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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第百六十三話 親

 
前書き
及川遭遇 

 
ディアボロモン・ルインモードを倒した大輔達は子供達を誘拐した男を探していた。

大輔「ディアボロモンは何とか倒せたけど…」

フェイト「あの、アルケニモンとマミーモンを従えている男に誘拐された子供達が心配だね」

暗黒の種を植え付けられた子供達は今、どうなっているのだろうか?

エリオ「父さん、どうにかして情報を集めましょう。少しでも子供達を…本来なら僕よりずっと年上なんだからこういう言い方はおかしいんでしょうけど…」

ルーテシア「でも、今の私達より年下の子もいるよ?」

キャロ「ルーちゃん。それを言ったら、スバルさんやギンガさんやティアナさんやルカさんも私達より年下だったよ。私達全然成長しないし」

ルカ「…そう言えば確かにそうですね。エリオさん達が次元漂流してから約2年は過ぎたのに、爪すら伸びていません。まるで世界統合前の大輔さんと賢さんのようですね」

実際世界統合後はしっかりと大輔達も肉体的な成長をしている。

アリサ「言われてみればそうね。まあ、未来人のあんた達からすれば都合がいいんでしょうけど」

ティアナ「エリオさん。未来の私達から何か聞いてない?」

ティアナはただ問いかけただけなのだが、エリオはどこか恥ずかしそうだ。

エリオ「…何か改めてティアナさんに“さん”付けされると妙な気分ですね」

フレイモン[そっか、本来ならティアナもルカもスバルもギンガもお前やキャロやルーテシアより年上だもんな]

エリオ「はい、だからルカさん達に“さん”付けされると物凄い違和感が…」

なのは「にゃははは…確かに年上の人に“さん”付けされると違和感バリバリだよね」

苦笑しながらなのははエリオの言葉に同意した。

賢「それにしてもあの男は………」

リイン「とーさま、あの人っておじさまのお葬式に来ていたんですよね?」

賢「?そうだけど」

娘の問いに首を傾げながら、賢はリインの問いに答える。

リイン「お葬式って縁のある人でないと行けないんですよね?なら、おじーさまとおばーさまのお知り合いじゃないですか?」

すずか「あ、言われてみればそうだよね」

リインの言葉にすずかも頷いた。

大輔「賢、お前の親父さんやお袋さんに聞いてみようぜ。暗黒の種が敵の手にある今の状況はあまり好ましくないしな」

賢「…そうだね。行ってみるとしようか」






























「ほら、これだよ」

賢の父親が持ってきたのは、新聞の切り抜きが貼り付けてあるノートだった。

リイン「この人です。」

賢「父さん、これ貰ってもいいかな?」

「ああ。でも、無茶だけはするんじゃないぞ?それから…」

賢「それから?」

「はやてちゃんかすずかちゃんとは結婚式をちゃんと挙げなさい。」

賢「…取り敢えずツッコまないでおくよ」

リイン「じゃあ、おじーさま。またねです」

「ああ、たまには遊びにおいで」

ワームモン[賢ちゃん。行かせる気?]

賢「一応、リインのお祖父ちゃんとお祖母ちゃんだしね。少し甘すぎるところがあるから頻繁には駄目。」

大輔「賢も父親だな…」

フェイト「うん…」

しみじみと言う大輔とフェイト。
お前ら何歳だとツッコミたくなったなのは達は決して間違ってはいないだろう。

ブイモン[及川由紀夫か…]































ユーノ「…どうみても、ただの人間ですね。この人間がどうしてアルケニモン達を操れるんでしょうか」

すずか「多分、アルケニモン達の生みの親だからだと思う」

なのは「生みの親?」

賢「父さんの部署って、遺伝子とかゲノムとか、そう言う事を題材にしてる部署なんだ。その部署に及川が居たってことは、そう言う事に関する専門知識だってあると思う。多分…」

はやて「多分?」

賢「自分の遺伝子や染色体をデータ化して作り上げたんだと思う。リインと同じように」

そう、人や生物を形成する遺伝子に、性別を決める染色体。
そして後はデータと言う命を吹き込めば、多分デジモンは及川にとって簡単に作り上げる事が出来てしまう。

ブイモン[及川由紀夫ねえ]

クロアグモン[………?]

