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エターナルトラベラー

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第三十四話

アースラに厄介になってから数日、イタチもどきとはエンカウントせずに発動したジュエルシードの封印作業に当っている。

「そう、バインドをうまく使えば動きの早い相手も止められるし、大型魔法も当てられる!」

俺は目の前に居た大きな鳥のような姿をしたジュエルシードの暴走体を前にして言い放った。

「お兄ちゃん、何言ってるの?」

「いや…うん、言ってみたかっただけなの」

俺が馬鹿をやっている内にズバっとレイジングハートで真っ二つにされていました。

素早いと言っても神速の使えるなのはが反応できない筈はなく、あっけないものだ…

と言うか半端ないっす、なのはさん…

回収も終わり、俺たちはアースラに戻った。

ブリッジに報告に行くとなにやら騒がしい。

「何かあったのか?」

少々不機嫌なオーラを出しているクロノ、その対面に居るソラ。

「ああ、君たちか」

クロノが俺達が帰ってきたのを確認して声をあげた。

「君達がジュエルシードの回収へと向かってから新たにジュエルシードの反応を感知したんだ。この通り僕はまだ本調子じゃなく、戦闘も難しいからね、ソラに行ってもらったんだが…」

するとその険しい顔を少しだけさらに険しくして告げる。

「現場に到着すると既に他の魔導師が回収していた」

「他の?」

誰よ?

こいつ等だと、VTRを俺たちの目の前へと映し出す。

「あっ」

戸惑いの声を上げたのはなのは。

すぐさまソラからの念話が飛んでくる。

【なのは、それ以上は驚かないで、知らない振りをしなさい】

【え?あ、うん】

映し出されたモニタに映っていたのはフェイトとアルフだった。

何で?今は中止だって言ってなかったっけ?

現場に到着したソラはフェイトにいかにも初対面ですと言った態度でその手にしたジュエルシードを渡すように要求する。

しかし、フェイト達は言葉を交わすよりも早く逃亡した。

「あの時君が攻撃魔法を行使をしていれば彼女らの逃亡を阻止できたんだぞ」

追いかけるような素振りはしたものの、結局ソラは一度も魔法を行使しなかった。

「彼女達は私に危害を加える事は無かった。確かにジュエルシードは持っていかれたけれど、貴方達は理由も聞かずに此方の言う事を聞かないからって相手に危害を与える事を良しとする組織なの?」

「なっ!?」

ソラの言葉による反撃に絶句するクロノ。

「其処までにしておきなさいクロノ執務官」

「か、艦長」

「ソラさんも、ごめんなさいね。でも出来れば逃亡の阻止はもう少し積極的にやってもらいたかったわ」

「…次からは善処する」

「はい。と言うわけでこの話はここまでね」

その後俺は先ほど回収したジュエルシードを渡し、任務完了を報告。

その後与えら得た部屋へとソラとなのはを連れて戻る。

勿論先ほどのフェイトの事について聞くためだ。


ウィンと音がしてスライドした扉を潜り俺たちに与えられた部屋に入る。

壁に備え付けられているソファに腰掛けようとは思ったけれど、それはなのはとソラに譲り、俺はベッドに腰掛ける。

「それで?あの魔導師についてだけど」
【『念文字』で】

言葉の裏に念話を隠し、さらに自身のオーラの形を制御して筆談の要領で会話する。

念話はその性質上盗聴されてしまう可能性がある。口頭などは言わずもがな。

殆ど無いと信じたいけれど監視されているかも知れないし。

「よく分らないわ、直ぐに逃げられたもの」
(ねんわではなしたけれど、どうやらフェイトのどくたんのようだった)

「そっか、彼女たちの目的が分ればいいんだけどね」
(なるほどね、きおくがもどったようなそぶりは?)

