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美しき異形達

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第五十二話 来訪者その八

 薊達はそのリムジンに乗った、リムジンの後部座席はかなり広く中央にテーブルまであるソファーだ。そこに座ってだ。
 一行は伯爵の別荘に向かった、その別荘はというと。
 和風の豪邸だった、門は立派で駐車場もリムジンが三台は入る。庭は花と木が多く池もあってそこには見事な錦鯉達がいた。
 その鯉達を見てだ、菊は唸って言った。
「一尾数百万はね」
「えっ、鯉がかよ」
「ええ、それだけの鯉よ」
 見事な色彩のその鯉達を見つつ薊に言うのだった。
「どの鯉もね」
「っていうか鯉ってそんなに高いのかよ」
「こうした錦鯉はね」
「へえ、そうなのか」
「ううん、鯉にここまでお金かけるって」
「金ある、いや違うな」
 薊もこの辺りのことはすぐにわかった。
「趣味か」
「うん、最近減ったけれどね」
「こうした錦鯉を買うこともか」
「趣味、それも風流な趣味なのよ」
「そうだよな」
「ええ、この伯爵さんって」
「日本は素晴らしい国だね」
 菊に顔を向けられた伯爵は飄々として答えた。
「魚をこうして芸術にまでするとは」
「食ったら美味いぜ」
 薊は鯉を見つつ伯爵にこう返した。
「この鯉達食おうとは思わないけれどな」
「お刺身にしても鯉こくにしてもね」
 向日葵は具体的な食べ方について述べた。
「凄く美味しいのよね」
「はい、私も大好きです」
 桜も向日葵の言葉に頷く。
「お家でも飼っていますが」
「こんな立派な鯉じゃないわよね」
「とても」
「それに」
 菖蒲は周りの庭も見ていた。
「木も手入れされていて四季のお花があって」
「ここまで見事なお庭はそうそうはないわね」
 菫も同じ意見だった。
「とてもね」
「そうよね」
「お屋敷自体も」
「立派ね」
 そちらも別荘とは思えないまでだった、まさに豪邸だ。
 その和風の二階建ての豪邸を見てだ、鈴蘭は妹に言った。
「何時かは私達もね」
「そうね、漫画が売れて」
「こうしたお家に住みたいわね」
「そうも思うわね」
「まあ別にこうしたお屋敷が立つ位じゃなくても」
「皆に読んで欲しいわね」
「ははは、褒めてもらうのはこれ位にして」
 伯爵は少女達の言葉を聞きつつだ、余裕のある態度でまた言った。
「屋敷の中に入ろうか」
「そこでか」
「詳しい話をしよう」
 こう言うのだった。
「茶室でな」
「茶室ですか」
「そう、私は茶道も好きでね」
 裕香にも答えるのだった。
「それでお茶を飲みながらね」
「お話をですね」
「しよう、それでいいかな」
「ああ、それじゃあな」
 薊は茶の話が出たところでまた頷いた。
「お抹茶を飲みつつな」
「お話をしよう。お菓子もあるよ」
 こう少女達に言って案内してだった。
「そうしたものも楽しんで」
「わかりました」
 裕香が少女達を代表してだった。
 一行は伯爵達に案内されて屋敷の外れに置かれている茶室に入った。その狭い入口をくぐって中に入ってだった。 
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