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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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竜の宝

次の日の朝・・・

「ふぁ~・・・もう朝か・・・」

俺は布団から体を起こすと、一度大きく背伸びをする。

「ふぅ・・・」

俺は昨日のことを思い出してため息を漏らす・・・あれは間違いなく魔導士の仕業だと思うけど・・・あのドラゴンはなんだったんだ・・・

「まっ、いいか。ウェンディ!起きて!」
「モフモフ~・・・」

俺は隣に眠っているウェンディを起こそうと体を揺する。しかしウェンディはシャルルの尻尾をさわりながら気持ち良さそうに眠っている。

「まったく・・・」
「ウェンディ気持ち良さそう~」
「本当だね」

シャルルはウェンディが自分の尻尾を気持ち良さそうに触っているのを見てちょっと照れたような顔をしている気がする。
セシリーと俺は寝ているウェンディの顔を見ている。本当・・・気持ち良さそうだ。

ドタドタドタドタ

すると廊下を誰かが走ってくる音が聞こえてくる。もう誰が来たかは分かるな・・・

「ウェンディ!!シリル!!まだ寝てるの!?」
「朝っぱらからうるさいわねヨシノ!!」
「おはようヨシノちゃん。俺はもう起きてるよ」

部屋に来たヨシノちゃんは扉を勢いよく開ける。それはもう、扉が壊れるんじゃないかと言うほどの勢いで。

「ウェンディはまだ寝てるの!?も~!!」

ヨシノちゃんはウェンディに近づくと肩をつかんで大きく揺すり始める。

「起きて!!起きて!!」
「ん~・・・違うよシャルル・・・」
「寝ぼけてないで!」
「ちょっとヨシノちゃん・・・揺すりすぎ揺すりすぎ」

ヨシノちゃんのあまりの勢いに俺は少々引いてしまう。そんなに揺すったら首がむち打ちになっちゃうじゃん!
するとウェンディは眠ったまま何かを言い出す。

「ヨシノちゃんはクリオネじゃないよ~・・・」
「プッ!」
「くっ!」
「・・・」ブルブルブルブル

ウェンディの予想外の寝言にシャルルと俺は口を押さえて笑うのをこらえる。セシリーは体を震えさせて笑うのを我慢しているようだ。

「・・・」ブルブルブルブル

それを聞いたヨシノちゃんも体を震わせている。怒っちゃったかな?

「起きろー!!!!!」
「ん?・・・んん」

ヨシノちゃんがウェンディの耳元で大声を出すとウェンディはようやく目を覚ましたようだ。
ウェンディは眠そうな目を擦りながら上体を起こす。

「ごめんシリル・・・寝坊しちゃった・・・」
「大丈夫だよ。昨日はいろいろあったからな」

むしろ寝不足とかにならなくてよかった。今回の依頼は・・・なかなか大変な依頼だからな。寝不足で途中で倒れたりしたら大変だ。

「ヨシノちゃんももう少し休んだ方が・・・」
「休んでなんかいられないよ!私たちドラゴンの亡霊を見ちゃったんだよ!?村のみんなもドラゴンの声をきいてますます不安になってる・・・お願い!早く解決の手がかりを探しに行こう!!」

ヨシノちゃんはそういって俺とウェンディの手を握る。こんなに村の人のことを思ってるなんて・・・ヨシノちゃんはいい子なんだな。

「・・・うん!」

ウェンディも握られた手を握り返し、返事をする。
それじゃあ・・・身支度しますか。

「じゃあ俺たち着替えるから・・・」
「それなら任せて!」

俺は着替えようと服を持って脱衣場に行こうとしたらヨシノちゃんが俺たちに魔法をかける。すると俺たちの服が変化する。

「わぁっ!!ヨシノちゃんと色違いだ!!」
「いったでしょ?変化させる魔法は得意なの」

喜ぶウェンディと得意気な表情のヨシノちゃん。だけど・・・

「ごめん・・・俺やっぱり着替えてくるわ・・・」
「えぇ!?なんで!?似合ってるよ!?」

ヨシノちゃんが俺に近づいてそう言う。けどね。

「昨日言ってなかったけど・・・俺男なんだ」
「ウソォ!?」

驚くヨシノちゃんは俺の周りをぐるぐると歩きながら見つめる。

「わ・・・私よりかわいいのに・・・男なんて・・・男に負けるなんて・・・」
「いや・・・ヨシノちゃんの方が全然かわいいよ?」

ヨシノちゃんがorz状態になってしまうのを俺は慰める。なぜかウェンディが俺を睨んでるけど・・・どうしたんだ?なんか悪いことしたかな?

