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遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜

作者:ざびー
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十三話 ーHERO流 ・エンタメデュエルー

 
前書き
最強のHERO、E!
Eを超えた力、D!
Dを超えた……と思う戦士、N!
最狂の戦士(多分)!E!
そして!やっぱり最強なのは、Eでした。
V?ベクター?ダレソレ……。 

 
『どうしたんです……優希さん?』

何も思い浮かばず、机に突っ伏していると何か珍しいモノを見るかのような表情で私の憑きモノもとい、デスガイドが覗きこんでくる。

「どうしようも、こうしようもさ……明日のデッキ、どーしようかと思ってさ。」
『別にいつものガチHEROで瞬殺すれば……あっ、弟君に言われてましたね。』
「そゆこと。」

弟君、つまり徹に言われた事というのは『姉ちゃんは異常なほど強いからもうちょい手加減して?!』との事。
まぁ、自分でもガチ(多少ロマンは含んでる)なデッキをぶん回して、私TUEEEしたいわけじゃない。それに加えて、LDSに見学に行った時のようなラスボス感溢れる人に目をつけられるのは、もうごめんだ。
二点の理由から、デッキ変更を考えているわけだが、デッキが決まらない。

『優希さんのことだから、HEROデッキじゃ……』

……使いたいのが多過ぎて。

『あっ、はい。そっちですか。』

なぜかがっくりと肩を落とすデスガイド。
私がHERO以外使うと思った?いや、まぁ使ったけど【テテュスターボ&自戒神】とか、【ハーピィ&アロマロック】とか半分はネタだし。
そもそも私はHEROデッキが強いから使ってるわけじゃない。ただ単にかっこいいから使っているのだ。強さを求めるなら、ロマン要素なんて捨てるし、それこそジャンドやシャドールの方を使ってる。

『なんか、いつも通りの優希さんで安心しました。
それで?デッキの案は何があるんです?』


「【創世ディスク】と【ディスクライダー】。」

『どっちもアウトな奴じゃないですか?!そもそも、ディスクガイ自体が禁止ですから!』

「いや、ほら?別次元だから、リミットレギュレーションも関係ないかな〜、って思って。」

『ダメですよ!?だいたいなんであんな生きた強欲な壷が誕生したのか理解に苦しみますよ……。おかしいでしょ、蘇生しただけで二枚ドローとか。しかも、何度も何度も湧いてくるし……。』

急に頭を抱えて呻き出すデスガイド。過去に何かあったのだろうか?
【創世ディスク】と【ディスクライダー】は、『創世神』や『光と闇の竜』、通称『ライダー』で『DーHERO ディスクガイ』を蘇生させまくって、ドローしまくる(過労死させる)コンセプトのデッキだ。
強力な分、コンボが決まるまでが遅くその間にやられてしまう可能性もあるし、ドローソースであるディスクガイが除外されたら元も子もないのだ。

「ところで、私が『創世ディスク』か、『ディスクライダー』使ったらどーする?」
『初ターンで、『暗黒の瘴気』引き当てて、墓地荒らしてあげますよ……?』

と気持ちいいくらいに即答された。ちなみにこのとき、笑顔ではあったが目が笑っておらず怖さ、百倍だったりする。

『他の案はないんですか……?』

なぜか目が据わっている状態で訪ねてくる。
なんとなく『カオスループ』とか言ってみたい気がするがそれはそれで後が怖そうだ。

「そうだね……。『虹ネオス』とか、『ダーク・ガイア』、『トリニティー・ワンキル』かな?」
『露骨にワンショットキル狙い過ぎやしませんかね?とりあえず、先二つの打点がおかしいんですけど。』
「別に、いいじゃん。そもそも、対策できてない方が悪い。」

どれも攻撃力一辺倒なデッキだ。むしろ対策できない方がどうかと思う。実際、こちらはマジシリ一発でおじゃんなのだから。

「それにさ、これ以外だとさ……。『素早いHERO』、『ペンデュラム・ネオスペース』、『シンクロHERO』とかだし。」

『『ペンデュラム・ネオスペース』は突っ込まないとして、どっちもガチじゃないですか。てか、今さっきシンクロ使わないって言いませんでしたっけ?』

ここまで頑張って出した案を全否定され、流石に凹む。私なりのエンタィィ↑↑メントを考えた結果だが、駄目らしい。

ん……?エンターテインメント?

『あ、物凄く嫌な予感が……』




ーーーーー
ーーー


そして、翌日。
ニコ・スマイリー氏に指定された場所へと来たわけだが……

「ここ、デュエル塾?」
『どこからどう見ても、寺ですね。』

私達が呆然と立ち尽くす目の前には、南大門もかくやのの荘厳さを誇る門がそびえ立ち、その両脇には厳つい表情をした銅像が来るものを拒む、というより視線だけで殺そうとしてくるほどに睨みつけてくる。そして、その二体もの銅像の威圧感にも負けず劣らずの存在感を放っているのが、門に掛けられた板。そして、そこには『闘勝寺』の文字がデカデカと書かれている。

睨みつけてくる銅像を怯えなからも通過し、敷地内へと踏み入れると中はだだっ広い石畳の床が広がっており、そこで白胴着に帯を巻いた少年たちが修行に勤しんでいた。
ここまでの状況を見れば、カンフー映画にありそうな展開だと思う。
修行が『ドロー』や、『決闘』でなければ。

