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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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格の時間(2016/03/22 一部加筆修正)




【視点:樹】



ビッチ先生が殺センセーの暗殺に失敗した翌日。ビッチ先生は目に見えて不機嫌で、授業中に手荒くタブレットを弄っていた。


「ビッチ先生。プライドをズタボロにされてイラつくのは分かるけどさ、プロならそれを隠すことくらいしろよ。俺達は自習とはいえ、勉強してんだからさ。イラつきながら操作してるタブレットの音が煩わしくて仕方ねぇんだよ。
あと、前にも言ったけど授業する気が無いなら、教室から出て行ってくんない。殺センセーに正体バレた以上、教師の真似事してる意味も無ぇだろ?
授業する気のない教師なんて、教室に存在するだけで鬱陶しいんだよ。一応、これでも俺達受験生だからさ。まだ触手生物の授業受けている方が建設的なんだよ」


俺が言葉のナイフを容赦なく突き立てると、ビッチ先生はタブレットを教卓に置き、座っている椅子から立ち上がるとその口を開いた。


「あのタコが生きてたら地球の危機だってのに、あいつの授業を受けて受験勉強?正気とは思えないわ。それとも、平和な国に生まれたガキって皆こうなのかしら?
それに、この学校じゃE組って落ちこぼれなんでしょ?そんなあんた達が今更勉強した所で意味があるとは思えないわ」


完全に見下した目で俺達を見ながらそう告げて来るビッチ先生。E組だからって、全員が全員本当に落ちこぼれって訳じゃないんだけどな。一応、物申しておこうか。


「ビッチ先生。言っておくけど、俺は自分からE組に籍を置いたんであって、落ちこぼれだからじゃねぇから。一応、これでもアメリカに行けば飛び級でMITに入学して、博士号を取れるくらいの頭はある」


俺がそう告げると、ビッチ先生は目を見開いて驚き、クラス全員も俺の方に驚いた顔を向けてきた。


「そ、それをどうやって証明するっていうのよ?言うだけなら誰にでもできるわ」
「証明なら殺センセーがしてくれるよ。先週末の放課後に過去5年間の東大過去問を解かされたけど、社会科以外は正答率がほぼ100%だろうし、社会科の正答率も公民の影響で下がってても正答率は90%を超えてる自信がある。
まぁ、これは飽く迄自己採点での正答率であって、正確な正答率はまだ分かってないけど、殺センセーなら聞けば普通に俺の学力に付いて答えてくれるんじゃねぇの?
公民に関しても、俺がまだこっちの社会・経済情勢等を完全に把握してなかったから、正答率が下がってるだけだし、そこを把握さえすれば社会科の正答率も100%にできる自信がある。
あと、このクラスには学力とは関係なく、諸事情で在籍してる奴らも何人かいる。全員が全員、学力のせいでここにいると思ったら大間違いだ」
「だ、だから何だっていうのよ!一度張られたレッテルはそう簡単には剥せないわ!それに勉強をするより暗殺に力を入れる方が効率的よ。
そうだ!私が暗殺に成功したら、あんた達に500万ずつ分け前を上げる!あんた達がこれから一生目にすることの無い大金よ!!」
「あんた、アホか?月給30万の会社でも2年で普通に越える金額だろ、それ。月々計画的に貯金してりゃあ、定年するまでに1000万を貯金通帳で見ることだって普通にできる。
あと、俺は株式トレードや海外の不動産売買で数十億の金を1週間で稼いだ。来週の頭には総資産が50億を超える予定だ。500万程度のはした金で俺を駒にできると思ったら大間違いだ」


俺はそう言いながら、ブレザーの内胸ポケットに入れている貯金通帳を取り出し、放物線を描く様に教卓へと投げた。

クラスの皆は俺の総資産額を信じられないのか、俺の方に顔を向けたまま固まっていて、ビッチ先生も俺の言った額が信じられないと言った顔をしていた。


「ど、どうせハッタリでしょ?普通、貯金通帳を投げられたら本当のことだと思うものね。でも、そうはいくもんですか!大人を舐めるんじゃないわよ!!」


ビッチ先生は脂汗を掻きながらそう言うと、俺の貯金通帳を開いた。そして、次の瞬間――


「――――ッ!?な、何よ!この金額!!?学生の通帳に入ってる額じゃないわよ!!」


通帳に記入されている金額を見たビッチ先生がそう叫んだ。すると、教卓から近いクラス委員の磯貝とその親友である前原がビッチ先生―――というかその手にある俺の貯金通帳を見る為、席を立った。


「ビッチ先生。南の通帳にいくら入ってたんだ?」
「俺達にも見せてくれよ―――ッ!!?」


俺の通帳金額を目にした磯貝と前原は、眼球が飛び出しそうな程目を見開いた。


「ま、マジか……?」
「一、十、百、千、万、十万、百万、千万、一億、十億―――貯金残高35億って、俺目がおかしくなったのかな?」
「「「「「「「「「「ええぇーーーーーーー!!?」」」」」」」」」」


磯貝が俺の貯金残高を読み上げると、クラス全員が驚愕の声を上げながら教卓へと顔を向け、再度俺の方を向いてきた。


「烏間先生から生活費として貰った20万を元手に株式トレードを始め、5日間で資産を800万まで増やした。
その後、800万を元手に休日2日間を丸々使って、分刻みで海外を飛び周り不動産売買やダイヤモンド鉱山、レアメタル鉱山の権利書の売買を行った結果、総資産がそこまで膨れ上がった。
人間、やろうと思えば1週間で億万長者になれるって証明だ。ちなみに金とアパートを用意してくれた烏間先生には来週にでも借りた金に色を付けて―――そうだな、小切手で1億返そうと思ってる」
「「「「「「「「「「いやいやいや、普通の人間には無理だから!ってか、太っ腹過ぎるだろ!!」」」」」」」」」」