「う・・・ウェンディ?」
「私にはかわいいなんて言ってくれないのに・・・」ボソッ

ウェンディが頬を膨らませながら何かを言ってるけど・・・あまりにも声が小さくて俺には聞き取れなかった・・・





















しばらくして・・・

ようやく着替え終わったので、俺たちはヨシノちゃんの家から出て村の中を歩いている。

「これからどうするの~?」

セシリーが質問してくる。そうだな・・・

「まずは村で消えた人たちの情報を集めましょ!」
「そうだな」
「わかった!」

シャルルの提案に俺とウェンディが返事する。俺たちは村でいなくなった人たちの情報を聞いて回ることにした。
いなくなった人の名前、年齢、性別、日時、場所・・・聞けそうなことは全て聞いてみた。そして、集めた情報をヨシノちゃんの家に戻って地図に書き出してみる。

「これで全部ね・・・完成!」

シャルルが作った地図を俺たちに見せる。それを俺とウェンディは顎に手をおき見つめ、ヨシノちゃんとセシリーは頭に?マークを浮かべている。

「これ何~?」
「こんな図作って何か意味あるの?見てもよくわかんないよ?」
「アンタたち・・・もっと頭使った方がいいわよ」
「何よ猫のくせに・・・」
「何よクリオネ頭・・・」

セシリーとヨシノちゃんはなぜ地図を作ったのかわかってないみたいだった。
シャルルに頭を使えと言うとヨシノちゃんはシャルルとにらみあってしまう・・・何やってんだか・・・

「お前ら・・・少し落ち着け」
「シャルル!ヨシノちゃん!今はそんなことやってる場合じゃないでしょ?」

俺とウェンディが割って入ると、二人は落ち着きを取り戻し、にらみ合いをやめる。

「いい?まずは一つ。事件は半年前から突然始まってるわ。
つまり半年前に村に何か変化があったはずよ」

シャルルは腕を組みながら言う。地図を見て確認すると・・・最初にいなくなった人は確かに半年前にいなくなっていることがわかる。

「半年前かぁ・・・」
「ヨシノちゃん、何かわかんない?」

俺がヨシノちゃんに聞くとヨシノちゃんは何かを考えている・・・その表情は心当たりがあるような顔に俺には見えた・・・のだが

「・・・別に、何も」
「そっか・・・」
「ふ~ん・・・」

ヨシノちゃんは首を横に振り、そう言った。ヨシノちゃんは村を守りたいって言ってたし、何かあるなら教えてくれるだろう。さっきの顔は俺の勘違いだったかな?

「それからもう一つ」

シャルルは地図のあるところを指さす。その指をさした場所は・・・竜の谷。

「人が消えたのは全て竜の谷の近く!おそらく・・・谷に人を近づけたくない理由があるのよ!」
「「「!」」」

シャルルに言われウェンディたちは驚いた顔をする。確かに竜の谷の近く・・・しかもよく見ると、徐々に竜の谷から離れていっている・・・よほど近づけたくない理由があるんだな・・・

「じゃあ・・・橋の怪現象も昨日のドラゴンも・・・」
「僕たちを谷から遠ざけるためなの~!?」
「たぶんね・・・竜の谷を調べればきっと何か出てくるわ」

シャルルはそう言ったあと、俺に視線を移す。

「シリル・・・アンタ昨日谷を調べたとき・・・何か分からなかった?」
「そうだな・・・」

俺は昨日谷を調べたときのことを思い出す。わかったこと・・・あれくらいしかないな・・・

「橋のトリックぐらいしかわからなかったよ」
「「「「橋のトリック?」」」」

四人は俺に視線を向ける。

「昨日あの橋を見てたら途中で光ったような気がしてさわってみたんだ。そしたら、あの橋は氷でできた橋だってことがわかったよ」
「氷でできた橋・・・」
「そう。しかも強度的にはかなり弱い氷でできてたみたいだから、人が乗ると簡単に壊れる。でも氷の魔導士なら・・・あれくらいの橋、簡単に復元できる。だからいかにも壊れた橋が突然直ったように見えたんだと思うよ」