「遊戯王なら、よくあること。」

改めてここが遊戯王の世界だと思い知らされ、思わずめまいがし、体がふらつく。だが、背中を誰かに受け止められ転倒せずに済む。

「大丈夫、ですかな?」
「ありがと、デスガ……イド?」

「大丈夫」と尋ねられ、半ば条件反射に返してしまう。
あれ、待てよ。あいつ、実体化してないよな……。

『優希さ〜ん……私じゃないですよ〜?』

背後からやや間の抜けた明るい声が響いてくる。
じゃあ、誰だ……。

恐る恐る振り返るとーーー

「だいじょうぶ……ですかな?」
「ひいっ?!ーーー……!?!?」

金剛力士像もかくやの筋肉隆々とした坊主が笑みを作り、此方の安否を伺っていた。
なるほど、GXの鮫島校長をマッスルにしたらこんな感じなのだろうかと内心冷静に判断するも私が起こした行動は真逆で……

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

『ゆうきさぁん!?』


ーーーーー
ーーー


「いやはや、優希さんも大変でしたね〜。」
「自分も外見が少しアレなのは、自覚してるんですがね。まさか、叫ばれるとは……。」

さっきのマッチョ坊主が気まずそうにぽりぽりと頬を掻きながら、ニコ・スマイリーさんと話している。
なぜ、此処にニコ氏が?と思うだろうが、さっきの私の悲鳴ですぐに駆けつけたらしい。

「なに、あの人怖い……」
「見てるだけで、ブルブルするぜ。」
「た、確かに……」

年少組はマッチョ坊主を見て、怯えていたりする。

「だ、大丈夫か、優希?」
「災難だったわね。」
「私もこうなるとは思わなかった……。」

思わず悲鳴をあげてしまい、自分のキャラとことごとく合わない行動をしてしまったとげんなりしていたところ、何を思ってか柚子が優しく声をかけてきてくれる。
ありがたい、と言えばそうなのだが今はなんとなく一人にして……

『ちゃっかり自分のキャラを計算してるところが、またあざといですよね〜。
乙女のスクリーム。本来なら、あの坊主サクッと殺っちゃうところですが、可愛い優希さんも見れたので良しとしましょう。』

……くれないのが、デスガイド。さらっと怖い事を言ってのけるこいつは、本当にキャラがブレない。

若干トラウマになりかけている坊主の方に視線を向けて見ると既に要件は済んだのか、ニコ氏とともにこちらの様子を伺っていた。

「先ほどはすいませんね、優希さん。わたしはこの闘勝寺の住職をやっております、勝真と申します。」
「住職?やっぱり、此処ってお寺?塾じゃないんじゃ……。」

恐らく誰もが抱くであろう素朴な疑問を口にすると住職の代わりにニコ氏が補足説明をしてくれる。

「闘勝寺は由緒正しきお寺でもありますが、正式な決闘塾でもあるんです。まぁ、登録されたのは最近なんですけどね。」
「え、けど寺とデュエルモンスターズって関係がない……」
「えぇそうおっしゃる方はよくいます。我々闘勝寺は精神修行の一環として、デュエルも取り入れているのです。
今そこで行っているのは、精神を無にして、必要なカードを引けるようになる修練です。」

住職の説明で納得したのか、皆納得の表情をしている。
いや、待て待て待て。そこは納得するところじゃないだろ?!
同じ事を思ったのかデスガイドも私の隣で愚痴りだす始末。

『精神修行?私には、ただのドローしてるに見えるんですが……。
それにシャイニング・ドローの練習して何がしたいんですか、ここは。もしかして、悟り開いてZEALにでも至る気ですかね?』

遊戯王にはよくある事……。

御都合主義も真っ青な魔法の言葉でデスガイドに返答すると、既に歩き出していた皆の背中を追いかける。

そして、歩くこと数分。着いたのは紛れもなくこの寺の本堂。中は思ったより広くアクションデュエルをするには充分なほど。そして、天井の中央部にはもはや見慣れたプラネタリウム投影機のような球状の機械が取り付けられている。仏像やらがある空間にあの機械があるのは、なんだか場違いな気がするが改めてここでデュエルをするのだと自覚する。

「ほぉ……。お主が我の挑戦者か?強者と聞いていたが、女子とはな。」

奥の方から低音の声が響き、姿を見せたのは胴着を着、武道の強者の印ーー黒帯を締めた坊主。年齢は同じくらいだろうがどうも老けて……大人げて見える。

「おぉ、鬼龍院君。え〜、彼が我ら闘勝寺のエースであり、今日あなたの相手でもある鬼龍院 烈君です。」

住職がそう言うとこちらへと手を出し握手を求めてくる鬼龍院。なんというか威圧感が凄い。本当にこいつ、ジュニアユースなのだろうか。
さて、互いに固く握手をすれば、残るやることは一つ。
5メートルほどの距離を取り、互いを威圧するように位置取る。