チビモン[どうしたのお兄ちゃん?]

首を傾げるチビモンにブイモンは苦笑しながら説明する。

ブイモン[いや…及川って、確か伊織の父親の親友の名前と同じなんだよな]

アグモンX[何で君がそれを知ってるんだ?]

ブイモン[ああ、そう言えば言ってなかったっけ?俺の剣の師匠、伊織の祖父さんなんだよ]

ギルモン[あの栗頭の伊織のじっちゃんがおめえの師匠なんか?]

大輔「お前な、何正体バラしてんだよ」

取り敢えず説教をしようとした大輔にブイモンは更に言い放つ。

ブイモン[一応、言っとくけど。伊織とウパモン、思いっ切りバレてたぞ]

それを聞いた大輔は頭痛に頭を抑えた。

大輔「伊織の奴…どこか大丈夫なんだ…」

フェイト「まあまあ、今更言っても仕方ないよ」

賢「ああ、今更言っても仕方ない」

大輔「そうだな…で?ブイモン、そいつは何者なんだ?」

ブイモン[えっと、デジモンを知っていた人間だな。まず]

全員【?】

ブイモンが言うには、2人はデジタルワールドを知っていた。
と言うよりは“信じていた”と言う事。
2人でデジモン達の話をしてはその世界の想いを膨らませていった。
しかし、伊織の父親は死んでしまい、“独り”になってしまった。

大輔「なるほどな、及川って奴は、伊織の親父さんが死んでも、デジタルワールドに行きたいっていう夢を膨らませていったんだな」

ギンガ「でも、だからって他人を巻き込んでいい理由には絶対にならないよ!!」

正義の紋章を持つ彼女にとって、自分の夢のために子供達を利用した及川の所業は許せないのだろう。
ルカも落ち着かせるようにギンガの肩に手を置く。

ルカ「そうですね…及川さんという人の過去には同情しますが、ギンガの言う通り他人を巻き込んでいい理由にはなりませんよ」

大輔「ああ、分かっているよ」

一輝「しかし、問題はその及川って野郎がどこにいるかだ。」
クロアグモン[………]

ギンガ「クロアグモン?」

クロアグモン[…及川達の居場所は…俺なら分かるぞ]

ブイモン[本当か?]

クロアグモン[ああ、俺は元ダークタワーデジモンだったのだからな…]

自嘲するように言うクロアグモンにギンガはクロアグモンの頭をよしよしと撫でた。

大輔「分かった。じゃあクロアグモン、頼むよ」

クロアグモン[ああ、ふむ…あっちのようだな…]

クロアグモンの案内の元、子供達は及川達の捜索を開始した。








































クロアグモンの案内に従い着いた先は人気のない森林であった。
そこには、多くの子供達が倒れていた。
しかも全員行方不明になっていた子供達である。

大輔「どうしてこんな所に子供達が…?」

ブイモン[全員気絶してる…]

?「おや?やっと来たのかな?随分と遅かったね」

フェイト「誰!?」

血色の悪い顔に、高い身長…。
威圧感のような、狂気を感じる男。
これが及川由紀夫。

ルカ「及川由紀夫さん…で、間違いありませんね?」

及川「そうだ。よく調べたと褒めてあげよう」

賢「…あなたはこの子供達に何をしたんだ?どうしてこんな数の子供達が気絶しているんだ?」

及川「なあに、暗黒の花を取ってあげたのさ。放っておいたら身体中から芽が出て暗黒の大樹になってしまう」

賢「暗黒の大樹?僕の時はそんなことには…」

及川「それは君のはオリジナルでこの子達に植え付けたのはコピーだからさ。適合しないのを無理やり植え付けたからね」

フレイモン[それをそいつらに移植したのか!!?]

及川「勿論強制じゃないよ。この子達の同意を得てやった」

クロアグモン[及川…]

及川「お前はダークタワーデジモンか?丁度いい。お前の力も頂こうか」

クロアグモン[断る!!及川、お前は気づいていないのか!?お前の中にある異質に!!?]

