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真ゲッターロボ・地球最凶の日 第一部「滅亡への夜明け!」

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第九話「錚々たるゲッター」

 
前書き
今回はユウヤメインです。次回からネオゲッターとゲッターロボの模擬戦闘を考える予定です。

真ゲッターの登場はまだまだ先っぽい・・・ 

 



 ユーコン基地、ブリーフィング室内にて。今回は新たに配属されたパイロット、ユウヤ・ブリッジスと他のパイロット数名とが二組に別れ、模擬戦を行い、今後とも友軍機の信頼を深めるため、実力を肌で感じあう交流が開始されようとしていた。
「さて、これより試験小隊アルゴスの搭乗者同士による模擬戦闘を行ってもらう」
ブリーフィングにて指揮官イブラヒム・ドゥール中尉による説明が行われていた。模擬線はアルゴス小隊四名を2ペアに分けて模擬戦を行うものだった。
「アルゴス1は私に代わってユウヤ・ブリッジス少尉……」
「はぁ?ちょっと待ってよ!」
「……?」
イブラヒム中尉の説明に割り込んだのは先ほど不時着したF15の少女だった。そんな彼女にユウヤが振り向いて彼女の表情を窺った。
「どうしてコイツが一番機なんですか!?」
「マナンダル少尉、反論は認めん。席にもどれ」
中尉の険しい視線に睨まれ、タリサ・マナンダル少尉はおとなしく席へ戻った。タリサが大人しくなったところで大尉は引き続きブリーフィングを再開した。
「さて、それではこれより模擬戦闘試験のペアを決める。ブリッジス少尉はブレーメル少尉と、タリサ少尉はジアコーザ少尉とペアだ……そして、今回アルゴス小隊にもう一人配属される。入ってきてくれ?」
「……?」
ルームからもう一人の衛士が登場した。背まで伸ばした鮮やかな黒髪と東洋系等の肌と大人びたクールな顔立ちの女性。
「紹介しよう、XFJ計画の担当主任、ユイ・タカムラ中尉だ」
すると、彼女は敬礼をして軽く自己紹介を述べた。
「XFJ計画の担当主任、篁唯依中尉です」
(日本人……?)
そうユウヤは心で呟いた。
「それと……もう一グループ、我々アルゴス小隊を共同で訓練を張ることとなったゲッターチームが日本から来ているのだが……」
未だ時間通りになっても現れない。いったいどうしたというのか?
「中尉……」
すると、唯衣はイブラヒム中尉へ視線を向けた。
「何かな?中尉」
「恐らく、ゲッターチームの三名は予定時刻を大幅に過ぎても、必ず出現します」
「そ、そうか?君がそういうのなら……」
その刹那、ブリーフィングルームに一人の大柄な男が入ってきた。それも托鉢僧である。
「な、何だテメェ!?」
タリサが席から立ちあがって指をさす。
「ああ、時間に遅れてすみません。何分迷ってしまって……ゲッターチームの一人で、ゲッター3の担当パイロットの紫電赤城っていいます。どうも」
「そ、そうか……まぁ、楽にしたまえ?」
赤城は、イブラヒムに席を指定され、そこへドスッと座り込んだ。
(残るはあと二人、いったいゲッターチームとは何者なんだ?)
イブラヒムは、突然現れた托鉢僧に視線を向けながら顔を歪ませた。噂では変わり者と聞かされていたが、まさか僧侶が押しかけてくるとは思わなかったろう。しかし、
バンッ!!
何者かが片足でドアを蹴り破ってきた。MPから奪ったマシンガンを小脇に抱え、ナイフを加えたその男に、周囲は警戒する。
「な、何者だ!?」
イブラヒムも、当然の襲撃に銃身を握りそうになった。しかし、その男は物静かに喋った。
「……ゲッターチームの神威疾風だ。遅くなって申し訳ない、何分MP共に絡まれていたもんでな?」
「お!疾風か?久しぶりだな!?」
後ろで坊主が男へ手を振っていることから、おそらくゲッターチームの一人で間違いない。
「赤城か?お前、どうやってここまで……」
「ヒッチハイクを繰り返してどうにかたどり着くことができたんだ」
と、赤城は薄汚れた歯をニカっと見せながら大きく笑んだ。
「じゃあ、残るはアイツだけだな……?」
両腕を組み、疾風は呟いた。
「あ……やっぱり、まだ来てないのか?」
「どうせ、不審者と間違えられてMPの連中に追いかけられているんだろうよ?」
「ところで……疾風は、どうやってここまで来た?」
「適当に輸送機をジャックして来た」
「ははは……お前さんらしい」
苦笑いで済ませる赤城だが、周囲は苦笑いどころじゃなかった。
「残るは……紅牙のやつだけだな?」
疾風はイブラヒム中尉の元へ向いて、尋ねた。
「もう一人、俺たちと同い年の青年を見なかったか?」
「いや……私は何も」
「ほう! アンタらが噂に聞いた日本のゲッターチームか? マジンガーの連中から聞いたぜ? 俺は、アメリカのワシントン支部のネオゲッターチームの一人、ネオゲッター1のパイロット、ユウヤ・ブリッジスだ!」
と、親しくユウヤは二人へ握手を求めた。
「あ、ああ! こいつはどうも!」
赤城は、その手をにこやかに握りしめ、疾風も無言だが少々微笑んでユウヤの握手を受けいれた。同じ、ゲッターチームが居てくれるならそれほど肩身の狭い思いはしないだろう。
「……で、もう一人来るはずの仲間はまだか? 心配だな」
「大丈夫だよ? ユウヤさん。紅牙のやつはああ見えてゴキブリ以上にしぶといから」
笑んで赤城が答えた。
「……誰が、ゴキブリ以上だって?」
と、何者かの声と共に赤城の背後から両手が忍び寄り、彼の頬をマシュマロのように抓りまわした。
「ゴキブリ以上にしぶとくて悪かったな! こっちたぁ、MP共の銃撃戦をかいくぐって命からがらここまで来たんだぞ!?」
「い、いたたぁ! 悪かったよ? それよりも心配したんだぞ!?」
「へぇ! アンタがゲッター1のパイロットか?」
すると、ユウヤはボロキレを纏う紅牙の元へ歩み寄った。
「あんたは?」
「俺は、ワシントンから来たネオゲッター1のユウヤ・ブリッジスだ!」
「ユウヤ……プリッツ?」
「ブリッジスだ! まぁ……同じゲッターチーム、仲良くやろうぜ?」
ユウヤは、念願のゲッター1のパイロットへ握手を求める。
「ああ、こちらこそな? 俺は、ゲッター1の黒銀紅牙だ」
そんな親しく接してくれるユウヤに、紅牙も答えて、彼の握手を強く握り返した。

