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魔界転生(幕末編)

作者:焼肉定食
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第2話 復活

元治元年から1年間続いた戦乱が今終結を迎えようとしていた。
それは水戸藩で起きた「尊王攘夷派」で改革派と呼ばれた下級武士の集団(天狗党)と「保守派」である武士とのお家騒動。
のちに「天狗党」の乱と呼ばれるものである。
ここで天狗党の乱を詳しく表記するのは辞めておこう。
が、天狗党党首・武田耕雲斎等総勢352名が処刑され、首を晒された。
その夜は極寒で今にも雪が降り出しそうな天候だった。
草木も眠り動物でさえ姿も現すこともない。
そんな中、無数の青白い不気味な火玉が発生し、どんどんと集まってきていた。
そして、その火玉は人の形になっていった。
その形はまだ男なのか女なのかも判明することができない物であったが、徐々に形成されて行った。
そして、それは一人の男のものと変わった。
その姿はキリスト教の宣教師の恰好であり、胸には逆十字のロザリオを下げていた。
「我、復活せり。再び、乱世。今度こそ日の本を焦土と化す」
男は方頬を上げ不敵に、そして残虐に微笑み、また天空へと消えて行った。

土佐では「土佐勤王党」の弾圧が始められていた。
京に潜伏していた岡田以蔵が逮捕され土佐に送還されて以来度重なる拷問により自白に追い込まれ、党員は次々と捕縛されて行った。
その中で土佐勤王党主・武市半平太も例外ではなかった。
が、武市は獄中で奇妙な夢をみた。
(武市半平太殿)
(誰だ、私を呼ぶのは)
暗い空間の中から青白い光を纏った男が現れた。
(我が名は天草。天草四朗時貞)
(ば、馬鹿な!!天草四朗だと)
博識である武市はその名前を知っていた。
(武市殿、あなたはおろらく処刑されるでしょ)
天草と名乗った男の声は冷静で、それでいて歌を歌うような美しいものだった。
(そこであなた様に我が秘術を伝授すべく参上致した次第)
男はにやりと微笑んだ。
(何故、私に?何故、私なのか?)
武市は素朴な質問を男に問いた。
(あなた様は国を憂い国をよき方向に導こうとしたのにも関わらず理不尽にも滅びようとしている。私はそれが忍びないのです)
武市は徐々に光に馴れてなれていった。
そこには女性かと思わせるような美しい顔をした男の姿があった。
(真に天草四朗であるならばお前は化け物か?)
武市は刀を抜こうと柄に手をかけた。
(私が化け物であろうとなかろうとそれは関係のないこと。私はあなた様のお味方であります)
男は微笑みを絶やさない。
(では、その秘術とはなんだ?)
武市は男に問いかけた。
(その秘術の名前は魔界転生というもの)
(魔界転生だと?)
武市にも聞いたことのないような名前の秘術だった。
(左様。魔界転生とはこの世に未練がる有る者が死んだ後も魔界より転生し、蘇るというもの)
(馬鹿な!死んだ者が蘇るなどと有りえぬ)
(では、まずはあなた様が転生してみればよろしかろう)
男は自らの小指を切り取り武市に手渡した。
(その指を粉末にして、飲みなされ。さすれば、あなた様は転生いたします。また、転生したのちあなた様の指を転生させたいお仲間に飲ませるのです。さすれが、その方々も転生いたしまする)
武市は恐る恐るその指を受け取った。
(では、また後程)
その男は光と共に消えて行った。
(待て!!待ってくれ)
そこで夢から覚めた。
武市の手には天草四朗時貞と名乗った男の指がしっかりと握られていた。

 
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