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カシアン=チミーのお話

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第四章

「それでもな」
「外に出て遊びに出るだけで」
 本当にそれだけのことです、しかしなのです。
「違うわね」
「気分がな」
「こんなにいいものなんだな」
「結婚するまではこうして一緒だったけれど」
「それでもな」
「ええ、違うわ」
 奥さんはご主人の言葉に笑顔で応えます。
「とても楽しいわ」
「ずっと忘れていたな」
「こうした楽しい気持ちをね」
「全く、仕事仕事だとな」
「こうしたことを忘れてしまうわね」
「家に帰っても何をするかというと」
 それこそです。
「食べて飲んで寝る」
「それだけだから」
「味気ないにも程がある」
「今思うとね」
「それがよくわかった」
 こうしてお外に出て、です。
「わし等はつまらない夫婦生活をしていたよ」
「遊ぶこともしないでね」
「時々でもこうしないとな」
「本当に味気のない」
「つまらない生活になる」
「それがわかったわね」
 実際にお外にピクニックに出て、です。
「これまで何をしていたかっていうと」
「仕事は大事なんだがな」
「生きる為にね」
「けれどそれだけだとな」
「味気ない」
 今思うとそうなのでした、そしてなのでした。
 二匹で丘の上に向かいます、雨上がりの森の中は草木やお花に水滴が残っていてそれがきらきらと光っています。
 そのきらきらも見てです、奥さんは言うのでした。
「こうして見ていると」
「ガラスみたいだな」
「うふふ、そう言うのね」
「ガラスの小さいもので飾られたな」
「そういう感じっていうのね」
「これまで雨上がりは雨上がりでな」
 そして、というのです。
「何とも思わなかったけれどな」
「こうしてピクニックをしていると」
「全然違うな」
「ただの雨上がりの水滴もな」
「ただの水滴じゃないみたいだな」
「そうね、いつも喉が渇いたらね」
 お仕事である食べものを探して集める時はです。
「あの水滴を飲んでるけれど」
「こうしているとな」
「何か飲めないわね」
「奇麗だからな」
「あそこまで奇麗だと」
 今はそう見えるのです、普通の水滴でもです。
「飲めないわ」
「これまで普通に飲んでいたけれどな」
「これからも飲めるけれど」
 食べものを集める時もです。
「今はね」
「飲めないな」
「置いておきましょう」
「見ているだけにしてな」
「先に進んでいきましょう」
「おっと、そういえばな」
 ここでご主人はあることに気付きました、その気付いたことは何かといいますと。
「丘の上に行ってもな」
「あっ、水滴があってね」
「それで座っても濡れるかもな」
「そうだったわ、そうなっていたら困るわね」
「どうする?そうなっていたら」
「何か敷きもの探す?」
 これが奥さんの提案でした。 
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