「今度会ったら聞いてみるしかないかな」
(それはなかったわよ、でもひっしなかんじがつたわってきた)

(だいじょうぶかなフェイトちゃん)

なのはが心配だと言う。

母さんは知っているのだろうか…




日が傾き始め、街のあちこちから夕飯の支度をしているのだろうか、おいしそうな匂いが私の鼻腔をくすぐする。

それは今私の目の前にある家からも。

いいにおい。今日の夕飯は何だろう。

「フェイト、入らないのかい?」

隣に居たアルフが先を急がせる。

「あ、うん…」

私は言葉を濁して少しの時間を稼ぐ。

私は今日、ゆかりお母さんに黙ったままジュエルシードの回収するためにそっと家を抜け出した。

回収事態はアルフのサポートもあって簡単に終わったんだけど、その直ぐ後にソラが駆けつけてきたことは少し考えれば予想が出来た事だったのかもしれない。

ソラが出てきたと言う事は管理局に見つかったと言う事だ。

どうしよう。見つからないと思っていたのに初っ端からダメダメだ。

気づかれないように私は出て行ったときと同じ様にそっと玄関のドアノブに手をかけゆっくりと引いた。

ゆっくりと玄関の扉を開き音を立てないように中に入る。

リビングに入るとリビングと繋がっているキッチンで夕食を作っているゆかりお母さんの姿が見える。

「お帰りなさいフェイトちゃん、アルフ」

「あっ…あの、ただい…ま」

私が居なかった事に気が付いていたの?

