?」

「ええ」

「貴方は!」

「クロノ」

リンディさんがクロノと母さんの会話に割りこんで止める。

「かあさっ…艦長!」

「紫さん。貴方は子供たちから私たちの組織の事は聞いていなかったのですか?」

「聞いていたわ」

「だったら」

「でも、貴方たちが勝手に語っているだけかもしれないじゃない。私は今まで生きてきて、そんな組織を聞いた事が無い。信じろという方が難しい。それに先に接触したのがプレシアで、どうしても欲しいものが私にもあった」

「その欲しかったものをお聞きしても?」

母さんは少し考えてから言った。

「フェイト・テスタロッサの親権」

「な!?貴方は子供を売買するのか!?」

「貴方たちなんて子供を戦場に出しているじゃない!」

母さんの怒声にクロノが黙る。

「彼女の現状も理解できずに憤るんじゃないわよ!フェイトちゃんにはその体に家庭内暴力の痕があったと言っても貴方は親元から引き離すなと言うのか!?」

「ぐっ…」

「彼女の母親にも会ったわ。その彼女があの子をなんて言ったと思う」

「なんて言ったのかしら?」

一児の母であるリンディさんが問い返す。

「お人形。それ以上でも以下でも無いそうよ」

その言葉を聞いてブリッジが静まり返った。

しばらくの沈黙。

それを打ち破ったのは鍵盤を弾いていたエイミィ。

「艦長。プレシア・テスタロッサのデータ、出ました」

ピコンとスクリーンに現れるプレシアのデータ。

「あら、これは」

表示されるデータ。

「そんな…」

母さんやなのはの手前にはソルが翻訳したデータを展開しておいた。

其処に映し出されたのは膨大だったが、なのはの目に付いたのは一点。

家族関係。

娘 アリシア・テスタロッサ 死亡

以上

フェイトの事は何一つ記されていない。

「プロジェクト・フェイト」

それはクローンを使った記憶転写型人造魔導師計画の総称。

「もしかしてフェイトちゃんって…」

「アリシアって子のクローン…」

二人とも絶句。

そんな事よりも俺は特筆すべき事があると思う。

「クロノ、この条件付SS魔導師ってのは…」

「これは…まずい!」

備考を見ると媒体からのエネルギー供給とそれを操る技術、さらに天文学的な数値の魔力まで操れたとされている。

なるほど。

自身の魔力資質ではなくベルカ式カートリッジシステムみたいに外的要因が大きく関わるタイプか。

ジュエルシードを奪われた分の9個。

それ以前のものは渡していない。

ソラとなのはのダブルブレイカー×2に不利を悟ったか、機を焦ったか。

それはさて置き。そんな数のジュエルシードからの魔力を使われたら…

さて、現在結界を張っていたはずの局員達は、プレシアテスタロッサの根城、時の庭園へと歩を進めていた。

俺たち全員の動きを阻害するための渾身一撃は、アースラへと攻撃する余裕などなく、その攻撃座標を割り出していたアースラは結界の維持をしていた局員達を回収後直ぐに時の庭園へと派遣した。

庭園内へと進入していた局員達にもリアルタイムで首謀者のデータを送信、逮捕に向かったのだが…

局員達に囲まれても玉座に座り頬杖をついて余裕の表情を崩さないプレシア。

その表情がさらに奥に入った局員が生態ポットを発見した所で豹変する。

「私のアリシアに…近寄らないで!」

鬼気迫る表情で管理局員に迫るプレシア。

その猛攻を凌ぎきれずに倒される局員。

「転送、急いで!」

リンディさんに急かされて、雷撃魔法で倒れ伏した局員を急いで回収するエイミィ。

「流石に条件付とは言えSSランク魔導師」

圧倒的だった。

「ちょ!大変。見てください。屋敷内に魔力反応多数」

現れる魔道アーマー。

その内包魔力はどれもAランク以上。

その数は100を超える。

「プレシア・テスタロッサ、一体何をするつもり?」

サーチャー越しにリンディさんが問う。

「私たちは旅立つの、永遠の都、アルハザードへ」

精神が錯乱しているためか、それとも科学者の職業病か。

問われた質問に答えるプレシア。

亡きアリシアを蘇らせる為に次元に穴を開けての片道切符。

切符を買う手間の料金がジュエルシード。

手元にあるジュエルシードを起動させて本格的に次元震が発生する。

なんか凄くブリッジが慌しい。

まあ、下手をすれば一つの世界が終わるほどの災害が起きるかもしれないのだからそれは慌てもするか。

そんな中、お前は何で今まで現場に行かなかったのかって?

