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天才への挑戦

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第一章

                    天才への挑戦
 ミラノのコソ泥マリオ=ブリオッティはある日だ、酒場で仕事仲間達に得意顔でこう言った。
「ちょっと大物の家に入るぜ」
「大物?」
「どの金持ちの家に入るんだい?」
「画家か?いや科学者か建築家か?何でもやってるな」
 安い強い酒を飲みつつだ、ブリオッティは腕を組んでこうも言った。
「ほら、いるだろ。レオナルド=ダ=ヴィンチな」
「ああ、あの何でもするか」
「何でもとんでもない才能を出す」
「そう、あの人の家に入ってな」
 そうしてというのだ。
「金目のものを盗むぜ」
「あの人偉いさん達から色々仕事受けてるしな」
「金もあるからな」
「だからか」
「あの人の家に入ってか」
「盗むんだよ、是非な」
 そうするとだ、仕事仲間達に言うのだった。
「いつも通り夜忍び込んでな」
「そうそう、俺達は夜皆寝静まった時にな」
「こっそり家に忍び込んで盗む」
「それが俺達のやり方だからな」
「盗みはすれど人は傷付けない」
 彼等の暗黙の、かつ絶対の決まりである。
「盗人でもな」
「人を傷つけたり殺したら駄目だからな」
「そうした非道はしない」
「それが俺達の決まりだからな」
「それでな」
「あのおっさんもな」
 その家に入って盗みをしてもというのだ。
「危害は加えないさ」
「じゃあダ=ヴィンチの旦那が寝てからか」
「家に忍び込んで」
「そしてか」
「盗むんだな」
「ああ、金目のものをな」
 こう言ってだ、ブリオッティはダ=ヴィンチの家に忍び込み盗むことにした。そして夜を待ったのだがこれがだった。
 相棒であるルイージ=スフォルツォと共にダ=ヴィンチの家から少し離れたところにいて家の灯りが消えるのを松賀だった。
 これがだ、全くだった。
「おかしいな」
「ああ、そうだな」
 スフォルツォは相棒の言葉に頷いた。
「何かな」
「もうかなり遅いんだがな」
「家の灯りが消えないな」
「あのおっさん朝も昼もな」
「起きていたよな」
「それで家の中で研究してたりな」
「外に出て買いものとかもしてたな」
 二人はそのこともチェックしていた、相手の一日の状況を見守りそして寝静まったところで盗むつもりだったからだ。
 しかしだ、ダ=ヴィンチはなのだ。
「全くだな」
「寝ないな」
「一日起きているのにな」
「それでもな」
「何故かな」
「寝ないな」
 そうなのだ、ずっとだ。
 彼は起きていて灯りの下で研究をしている。家の中の詳しい状況は二人の場所では確かめる術はないがだ。
 起きているのは間違いない、それでだった。
 ブリオッティは首を傾げさせてだ、スフォルツォに言った。
「あのおっさん今日はな」
「徹夜か」
「徹夜で何かに没頭してるんじゃないのか?」
 こう言うのだった。
「だからな」
「今日は寝ないのか」
「そうじゃないのか?」
 こう言うのだった。 
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