「ほぅ、我を前にして怖気付かなぬか。」
「今さっき恐怖体験にあった身なんで。それにそこらへんの修羅や怨霊より怖そうなのに憑き纏われてるしね。」

おい、デスガイド。どうして首を傾げる。お前だよ。
などと言ってみても見えているのは私だけたいして意味はない。

「さて、準備はよいですかな?二人の強者に相応しい闘いの場を!
アクションフィールド魔法、オン!」

「ーーー《古寺院ーーロスト・サンクチュアリィーー》発動!」

住職の言葉を合図に機械が作動。
本堂はいつの間にか漆黒の帳に閉ざされた外へと変わる。そして、地響きと共に地面から古風な建物が現れ、それに続くように四方を高い塀で囲まれる。
最後に無造作に設置された灯篭へと灯りが灯り、辺りがぼんやりと照らされていく。
だが、しかし……

「っ!暗い!」

流石に灯篭の光では足元まで照らす事は出来ず、周囲もはっきりと見えるのはせいぜい10メートルほどである。まぁそれだけ見えればデュエルするだけなら問題はないはずだが、肝心のアクションカードを取るのに苦労しそうだ。

「甘いな。心の目で見れば、明暗など関係ない。」
「って、完全にあなたに有利じゃない、それ!」

観客席の雛壇から(多分)柚子の声が聞こえてくる。
確かに自分に不利なのは、確かだ。けど……

「そんな逆境こそ跳ね除けてこそ、勝つ意味がある!」

「言うじゃないか、小娘。では、始めようか。
闘いの殿堂に集いし、決闘者達が!」
「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「みよ、これぞ決闘の最終進化系」
「ーーーアクション」


「「決闘(デュエル)!!」」

「私の先行!手札から、『E・HERO アナザーネオス』を召喚!そして、カードを二枚伏せターンエンド。」

私にして静かな1ターン目を終える。もっと動けない事もないが相手のデッキがわからない分、警戒し過ぎても損はない。さて、どんなデッキが来る?

「いくぞ、我のターン……ドロォォォォ!!」

目を深く瞑り、デッキトップへと指をかけ、全身全霊を込めた叫びと共にドローする。まさしく一球、いや一引入魂と言った感じだ。寺なだけあって、ドローひとつにも心の入れ具合が違う……のか?

「我は『和魂』を召喚する!」
「っ!スピリット?!」

薄暗い境内の中で深緑に発光する炎が現れ、鬼龍院の辺りをぼんやりと照らす。
その光景に不気味さはあれど、どこか神聖に思えるそのモンスターの召喚に目を丸くし、向こうは意外だ、と言った趣きのリアクションをする。

「我ら『闘勝寺』直伝の《スピリット》を知っておるか。ふむ、中々侮れんな、娘。」
「娘言うなし。第一、そんな昔のカード……懐かし過ぎてむしろ驚いたわ。」
「前から知っているような言い草……。だが、『温故知新』と言うように古きから新たな発見を見つける事が出来る。古き力も中々に侮れぬ事を見せてやろう!
『和魂』は召喚・リバースしたターン、通常召喚に加え、手札から《スピリット》モンスターを召喚できる。『荒魂』を召喚!そして、『荒魂』の効果!召喚・リバースした時、デッキから《スピリット》モンスターを手札に加える。『伊奘波』を手札に!」

『和魂』とは対になるような紅く燃える人魂が現れる。
確かにサーチ効果や召喚権を増やす効果は強力だが攻撃力に些か欠ける。実際に私のアナザーネオスに二体共攻撃力は下だ。

「さて、戦闘を行ったところで我のモンスターでは敵わない。よって、カードを一枚伏せエンドだ。」

そして、エンド宣言と共に二つの人魂は一度強く発光するとその姿を忽然と消す。

「あれぇ?折角召喚したモンスターが消えたよ?」
「《スピリット』モンスターは召喚・リバースしたターンの終わりに手札へと戻るのだ。よって、『和魂』も『荒魂』も我の手札へと帰ったわけだ。」



「私のターン、ドロー!『矮星竜 プラネター』を召喚!」

光と闇、それぞれの半身を持った小さな竜が召喚される。
レベル4が二体!来るぞ、遊馬!といきたいところだが今回はやらない。この子にはエンドフェイズまで残っていてもらわなければならない。

「さて、どうせ防御手段あると思うけど……バトル!アナザーネオスでダイレクトアタック!」
「ぬぅん!やらせんわぁ!手札から『バトル・フェーダー』を特殊召喚し、バトルフェイズを強制終了させる!」

ネオスの攻撃は鐘の音と共に現れたモンスターに阻まれ敢え無く中断させられてしまう。予想通りなのだが、やはり悔しい。

「私はこのままエンドフェイズに。そしてこの時プラネターの効果が発動!このカードは召喚したターンの終わりにデッキからレベル7の闇属性か光属性モンスターを手札に加える。私は『ライトレイ・ダイダロス』を手札に!」
「ライトレイ?」

またしても聞きなれないカテゴリ名に首を傾げるギャラリー。HEROかと思えば、ドラゴン族を召喚し、今度は『ライトレイ』。あからさまに光属性と関係のありそうなカードが手札へと加わる。一見なんの共通点もなさそうカードたち。
観客たちは興味津々といった感じで私のプレイング一挙一動を見てくる。
だが悲しいかな。お楽しみは……まだ先だ!

