| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

美しき異形達

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十一話 二人の伯爵その八

「そうだと思うよ、そしてね」
「仙術もか」
「身に着けていたと思うよ」
「そうか」
「うん、だから仙人みたいな人だから」
「あたし達じゃ理解出来ないか」
「どうした行動を取るのかね」
 そうだとだ、智和は話した。
「理解出来る筈がないよ」
「そうか、じゃあ探すよりもな」
 それよりもとだ、薊はここで一つの結論を出した。
「待つ方がいいか」
「そうだね、探してもね」 
 それでもだというのだ。
「見付けられる人じゃないから」
「だよな、じゃあ」
「待つべきだよ」
「それしかないか」
「ちょっとね」
「あたしの性格には合わないけれどな」
 行動的な薊にとってはだ、待つことはどうしても出来ない。こうしたことはどうしても出来ないものがあるのだ。
 それでだ、いささか残念そうに言うのだった。
「それも手だな」
「あれっ、薊ちゃん闘う時は」 
 裕香がその薊に言う。
「結構待ってない?」
「そういう時もあるよ」 
 実際にそうだとだ、薊も答える。
「結構」
「そうよね、だから待つことは」
「いや、我慢してるんだよ」 
 薊はこう答えたのだった。
「いつもな」
「そうなの」
「拳法の時もな」
「攻める方が好きなのね」
「休まずにな」
 身体全体を動かしてだ。
「激しく攻める方がいいんだよ」
「確かにその方が薊ちゃんらしいわね」
「そうだろ、だから待ってる時はな」
「我慢してるのね」
「そうなんだよ、だから今もな」
「待つことは」
「好きじゃないな」
 実際に、というのだ。
「仕方ないにしてもな」
「伯爵さん探してもね」
「見付かる人じゃないならな」
 それならだった。
「諦めるしかないからな」
「じゃあ今は」
「待とうな」
「そう、ここは博士待ちかな」
 自分から調べておくと言った彼の、というのだ。
「あの人からの連絡を待とう」
「そういうことか」
「うん、じゃあね」
 こうしたことを話してだ、そしてだった。
 薊達は今は待つことにした、あらゆることに対して。
 そうしてこの場は智和が出してくれたコーヒーやケーキを楽しんだ。そのコーヒーやケーキを楽しんでいたのは博士も同じだった。
 博士は自身の研究室でコーヒーとケーキを楽しんでいた、ケーキは苺のケーキだ。そのケーキを食べつつだった。
 周りにいる友人達にだ、こう語っていた。
「探して欲しいのはな」
「うん、カリオストロ伯爵だね」
「あの人だね」
「そうじゃ、そしてもう一人おる」 
 こう彼等に話すのだった。80
「サン=ジェルマン伯爵もじゃ」
「ああ、あの人もなんだ」
「今何処にいるかだね」
「僕達に調べて欲しい」
「そうなんだね」
「そうじゃ、二人共な」
 見れば周りの面々は人間ではなかった、一つ目小僧もいればから傘、ぬり壁や一反木綿といった面々だ。日本の妖怪達だ。
 その妖怪達がだ、博士に応えて言う。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