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美しき異形達

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第五十二話 来訪者その四

「それは知らない」
「全然か」
「最初からな。気付いた時にはだ」
「あたし達の前にいたか」
「そうだ、だからな」
「そうか、これまで通りだな」
「俺は貴様達に何も言えない」
 怪人は身体が灰になろうとしている中で答えた。
「貴様達には残念だがな」
「ああ、残念さ」
 薊は少し苦笑いになって怪人に返した。
「聞きたかったけれどな、だがな」
「それでもか」
「知らないのなら仕方ないさ」
 それならというのだ。
「あたしも」
「そうか」
「ああ、じゃあこれでな」
「お別れだな」
「苦しまずに死ねたよな」
「それはない、安心しろ」
「ならいい、それならな」 
 こう話してだ、そしてだった。
 怪人は完全に灰となり消えていた。その横では。
 黒蘭は虎の怪人を相手にしていた、薊と同じく動かなかったがここでだった。
 動いた、しかもただ動いただけでなく。
 怪人と同じく、その横を跳び跳ねてだった。同じ動きで横から攻めた。
 怪人もそれに応える、前足で攻めるが。
 ここでだ、黒蘭は。
 まずはクラブで怪人の腹を打った、そこから。
 リボンを出しその首を掴みだ、思いきり地面に叩きつけた。跳ぶその中で叩き付けられた怪人のダメージは相当だった。
 そlこにフラフープ、外に刃があるそれを倒れた怪人に跳びつつ投げた。それで腹を切ってだった。
 怪人の背中に符号を出させた、黒蘭はその怪人の前に降り立って言った。
「勝ったわね」
「やるものだな」
「相手を同じ動きをして」
「あえてだな」
「その横からね」
「攻めたということだな」
「そうよ」
 怪人に対して言った言葉だ。
「それが上手にいったわね」
「見事だ」
 怪人は黒蘭に素直に称賛の言葉を述べた。
「俺の負けだ」
「それは何よりね」
「そしてだ」
「これで、なのね」
「俺は消えさせてもらう」 
 符号が出ている、それが何よりの証だった。
「永遠にな」
「知っていることはあるかしら」
「貴様達の知りたいことでか」
「貴方達を生み出している親、そして何処から生まれているか」
「そうしたことはだ」
 一切、という口調での返事だった。
「何もだ」
「そうなのね、じゃあね」
「いいか」
「知らないのなら仕方がないわ」
 それ以上聞いても意味がない、だからだ。
「もうね」
「ではな」
「ええ、さようなら」
 黒蘭もこう怪人に返す、そして。
 虎の怪人は仲間の怪人達と同じ様に消え去った、後には灰だけが残っていたがそれも風に吹かれて消え去った。
 黒蘭は怪人が消え去った時まで見てからだ、隣にいた薊に言った。
「これでね」
「ああ、今回の戦いもな」
「終わったわね」
「だよな、けれどな」
「戦いは終わったけれど」
 それでもだった。
「何もわかなかったわね」
「結局な」
「彼等は何も知らないわ」
「怪人連中はな」
「私達と戦うだけの駒ね」
「カリオストロ伯爵ってのが送り込んで来るな」
「ええ、それだけよ」
 怪人はだ、そうした存在に過ぎないというのだ。彼女達にとっては命を奪いに来ている恐るべき相手ではあるが。 
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