「我のターン、ドロォォォォ!よし、『和魂』を召喚!さらに効果で『雷帝神(スサノオ)』を次いで召喚する!」

これで見るのは二度目となる深緑の人魂とかの三貴神の一柱ーースサノオノミコトを模したモンスター。

「そして『強制転移』を発動する!互いにモンスターを一体づつ選び、そのコントロールを入れ替える。『和魂』を選択だ。」
「げっ。……プラネターを選択する。」

私の場に『和魂』が送りつけられ、入れ替わりにプラネターが向こう側へと飛んて行ってしまう。

「そして、リバースカードオープン『八咫烏の骸』。
このカードは二つ効果がある。一つ目はカードを一枚ドローする効果。二つ目は相手の場にスピリットモンスターが存在する時、二枚ドローする効果。
無論、二つ目の効果を選択し、二枚ドロォォォ!」
「そんなっ!

コントロールを入れ替えられ、さらにドローまで許してしまう。流れは完全にあちら側だ。

「さて、バトルだ!プラネターで和魂を攻撃する!」
「っ!しまっ……アクションカード!」

咄嗟に探そうと周囲を見渡すが、この暗さだ。

「さらにアクション魔法発動『怨念ー呪縛ー』!攻撃対象モンスターの攻撃力をそのレベル×100ポイントダウンさせる!『和魂』はレベル4。よって400ポイントダウンし、攻撃力はたった400!」
「なっ!?いつの間に!」
「心眼を身につけた者に明暗など関係ない!やれ、プラネター!プラネット・ストーム!」
「そんなありぃ!?くぅぅ……あぁぁ!!」

プラネターの吐き出した光のブレスが和魂を呑み込み、その余波が私を襲う。
1300ダメージの衝撃は予想以上に大きく、後方に吹き飛ばされ背中を強打する。

『優希さんっ!』

デスガイドの悲痛な叫びが聞こえ、痛く体を無理して起こし平気な事をアピールする。


「『和魂』は墓地に送られた時、自分の場にスピリットモンスターが存在する時、一枚ドローする。コントロールの入れ替えられたモンスターはフィールドを離れた時、持ち主の元へと戻る。よって、和魂は我の墓地へと送られ、一枚ドローだ!
さらに雷帝神でアナザーネオスを攻撃する!天羽々斬!」

このターンだけで3枚ものドロー。さらに鬼龍院の場に攻撃力2000の『雷帝神』が残されている。

「そんな!姉ちゃんが押されてる!?」

「あいにく、タダでやられるわけにはいかないんだよ!リバースカードオープン!速攻魔法『デュアルスパーク』!このカードはレベル4デュアルモンスターをリリースし、フィールドのカード一枚を破壊し、さらに一枚ドローする!
私はアナザーネオスをリリースし、スサノオを破壊!」

アナザーネオスの全身全霊を込めた一撃が雷帝神の剣を砕き、破壊する。

「ぬぅん。私はカードを二枚伏せターンエンド。」
「私のターン、ドロー!通常魔法『光の援軍』発動!デッキトップを3枚墓地に送り、さらに『ライトロード・メイデン・ミネルバ』を手札に加える。
そして、墓地へと送られた『E・HERO シャドーミスト』の効果発動!デッキからHERO一枚を手札に加える。私は『E・HERO ネオス』を手札に加える。
さらに、『ソーラー・エクスチェンジ』発動!『ライトロード・メイデン・ミネルバ』を捨て、二枚ドロー!そして、デッキトップを二枚墓地に送る。そして、ミネルバは手札・デッキから墓地に送られた時、デッキトップを墓地に送る。さらに手札のレベル5以上の光属性モンスターを捨て、『ライトレイ・グレファー』を特殊召喚する。私はコストとして、『E・HERO ネオス』を捨てる。」
「な、何をしておるのだ……自身のデッキを減らして。」

メインフェイズ1だけで私のデッキがごっそりと減り、鬼龍院は目を丸くし唖然としている。だが、これでいい。私のデッキの本領はここからだ!

「さぁ、見せてあげるよ!私の墓地に光属性モンスターは『アナザーネオス』、『ネオス』、『ミネルバ』、『ハンターライコウ』、『ライトレイ・マドール』。よって、これでこいつの召喚条件を満たした!
光臨せよ、光の化身!『ライトレイ・ダイダロス』!」

強烈な閃光と共に姿を現したのは周りを強烈に照らす白い海竜。光の洗礼を受けた『海竜ーダイダロス』の新たな姿。

「な、なんだこのモンスターは!」

なんのコストもなしに召喚された最上級モンスターを前に冷静を貫いていた鬼龍院の態度が崩れる。

「ライトレイモンスターは墓地及び除外されている光属性モンスターの数を満たしている時特殊召喚できるモンスター。そして、『ライトレイ・ダイダロス』は墓地の光属性モンスターが四体以上の時、特殊召喚できる!」
「っ!だから、おのれは率先して墓地にモンスターを送ったというのか!」

肯定の意味を込めて首を縦に振る。そして、まだ私のターンは終わらない。むしろようやく準備が整ったと言ってもいいくらいだ。

「いくよ、『ライトレイ・ダイダロス』の効果発動!フィールド上のカード二枚とフィールド魔法を選択し、選んだカード全てを破壊する!私はあんたの伏せカード二枚と、アクションフィールドを選択する。」
「っ!?」

まさかのアクションフィールド破壊に目を剥いて驚く。

「ぶっ壊せぇ!!ライトニング・パニッシャー!!」

光の奔流がフィールド内を駆け巡りありとあらゆる物体を呑み込み破壊し尽くす。
そして、最後に標的である鬼龍院を狙いを定めた時ーー

「やらせぬ!リバースカード、永続罠『連撃の帝王』!この効果によって、我はおのれのターンでもモンスターのアドバンス召喚が可能!プラネターをリリースし、『砂塵の悪霊』をアドバイス召喚!」