俺が説明するとウェンディたちはなるほど、といった顔をする。まぁ、あくまで推測だけどね。

「他には?」
「あとはよくわかんなかったな。霧もすごかったし」
「そっか・・・」

シャルルに質問され、俺はそう答える。ヨシノちゃんはそれを聞いて残念そうにそう言った。

「まぁ、しょうがないわ」
「もう少し何か共通点がないか探してみよ~」
「うん!」
「だね」
「そうだな」

セシリーの提案によって俺たちはもう少し行方不明になった人たちの共通点がないか調べることにした。






















ドタドタドタドタッバンッ

「ウェンディ!!シリル!!」

しばらくするとヨシノちゃんが俺たちがいる部屋のドアをすごい勢いで開ける。

「ヨシノちゃん?」
「どうしたの?」
「ど・・・どうしよう・・・お父さんが・・・お父さんが・・・」

ドアを開けたヨシノちゃんは涙を浮かべ、少し震えている。どうしたんだ?

「お父さんがドラゴンに連れていかれちゃった!!」
「「えっ!?」」

ヨシノちゃんの言ったことに驚く俺とウェンディ。俺はヨシノちゃんのお父さんが寝ている部屋に向かう。

バンッ

「本当だ・・・」
「そんな・・・」

俺とウェンディが部屋につくとそこには眠っているはずのお父さんの姿はない・・・

「ど・・・どうしよう・・・ウェンディ・・・シリル・・・」

ヨシノちゃんは泣きながら俺たちにしがみつく。

「落ち着けヨシノちゃん」
「・・・そうだ!どこかに出掛けただけかも」
「違うよ!!あんなケガでどこいくの!?」

俺とウェンディはヨシノちゃんを落ち着かせようとするが、ヨシノちゃんは顔を押さえて泣き出してしまう。
でも・・・どこに行ったんだ?あんなケガをしてるって言うのに・・・
俺が悩んでいるとウェンディが

「もしかしたら・・・」
「ウェンディ!?」
「ちょっと!?」
「どこいくの~!?」

ウェンディがどこかに走り出してしまう。

「お父さん・・・お父さん・・・」
「ヨシノちゃん落ち着いて」

俺は泣いているヨシノちゃんの背中を擦る。それにしてもウェンディはどこに・・・

「あ・・・」

俺はさっきまで俺たちが話していたことを思い出す。もしかして・・・あの話を聞いて、竜の谷に向かったんじゃ・・・
それなら・・・

「行くよヨシノちゃん!!」
「え?どこに・・・」
「お父さんのいるところだよ」

俺はヨシノちゃんの手を握り家を飛び出す。ウェンディはさっきそれに気づいたんだ。たぶんウェンディも同じように向かってるはず・・・

俺たちがしばらく走ると、俺の予想通りウェンディと一緒に傷だらけのお父さんがいた。よかった。

「お父さん!!」
「・・・ヨシノ・・・」

ヨシノちゃんはお父さんを見つけると駆け寄り抱きつく。そして目にたまっていた涙は一気にこぼれ落ちる。

「おと・・・さ・・・消えちゃったかと思ったぁ・・・」
「ヨシノ・・・」

俺はそれを見てひとまず安心する。だけど・・・

「シリル・・・」
「・・・わかってるよ・・・」

セシリーが不安そうに俺を見る。俺は泣きわめくヨシノちゃんを見て、このままじゃダメだと思う。おそらく・・・ウェンディもそう思っているのだろう。
人が消える・・・それは誰にとっても辛いことのはずだ・・・ましてや大切な人が消えてしまったら・・・俺だってもしウェンディやセシリー・・・シャルルがいなくなったりしたら・・・

「ウェンディ・・・ヨシノちゃんと一緒にいてくれ」
「・・・シリルは?」

俺はウェンディの方を向く。

「竜の谷に行って・・・原因を突き止める!!」

俺はウェンディにそう言い残し、竜の谷に向かう。今度こそ・・・今度こそ犯人を見つけてやる!!






















