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ローゼンリッター回想録 ~血塗られた薔薇と青春~

作者:akamine0806
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第2章 ヘンシェル星系攻防戦 後編 生存率3.8%の真実

 帝国軍の最後の総攻撃が始まった。

すでにヘンシェル星系区のうち我々のいるカーラ=テーベ2-1以外の惑星・衛星は陥落し、ほとんどの部隊は壊滅または、虐殺されていた。
これは後々の帝国軍の機密情報開示によって明るみに出ることであったが、帝国軍は自軍の兵站線確保のために捕虜にした同盟軍兵士のほとんどを虐殺していた。
敵はこのカーラ=テーベ2-1さえ落とせば同盟領侵攻への兵站基地と鉱山産出地を確保することとなる。これを防ぐために戦っていたわれわれであったが、我々の連隊の半数の兵士が戦死し、特に将校の戦死率は実に7割を上回っていた。
このため、ある中隊は戦場昇進した少尉が指揮を執っており、指揮下にある小隊の小隊長は半分が下士官残りの半分は兵長が指揮している有様であった。
しかし、もはや中隊といえるような戦力もなく1個中隊50名以下に減少している中隊もあった。
その中でも、我々第3中隊はケン・モトハシ少佐(ポイント3-B1の攻防戦時の戦功により昇進)の抜群の指揮能力と白兵戦能力のおかげで何とか現状150名以上を保っていた。
何も我々は逃げていたわけではないく、できる限り自信のある白兵戦へ相手を引きづりこみ、圧倒的な援護射撃下で敵に反撃の隙を与えることなく全滅させことに主眼を置いていたのでかろうじて敵にすきを与えることなく全滅を免れているのであった。
それでも50人近くが戦死したのを考えると、この戦いの一方的さがわかる。

0000時きっかりから衛星軌道上の艦隊からのミサイル、ビーム攻撃により我々は防空壕にもぐりっぱなしだった。砲爆撃は6時間にわたって行われた。
これにより地上防御陣地の8割を崩されたが、そんなことでは決して動じることのない我々である。そして、0500時私は帝国軍が前進を開始し始めたため、トマホークを持ち防御塹壕線で敵襲を待ち構えていたところレナ准尉から
「シュナイダー伍長!
カレン・マックリーニ2等狙撃特技下士官(軍曹)が負傷したので、代行で狙撃を行ってくれ!また、カレン2等狙撃特技下士官の指揮する第1分隊を貴官の指揮下に置くように!また、今から貴官は以上のことから、軍曹に昇進だ。
以上」
とヘッドセットから聞こえてきたのである!
私は衝動的に
「イエスッサー。」
と答えてしまった。
16歳で1個分隊指揮官!? しかも軍曹!!??
頭が混乱する中で、第1分隊の狙撃陣地へ向かった。

第1分隊の特級射手たちはM22 8.75㎜狙撃ライフルで帝国軍を狙撃していた。
このライフルはM15やM11と違って連射式ではなく単射・ボルトアクション式で実弾・レーザー弾とっちも使える非常に命中精度の高い狙撃銃であった。
分隊先任下士官代理のベイリー3等狙撃特技1等兵に現状報告をもらうと、
「第1分隊長代理にただいまなった、シュナイダー軍曹です。
A狙撃班はポイント2-1と4-4の狙撃を行ってください。
B狙撃班は第3~7防御塹壕線への狙撃援護射撃を行ってください。
C狙撃班は私についてきてください。」
第1分隊は小隊の狙撃分隊として配置されていたが、連日の攻防戦で狙撃とは名ばかりの近距離精密射撃を行っていたため分隊員の4分の1が戦死または負傷していた。
各狙撃班は私の未熟な指揮下でよく働いてくれた。
彼らは熟練した狙撃手で斥候狙撃作戦を行っていたが、陣地防御戦となった今では斥候狙撃はあまり有効とは言えなかった。
しかし、敵の指揮官のみを狙撃するというのは敵にとって多大な精神的なストレスを与えることに成功していた。分隊長のカレン・マックリーニ2等狙撃特技下士官は同盟軍のエーススナイパーで将来が期待された下士官であった。
しかし、彼女は帝国軍の砲撃により負傷していしまい、今現在、全体的に防御戦が押され始めたところだ。
私たちは彼女の負傷から約5分で狙撃を再開した。
5~20倍の可変狙撃スコープで塹壕をのぞき敵を攻撃する。
狙撃銃を使っての狙撃なんて訓練生以来やっていなかったためうまくいかなかったが、正直な話打てば当たった。しかし、我々狙撃部隊が狙うのは敵の指揮官これを打って敵の動揺を誘う。
スコープの中に映る彼は中隊長であろうか?
1個中隊ほどの部隊の先頭に立ってトマホークをふるっている。
殺すには惜しいほど勇敢な指揮官であるが、私は狙撃銃の引き金を絞る。
スコープの中で彼が倒れる。命中。周囲の兵士が彼を防護しようと塹壕へ彼を引きずりながら歩いていく。
次の目標は・・・