俺の発言に対して、クラス全員がツッコミを入れてきた。うん。やっぱりこういう日常系コメディみたいな雰囲気は好きだな。


「取り敢えず、500万程度のはした金じゃ、少なくとも俺は動かねぇ。他の皆にしても、学生の本分は勉学だからな。勉学を蔑ろにしてビッチに尻尾振る様なクズい奴はいねぇ、と思う。
まぁ、そんな訳だから。教師としての仕事を全うする気が無いなら、とっととこの教室から出て行ってくんねぇ?このクソビッチ。でないと、()っちまうぞ?」


俺はビッチ先生のいる所までゆっくりと歩いて近付き、貯金通帳をその手から抜き取って内胸ポケットに戻し、ゾルディック家の身体操術で右手の爪を刃物の様に伸ばし、ビッチ先生の首に手刀を添えながらそう告げた。

すると、ビッチ先生は脂汗を掻きながら、青い顔で何も言わずにタブレットを持って教室から出て行った。



【視点:渚】



休み時間になると南君はいつも教室からいなくなる。それは今日も同じで、いつもなら彼のことが話題に出ることなどは無いのだけど、今日に限ってはクラス全員が南君の話をしていた。


「さっきの授業。南に言い負かされているビッチ先生見てどう思った?」
「正直、ビッチ先生ざまぁみろって感じだな」
「そうだな」


前原君が南君とビッチ先生の遣り取りについて尋ねると、三村君と千葉君がそう答えた。そして―――


「南君、かっこ良かったよね!特に最後の「でないと、()っちまうぞ?」とか、いい意味でドキドキしちゃった」
「正に暗殺者って感じだったね」
「殺気をぶつけられるのは嫌だけど、プロポーズみたいに「お前を殺す」とか、一度は言われてみたいよね」
「不破さん。漫画やアニメの見過ぎだよ」
「まぁ、顔もいいし、強くて性格も大人びてる。その上、億万長者。南と付き合える女は玉の輿だね」
「じゃあ、私彼女に立候補しようかな?」


矢田さんと速水さん、不破さん、茅野、中村さん、倉橋さんの会話から女子の評価もかなり高そうだ。


「億万長者。まさか、身近にいるとは思わなかった」
「通帳残高見た瞬間、マジでビビったもんな。あんな桁自分の通帳で見る機会なんて、殺センセーの暗殺に成功しないと無理だろうな。南、1000万くらいくれねぇかな?」
「前原、それは友達だったとしても無理だろ」
「いや、友達だったら意外といけるかもよ?アパートと生活費20万を用意した烏間先生に返す金額が1億だからな。磯貝とか、友達になったら資金援助とかして貰える様になるんじゃね?」
「ははは。例えして貰えるとしても、俺は断るよ。国なら兎も角、個人から貰うのは悪いからな」
「……相変わらず、イケメンな考え方だな」


男子側は男子側で女子側の会話が耳に入ってないかの様に会話を続ける。今喋っているのは磯貝君と前原君だけど、会話の内容が金のことだ。

磯貝君の家庭の事情は知ってるけど、前原君の発想はかなりゲスい。人の良心に付け込んでる感が半端無い。


「そういえば、南っていつも休み時間いないよね?どこ行ってるの?」
「……もしかしたら、あそこかも」
「神崎ちゃん、何か知ってるの?」


女子の方では、南君が休み時間中どこに行ってるかの話をしてるみたいだ。中村さんがそのことについて女子の皆に尋ねると、神崎さんが思い当たる節があるのか、口を開いた。


「えっと、先週の金曜日に偶々見かけただけなんだけど、校庭の端の方で何かやってたよ」


神崎さんがそう言うと、女子全員が教室の窓側に集まり、南君を探し始めた。僕も何となしにそれに便乗する。そして、校庭の端の方を見てみると、南君はすぐに見つかった。

神崎さんの言う通り、何かやってる。少し離れた所から林に向かって蹴り技の練習(?)をしているみたいに見えるけど。そんなことを考えていると、南君が蹴りを放った先、一番先頭にある木が校庭側に倒れてきた。


「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」


南君と木の距離から、南君が蹴り倒したとは思えない。どうして倒れてきたんだ?僕らが視界に入れた光景への答えを教えてくれたのは不破さんだった。


「南君。もしかして、牙を使ったの?」
「不破さん?牙って、何?南君が何をしたか知ってるの?」
「茅野さん。漫画の知識として知ってるってだけで、実際見たのは初めてだから断言はできないんだけど……」
「不破さん。仮説でもいいから、分かるなら南君が何をしたのか教えてくれないかな?」
「片岡さん。うん。簡単に言っちゃうと、南君は蹴りで鎌鼬に近い衝撃波を放ったんだと思う。もっと分かり易く言えば、ドラクエのバギとかバギマかな?」
「……それ、凄く分かり易い」
「神崎さん、何か言った?」
「いえ、何も。不破さん、話の続きを」
「う、うん。兎に角、南君はA・T――普段履いてるあの特殊な靴で、風を使った色んな現象を起こせるんだよ。その気になれば、バギクロスみたいな竜巻も起こせるはず。その為の練習を校庭の端でしてるんだと思う。
どういった原理で起きるのかは、GE●でエア●ギアをコミックレンタルして読んでくれたら分かると思う」


この不破さんの発言から、南君のことを知りたいと思った女子によって、駅前のGE●からエア●ギアが全巻姿を消すこととなった。



追記

南君に言い負かされた翌日。ビッチ先生は僕らE組の生徒に謝罪。教師として実践的な会話術を教える様になり、ビッチ先生の愛称で皆に受け入れられた。


 
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