「とは言ったものの・・・ここって昼でも不気味なんだな・・・」

俺は竜の谷についた。昨日は夜来たから不気味な感じがしたのかと思ったが・・・昼でも十分気味の悪いところだ・・・ウェンディが来たら涙目かもな・・・

「さてと・・・何か手がかりはないかな?」

俺は調査を始めようとした。すると

「シリル!!」
「誰だ!?うわっ!!」

突然声をかけられビクッとなりながら振り向こうとした。しかし谷の崖になっているところにかなり近づいていたためバランスを崩し落ちそうになる。

ガシッ

しかし俺に声をかけたシユウが手を取ってくれたおかげて落ちなくて済んだ・・・死んだかと思った・・・

「大丈夫?」
「うん・・・助かったよ。ありがとう」

俺は礼を言う。そういえば・・・なんでこいつはここにいるんだ?

「シユウ・・・さんはなんでここに?」
「シリルが谷に行くのが見えたから・・・」

それでついてきたのか・・・

「一人でこんなとこきたら危ないだろ!?ほら帰るよ!!」

シユウさんはそういって手を出す。だけど・・・

「すみません。俺・・・この怪現象の理由を突き止めなきゃいけないんで・・・ヨシノちゃんや村の人が安心して生活できるようになってほしいから・・・だから悪いけどまだ帰れないです」

俺がそう言うとシユウさんはため息まじりに笑って見せる。

「・・・わかった。でも一人じゃ心配だから、俺が案内するよ。ついてきて」
「え?は・・・はい!!」

俺は先をいくシユウさんについていく。谷の下に降り、しばらく歩くと何か洞窟が見えてくる。

「洞窟?」
「足元気をつけて」

シユウさんがそういって手を差し出す。俺はその手を握り、凸凹した洞窟の中を進んでいく。シユウさんは女の子だけに優しくする奴じゃないのか・・・ただの心優しいイケメンさんか・・・しかし・・・

「なるほど・・・こうやって女の子はエスコートするのか」ボソッ
「? 何か言った?」
「ううん。なんでもない」

俺は横に首を振り、返事をする。ただ今後のウェンディとの行動の時の参考にさせてもらうだけですので。
しばらく歩くと光が入ってきているところがあることに気づく。なんだ?
するとそこには今まで見たことのないような光景が広がっていた。

「ここは竜の巣だよ」
「竜の巣・・・?」

俺がその光景に見とれているとシユウさんが教えてくれる。

「村の人間はそう呼んでる」

俺は竜の巣の中を見て回る。それにしても・・・なんて神秘的なところなんだ。谷底にこんなところがあるなんて・・・お?

「すげぇ!水もきれいだ!!」

俺は湖になっているところにしゃがむと、その水に手を入れる。とても冷たくて、そして今までの水の中で一番きれいな水のような気がする。
水の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)である俺にはこの水がすごいいいものだということが一瞬でわかる。
俺はその水を眺めていると不意に視界にあるものが入る。それはドラゴンの骨・・・

「ドラゴン・・・?」
「驚いた?百年前に倒されたドラゴンの骨だよ」
「なるほど・・・それで竜の巣っていうのか」

いつのまにか隣に来ていたシユウさんが説明してくれる。
シユウさんは近くにある岩に腰かける。

「あれのおかげで村の人はここに近づかないから・・・一人になりたいときはたまに来るんだ」
「へぇ・・・」

確かに村の皆さんはドラゴンにひどく怯えていたからな・・・こんな物があったら近づこうとは思わないだろう。俺は少し疲れたのでシユウさんの隣に座る。するとその顔がとても暗いように見える・・・どうした?

「シユウさん?」
「・・・俺さぁ・・・両親をなくしてさ・・・まだこの村に来て一年もたってないんだ」

両親を・・・なくした?

「ご両親は・・・なんで・・・?」
「俺の住んでた街がさ・・・何者かに襲われて・・・俺以外みんな殺されちゃったんだ・・・」

シユウさんは辛そうな声で答える。やべぇ・・・嫌なこと思い出させたかな?

「す・・・すみません!!」
「ううん。気にしないで。村の人はみんな良くしてくれるけど・・・たまにそれがすごくさみしくなるんだ・・・
だからここに一人になりに来るんだ」
「・・・わかる気がするよ・・・」
「え?」

俺の言葉に驚くシユウさん。

「俺とウェンディも、最近今のギルドに入ったんです・・・皆さんすごく優しいし、いい人なんです。だけど・・・なんか気を使わせちゃってる気がするんですよね・・・」
「まだ仲間として認めてもらえてない気持ちになる?」

シユウさんにそう言われ考える。

「それとはなんか違うんですよ・・・皆さん年上だから・・・年下の俺たちを気にしちゃってるのかな・・・って思っちゃって・・・」

仲間としては・・・どうなのかな?認められてるのかどうか・・・よくわかんないな・・・ハッ!!
何言ってるんだ俺!!

