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カシアン=チミーのお話

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第二章

「後はな」
「ええ、後は何処に行くかだけれど」
「丘に行くか」
「丘のところに行ってなのね」
「そこまで行ってな」
 そして、というのです。
「景色を観て楽しもうか」
「そうするのね」
「ああ、どうだ?」
 あらためて言うチミーさんでした。
「それで」
「そうね、丘の上に行くのならね」
「いいだろ」
「ええ、いいと思うわ」
 奥さんもご主人の提案に賛成するのでした。
「それならね」
「よし、それじゃあな」
「行きましょう、三日後ね」
「丘の上までな」
「そうしましょう」
 こうしたことをお話してでした、そのうえで。
 二匹は三日後に備えて用意をはじめました、とはいってもバスケットの中に食べものとジュースを集めるだけですが。
 その中で、です。奥さんは巣の中でバスケットに色々と入れながらご主人ににこにことして言うのでした。
「ピクニックも久しぶりね」
「そうだろ、本当に」
「若い時は時々行ってたけれど」
「結婚する前はよく行ったな」
「ええ、デートもしたし」
「それが結婚してからはな」
「全然だったわね」
 奥さんもこのことに気付いて言うのでした。
「そういえば」
「ああ、そうだったな」
「結婚してからは私達そういうことしなくなったわね」
「全くな」
 本当にそうしたことをすることがなくなったのです。
「本当にな」
「何でかしらね」
「わしも御前も食べものを集めることが好きだからな」
「それにばかり気がいって」
「ああ、それでな」
「そればかりになってしまったわね」
「それでだな」
 だからというのです。
「ずっと何処も行っていなかったな」
「思えば寂しいことよね」
「全くだ」
 チミーさんは夫婦の過去を振り返り残念に思うのでした。
「折角結婚したのにな」
「結婚したら毎日一緒にいられてね」
「何時でもな」
「それで何処にでも二匹で行けると思っていたのに」
「そうはならなかったな」
「お仕事ばかりで」
「食べものを集めることばかり考えてな」
 本当にそうしたことばかり考えてだったのです、二匹共。
「今まで何処にも行かなかった」
「そうなっていたわね」
「だからな、こう思ったらな」
「ピクニックに行こうって決めたらね」
「行こうな」
「絶対にね」
 二匹で楽しく準備をするのでした、ですが。
 そのピクニックに行く日になるとでした、これがです。
 雨でした、チミーさんは巣の穴から雨を見てがっかりして奥さんに言いました。
「雨が降るとはな」
「残念ね」
「こんな残念なことはない」
 これ以上はないまでにというお言葉でした。 
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