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遊撃隊

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1部分:第一章


第一章

                       遊撃隊
 フランスの宮中ではだ。近頃おかしなことが続いていた。
 有力な貴族達が次々とだ。醜聞や悪事を暴露されて失脚したり急死したりしていた。そうしたことが次から次に起こっていたのである。
 その中でだ。残った貴族達はこう囁き合うのだった。
「おかしいですな」
「全くです。こうも有力な方々が失脚されるとは」
「一体何があるのか」
「何が起こっているのか」
 誰もが首を傾げさせて話す。しかしだ。
 その中でだ。彼等はあることに気付いた。そのことは。
「どの方も王后陛下とは対立する方でしたな」
「確かに。言われてみれば」
「政策で対立すると必ず失脚されていますな」
「国王陛下の愛人の方も」
「ディアヌ様以外の」
 ディアヌ=ド=ポワティエのことだ。王より二十歳年上の老け込まない絶世の美女だ。王は彼女と殆んど一緒にいて寵愛しているのだ。
 その彼女以外のだ。愛人達もだというのだ。
「次々に失脚していますな」
「急死された方も多いです」
「これは一体何故か」
「やはり王妃様が何かしておられるのでは?」
「やはり」
 こう囁き合いだ。王妃であるカトリーヌ=ド=メディチに注目がいく。イタリアの富豪メディチ家の生まれでありフランス王家に嫁いできたのだ。彼女はかなりの美食家でもあり多くの料理や食材、マナーをフランスに持ち込んだ。その彼女の周りでだ。不穏なことが頻発していたのだ。
 しかしだ。そのことについてだ。王妃はこう言うだけだった。
「何もありません」
 こう言うだけだった。本当にだ。しかしだ。
 王妃の政敵は次々に去っていっていた。中にはこの世から去った者も多い。その死がこれまた実にだ。異様なものばかりだった。
「あの方は朝起きてですか」
「ベッドの中で血を吐いて死んでおられました」
「あの方は胸をナイフで刺され」
「中には梅毒で死んだ方もいましたな」
「あれは酷いものでした」
 梅毒についてはだ。既によく知られていた。身体が腐り爛れてだ。無惨に死んでいく。その恐ろしい病はイタリアから来た。そう、イタリアからだ。
 フランスのナポリ侵攻からだ。フランス軍の兵達がこの病にかかり瞬く間に広まったのだ。その為フランスではこの病はイタリアから伝わったと思われていた。
 そのことからもだ。誰もがイタリアから来た王妃と関連付けて話し合うのだった。
「まさかと思いますが」
「いや、有り得ますぞ」
「王妃様が何かしておられるのでは?」
「そうではないのですか?」
 こう話されていく。とにかく王妃は疑われていた。
 しかし疑われていても証拠はなかった。何一つとしてだ。しかしだ。
 宮中では女官が増えていた。その女官達は誰もがだ。
 王妃がイタリアから連れて来た女達だ。その女達はどれも美貌を誇りだ。
 貴族達は鼻の下を伸ばし彼等に言い寄る。そうしてだった。
 女官達もそれを受け入れ次々と褥を共にしていく。宮中は乱倫を極める様になっていた。
 だが王妃はこのことについて何も言わない。王は相変わらずディアヌ=ド=ポワティエに夢中である。王妃はこのことについても何も言わない。
 しかしだ。その乱倫の中にある宮中でだ。相変わらず続いているのだった。
 その中でだ。一人、また一人とだ。王妃の政敵が消えていっていた。
「何と。モンフォール伯爵もですか」
「はい、何故か御自身の屋敷のバルコニーから落ちられて」
「自殺でしょうか」
「いえ、あの方も確か」
 そのだ。モンフォール伯爵についてもだった。
「王妃様とスペインのことで意見が違いました」
「そうでしたね。融和か対立かで」
「そのことで相違がありましたし」
「あの方もまた」
 このことが話される。その伯爵も王妃の政敵だったのだ。
 しかもだ。彼についてこうも話されていく。
「あの方は大層女性が好きでしたが」
「あの女官のブロンドの娘といい仲でした」
「バルコニーから落ちられた夜もあの女官と一緒でしたな」
「ではやはり」
「あの方も」
 ここでだ。貴族達はそれぞれの首に刃を感じた。
 
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