「……ったく! 次から次へ、変な奴らばっか出てきやがって」
更衣室で、強化装備に着替えているタリサは、今日はずい分と変わった来客がくることに納得ができなかった。
「あら? でも、面白そうな人たちじゃない? それに……日本の「絶対防衛」とも言われるゲッターの性能を、この目で見てみたいものね?」
タリサの隣で着替えるステラは、そんなゲッターチームらにわずかな興味を抱いた。
「それにしても……あの、ユウヤってやつ。アイツは本当に人間かよ? 戦術機に張り付いて、チェルミナートルに剣一本で太刀打ちしたんだぜ?」
「まぁ? タリサも面白い冗談を言うようになったわね?」
面白い妄想だと、ステラはユウヤの人間離れした超人能力を疑った。
「本当だって!? 野郎は、アタシの機体にとっついて、そんでもってチェルミナートルの頭に取り付いたんだよ!?」
「ふぅん? ま、そんなスーパーマンみたいな人ならきっと模擬戦でも大活躍しそうね?」
微笑む彼女は、強化装備を装着し終え、タリサよりも先に更衣室を出て行った。
「ったく! 本当なのに……」
この目で見た事実ではあるが、しょせん口での説明では信じてもらえないことにタリサはさらに納得しづらくなった。
「まぁ、いいぜ? 戦術機で近術戦に持ち込めばアタシの勝ちってもんだ!」

