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マルコムの好物

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2部分:第二章


第二章

 いたく感銘してだ。仲間達にこう言うのであった。
「やっぱり黒人はな」
「戦うべきか」
「権利獲得の為に」
「そうだというんだな」
「ああ、そうだ」
 その通りだとだ。マルコムの言葉を思い出しながら話す。その目には熱いものが宿り濃い唇からも熱を帯びた言葉が出されていた。
 そうしながらだ。彼は話すのだった。
「俺はマルコムが好きだよ」
「ちょっと過激過ぎるけれどな」
「そうだよな」
 アフリカ系の間でも、彼等の中でもこんな意見があった。
「どうもな。俺はな」
「俺もだ。キング牧師の方がいいよな」
「そうだよな」
「人間味があるしな」
 キング牧師の魅力の一つだった。彼の気さくな人柄で知られそれによっても支持を集めていたのだ。ここがマルコムと違うと言えた。
 それに対してだ。やはりマルコムはなのだった。
「厳し過ぎるしな」
「どうもなあ」
「自分にも他人にも」
「やっぱり人間味がないよ」
「そう思うんだけれどな」
「まあそれはな」
 ローズもだ。マルコムの人間味については思うところがあった。少なくとも彼は支持の対象に対して無批判に従う男ではなかった。
「俺もちょっとな」
「だろ?過激なだけじゃないし」
「ストイックに過ぎるだろ」
「一体何を食ってるんだよ」
「それもわからないような御仁だしな」
 とにかく彼の人間味のなさが問題視されるのだった。そんな話をしながらだ。
 彼等はニューヨークのあるレストランに入った。労働者達、それもアフリカ系の者が多く出入りするそのレストランに入ったのである。
 明るい内装で白い椅子とテーブル、それにブラウンの壁の店だ。そこに入ってそのうえでだ。ある料理を注文した。それは。
「羊のすね肉頼むな」
「ことことと時間かけて煮たやつな」
「あとそれとあれだよ」
「あれも頼む」
 頼んだのはだ。他にもあった。
「アイスクリームな」
「デザートはそれな」
「それも頼むな」
「トッピングは」
 ただアイスを頼むだけではなかった。他のものもだった。
「バナナをたっぷりとな」
「そこにシロップもかけてな」
「それな、人数分」
「後はまあ」
 他のものも頼むがだ。適当な感じだった。
「サラダとパンな」
「それとマッシュポテトな」
「どれも人数分頼むな」
 こう店のウェイターに話してだ。注文をしたのであった。
 暫くして料理が来た。テーブルの上に一度に並べられる。しかしアイスだけはなかった。
「それは後でいいですね」
「溶けるからな」
 ローズが何故後なのかを察して言った。
「それじゃあそれでいいさ」
「はい、それでは」
 こうしてだった。その主な料理が彼等の前に運ばれた。そうしてそれ等を皆で食べているとであった。そこに思わぬ客が来た。
「相席頼めるか」
「んっ?いいけれどよ」
「満席かよ、今」
「そうだったのかよ」
「満席ではないが」
 声の主はだ。何処かそわそわした声で言ってきた。
「それでもだ」
「それでもって」
「何があったんだよ」
「その席に座りたい」
 こう彼等に言うのである。
 
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