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新説竹取物語

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第三章

「そして朕自ら姫の傍にいてじゃ」
「お護り下さいますか」
「姫を。帝御自ら」
「姫と永遠に共にいたいのじゃ」
 愛、それも仰った。
「ならばこそな」
「帝、私のことをそこまで」
「朕はそなたに歌を詠んだな」
 求愛のそれをだ。
「しかし返し歌はな」
「申し訳ありません」
「その時は残念に思った」
 こう澄んだお顔で仰るのだった。
「しかしその訳がわかった」
「はい、私は」
「本朝の者ではない」
 それ故であることをというのだ。
「そうだな」
「はい」
「ならばじゃ」
 それならとだ、帝はまた仰った。
「仕方ない、しかし朕はそなたに傍にいて欲しい」
「それ故にですか」
「そなたを護る。ただ」
「ただ?」
「そなたが帰りたいのならな」
 姫の気持ちをだ、帝はここで言われた。
「行くがいい」
「私の国に」
「そうせよ」
 優しいお顔になられてのお言葉だった。
「そなたがそうしたいのならな」
「私のお父様とお母様はこちらにおられます」
 姫は帝に応えてだ、翁と老婆を見た。
「そしてお二人とはです」
「そうじゃな」
「永遠に」
 あえて多くは言わないのだった、姫は。
「そうしたいです」
「ではな」
「お護り頂けますか」
「朕を受け入れられぬのならよい」
「帝、それは」
「そなたの親はこの翁と老婆というのならな」
 それならと仰るのだった。
「二人と。永遠に共にいたいというのなら」
「護って頂けますか」
「そうする、ここにいてな」
 姫の傍にというのだ、こう仰ってだった。
 帝は兵達を集められご自身も姫の傍に控えられた、そうしてその満月の夜を待った。時はそのまま流れていき。
 遂にその満月の夜になった、その夜にだ。
 姫は帝により宮中に入れられ帝と翁と老婆、兵達に護られた。姫は夜になるまでずっと空を見上げていた。
 そしてだ、その夜が来た時に。
 帝は兵達にだ、こう言われた。
「ではだ」
「はい、いよいよですね」
「時ですね」
「うむ、皆の者用心する様に」
 帝はその腰の剣に手をかけられながら仰った。
「朕も自らじゃ」
「姫を護られる」
「そうされるのですね」
「姫は渡さぬ」
 決してというお言葉だった。
「翁と老婆の下からな」
「帝、そこまで」
「そなたは何も案ずるな」
 帝は申し訳なさそうな顔になる姫にお顔を向けられて言われた。
「朕と兵達がおる」
「だからですか」
「そなたはこの国に永遠にいられる」
 このことを保障されるのだった。
「だからな」
「それでは」
「姫、わし等もおる」
「傍にな」
 その翁と老婆もだ、姫に言った。 
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