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美しき異形達

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第四十九話 一時の別れその一

                        美しき異形達
                      第四十九話  一時の別れ
 薊は棒を両手に構え薔薇の怪人を見据える、そうしつつ怪人に問うた。
「聞きたいことがあるんだけれどな」
「何かしら」
「あんた達の親は誰なんだい?」
 問うのはこのことだった。
「一体な」
「知らないと言えばどうするのかしら」
「何も知らないとかはないだろ」
 とぼけようとする怪人にさらに返した。
「そうだろ」
「それを私が言うと思っているのかしら」
「普通には言わないよな」
 それはもう既にわかっているとだ、薊も返す。
「あんたも」
「そうよ、聞きたいのならね」
「倒してからだよな」
「そうよ」
 挑発的にだ、怪人は薊に言葉を返した。
「出来るならね」
「出来るんだよな、絶対に」
 今度は薊が挑発的に返した。
「あたしならな」
「随分言うわね」
「何度も言うさ」
 薊はその言葉に挑発さえ入れていた。
「あたしは聞いてやるよ」
「面白いわ、私も約束は守るわ」
 怪人も笑って応える。
「その時はね」
「そうか、あとついでに言うけれどな」
「今度は何かしら」
「あんた只の薔薇じゃないよな」
 その薔薇の姿を見ての言葉だった。
「野薔薇だな」
「あら、わかるのね」
「薔薇と野薔薇はまた違うんだよ」
 同じ様なものではあるがというのだ。
「それでだよな」
「そうよ、私は野薔薇よ」 
 その通りだというのだ。
「あんたの言う通りね」
「そうだよな、やっぱり」
「まあ属性は同じよ」
「やっぱり薔薇だしな」
「そうよ、ではその野薔薇の戦い方をね」
「見せてくれるんだな、あたしに」
「そうさせてもらうわ」 
 こう言ってだった、そのうえで。
 野薔薇の怪人は薊を余裕のある顔で見据えつつ彼女も構えを取った、その両者の横では鈴蘭が日本刀を構えて。
 ハエトリソウの怪人を見据えていた、その禍々しい無数の口を見てだ。
 鈴蘭は怪人にだ、こう言った。
「面白いわね」
「あら、面白いっていうの」
「ええ、ハエトリソウなんてね」
「怖いとは思わないのね」
「面白いわ」
 あえてこう言ってみせたのだった。
「植物園では見たことがあったけれどね」
「私は食虫植物よ」
 怪人は自分から名乗った。
「つまりね」
「私も食べるということね」
「そうよ、もっともね」
 怪人は己の顔の口から語る。
「私の口の大きさじゃ貴方を丸呑みには出来ないわ」
「そうよね、けれどハエトリソウが虫を食べる様にはいかないけれど」
 それでもだというのだ。
「噛んでそしてね」
「溶かしたり噛み千切ることはね」
「それは出来るわ」
 こうあえて言うのだった。
「だから安心してね」
「私が食べられることについては」
「そう、全く何の心配もいらないわ」
 それこそ何一つとして、というのだ。 
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