発動された『連撃の帝王』と伏せられていた『スピリットの誘い』を破壊すると代わりに現れたのは『ブラック・ホール』並のリセット効果を持つスピリットモンスター『砂塵の悪霊』。

「このカードが召喚・リバースされた時このカードを除く全てのモンスターを破壊する!」

効果により、『バトル・フェーダー』、『ダイダロス』、『グレファー』の三体が破壊され、フィールドに残ったのは『砂塵の悪霊』一体のみとなる。
そして、二体のモンスターが暴れまわった結果、灯篭は倒れ、本堂は倒壊し、アクションフィールドが作り出す暗闇には亀裂が走っている。

「し、痺れるほど凄まじかったぜ……」
「これじゃ、自然災害か何かだよ…。」
「はは、優希は容赦ないな〜。」

味方陣営はなぜか表情を引きつらせている。

「あれ、そういえば明るい。」

いち早く、柚子がフィールドの変化に気づく。
怪我の功名というべきか、アクションフィールドの亀裂からは周りの光が差し込み、あれだけ暗かったフィールド内を照らしている。そして、向こうもその事に気がついたのか片眉をピクリと震わせている。

「っ。、これでようやく五分五分になったと思え。」

これで五分五分?……

「それはどうかな?私の切り札見せてあげる!『ミラクル・フュージョン』発動!」
「出たっ!優希の融合召喚だ!」
「っ!融合召喚だと!そんな一部でしか学べぬ高度な召喚方法を……!」

ザワザワと騒がしさを増してくる会場。
流れは、こちらに吹いている!

「墓地の『E・HERO アナザーネオス』と『E・HEROネオス』を融合!
二人の英雄よ、神秘の渦の中で一つとなれ!融合召喚!光の英雄此処に見参、レベル8『E・HERO The シャイニング』!!」
「な、なんと……」
「『E・HERO The シャイニング』は除外されているE・HERO一体につき攻撃力を300ポイントアップする!よって攻撃力は3200!」

手札たった一枚消費しただけで攻撃力3000超えを叩き出し、新たに召喚された強力なモンスターに会場が沸く。

「さらに『E・HERO フラッシュ』を召喚する。
バトルだ!シャイニングで砂塵の悪霊を攻撃!オプティカル・ストーム!」
「ヌグォォォォォ!!?」

「さらに、フラッシュでダイレクトアタック!」

二体のHEROによる連続攻撃により、鬼龍院のライフが残り1900まで削られる。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド。」
「我のターン、ドロォォォ!!速攻魔法『帝王の烈旋』発動!このターン、我はおのれのモンスターを生贄する事ができる。そして、我は『和魂』を召喚する。そして、我は『和魂』とおのれのThe シャイニングをリリースし、『八俣大蛇』を召喚!現れよ、古の怪物よ!」

八本の首が地面を突き破り、巨大な大蛇が姿を現わし、その鋭い眼光が私を捉える。

「くっ……Theシャイニングは墓地に送られた時除外されているHERO二体を手札に加えられる。けど、今回はタイミングを逃す。」
「ほぅ、そんな効果もあったのか。
では、こちらは『和魂』の効果で一枚ドローさせてもらおうか。さらに我は手札の『荒魂』』除外し、『伊奘凪』を特殊召喚する!」

私の目の前には、神話にも登場した怪物と真祖。
客席から落胆した声が聴こえてくる反面、今だ私の勝利を信じ応援してくれる味方の声援も聴こえてくる。

「諦めるな、優希!」
「姉ちゃん、頑張って!」

ーー負けられない!!

「いくぞ、我は『八俣大蛇』で『E・HERO フラッシュ』を攻撃する!」
『リバースカードオープン『光の招集』!手札を全て捨て、捨てた枚数だけ墓地の光属性モンスターを手札に加える!捨てた手札は4枚!よって『ライトレイ・ダイダロス』、『ライトレイ・マドール』、『ライトロード・メイデン・ミネルバ』、『E・HERO アナザーネオス』の4枚を手札に加える!さらに、この効果で手札から墓地に送ったシャドーミストの効果で、デッキから『E・HERO ブレイズマン』を手札に!」

「だから、どおしたぁ!このターンで終わる!」
「フラッシュ!お願い!」

八つの頭から放たれた火球が私へと迫るが『E・HERO フラッシュ』が寸前で私の盾となり、直撃だけは免れる。だが、大き過ぎるダメージはそれ相応の衝撃となり、私を襲い、吹き飛ばす。

「『八俣大蛇』は戦闘ダメージを与えた時、手札を5枚になるようにドローする!」
「『E・HERO フラッシュ』は戦闘により破壊された時、このカードと墓地の『E・HERO』三種類をゲームから除外する事で墓地の通常魔法を手札に加える。
私はアナザーネオス、ネオス、シャドーミストの三体を除外し、『ミラクル・フュージョン』を手札に!」

フラッシュが最後の力を振り絞り、カードを投げ渡す。

「それが、どおしたぁ!おのれのライフはたったの1200。そして、壁となるモンスターも居ない!さらに我のフィールドには今だ攻撃を行っていない『伊奘凪』が残っている。
これで、終いだ!『伊奘凪』でダイレクトアタック!」
「っ!?」

