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Fate/Modification 〜13人目の円卓の騎士〜

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第3話 決闘

 
前書き
相変わらず駄文。
グランドオーダーは何時になったら完成するんだっ! 

 
ウェールズ エクター卿邸宅近郊
森丘の街 中央広場


晴れ渡る快晴、雲一つない空に昇った太陽が、季節感を狂わせる。
広場の周りには住民や騎士達が集まり、まるでサーカスや祭りのような様相を呈している。

その広場の中心に、相手の姿があった。

騎士甲冑に槍と剣、盾を持ち、騎馬に跨る騎士の姿……。
アーサーの兄、ケイ卿だ。
俺は普段の格好…左腕に形見の聖骸布を巻き、上には灰色のジャケット、下は黒のボトムス。
武器は持っていない。
いや、〝必要ない〟。

「よく来たな、恐れをなして逃げ帰ったかと思ったぞ」
「そう出来りゃ、したいところなんだがね。
アル…アーサーの面子に関わるからな。
俺自身、〝勝てる闘い〟から逃げるつもりはないタチでな」

「………」

ケイ卿の槍を握る手がこちらに聞こえるほどの軋みをあげた。
この程度の挑発に乗るとは、なんとも若い……いや、血の気が多い。

「どうだ? お前こそ引いちゃくれないかね。
腐っても決闘、真剣での斬り合いだ。
怪我じゃ済まねぇぞ、悪いが本気相手に手加減できるほど腕が経つわけじゃないんだがね…」
「抜かせ、甲冑は疎か剣も持たない貴様に何が出来るッ‼︎
私を愚弄した罪、貴様の命を持って償えッ‼︎」

ケイ卿が騎馬の腹を蹴り、広場を疾走した。
敷き詰められたレンガを割る勢いで突進する騎馬の先端には、ケイ卿の携える槍の穂先。
狙うは心臓。
甲冑を着ていない〝一般人〟には必殺の一撃。
当たれば身体と心臓を貫通し、確実に死に追いやるだろう。

「若いな、まぁ俺もまだまだ若い部類に入るんだが………」

同調開始(トレース・スタート)

静かに、ハッキリと発音する。

魔力回路数56。
内21本に魔力を流し、獲物を形作る。

右腕に魔力が流れ込み、〝それは姿を現した〟。

ガギンッ、と鉄と鉄がぶつかり合った。

ヘルムの間から見えるケイ卿の目に驚愕が見て取れる。
それもそうだ。

なにせ必殺の一撃を、〝たかが短剣程度で防がれたのだから〟。

その短剣は昨日、アーサーから手渡された短剣。
神聖も加護も欠片もない、ただの短剣だ。

「グッ……舐めた真似をッ‼︎」

ケイ卿が手綱を操り、再び疾走する。
次は頭。
真っ直ぐ、力強く突き放たれた槍は、狙い澄まされた弾丸の如き勢いで迫った。

「そらッ‼︎」

槍をしゃがんで避け、馬の腹に拳を打ち込む。
馬は不意の衝撃に驚き、体勢を崩してケイ卿と共に転んだ。

「き、貴様……ッ‼︎」
「見事な突きだった、けど……狙いが真っ直ぐ過ぎたな。
挑発に乗って急所を狙ったりするから行動を読まれる。
頭が堅い証拠だ」
「黙れッ‼︎」

立ち上がり、槍と盾を捨てたケイ卿は腰からロングソードを抜き放ち、中段に構えた。
流石にこちらを警戒してか、いきなり切りかかっては来ない。
若いが状況適応は一級品のようだ。

互いに一定の距離を保ちながらジリジリとレンガの上を摺り足で横へ移動する。

「……ハァッ‼︎」
「オラッ‼︎」

再び躍り出たケイ卿に向かって、俺も駆け出す。
逆刃に持った短剣とロングソードが、激しくぶつかり合った。
火花が散り、互いの筋肉が悲鳴を上げた。

ロングソードの一撃一撃を短剣で受け流しながら、短剣特有の軽快な動きと手数で攻めに行く。
一撃、二撃、三撃と打ち込まれる短剣に、ケイ卿はお返しとばかりにロングソードを叩き込んでくる。

周囲の人集りからざわめきが消え、誰もが闘いに魅了されている。

俺自身、ケイ卿の剣裁きに感嘆を評していた。
ロングソードとは思えない太刀筋に、油断や手加減は最早無かった。
いや、あってはならなかった。

これが騎士なのだと、痛感した瞬間だった。

「……先に言わせていただきたい、昨日は無礼を働き申し訳ない。
これ程の技量を持っていようとは……感服しました」
「俺も謝らせてくれ、あんたは…貴殿は強い、今はただ……強者に巡り会えた武天の運命に感謝しよう」
「……同感だッ‼︎」

下段に下げたケイ卿のロングソードが、顎先を狙って放たれた。
それを短剣で受け流し、左手にもう一振りの短剣を投影、頭上で切り返しの一太刀を二本の短剣で留めた。

「二刀使いかッ‼︎ 面白いッ‼︎」
「そりゃ結構ッ‼︎」

背後に飛んで着地、同時に魔力を足に流し、一気に距離を詰め直す。
二撃、四撃、六撃とこちらの手数を増したにも関わらず、ケイ卿のロングソードは水を得た魚の様に鋭さを増していた。

火花が鼻腔を擽り、身体中を血が濁流の様に駆け巡る。

一体何合打ち合っただろうか。

不意に、あまりにも不意に、互いの獲物が真っ二つに折れた。
地面に転がる三本の刀身。
俺とケイ卿は互いに押し黙ったまま折れた獲物を眺め、そして……

「「は、ははははははッ‼︎」」

笑いあった。
呆然とする人集りを前に、俺たちは互いに笑いあった。

「私はケイ、サー・ケイだ。
貴殿は?」
「よろしく、ケイ卿。
生憎俺には名前がない。
……〝フェイカー〟とでも適当に呼んでくれ」
「贋作者か……確かにあの短剣は贋作の様だったな。
だが真に迫った贋作だった。
なら……〝リーア・フェイカ〟というのはどうか?」
「〝迫真の贋作者〟か、悪くない」
「うむ、では……アーサーを頼むぞ、リーア」
「よろしく、サー・ケイ」
「ケイで構わん、こちらこそよろしく頼む、リーア」

互いに握手を交わす。
周囲から歓声が上がり、アーサーが駆け寄って俺とケイの手を掴み、「感動しましたッ‼︎」と顔を真っ赤にしながら興奮気味に喋り出した。


此れが後に語り継がれる、〝ケイとリーアの決闘〟であった。 
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