と、タリサも更衣室を後にした。
しかし、模擬戦が始まる直後のドッグでは往生際の悪い態度で悔しがっていた。
「ちくしょう……!」
「何をそんなに荒れてんだ?」
と、背後から気になってユウヤが声を掛けと、タリサは目をギラつかせて大股で彼の元へ歩み寄ってきた。
「いいか!?俺はまだテメェを認めたわけじゃねぇからな!?」
「はぁ……?」
「オメェが一番機だなんて俺は絶対に反対だって言ってんだよ!?」
「……そういうことか、ならお前が一番機に乗ればいい」
「へ?」
ユウヤから出た答えは意外なものだった。タリサは先ほどまでの勢いが和らぎ、あんぐりと口を開けた。
「お互い、乗りなれている機体のほうがいいだろ?」
「て、テメェ!バカにしてんのか!?」
「別に俺は……」
「もういい!模擬戦、覚悟しておけよ?あ……それと、お礼言え!」
「は……?」
今度は何だと、あきれ顔でユウヤは首をかしげる。
「お礼だよ!機体を変えてやったんだ、お礼ぐらい言えよな!?」
そういうなり、タリサは自分の乗機が待つドッグへと戻った。
「……面倒な奴に目を付けられたものだ」
ため息をついて、ユウヤは軍独特の組織性を久しぶりに嫌った。
「ったく、これだから軍にはウゼェ奴らがいるから嫌なんだよ。早くワシントンに帰りてぇ……」
何度も愚痴をこぼしながらユウヤは交換した別の機体へ乗り込んだ。ちなみに、彼は強化装備を装着してはいなかった。
「おいおい、強化装備はどうしたよ?」
整備士の親父が尋ねるが、ユウヤは首を横に振る。
「んなもの要らねぇよ? つうか、あんな「全身タイツ」こっぱずかしくて着てられるかよ? まだゲッターのパイロットスーツの方がカッコいいぜ」
「戦術機のGじゃ体は持たないぞ?」
「戦術機レベルのGなんて、ゲッターに比べちゃ屁みたいなもんさ?」

模擬戦の場所は、基地内に位置する街状に偽造した訓練施設だあり、またレーザー級による射程圏内ともあるので高空度での飛行は制限される
「腕が鈍ってなけりゃいいんだが……」
久々に戦術機の操縦桿を握るユウヤは、徐々に感覚を取り戻しつつあった。しかし、ゲッターでの癖が大半しみついているため、多少の無理をしてしまうのは否定できない。
「ゲッターみたいな耐久性だったら、武器なんて無くったってあのチビを蹴り飛ばしてやれるんだが……」
『油断は、禁物よ? アルゴス1』
相方の機体から無線が入る。ステラだ。
「なに、油断していると見せかけて相手の隙をつくのさ? こう見えて、俺は騙し討ちが特異なんでね?」
「まぁ? フェアじゃないわね」
「俺が正々堂々と戦う時は、敵として認めた相手が目の前にいる時だけだ」
「タリサたちは目じゃないってこと? でも……なめたらひどい目にあるわよ?」
「なに、俺たちは負けやしないさ。そうだろ? アルゴス4」
「……?」
そんなユウヤの言葉に、ステラは微笑んで返す。
「そうね? 私たちは衛士ですもの。絶対に勝つわ?」
「勝つんじゃねぇ……「狩る」んだよ?」
「え?」
「へへ! そうこう言っている間に来たぜ!?」
好戦的な笑みを浮かべ、ユウヤは機体をダッシュさせる。背後から襲い掛かってきたのはアルゴス3ことジアコーザ少尉だ。
「よう! トップガン、あんたの実力を見せてくれよ?」
「ああ、見せてやるよ? ハエみたいに飛ぶのをやめて地べたに足くっつけて目の前に現れてくれたら披露してもいいぜ?」
「おいおい? アメリカは世界一の射撃技術をもってんだろ?」
「俺は、カチャ使うよりも素手で殺る派なんだよ!」
「そうかい! そいつぁタリサといい勝負だ。それじゃあ……俺は野郎じゃなくてあっちのレディーの方へ照準を合わせますか!」
ユーターンするアルゴス3は、ユウヤを通り越してアルゴス4へと向かう。
「アルゴス4、そっちは任せた! 俺は、アルゴス2のチビスケをお仕置きしてくる!」
「こちらアルゴス4、任せて? けど、タリサは近術戦のエキスパートよ? くれぐれも油断はしないで?」
アルゴス4は、アルゴス3をユウヤから引き離し、残るはユウヤのアルゴス1とタリサのアルゴス2の二体だけが残った。
「ふっ……出てこいよ? 体は小っさくても搭乗している機体の大きさは変わらないぜ?」
そんな、ユウヤの挑発的な呼び声に、背後から激しくペイント弾が撃ち放ってきた。
「そうきたか?」
ニヤけるユウヤは、一気に速度を上げてアルゴス2から逃げ回る。
「このヤンキーハーフ! 言いたいこと言いやがって!!」
「そうこなくっちゃな!」
しばらく、二機の追いかけっこが続くが、それにしびれを切らしているのがアルゴス2だった。
「テメェ……ちょこまかと逃げ回りやがって!」
「そろそろか……」
目の前の角を右に回り、近くのビルへ身を潜めるアルゴス1。当然、後からアルゴス2も角を右に回るが、
「ど、どこへ行きやがった!?」
アルゴス2の頭部が周辺を見渡すも、突如としてその無線が飛び込んだ。
「こっちだ!」
「!?」
タリサが上を見上げたときには、アルゴス1の脚部がアルゴス2へ飛び蹴りをかましており、アルゴス2は大きく傾いてしまう。
「なめたまねしやがってぇ!」
完全に挑発させられたタリサは、機体を起き上がるとアルゴス1のユウヤへコンバットナイフを取り出した。
「ソイツを待ってた!」
ユウヤは、まさにこの戦況を望んでいた。つまり、近術戦を得意とするアルゴス2との格闘戦である。
「俺は刀以外は、そんな玩具は使わねぇ。素手で決めさせてもらう!」
アルゴス1は、両手の拳を握ってボクシングポーズを取った。
「けっ! あたしに格闘で挑んでくるたぁ良い度胸じゃねぇか? 田舎エース!?」
「可愛い子猫ほど、よく喚くってか?」
「なっ……テメェ!!」
顔を赤くしたが、それはすぐに怒りへと変わり、アルゴス2は我を失うかのようにアルゴス1へ襲い掛かる。
「ふふ……感情的になりすぎて動きがバレバレだな?」
そう呟くユウヤ。彼は、余裕の笑みでアルゴス2の繰り出すナイフの攻撃を軽々と交わしている。