「そ・・・そろそろ村に戻りましょう!みんな心配してるかもですし」

俺は話を強引に変えて、立ち上がる。すると突然シユウさんに目を塞がれる。

「まだダメだよ!」
「ちょ!?何すんですか!?」

俺は慌てて手を払おうとするが、

「いいもの見せてあげる。そのまま歩いて」

シユウさんが歩くように急かしてくる。何する気だ?まさか・・・

「シユウさん・・・」
「何?」
「念のため言いますけど・・・俺男ですからね?」
「えぇ!?」

俺がそう言うと心底驚いた声を出す。シユウさん・・・あなたもてすか・・・

「ごめんごめん。女の子だとずっと思ってたから驚いちゃって」
「いえ、よく間違われるので。気にしないでください」
「そっか。まぁいいや。もうすぐだから。歩いて歩いて」

シユウさんに言われて俺はゆっくりと歩く。なんだ。別に変なことをされるわけじゃないんだ。安心した。
しばらく歩くと、シユウさんは手を離す。

「・・・見て、竜の宝って言うんだよ」

そういってシユウさんが見せてくれたのは宝石みたいな石だった。

「すごいきれい・・・」
「この石にはどんな願いでも叶える力があるんだって」
「どんな願いでも・・・?」

シユウさんの言葉に俺は少し驚く。

「どうすればその力を使えるかはわからないんだけど・・・」

シユウさんはそういって竜の宝を手に取る。

「・・・でもシリル・・・君たちにならわかるんじゃないか?」
「え・・・ええ!?」
「この力の使い方を教えてくれ!」

シユウさんは俺に竜の宝を渡してくる。使い方なんて・・・いきなり渡されてもわかるわけないじゃん!!

「ギルドの魔導士ならできるだろ!?」

シユウさんが一歩詰め寄ってくるので思わず後ずさる。

「いきなりそんなこと言われても・・・」
「お願いだシリル!!」

ドン

シユウが俺の後ろの石の壁を叩く。

「これが使えれば消えた人たちだって救えるんだ!!」

シユウさんが真剣な表情でそう言う・・・そっか、この石に本当にそんな力があるなら・・・使い方さえわかれば村の人たちを救うことができるんだ・・・でも・・・

「・・・すみません・・・俺には使い方が本当にわからなくて・・・」
「「何してるの(んですか)!?」」

すると俺たちがきた洞窟の方から叫び声が聞こえる。この声は

「ウェンディ!!ヨシノちゃん!!」
「ごめんなさいシリル・・・」
「二人ともシリルのところに行くって言い出して~」

二人に抱えられたシャルルとセシリーが申し訳なさそうに言う。

「心配したんだよ!!」
「谷底に行くなら行くって言ってよ!!」
「ご・・・ごめん」

ヨシノちゃんとウェンディに叩かれる。そんな心配してくれたのか。というか二人とも泣かなくても・・・

「暗くなる前に村に戻りましょ」
「もう日が落ちて来ちゃったよ~」
「早く戻ろ!シリル」
「う・・・うん」

ウェンディに手を引かれて歩き出す。俺はその際シユウさんを見るとシユウさんはヨシノちゃんと何かを話しているようだった・・・






















ヨシノちゃんの家にて・・・

「「「竜の宝?」」」
「うん。どんな願いでも叶える力があるんだってさ」

俺は昼間シユウさんに見せられたものの話をウェンディたちにしている。

「へぇ・・・そんなものが・・・」
「つまり、竜の谷から人を遠ざけるのは」
「その宝を守るため~?」
「そうなのかな・・・?」

三人に言われて俺は考えてしまう・・・

「でも普通にキレイな石みたいだったよ。どうすればその力を使えるのかもわからないみたいだし・・・」

あの石に本当にそんな力があるのか?それに・・・

コンコン

俺が考えていると誰かが部屋をノックする。といってもヨシノちゃんしかいないけどね。

「は~い」
「どうぞ」

ウェンディと俺が返事をするとヨシノちゃんは勢いよくドアを開け

「たのもーー!!」
「「!?」」

果たし状と書かれた封筒を俺に渡す。え?え?なんで?






