「姉ちゃんッ!!」
「優希ッ!」

仲間の声虚しく、伊奘凪の放った斬撃が着弾。辺りを土煙が包み込む。

「もうちと、骨のあるやつと思ったのだがな。他愛ない。」

既に決着はついた、と言わんばかり鬼龍院は踵を返しフィールドを後にしようとする。


◆◇◆

「ねぇ…ちゃん……。」

目の前の出来事に思考が追いつかず、体から力が抜ける。

「そんな優希が、負けた……」

隣に座る遊矢さんがポツリと漏らした言葉を聞き、改めて現実を理解する。

姉ちゃんの残りライフは1200。伊奘凪の攻撃は2200。全くの無防備な状態でその攻撃を受けたのだ。ライフに0が刻まれるのは、誰が見ても明らか。
現に姉ちゃんの対戦相手である鬼龍院さんも背を向け、アクションフィールドの外へと出ようとしている。
その時、ふと違和感に気づく。

「……あれ?アクションフィールドが消えてない!」

デュエルが終了するとともに消失するはずのアクションフィールド。だが、それはいつまで経っても消えず、勝者を知らず、winner表示すら出ていない。
そして、土煙が晴れるとともにそこに凛として立つシルエットが浮かび上がる。

「どうしたの……鳩がガトリング喰らったような顔して。」

「そんなの喰らったら、死ぬから!?」

辺りを覆っていた煙が完全に晴れ、視界がクリアになる。予想通り、姉ちゃんの姿があった。

「なぜ、生きている!?」
「いや、勝手に殺さないでよ。」

姉ちゃんにしては至極真っ当な切り返しだ。そんな事はどうでもよく、どうやってさっきの攻撃を防いだのかが気になる。

「ん?防いでなんかないよ?」
「は?」
「どゆこと?」

まさかと思い、フィールドの一端に表示されているスクリーンーー対戦者二人の情報が書かれたソレを見ると、鬼龍院の横に姉ちゃんの名前があり、その残りライフは……

「残り100!?」

なんとも危うげなライフポイントに思わず声を上げてしまう。
鬼龍院さんも何をどうやったらそうなるのだと言わんばかりの表情をしている。

「ど、どうやって……。このフィールドには、ダメージ軽減のアクションカードなかったはずだ!」
「けど、汎用カードは別だよね?」
「なにっ!?」

姉ちゃんがデュエルディスクを操作し、表示させたのは発動済みのアクション魔法『奇跡』。

モンスター一体を選択し、そのモンスターは一度きり戦闘では破壊されず、戦闘ダメージを半減する効果。

「だが、おのれのフィールドにはモンスターはおらんだろう!?」

鬼龍院さんの言う通り。姉ちゃんのモンスターはおろかフィールドには、セットカードが一枚のみ。選択するモンスターなんてーー、モンスターなんて……

「まさかっ!?」
「そのまさかだよ。『奇跡』で選択するモンスターは何も私のフィールドだけじゃぁない。私はあんたの『伊奘凪』を対象に発動しただけ。」


常人の斜め上を行く発想にエンタメ決闘の第一人者、榊 遊勝の息子、遊矢さんですら驚いている。
やはり、姉ちゃんは凄いと改めて実感した。
だけど……

「ふん、1ターン寿命を延ばしたところでおのれのライフは残りたったの100。次の我のターンで必ず仕留めてみせよう。」

強気な発言をする鬼龍院さん。
ハッと何かに気がついた遊矢さんが立ち上がり、姉ちゃんに声を大にして叫ぶ。

「諦めるな、優希!スピリットモンスターはエンドフェイズに手札に戻る!」

そうか。
スピリットモンスターは強力な効果を持つ分、エンドフェイズ時に手札へと戻る効果がある。けどーー

「無駄だ、小童!我のフィールドに『伊奘凪』が存在する限り、スピリットモンスターのエンドフェイズ時に手札へと戻る効果は発言しなくてもよくなるのだァ!」
「くっ……そんな、これじゃ優希が!!」

悔しそうに歯噛みする遊矢さん。
そして、誰が見ても姉ちゃんの圧倒的不利な状況で
他のメンバーもLDSを打倒して見せた姉ちゃんがここで負けてしまうのか、と悔しさを露わにしている。
だけど、姉ちゃんは負けを覚悟する表情をするどころかーー

ーーニィと笑みを口角を吊り上げる。

「っ!?何を笑っている!」
「いや、こうも小悪党な役をしてくれて演出する手間が省けるな〜、と。」

まさか、ここまで追い詰められるのが姉ちゃんの演出とでもいうのか。

「くっ、残りライフ100のおのれにどこにそんな余裕があるというのだ!」
「逆だね。仕留めきれないで、よくそんな余裕のある態度を取れたものだね。
さて、もう長話はこれくらいにして、早くターンを進めてよ。」
「くっ……ターンエンドだ。やれるものなら、やってみよ!次のおのれのターンで決着をつけれるものならな!!」

「……当然!」

声に怒気を滲ませてそう叫ぶ鬼龍院さん。姉ちゃんの挑発が相当効いているのだろう。
そして、姉ちゃんはと言うと、深く目を瞑り、デッキトップへと指をかける。

「真の決闘者のデュエルは全て必然。……ドローカードさえ、導く。」

姉ちゃんの言葉に反応し、デッキの一番上のカードが淡く光を放つ。気がした。

「シャイニング、ドロォォォ!!」

光の軌跡を描きつつ、デッキトップを勢いよくドローする。
そして、そのカードを見るとより一層笑みを深くする。
まさか、まさか……本当に逆転の一枚を引いたのか。

僕の懸念はよそに衣服についた砂埃を払い佇まいを直し、咳払いを一つ。
いつもよりも真剣、それでいて楽しそうな表情をする姉ちゃん。


……何だろう、嫌な予感しかしない!!