「なんと……近術格闘線のエキスパートであるマナンダル少尉の猛攻を、こうもかわし続けるとは?」
その、光景は司令室からも見受けられる。
「あの男、なんて滅茶苦茶なの……?」
オペレーターの一人がそうつぶやく。それを唯衣は聞いていた黙り続けた。
「……」

 「あらよっと!」
 アルゴス1の手刀でアルゴス2の握るナイフを弾き飛ばした。そして、アルゴス2へアルゴス1の容赦ない拳が飛ぶ。
 「オラオラァ!!」
 「うがぁ……!!」
 戦術機の耐久性も構わぬまま、ユウヤは拳を撃ち続けた。そして、
 「おわりだ……あばよ!」
 アルゴス1が握るアサルトライフルの引き金が引かれた。アルゴス2のコックピットはペイントだらけとなり、タリサは撃墜となった。一方のヴァレリアも、ステラのトラップに引っ掛かり、ゲームオーバー。

 「ちっくしょおぉ~!!」
 夕暮れ時のドッグでタリサは相当に悔しがっていた。無理もない。自分が得意とする格闘術が通用せず、それも素手でダウンされてしまった。
 「だが、結構すばしっこい攻撃だった。お世辞じゃねえ、少しヤバかったぞ」
 そんな彼女の後ろからユウヤが現れる。そして、彼が強化装備を着ないまま戦術機に搭乗していたことも、この場で知られた。
「ったく! こいつは本当に人間かよ?」
生身で戦術機にとびかかるわ、強化装備もなしで戦術機のGに耐えきれるわと、タリサにとってユウヤは超人以上の存在を思えた。
「あんな全身タイツなんてこっぱずかしくて着ていられるかよ? チョビ」
そうユウヤは、彼女に仇名を付けて呼んだ。
「は、は!? 誰がチョビだぁ!?」
「始まったね? こいつは、部隊に馴染むと仲間たちにそれぞれ仇名を付ける癖があるんだよ? あいつ、もうこの小隊に馴染みやがったのか?」
ちゅどよく、ヴィンセントが割り込んできた。それと同時に、ユウヤは他のメンバーらにも仇名を付けていく。ヴァレリオにはマカロニと付けたが、彼には元から親しまれた仇名があるので、今後は彼をその仇名「VG」と呼んでやることに、そしてステラは……
「へへ! どうせジャイアントおっぱ……」
「こ、こら!」
ヴァレリオの口を咄嗟に塞ぐユウヤだが、ステラに睨み付けられたので適当に、
「ヴィーナス……とか?」
「あら、素敵な名前ね♪」
(やっべぇ……「パーフェクト巨乳オッパイま〇子!」って、マジで言っちまうところだった!)
ユウヤはそう自分の度の過ぎた下ネタを咄嗟に抑えた。彼は、男に対しては普通の仇名を付けることがあるが、いざスタイル抜群の女性を見るとセクハラまがいな、もろ悪口のような仇名をつけるので、よく女性に平手打ちされてふられることがしばしば……
「さぁて! 久しぶりに戦術機乗ったから疲れちまったよ? まぁ、ゲッターほどじゃないけどな? 腹も減ったし、飯にしようぜ!」
と、ユウヤは新たな仲間アルゴス試験小隊をディナーへ誘う。そして、彼らにつけた仇名で呼び始めた。
「行こうぜ? チョビ、VG、パーフェクト巨乳オッパイま〇子!……あ」
「はっ?」チョビ
「いぃ!?」VG
「……」ステラ(パーフェクトオッパイま〇子!)
「あ……」ユウヤ
つい、口にしてはならない名をあっさりと口にしてしまったユウヤ。そしてステラはニッコリと微笑みながら彼へ歩み寄る。
「フフッ……」
フルフルと拳を振るわせながら彼女の強烈なビンタが、ユーコンを照らす夕暮れに向かってユウヤの叫びと共に響いた。
「いってぇ~!!」