だいたい地上攻撃が始まって
10時間が経過し、敵の攻勢にも衰えが出てきた。
私は第1分隊の狙撃陣地をそれぞれローテーションしながら直接帝国軍に圧力をかけていた。すでに分隊の狙撃により300名近くの擲弾装甲兵が命を落としていたとも思われた。
そしてそこから2時間後1900時、敵の攻勢は止まった。
我々の連隊はこの攻勢により残存兵力2割未満となってしまった。我々は狙撃陣地に立てこもりひたすら、敵の狙撃手と砲撃におびえながらの狙撃であったが白兵戦を行っていた兵士たちは壮絶な白兵戦に巻き込まれていた。
防御陣地には血みどろの白兵戦の後が残されていた。
首のない帝国軍兵士の死体、腹が切り裂かれて大量出血ののち戦死した同盟軍兵士の死体、ちぎれた腕、使いつぶされたライフルのエネルギーパック・・・
などの死神の通った後が明確に記されていた。
私は別の狙撃陣地へ向かうために陣地移動をしていた。
そのとき!!
我々の目の目の前を強烈な爆風と熱風そして、夜とは思えないような昼の明るさが周囲を覆ったのだ!
私たちは何が何だかわからずに塹壕にうずくまり、塹壕壁で自分の身を守った。
何分立ったのだろうか。
あたりは業火に焼き尽くされていた。周囲には燃え上がる防御陣地や兵士がいて、どの兵士も狂ったようにのた打ち回っていた。まさに地獄絵図であった。
そのとき、ふと帝国軍側の攻撃陣地を見ると帝国軍の装甲擲弾兵が私にトマホークを振り下ろそうとしていたのだ!
私は、コンバットナイフを抜くなり、彼の喉元を切り裂いた。
彼はそのまま倒れたが、その後に見えた光景は想像を絶するものであったと記憶している。それは、一面を覆う帝国軍であった!私は
「第1分隊防御射撃位置につけ!
各狙撃班の裁量で攻撃せよ!」
と命令した。そのとき第1分隊は私の周囲にいたため、各々が帝国軍に対して狙撃を開始しようとした。しかし、そのとき腕についていた小型タブレットに
「ゼッフル粒子高濃度分布の可能性あり。」
と書いてあった。敵はゼッフル粒子を分布していたのだ。
私は急いで第1分隊に狙撃を中止させ、白兵戦への移行を命じた。
さっき倒した擲弾装甲兵のトマホークを握り、いつ終わるともしれない白兵戦に突入した。敵も火器を使えないしこっちも使えないと考えると白兵戦はある意味で楽であった。なんせ、後方遠距離から不意打ちということがないからだ。
2人の擲弾装甲兵が私にかかってきた私は一人をかわし、後続のもう一人を槍で目を突き、首を切り裂いた。次にもう一人の方の胴を切り裂いた。
その後、30分間にわたる白兵戦を展開した。
2100時くらいであっただろうか、敵の後方にいる部隊が動揺し始めたのだ。
さっき上空に敵味方不明のヘリが通り過ぎたのちのことであった。
そこから20分後、私は第1分隊に対し戦いながら味方の防御塹壕への集合を命じた。
私は逃げながら、戦い、敵を殺し最初にいたポイントR防御地点まで帰ってきた。
そこで集合した第1分隊員は自分を含めてわずかに5名。
残りのほとんどが戦死または行方不明となってしまった。
自分の指揮の未熟さによるものだった。
あの時もっと密集して、戦っていればこうはならなかったはずだった・・・・
その後、帝国軍の攻勢がいきなり衰えてきたのだ。
私たちはこれに乗じていまだに食い下がってくる擲弾装甲兵に対して猛然と攻撃を仕掛けた。そこにいたのは1個中隊ほど。今までの1個師団以上と戦っているより圧倒的にましな戦いができた。たった5人だけで。
敵を1個小隊ほどにまでうち減らしたところで、帝国軍の攻撃陣地が赤く染まり始めた。この時我々は初めて、援軍が帝国軍後方に降下したことを知った。
我々生き残りの5名はこれに乗じて残敵を皆殺しにしようとしたら、帝国軍の攻撃陣地から装甲服を着た1個小隊がこちらに向かってくるではないか!
我々は身構えたが、200m近くに彼らが来てそれに攻撃しようとしたところその1個小隊は我々同盟軍のものであったことが分かったのであった!!
しかし、後ろにはいまだに1個小隊強の擲弾装甲兵がいた。
彼らを攻撃しようと振り返った瞬間!
胸部に衝撃! そして、激痛。
しまった、不覚だった・・・薄れる意識、口から流れる血液・・・
そのまま地面に倒れそうになったときだったと思う耳元に
「シュナイダー!立て!立って、トマホークをふるえ!
敵をやっつけろ! 私との約束を忘れたか、生きてこの戦闘を終えるという約束を!」
それはケイン中将の声であった。
次の瞬間私はすでに上段の構えに入っていた擲弾装甲兵の胴体を切り裂いた。
そして、立ち上がり残り少ない味方を切り殺そうとしていた擲弾装甲兵2名を同時に切り裂いた。そこから10分くらいであろうか?
私は、失神しそうになりながらトマホークをふるい続けた。
そして、最後の擲弾装甲兵の首を切り落とした瞬間に、大量の血を浴びてその場で失神したらしい。私にはその前後の記憶がなくなっていた。
ただ、胸部を圧迫されていたのだろか、胸が重くるしくなっていた時にニコール衛生兵長が私の名前を叫びながら、手を握っていたのは記憶にあるがそれ以外の記憶はほとんど消滅していた。
そして、私が目を覚ましたのは医療記録によると私たちの第1分隊の生存者5名があの後のローゼンリッター連隊 連隊長 ワルター・フォン・シェーンコップ大佐(ただし、当時は少佐)に直接率いられた1個小隊に救出されてから5日目であった。