「遊勝塾の一人……私、神崎 優希によるエンタメデュエルをご覧に頂きましょう!!」

「よし、やったれぇ!優希ィ!!ン熱血だぁ!!」
「頑張ってー!優希おねーちゃん!」

塾長の檄や、仲間の声援に手を振り、答えると再び対戦相手である鬼龍院さんへと向き直る。

「今宵の演目は英雄(HERO)による神話の怪物退治……。そう、かの神話の神、須佐之男命が成し遂げた出雲の怪物退治を再現しましょう!」

出雲へと降り立った須佐之男命が生贄となる娘を助けるために打ち倒した怪物と言えば……

「……八岐大蛇!!」

それはもうピッタリなモンスターが鬼龍院さんのフィールドに居た。
どうやってあの強力なモンスターを倒すのか、客席から息を呑む音が聞こえてくる。

「それでは、本日の英雄(HERO)の登場です!
マジックカード、『平行世界融合』 発動!
私はゲームから除外されているアナザーネオスとネオスを融合!」
「なにっ!除外されているモンスターで融合だとっ!?」

「二人の英雄よ!神秘の渦で新たな境地を見出さん!再び輝け!
融合召喚!レベル8『E・HERO The シャイニング』!!」

八岐大蛇に喰われ、倒れた英雄が今度はそいつ討ち取らんがために蘇る。

「おぉっ!神が光臨なさった……!」

後光のように輝く後ろの光の輪により、まさしく神様のようにも思える。
この寺の住職は神でも見たかのように手を合わせる。

「っ!またそいつか!だが、攻撃力は上がったところで3500!次のターン、『砂塵の悪霊』のリセット効果で吹き飛ばしてくれる!」
「だ、か、ら!このターンで、終わりだって言ったじゃん!」

灯篭の下敷きにされたカードを拾うと、ニヤリと口角を上げる。

「さぁ、怪物狩りを始めようか!
バトル!シャイニングで『八岐大蛇』を攻撃!」
「ふん、それでは我のライフは削りきれんぞ!」

「それはどうかな?
アクションマジック『回避』!シャイニングの攻撃を無効にする!」

本来なら相手の攻撃を止めるはずのカード。今度はなにを!?

会場にいる皆はいつの間にか姉ちゃんが規格外のことをしてくれるのか釘付けになっていた。

「この瞬間、リバースカードオープン!『ダブル・アップ・チャンス』!
攻撃力を二倍にし、もう一度攻撃する!」
「な、に、二倍ダトォ!?」


「シャイニングの攻撃力は3500。その2倍って事は、な、7000!?」
「な、なんだそのバカみたいな攻撃力!?」

かの『|G・F・D《ゴッド・ファイブ・ドラゴン』すら凌駕する脳筋っぷりに会場がどよめく。

「終わりだぁ!ダブル・オプティカル・ストーム!」
「っ!?バカなァァァァ!?」

特大の光の奔流に飲み込まれた鬼龍院さんの断末魔が廃れた境内に虚しく響いた。

「これにて、魔物退治は終了です。ご静聴ありがとうございました。」

腰を斜め45度折り曲げ、恭しく一礼をし、きっちりと幕を閉じる。
そして、そんな姉ちゃんを褒め称えるかのように、味方からも、敵だった闘勝寺の僧侶達からも拍手が贈られる。


ーーーーー
そして、優希が闘勝寺でデュエルをしている同時刻。
別のデュエルスクールでも、舞網ジュニアユース選手権への切符を手に入れるためのデュエルが行われている。
いや、正確には行われていた。そのデュエルは後行1ターンが開始され、ものの1分足らずで、決闘ではなく、蹂躙ないしは、殺戮と言った方がよいものとなった。

「終わりなんですよぉ!!グラファ2体でダイレクトアタック!ジェノサイド・ダークブレス!二、レ、ン、ダァ!!」
「ギャァァァァァァァァ!!」

黒い二本の闇の奔流が対戦相手であった少年を呑み込み、吹き飛ばす。
だが、それで終わるわけもなく……

「まだ、です!こんなもんじゃ終わりません!もう一体のグラファでダイレクトォ!ジェノサイド・ダークブレス!!サン、レン、ダァ!」
「ヒィィィィ!!もう、やめっ!!?」

少年はプライドを、かなぐり捨て懇願するも無慈悲なる攻撃宣言が下され、3度目となる闇の奔流が放たれる。
そして、少年から見て対戦相手であるデュエリストのフィールドには先に攻撃を行った三体の龍神の他に、もう一体。龍神より遥かに禍々しいオーラを放つ暗黒物質がおり、その凶刃を振るわんと爛々とその瞳を輝かせている。