及川「何だと?」

クロアグモンの言葉に顔を顰める及川。

クロアグモン[貴様からは異常な物を感じる…お前は何をその身に何を…]

及川「何を訳の分からないことを…」

クロアグモン[今ならまだ間に合うかもしれん。今すぐ正気を取り戻せ!!]

及川「さっきから何を馬鹿なことを…俺は正気だ!!自分の意思で今こうしているのだからな!!」

クロアグモン[ぐ…っ!!]

歯軋りするクロアグモンの頭に手が置かれた。

主税「ここは…わしに任せてもらえんか?」

ブイモン[やっと来たか爺さん]

主税「うむ、ブイモン君から話を聞いてな。急いで来たのじゃ…やはり君は、及川悠紀夫君だったんだな。昔から無口で友達の少ない子じゃったが、こんな事になっているとは…。」

及川「お前は…、」

主税「君の友人、火田浩樹の父じゃ。」

及川「ひ、浩樹のお父さん…」

主税「君達はデジタルなキャラクターが、自由に生きていくことの出来る世界の存在を信じていたようじゃったな…。わしは自分の息子のそんな姿に、不安を感じてそんな夢みたいな話をすることを禁止してしまったんじゃ。その時の悲しそうな顔は今でも覚えておる。それから、青年に成長しても君達はデジタルな世界の存在を信じて、2人だけで夢を膨らませていたんじゃな。が、浩樹の突然の死。あの時の君の落ち込み様は普通じゃなかった。考えてみれば当然のことじゃ。君にとって友人と言えるのは、浩樹だけだったからなぁ…。あの時、わしがもっと君の力になってやれたらとそう思うとな……今更こんなことを言うのも何じゃが、わしの友人になってくれんか?浩樹の子供の頃のことを、一緒に話す相手が欲しいんじゃ…。」

主税がそう言うと、及川の表情が幾分か和らぐ。
嬉しそうな笑みを浮かべて、一歩一歩主税に近づいた。

及川「……浩樹と、一緒の頃…。おじさん、っ、ぐああああああああああ!!!?」

しかし及川は苦しみ始め、嬉しそうな表情から一変し、今度は憎しみの様な感情を映している表情になった。
このままでは危ないと判断したギンガが叫んだ。

ギンガ「お爺さん危ない!!」

ギンガが焦った声で主税にそう言った次の瞬間、及川は主税に向けて闇の波動を放った。

クロアグモン[くっ!!]

間一髪、クロアグモンが主税を押し倒し、主税を救う。
クロアグモンは闇の波動が肩に掠るが命に別状はない。

大輔「及川!!……なっ!?」

賢「…っ!この感じたことのある気配…あいつか!!」

はやて「ど、どないしたんや賢兄、大輔さん!?」

ルカ「奴は生きていたのか…!?」

ティアナ「そんな…!?」

及川の状態を見て、大輔、賢、ルカ、ティアナの表情が変わる。

及川「ああそうなんだな。やっぱり私は独りで無ければならない。今までも。そしてこれからもずっと。」

賢「いけない…!あいつに支配されてはいけない!!無心になるんだ!!何も考えてはいけない!!」

及川「そうだ!私は暗黒の種を全て刈り取らなければならない。私の願いを叶える為に。デジタルワールドに行く為に。」

アリサ「え、ちょ…待ちなさいよ!!」

賢の忠告も届かない及川はそう言うと、アリサの制止も聞かず、高笑いしながら走り去って行った。

大輔「させない…!絶対に…!!あいつの思い通りになんてさせない…!!」

ブイモン[あいつ…生きていたのか…]

ギンガ「クロアグモン、大丈夫?」

クロアグモン[ああ、肩に掠っただけだ…]

大輔「……皆、一度家に帰ろう。」

全員【え?】

大輔「及川を逃がしちまったし、それにここに倒れている子供達を送り届けなくちゃいけない。」

なのは「そうだね…」

大輔達は行方不明となっていた子供達の自宅に連絡し、保護者達に子供達を預けて家路に着くのであった。

 
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