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美しき異形達

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第五十三話 山師その三

「相当な強さだが、天使長になると」
「戦える、それだけの力がある」
「死神が一緒でもか」
「それでもな」
「そうか、そこまでの力か」
「あの伯爵もな、例えあの御仁が山師でもじゃ」
 ペテン師、詐欺師と言うべき存在でもというのだ。
「守らねばならぬのじゃ」
「守らないとか」
「錬金術師の組織から永久に破門される、だからな」
「俺とは戦わなかったか」
「そもそもどうして会ったのじゃ」
「調べている途中何度か怪人と闘い倒していたが」
 その状況についてもだ、彼は伯爵に話した。
「そこで伯爵の屋敷を見付けた」
「そしてその屋敷でか」
「あの伯爵と会った」
 そうだったというのだ。
「随分洒落た格好だった」
「洒落者じゃかのう、あの御仁も」
「紳士的であったが胡散臭そうな奴だと思った」
「それが詐欺師じゃ」
「そうだな、胡散臭さは隠せなかったか」
「君ならわかると思っていた」
 カリオストロ伯爵の詐欺師としての顔、それがだ。
「そしてわかったな」
「何となくだがな」
「それで君は伯爵と闘おうとしたのか」
「どうするかと聞いたが」 
 その伯爵自身にだ。
「しかしそれはないと返されてだ」
「逃げられたか」
「煙の様に消えた」
 まさに文字通り、という口調だった。彼の今のそれは。
「まさにな」
「屋敷もじゃな」
「後には何もなかった、あれは錬金術ではないな」
「それは魔術、いや幻術じゃな」
「そちらか」
「錬金術師はただ錬金術を極めただけではないのじゃ」
 大抵の錬金術師はというのだ。
「仙術や魔術、そうした術も学んでいてじゃ」
「極めていてか」
「そうしたことも知っておるのじゃ」
「そういうことか」
「うむ、君は幻術を破れたが」
「その俺でもか」
「錬金術を極めると神に等しい力も得られる」
 ここでこうも言った博士だった。
「不老不死になれるからのう」
「そこからさらに知識を備えていき、だな」
「幻術もな」
「俺ですら見破れないまでに」
「備えられるのじゃ」
「だから俺もか」
「そうじゃ、逃げられたいや隠れられたのじゃ」
 そうなったというのだ、博士は彼に淡々とした口調で話した。それはあえて感情を消している様な感じであった。
「君でもな」
「そうか」
「うむ、それでその屋敷の場所は何処じゃ」
「六甲の中だ」
「ふむ、六甲か」
「その山の一つにじゃ」
「どの山じゃ」
 博士はここで早速だった、その六甲の地図を出してだった。
 机の上に開いてだ、彼に問うた。
「それで」
「ここだ」
「ふむ、そこか」
「この山のだ」
 山のある場所を指差しての言葉だった。 
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