俺にしろ、ソラにしろ、なのはにしろ、消費した体力と魔力の回復を最優先にしたためだ。

三人とも大量に魔力を消費したために直ぐには動けそうも無かった。

特にソラはAAほどの魔導師質でブレイカー二発分の魔力運用。

体への負担を考えると回復の時間は必要だった。

「どうするんだクロノ…クロノ?」

呼びかけたはずのクロノの姿は既に何処にもない。

「あれ?何処に?」

「クロノならさっき走ってトランスポーターまで走って行ったよ」

「一人で?」

「一人で」

冷静に周りを見ていたソラが教えてくれた。

「クロノ君一人で大丈夫かな」

なのはが心配そうに呟いた。

「大丈夫な訳ないわ。貴方たちとの契約は黒いイタチもどきの討伐までのジュエルシード確保だったけれど、行って貰えないかしら」

リンディさんから時の庭園への侵攻の要請。

このままだと世界が滅びかねませんとエイミィさんも叫ぶ。

「魔力も大方回復したし、大丈夫ですよ。なのは、ソラ。久遠」

「うん」
「はい」
「くぅん」

「母さんはフェイトを頼む」

「あーちゃん、なのちゃん、ソラちゃん、久遠ちゃん。…頑張ってきなさい」

「「「「はい」」」」

母さんは逡巡したが、激励して俺たちを見送った。



やって参りました時の庭園。

ばっちり警備兵を配置された城の中を進むのは骨が折れそうだ。

「クロノ君」

「君達か」

なのはが声を掛けると一瞬振り向いて確認するとS2Uを刺し貫いた魔道アーマーから引き抜いた。

流石にリンディさんからアースラの切り札扱いされているだけはある。

入り口までの魔道アーマーを全て駆逐し終えていたようだ。

「すまない。本当はこんな事を頼むのは心苦しいのだが、人手が足りない。力を貸してくれるか?」

「リンディさんにも頼まれたし元からそのつもりだ。余波で地球が無くなったりしたら困るからな」

「地球だけの問題では無いのだが…すまない、助かる」

ぶち破った扉から城内へと侵入する。

床下は所々破れ、虚数空間に繋がっている。

「この穴には気をつけろ!虚数空間、魔法が発動できない空間だ。落ちたら最後重力の底までまっ逆さまだ」

無限に湧き続けるのではなかろうかとも思える魔道アーマーをソルで切り裂きながら進む。

「……それにしてもお前達の戦闘技術、年齢に比べると成熟していないか?」

俺はともかく8歳児であるなのはとソラの戦闘技術は明らかにおかしい。

「ノーコメント。しいて言えば人の何倍も訓練したから」

影分身を使って。

「人の何倍も…か」

さて、このエリアも掃討したし次に行かないと。

「待ってくれ!」

その声に振り返ると、底には人型で走り寄ってくるアルフの姿が。

「あたしにも手伝わせてくれ」

「アルフさん」

なのはが歓迎の声を上げる。

「人手は多いに越した事は無い。よろしく、アルフ」

「おう」

しばらく走ると分かれ道に差し掛かる。

「ここから二手に分かれる。アオと、使い魔二人には駆動炉の封印を頼みたい」

おや、俺たちが駆動炉へと回されたか。

反対してロスする時間は無いから了承して頷く。

「僕たちはプレシア・テスタロッサの捕縛へ向かう」

とは言え、俺たちに警察権は無いから、逮捕するのはクロノの仕事だ。

「じゃあ、また後で」

「アオも気をつけて」

ソラがそう言ってクロノを追う。

「お兄ちゃんもくーちゃんも怪我しないでよ」

「誰に 言っている」

なのはもソラに続いた。

「さて、俺たちはこっちだ」

「くう」

「おう!」

雑魚を切り伏せながら階段を駆け上がり、コロッセオのような円筒状の建物の中を飛行魔法を駆使して上っていく。

と言うか、この時の庭園。一体誰が作ったの?こんなのが作れる時間と資産がプレシアにあったとは思えん。

どこかに元からあった物だろうか。

次元空間内に浮かぶ城とか、ある意味ロストロギアなのではなかろうか、この城。

ドドドーーーン

壁を突き破り現れるのは今までよりも一回り以上大きい魔道アーマー。

「でかっ!」

「…おおきい」

なんて言ってる暇は無かった。

肩についている大型ランチャーや腕そのものが砲身なのか、幾つもある刃先から四方八方へと散らばる光線。

バリアで受け止めるとそこに集中砲火されてバリアの上から落とされそうだ。

(らい)!」

人型の久遠が指を振ると頭上から雷撃が落ちてショルダーアーマーを破壊した。

しかしその砲撃を止めるまでには及ばず。

と、その時。頭上から巨大な魔力反応。

『サンダーレイジ』

「サンダーーーーーレーーーーイジ」

足元の魔法陣へと突きつけたバルディッシュから特大の雷撃魔法が魔道アーマーを襲う。


両肩の砲身からバリアを展開して威力を殺いでいる魔道アーマー。

「今がチャンスか、ソル!」

『ロードカートリッジ、フォトンブレイド』

魔力刃を纏わせ刃渡りを何倍にも伸ばしたソルと振り上げながら魔道アーマーに飛び寄る。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ!」

気合一閃。

拮抗していたバリアごと頂点から真っ二つに切り裂いた。

ドーーーーンっ

轟く爆発音。

「フェイト!」

フェイトの使い魔であるアルフは一目散に主に駆け寄る。

「アルフ」

豊満な胸に抱きしめられて今にも窒息しそうだ。

「フェイト!フェイト!」

「アルフ…苦しい…」

「あ…ゴメンよフェイト」

敵を倒し終えた俺もフェイトへと飛びよる。

「フェイト、何でこんな所に?ここが何処か知っているのか?」

俺のその問いにフェイトは俺を真っ直ぐ見つめて答える。

「ジュエルシードを奪っていった人の本拠地で、それの所為で地球が吹っ飛ぶかもしれない、大変な事になっているんだよね」

「そうだけど…そうじゃなくてだな…ここは…」

言いよどむ俺。

「私に関係があるんだね?」

でも、と一拍置いてからフェイトは力強く言った。

「今の私は御神フェイト。だからここがどんな場所かなんて関係ない。私は私の家族を、家族になってくれる人を守るの」

その言葉は本当に力強く、今のフェイトの真実。

「そうか…そうだね、一緒に行こう。もうこの先が駆動炉だ」

「うん!」 
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