「懺悔の準備はできているかぁ!!」
「うわぁァァァァ!!おかーチャーン!?」

既にデュエル開始1分後にデュエルをした事を後悔し、さらに数秒後に許しを請い、そしてバトルフェイズに入るや否やプライドも尊厳も何もかも捨て、命乞いまでした一人のデュエリストに対し、さらに反省しろと言う地獄の鬼も尻尾を巻いて逃げ出すくらいの悪魔の諸行。

「歯ぁ、食い縛れ!!ダークマター・ドラゴンでダイレクト!壊滅のダークマター・ストリーム!!」
「ギャァァアァァ!!?」

4度目となる暴力に晒された少年が僅か1ターンの内に受けた被ダメージは13000。軽く3度目、殺せるダメージを受けた少年は気絶し、ぶくぶくと泡を吹いて倒れていた。

『しょ、勝者……と、常闇 冥!』

元々近代的な建物が並んでいたアクションフィールドはサード・インパクトでも起こったのかと見間違うほどに荒れ果て、建物の"た"の文字もないほどに物体が消し飛んでいた。

「まったく、ちょろいですねぇ。」

そんな焦土と化したアクションフィールドに立つクスクスと口に手を当て、笑みを浮かべる者が一人。
MCに『常闇 冥』と呼ばれた緋色の髪を二つ結びに結んだ少女は小悪魔のような無邪気な笑みを浮かべ、微笑む。

「あと、5回もこんな消化作業やんなきゃいけないとかホント面倒いです。
まぁ?今回はそれなりにサティスファクション(満足)できたのでよかったですけどね。」

笑みから一転不機嫌さを全面に押し出した表情をする少女。だが、すぐに表情を変化させ、瞳を潤ませ、表情を恍惚したものに変える。

「あぁ……、はやく、早く晴れの舞台でお会いしたいです!私もちゃっちゃと課題クリアして、優希さん(・・・・)の下へと向かうので!!優希さんも負けちゃいけませんよ?」

少女は独り言を呟いたかと思うと足早にデュエルスクールを後にする。

そして、惨劇があった翌日、舞網市はある話題でもちきりとなった。
曰く、『ワンターンスリィキルの悪夢』。
そして、それを行った少女は恐怖の対象としてこう呼ばれた。

ーー殺戮者(ジェノサイダー)ーー





 
 

 
後書き
ー本日のアクションカードー
アクション魔法『怨念ー呪縛ー』
①攻撃対象に選択されたモンスターを選択して発動できる。
選択したモンスターのレベル×100ポイント攻撃力を減少させる。

アクション魔法『奇跡』
①モンスター一体を選択して発動する。
そのモンスターは一度だけ戦闘では破壊されず、戦闘ダメージを半分にする。

アクション魔法『回避』
①攻撃を一度だけ無効にする。

ーーーーーーーーーー
優希「な〜にっかな?な〜にかな?今週の最強カードは、これだっ!」

『ライトレイ・ダイダロス』

優希「出た、自分のカード一枚と相手カード二枚を破壊する1:2交換の強力ブッパ効果!」
徹「なに、初っ端からアホみたいな事やってんのさ。せっかく上がった好感度も今ので底辺を天限突破してマイナスだよ……。」
優希「いや、姉と弟でやるコーナーと言ったらアレしかないでしょ。あれ?兄と妹?知らんな……(メソラシ)」
徹「何を一人で……。まぁ、気を取り直して。姉ちゃん、『ライトレイ・ダイダロス』の主な使い方をどうぞ。」
優希「おおっ、なんか二回目なのに司会者っぽいね〜。一応、私が姉で徹は弟なんだけど……はい、すいません。ちゃんと説明するのでそんな視線をお姉ちゃんに向けないで!?
『ライトレイ・ダイダロス』は特殊召喚モンスターで、墓地の光属性モンスターが4体以上っていう変わった召喚条件持ったモンスターだよ。」
徹「そーいえば、『ライトレイ』ってカテゴリ名なんだよね?」

優希「そだね。まぁ、決まった専用サポートカードはないけどね。
『ダーク』モンスターがいるから、それに対抗勢力みたいなノリでコンマイは考えたんじゃないかな?」
徹「コンマイ?」
優希「あんたは知らなくていーの。
『ライトレイ』は積極的にモンスターを墓地に送れる『ライトロード』と組んで、【ライトレイ・ロード】って感じで使われるね。」
徹「あー。ていうか、誰もデッキを削ってアドバンテージを得るなんて普通気づかないでしょ。僕は一度使われた事があったから知ってたけど、周りの遊矢さんとか、相手の鬼龍院さんとかも驚いてたよ。」
優希「まぁね。仮にも環境上位に食い込むデッキだしね。っていかんいかん。このままじゃ、『ライトレイ』じゃなくて、『ライトロード』を紹介してしまう……。てなわけで主なコンボを!徹君、どうぞ!」
徹「うぇい!?いきなり!えと、破壊耐性を持つ『オレイカルコスの結界』とか『ジャスティス・ワールド』とかで破壊を防いで、0:2交換とか?」
優希「そうくるか。だけど、多分一番相性がいいのは、破壊されてこそ真価を発揮する『歯車街(ギア・タウン)』かな。
『ライトレイ・ダイダロス』の効果で、『歯車街(ギア・タウン)』と相手のカードを二枚破壊し、さらに『歯車街』の効果でデッキから『古代の機械巨竜』を特殊召喚して、夢の0:3交換ができるよ。おっと、そろそろ文字数が……(文字が擦れて読めない)」


 
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