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美しき異形達

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第四十六話 横須賀その七

「胸結構あるしお尻の形もいいし」
「だといいけれどな」
「ウエストも締まってて」
「背低いだろ」
「一五五だったかしら」
「それ位だよ、低いだろ」
「別に。それ位だと」
 特に、とだ。裕香は返した。
「普通じゃないの?」
「だといいけれどな」
「ええ、全体的にスタイルいいわよ」
 薊本人に言ったことだ。
「だから安心してね」
「だといいけれどな、まあ食った分はな」
「動いてるからね」
「そう、こうして肉食ってな」
 薊はかなりの量の肉を頬張っていた、それも美味そうに。
「その分またな」
「動くのね」
「そうするさ、じゃあ食い終わったら」
「孤児院ね」
「ちょっと歩くぜ」
「どれ位?」
「一時間位か」
 少し考えてからの言葉だった、時間と距離の二つを。
「それ位歩いてな」
「それでなのね」
「着くからさ、あと横須賀ってこの辺りは平坦だけれど」
 横須賀中央駅の前はだ、道も整然としていて実に奇麗でもある。
「実は結構坂も多いんだよ」
「あっ、そうなの」
「全体で見ると多いんだよ」
「ここにいたら想像出来ないけれど」
「まあ神戸みたいに後ろかすぐ山とかじゃないからさ」
「あそこまではなのね」
「いかないよ」 
 そこまで急傾斜でもないというのだ、横須賀の坂は。
「けれど坂は多いぜ」
「わかったわ、そのことは」
「そしてその坂の上から海が見えてさ」
 薊は海の話もした、横須賀を横須賀たらしめているこれのことも。
「また奇麗なんだよ」
「青い海が」
「青い空と緑の山の中にあってさ」
 薊はその海のこともにこにことして話した。
「きらきらとしててな」
「神戸の海とはまた違うのね」
「同じ海だけれど違うんだよ」
 海は海でも、というのだ。
「見えるものがさ」
「それも見たいわね」
「好きなだけ見たらいいさ、じゃあデザートも食って」 
 薊はパスタも楽しみつつ述べた。
「それでさ」
「うん、それからね」
「行こうな」 
 孤児院にと話すのだった、薊達は実際にデザートまで食べてそれからだった。ベースを出て薊が育った孤児院に向かった。
 その横須賀の道を歩いてだ、裕香は薊にしみじみとした口調で言った。
「薊ちゃんの言う通りね」
「だろ?ここってさ」
「坂道多いのね」
「中央の街から少し行くとこうなんだよ」
「平坦な場所じゃないのね」
「ああ、全然な」
 それが横須賀だというのだ。
「港の辺りは違うけれどさ」
「というか港の辺りだけ?」
 薊は少し考える顔になって言った。
「平坦なのは」
「そうかもな、まあこうして歩いてさ」
「それで食べた分はなのね」
「さっきのバイキングのな」
 その分のカロリーをだというのだ。
「使おうな」
「そうね、それじゃあ」
「実はバスもあるんだけれど」
 薊は笑って種明かしの様に言った。 
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