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地獄に落ちようとも

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第四章

「あの方々と」
「はい、お話をですか」
「したいのですが」
「ではすぐに連絡します」
「お願いします」
 こう言ったのだった、そして。
 次の日エジリアーノは教会に意気揚々と向かった、だが。
 そこから彼を見た者は一人もいなかった、完全に失踪してしまった。警察も何故か積極的に捜査を行わずだ。
 彼の関係者はだ、こう言った。
「まあな」
「あいつはな」
「何時かはな」
「ああなってたさ」
「そうした奴だからな」
「仕方ないさ」
 こう言うのだった。
「そういう奴だった」
「下劣な悪党だったからな」
「ジャーナリストの風上にも置けない」
「ゴロツキだったよ」
 こう口々に言うのだった。
「だからな」
「結局はな」
「こうなったことも仕方ない」
「ああしたことをしてたらそれこそ」
「周りから忌み嫌われてな」
「消えることもな」
 あえてこう言うのだった。
「当然だよ」
「もう二度と会うこともないさ」
「清々するぜ」
 その所業から誰からも忌み嫌われていたが故の言葉だ、結局エジリアーノは行方不明になったということで片付けられた、彼は死してからも散々に言われた。 
 神父はエジリアーノの失踪から一ヶ月後だ、教会の中を掃除しながらだ、手伝いをしてくれている教会の者達に言った。
「よかったです」
「あのジャーナリストのことですね」
「はい、無事に済んで」
「まさかああした男が来るとは」
 シスター、美人の彼女が応えた。
「思いませんでした」
「はい、しかし」
「ああした人はですね」
「残念ながらこの世にいます」
「ならず者は」
「どうしてもいて、です」
 そして、というのだ。
「あの様にです」
「ゆすってくるのですね」
「そうです」
 神父は悲しい顔でだ、シスターに語った。
「そして残念ながら私は」
「そうした人達をですね」
「神の教えに導くことは出来ません」
 人の道からとことんまで外れた輩を、というのだ。
「力が及ばないです」
「だからですか」
「はい、ああしてです」
「カモラの方々にお願いしてですね」
「どうするしかありませんでした」
 こう言うのだった。
「今回もまた」
「そうなのですね」
「この教会、そして孤児院はです」
 神父は掃除をしながらだった、俯いて語った。 
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