しかし夕食を作るゆかりお母さんの雰囲気は穏やかで、その手が作り出す夕ご飯の匂いは食欲を掻き立てるには十分だった。

「まってて、もう直ぐ出来上がるから、夕ご飯にしましょう」

丁度最後の仕上げと言った所だったのだろう。

きれいに盛り付けられた夕飯の数々をテーブルに飾り付けられていく。

「あの、手伝います!」

「ふふ、ありがとう」

私はすぐにゆかりお母さんを手伝うためにキッチンへと向かった。


椅子を引き、食卓に着く。

「いただきます」

そう言って私たちは夕食を開始する。

いつもより人数が少なく、ちょっぴり寂しさが感じられる夕食。

しかし、その美味しさだけは変わらない。

「久遠ちゃん、ちゃんとお揚げ以外も食べなさいね」

「くぅん」

ゆかりお母さんがお揚げばかり食べている久遠を注意する。

お揚げは美味しいかもしれないけれどそれだけじゃ確かに健康には悪いからね。

久遠を注意してからゆかりお母さんは、さて、と居住まいを正して私の方へ向きなおる。

「フェイトちゃん、今日ジュエルシードを集めに出てたわね」

「あの!それはっ…」

言葉に詰まってしまう。

そんなに時間をかけた訳じゃないし、ゆかりお母さんが見ていないうちにそっと出かけたはずなのに。

どうして分ったのだろうか。

いや、今はそんな事よりも。

「あ、あたしが無理やりフェイトを連れ出したんだよ!どうしてもジュエルシードがほしかったのさ」

アルフは悪くない、なのに私を庇おうとしてくれている。

ダメだ、それだけはダメ。

「アルフ…ううん。私が言った事なの。私がアルフに頼んで付いて来てもらったんだ。だから…」

「私は別に二人を責めている訳では無いわ」

「え?」

「でも私に黙って二人で危険な事をしてきた事は怒ってはいます!」

「ごめんなさい…」

「凄く心配したんだからね」

そう言ったゆかりお母さんは立ち上がって私のほうへと歩いてくると私を後ろから包み込んだ。

ゆかりお母さんのふわっとした匂いが鼻腔をくすぐる。

「ごめんなさい」

私は小さくもう一度謝った。

その後私はお叱りと言う名の抱擁を解かれると、これからはゆかりお母さんと久遠も一緒にジュエルシードを捜しに行く事になった。

決して二人だけで行ってはダメだと念を押された。

家族の心配するのは家族の特権だって。

家族。

私にはまだよく実感が持てない言葉だけど、本気で私のことを心配してくれている事が分って私はとても嬉しくて、嬉しいのにどうしてか涙が止まらなかった。



俺達がアースラに来てから10日、アレからイタチとのニアミスが続いている。

ジュエルシードの発動が感知されると現れるイタチの化け物、しかし先に俺達が到着すると、その気配を察してか直ぐにサーチの及ばないところまで転移する。

しかし、その移動速度はとてつもなく速く、俺たちよりも早く現場に到着された時はそのジュエルシードを奪われたまま逃走されてしまったほどだ。

フェイトの方もどうやら幾つか回収しているらしい。

此方が見つけたジュエルシードをかっさらされたとエイミィさんが愚痴っていた。

そんなこんなで残りのジュエルシードは6個。

海鳴の街や山岳部を調査したが見つからず、残りは海の中ではないかと言う結論が出た。

しかし、海中の物を探索する事は難しく、未だ管理局のサーチャーはジュエルシードを発見できていない。

探索は管理局員に任せてある俺はソラ達と一緒に食堂エリアでお茶をしている。

「それにしても残り6つ、見つからないね」
(というか、これはやばいのでは?ママがひつようなジュエルシードのかずは12。いまもっているのはすいてい7こだから)

「あとは海の中だろうってクロノが言っていたわ」
(のこりをぜんぶとろうとしたらいっきにへいこうきどうさせて、いっきにふういんかな?)

なのは、ソラの会話の裏に念文字で筆談。

「だが、まだ場所の特定は出来ていない、と」
(だろうね、しかしそれはさすがにフェイトのりきりょうをこえる)

「早く見つかるといいね」
(そんな!それってすごくきけんなんじゃ?)

「本当にね」
(きけんだよ、だけど、つぎからはおそらくかあさんとくおんもでばるんじゃない?)

「うん」
(なんで?)

聞き返すなのはにやはり念文字で答える。

(かあさんがフェイトたちだけにきけんなことをやらせるとおもう?)

問いかけた俺になのはもソラもそれだけは絶対に無いと確信したようだ。

ビーッビーッ

「警報?」

けたたましく鳴り響く警報、その音に急かされる様に俺たちはブリッジへと向かう。

ウィーン

スライドドアを潜り抜けブリッジへ入る。

前面の巨大なモニターに映し出されるのはフェイトとアルフ、そして暴走したジュエルシードの数が6個。

「あっ」

そしてやはりと言うか母さんと久遠の姿もある。

一目見て劣勢なのが見て取れる。

とは言え、原作とは違い母さんと久遠が居る分、一つずつ確実に封印されていく。

まあ、さっきから俺の魔力がゴリゴリ久遠に持っていかれていて結構辛かったりするのだが。

「私!急いで現場に行きます」

なのはが宣言してテレポーターへと向かう。

「すまない、頼めるか?」

クロノが言う。

およ?止めないの?

自滅するまで待つんじゃ?

「彼女達になぜ集めているのか、出来れば話がしたいと伝えてくれ」

「はい!」

すると転送されていくなのは。

「君達にも行ってもらいたいんだが…どうした?意外そうな顔をしているぞ?」

「あ、ああ。いや、この前までの言動から、相手の魔力が底をつくまで見ているのかと思っていた」

「そ、そんな訳無いだろう!?失礼な奴だな君は!」

そうは言っているが、その顔に朱がさしている。

どうやらこの前俺達が言った嫌味に思うところが有ったらしい。

管理局員としてはダメだが、人間としてはむしろ好印象を与える。

結構物分りがいい男だったらしい。

「何を笑っている!」

「いや、なんでもないよ。それじゃ俺も行ってくるよ。ソラ」

「うん」

俺はソラと連れ立って転送ポートへと駆けつける。

「それじゃあの子達の結界内へ、転送」

エイミィさんがその手でエンターキーを押すと、俺たちの視界は一瞬で切り替わり、海鳴の沖合い上空へと放り出された。 
 

 
後書き
よく二次小説ではクロノの事をKY扱いでオリ主がフルボッコと言う展開がデフォルトになっているような気がしますが、本来クロノ君は優しく誠実な人だと思うのです。
ちょっと職務に忠実すぎるのが珠に傷ですが、執務官だし、多少は仕方がないんじゃないかなぁ… 
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