私は頭がぼやぼやする中目が覚めた。
目の前にはニコール衛生兵長とケン・モトハシ少佐がいた。
どうやら、私は肺をやられたらしい。
ニコールは私を見るなり号泣し始めた。
ケン少佐もボロボロと涙をこぼされていた。
そのまま10分間近く啜り泣きの声聞こえない空間にいた。
私は、そのときしゃべれなかったのだ。
いや、しゃべれることはしゃべれるが制限付きであったためあまりしゃべらないようにした。
ニコールは
「ローゼンリッター連隊が到着してからあなたを見たけど、肺を負傷しているのに何であんな無茶を・・・ 本当に、心配ばっかかけて・・・ほんとそこから2日間あなたは大量出血死しそうだったのよ。ほんとに生きててよかった」
と号泣しながら、私の手を握って言っていた。
無茶をしなかったらここにはいなかったであろう。
と言いたかったが、今息を大きくすえない。
ニコールの話を聞きながら「うん」とか「ありがとう」とかを彼女の手の上で書きながら会話をした。
ケン少佐は私とニコールが話している間に、ウィンクをして出て行かれたがその後1300時きっかりにあの男は来た。
薔薇の騎士連隊「ローゼンリッター連隊」第1中隊 中隊長 ワルター・フォン・シェーンコップ少佐が。

こうして私の「ヘンシェル攻防戦」は終わりを告げた。
このヘンシェル星系区には実に10万人近い地上部隊と5万人近い宇宙駐留軍が置かれていたがこのうち生きて戦闘終結を迎えたのはわずかに5700名以下。カーラ=テーベ2-1以外の地上部隊はそのほとんどが全滅または虐殺もしくは捕虜になり、生存者はたったの数個小隊であった。カーラ=テーベ2-1でもわずかに生存していたのはたったの74名のみ。残りの5600名強は全員運よく生き残った第14駆逐艦群を主力としたオリオン星系区から引き返してきたヘンシェル星系区駐留艦隊残存兵力のみであった。
駐留部隊の生存率はわずか3.8%。
この数字の裏には多くの勇気、自己犠牲があった。
私は多くの尊敬する上官・戦友を失った。この傷は決して言えることはないだろう。
しかし、こののちに私は多くの血の海を見、また帝国亡命人であるということに対する偏見を経験することになるということを知る余地もない。
「人は運命に逆らえませんから。」ルイ・マシュンゴ曹長の口癖が頭に今でもこのことを思うと浮かんでくる。

血みどろの「ヘンシェル攻防戦」生存率3.8%の戦いはこうして幕を下ろした。
宇宙歴789年 8月7日のことである。 
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