人気のない森にて・・・第三者side

ヨシノにつれられたシリルたちは森の中の開けたところに来ている。

「行くよシリル!!」

ヨシノがシリルに攻撃するがシリルはそれを避ける。

「水竜の・・・咆哮!!」
「ギャー!!」

シリルの放った咆哮をかろうじて避けるヨシノ。

「手加減って知らないの!?バカー!!」
「え?ご・・・ごめん・・・」

ヨシノに怒られ謝るシリル。それをシャルルたちはあきれたように見ている。

「ヨシノちゃん・・・」
「シリルとウェンディに魔法を習いたいならそう言いなさいよ」
「だ~って、[果たし状]って一度やって見たかったんだもん!」
「じ・・・自由だね~・・・」

ヨシノのしょうもない理由にあきれる四人。そんな中シャルルはヨシノに気になっていた質問をする。

「そういえば、アンタ魔法は誰に教わったの?」
「お母さん!!うちのお母さんの家系が魔導士なんだ!村で唯一の魔導士一族なんだよ!」

シャルルの質問に嬉々として答えるヨシノ。それを見ているウェンディとシリルは話ずらそうに言う。

「・・・やっぱりこの村の魔導士はヨシノちゃんだけだよね」
「どうしたのきゅうに?」
「昼に俺言ったでしょ?あの橋のトリックは氷の魔導士がやっていることなんだって。最初は外部の人間がやってるのかとも思ったんだけど・・・」
「もしかしたら村の人の中に・・・」

シリルとウェンディの推測を聞いたヨシノは怒る。

「魔導士は私だけだよ!!村の人を疑わないで!!」
「ご・・・ごめんヨシノちゃん」
「す・・・推測だから・・・ごめんね」

ウェンディとシリルはヨシノに謝る。ヨシノは我に帰り申し訳なさそうな顔をする。

「・・・ごめん。みんなとは生まれたときからずっと一緒だから、疑いたくないの・・・」

ヨシノはそういって顔を隠してしゃがむ。それを見たシリルとウェンディもその場に腰をおろす。

「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」

しばらくの沈黙・・・

「・・・っていうかシリルとシユウっていい感じですよね?」
「敬語!?」
「いや待て!!それはおかしい!!」

顔を上げたヨシノはふてくされた顔で言う。ウェンディは突然の敬語に驚き、シリルはまさかの発言に驚く。

「お前・・・俺は男だからな!!」
「男同士の恋愛も私好きだよ?」
「そういう問題じゃねぇ!!」

ヨシノのまさかの告白・・・ヨシノはそのまま横たわる。

「・・・なんだか、いろいろうまくいかないなぁ・・・」
「・・・ヨシノちゃんは・・・どうしてシユウさんのこと好きになったの?」
「え~・・・///」

ウェンディの唐突な質問に顔を赤らめるヨシノ。するとヨシノは夜空に浮かぶ星を指さす。

「あの星とおんなじ・・・かな」
「え?」
「どういうこと?」

ウェンディとシリルは意味がわからず聞き返す。

「たくさんある星の中で、なぜか目にとまる星ってあるでしょ?
[なんで]とか[どうして]とかわかんないけど」
「確かにあるかもね・・・」
「うん・・・」

ヨシノの言葉にシリルとウェンディは同意する。

「始めて会ったとき、シユウだけ“特別”に見えたんだ。
他の人を見てもこんな気持ちにはならない・・・シユウだけが“特別”なの」

ヨシノは笑顔になり言う。

(特別・・・か・・・)

シリルはウェンディの方を向くとウェンディと目線が合い、二人ともとっさに視線を反らしてしまう。

(ビックリした!!目が合った・・・ウェンディもこっち見てたのか?)
(シリルと目線が合っちゃった!!今の話のあとだと変に意識しちゃうよ・・・)

