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恋愛多色

作者:桜磨
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君は僕のことが好きか?

「君は僕のことが好きか?」
僕は目の前の男に問う。
「もちろん」
男は笑顔で答える、いつものことだ。
「今日はどこに行こうか」
僕は男に問いかける。今日は日曜日、学校が休みだから、デートとしゃれ込もうじゃないかと思ったまでだ。
「そうだねー…」
夏の日差しが照り付ける都会。正直僕は、都会が嫌いだ。人は多いし、暑いし、何より自然がない。自然が多い場所で育った僕は、どうもここはなれない。だが高校へ通うためだ、致し方ないということにしておこう。
「ハイキングに行こう」
「え?」
突然の提案、驚いたが決して悪くない。
「いや?」
そんなことない、むしろ
「いいに決まっている」

んー…困ったものだ…
右か左か、上も捨てがたい…いやしかし!あえて下というのはどうだ…なしだな…
「どうしたの?」
僕の背後からひょっこり顔を出す男。彼もまた、私と同じ場面を見ているのだろう。
「なかなか決まらないのだ」
僕は腕組みをして言う。
「ハンバーグ弁当はおいしそうだが、昨日ハンバーグを食べた。エビフライ弁当もいいが油ものは控えていてな。となると上の焼サバ弁当はどうだ、私の大好物だ。しかしサバには油が…下の野菜炒め弁当が一番ヘルシーだが、どーもてが出ないのだ…」
道に迷ったと思ったやつ、素直に手を挙げるがいい、別に蔑まないぞ。
「ふむふむなるほど…」
男は顎に手を当て、考えている。
「それなら…」

バスに揺られて20分、歩いて30分。
「休憩しない?」
もうばてたのか、男のくせにだらしない。腕時計を見ると12時30分を指していた。ちょうどいいだろう。
「お昼にするか」
ちょうど大きな木がある、そこの木陰で休むとしよう。
僕のお昼ご飯、焼サバ弁当とサラダ。この発想はなかった、組み合わせればよかったのだ。めんどくさがり屋の僕には、到底思いつかないことだ。
手を合わせて
「「いただきます」」
声を合わせて。
蓋を開け、弁当の下に敷く、これで飛んでいく心配もないだろう。
パキン、お、うまく割れた。隣を見てみると、不格好な割り箸を手に、アハハハと笑う男がいた。
さっそく割り箸を焼サバにさす。焼きたてではないので、皮に油がなく、余計粘着質になっている。
一口大の大きさに切り、それをご飯の上に乗せ、頬張る。
ん!期待はしていなかったが、なかなかおいしいじゃないか。
とんとん
ん?
「ほら」
男が持つ箸に掴まれているのは、エビフライだった。
要件はわかっている、だが外でこういうのは恥ずかしい、でも…
ゴクン
パク
アニッ
揚げたてではないため、サクッとはいかないが、不味くもない。
「美味しい?」
わざわざ訊くな!
「当たり前だ!」

手を合わせて
「「ごちそうさまでした」」
声を合わせて。
ごみをビニール袋に入れ、買ってきた飲み物を、木陰で二人で飲む。
やっぱり自然はいい、心を落ち着かせてくれる。ずっとここに居たい、けどそれができない、なんだかもどかしい時代だな、そんな風に思ってしまう。
「晶斗」
「何?」
「君は僕のことが好きか?」
「もちろん」
 
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