夕食を済ませ、ユウヤは通路を歩いていた。
「んだよ……あんなに強く叩くこたぁねーだろ?」
手形のついた頬に手を添えながらユウヤはトボトボと歩いた。しかし大抵は、彼への自業自得である。
ユウヤは演習で疲れた体をいやすべくシャワールームへと足を運ぶ途中、通路内で偶然にも唯衣と出くわした。
「お疲れ様です!中尉……」
試験パイロットとなった自分の上司と言う意味で一様部下としての態度を見せて敬礼を向けるが、彼女から帰ってきた言葉は意外なものだった。
「君には失望したよ。ブリッジス少尉……」
「な、何だと……!?」
立ち止まることなくその一言を言ったまま通り過ぎた唯衣の態度をよしとしないブリッジスは彼女の後を追いながら理由を尋ねる。
「おい、待ってくれよ?中尉……失望したってどういう意味だ?」
「……」
突然態度を変えたユウヤに唯衣は立ち止ると彼へと振り返った。
「場をわきまえろ?私はこの通り若くとも、貴様の上官だ……」
「そんなことはどうだっていい!」
「……?」
「俺の操縦は、アンタらが言うように無茶ぶり立ったろうさ? だがな、それが俺のスタイルっつうもんなんだよ? もし、アンタが気に入らないっつう点があるなら俺に何が足りないのかを教えてくれたっていいじゃねぇか? 真っ先に失望したって言われると、マジで腹が立つぜ?」
「ほう?それが、元トップガンともあろう者の言い訳だというのか?」
「あ、あのな……!?」
失礼な態度をとり続ける彼女にユウヤは拳を震わせる。
「とにかく、貴様には一日でも早く不知火の操縦技術を身につけてもらう」
「て、テメェ……それなら上官としてアドバイスぐらい寄こせよ!」
「エースである貴様が、教えをこうとは……見苦しいぞ?」
「……ならいいぜ!そこまで言うなら、自力であのじゃじゃ馬欠陥機を乗りまわしてやるよ!?」
「フン……」
唯衣は鼻で笑うかのようにそっぽを向いて去って行った。
「くそ、あの雌犬ジャップが……!」
堪忍袋の緒がはち切れそうなユウヤはぐっと怒りを抑えていた。

夜更け、ユーコンの屋上で星を眺めていた紅牙はふとつぶやいた。
「嵐が来るな……?」
しかし、夜空は星で一面に輝いている。いや、天候のことを言っているのではない。今日彼と出会ったネオゲッターのパイロットで、XFJ計画の試験パイロットでもある青年、ユウヤ・ブリッジスのことだ。彼から自分と同じ匂いを感じたのである。同種の匂いを。


 
 

 
後書き

稲妻を操りし蒼きゲッター、それに集うはユウヤの親愛なる戦友
 ゲッターロボと戦術機、この壮大な天地の差に唯衣は更なる嫉妬と苦悩を抱く
  そして、紅牙とユウヤはソ連にて二人の女と出会う。この出会いにより二人の運命は・・・・・・

 次回「ネオゲッターロボ!」 
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