二人はそんなことを考えていると突然顔に水がかかる。

「「うわっ!!」」
「隙あり~」ドヤッ

手から水を出してどや顔するヨシノ。

「やったな!!」
「ええい!!」
「うわあっ!!」

どや顔のヨシノにシリルとウェンディが魔法を放ち、ヨシノはそれをかろうじて避ける。
その後しばらく三人は魔法を使って遊んでいた。そして気がつくと辺りは暗くなっていた。

「そろそろ帰ろうか?ヨシノちゃんのお父さんも心配するし」
「そうだね」
「うん!帰ろう帰ろう!!」

シリルが帰ろうと言うと、ウェンディとヨシノもそれに賛成する。

「はい!」
「ん?」

ヨシノがシリルに右手を差し出す。よく見るとヨシノとウェンディが手を繋いでいる。シリルは差し出された右手を握り、三人は一列になってヨシノの家へと帰っていった。






















しばらく歩くと三人はヨシノの家に到着する。

「お風呂先につかって」
「ありがとー!シリル!先に行っていい?」
「いいよ」

シリルたちは家の中に入るとヨシノは自分の部屋に、シリルとウェンディは借りている部屋へと向かう。
シリルたちが部屋へとつくとウェンディはタオルを持って風呂場に向かう。

「じゃ、先行くね!!」
「うん!いってらっしゃい」
「私も行くわ」
「僕も今日はウェンディたちと入ろ~っと」

部屋を出る際にシリルに手を振るウェンディ。シリルもそれに手を振り返し、シャルルとセシリーはウェンディのあとをついていく。

「さて・・・うがいだけでもしておくかな」

ウェンディたちを見送ったシリルは手洗いとうがいをしに部屋を出る。
シリルが台所へと向かっているとヨシノの父がシリルに声をかける。

「シリル!」
「はい?」

シリルはヨシノ父への部屋へと入る。

「竜の谷に行って・・・何かわかったかい?」
「・・・あ・・・」

シリルはそんな質問をされ、何も調べられてなかったことを思い出す。竜の巣や竜の宝・・・あれも関係あるのかもしれないがそれについても何も調べていない。

「す・・・すみません!!」
「いや・・・いいんだよ。ごめんね。こんなことをお願いしてしまって・・・」

頭を下げるシリルと申し訳なさそうな顔をするヨシノ父・・・

ドタドタドタドタ

二人が話していると部屋の前をヨシノが通りすぎる。

「ヨシノの奴・・・どうしたんだ?」
「さぁ?」

二人は部屋から廊下に出ると、ヨシノは自室の部屋を勢いよく開けて中に入ってしまう。
二人は顔を見合わせる。

「・・・そっとしておいた方がいいかもな・・・」
「・・・そうですね・・・」

二人はそう言うとヨシノ父は部屋に戻り、シリルはうがいをするため台所に向かった。





















少し遡って・・・

「ウェンディ!!シリル!!この石鹸・・・」

ヨシノはウェンディとシリルが借りている部屋に入る。その手にはおニューの石鹸が握られているが、渡そうと思った二人はそこにはいなかった。

「なーんだ。ウェンディはそのままお風呂に行っちゃったのか・・・シリルはおトイレかな?」

ヨシノは石鹸を渡しにお風呂場に向かおうとする。すると

コツン

窓を叩く音がする。ヨシノがそちらを向くと窓の間から部屋の中に一枚の紙が入っているのが目に入る。

(?・・・手紙?)

ヨシノはその紙を手に取り、開けてみる。そこにはこう書いてあった。

[大事な話があるんだ。明日、竜の谷で会いたい。シユウ]

ヨシノはその手紙を読み、口元を押さえる。

(そんな・・・もしかしてシユウはシリルのこと・・・?)

ヨシノはシユウからの手紙を見てしまい、ひどく動揺する。
動揺したヨシノは、その手紙を持って自室へと走り出す。

(・・・どうしよう・・・どうすればいいの・・・?)




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。最後のヨシノのシーンを出すために終盤は第三者sideにさせていただきました。
ウェンディがされるはずだった壁ドンをシリルにしたのは、たぶんウェンディがシユウに壁ドンをされたらシリルが発狂してしまうのでは・・・と私が勝手に思ってしまったのでシリルが変わりに壁ドンされてみました。
ちなみにシリルのシユウに対する態度が前の話とあからさまに違うのは、このときはウェンディがいないのでライバル心を持っていないからです。
次回も最初は第三者sideで始めさせていただきます。次回もよろしくお願いします。 
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