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使わない兵器

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第二章

「そうしてな」
「ではこのまま」
「撃って攻めますか」
「人を」
「そうする」
 こう言ってだ、そしてだった。
 家康は城に向けて大砲を撃ち続けた、すると。
 豊臣方の動きが変わった、これまでは頑なだったが。
「淀君の近くにたまたま弾が来てです」
「女房衆の中に怪我人も出たとか」
「そして昼も夜も毎日撃っている音で」
「それで」
「和議じゃな」
 家康は報に対してにんまりと笑って応えた。
「それに乗ってきたな」
「はい、それでは」
「和議を結び」
「そして、ですか」
「そこから」
「わしの思い通りに進めよう」
 家康はこう言ってだった、まずは豊臣家と和議を結んでだった。そこで堀を埋めるという約束をしたがここでだ。
 外堀だけでなく内堀も埋めた、これでだった。
「大坂城は丸裸ですな」
「あの堅城もこれで楽に攻められます」
「堀さえなければ」
「かなり楽ですな」
「あの城はそのまま攻めても陥ちぬ」
 家康は旗本達に強い声で言った。
「伊達に秀吉殿が築かれた訳ではない」
「まさに天下の城」
「兵の数で攻めてもですか」
「大砲の弾もあまり届きませんでしたし」
「だからですな」
「こうして堀を埋めたのじゃ」
 そのあまり届かない大砲で脅かせて和議を結んでからというのだ。
「そうしたのじゃ」
「それでは」
「また戦になれば、ですな」
「楽に攻められる」
「そうなりますな」
「これで勝ったわ」
 豊臣家との戦、それ自体にというのだ。
「だからじゃ」
「そのはじまりが大砲でしたな」
「いや、確かにあまり届きませんでしたが」
「しかし役に立ちましたな」
「ここからでしたから」
「大金がかかっただけはある」
 家康は大砲を買った銭のことも言った。
「使わせてもらった」
「最も高い武具になりましたが」
「それだけのものがありますな」
「いや、よかったですな」
「役に立って」
 旗本達も喜ぶのだった、大砲は大坂城を潰すことは適わなかったがそれでもだ。徳川の戦に大きく役立った。家康の使い方も見事であった。
 大坂城は実際に次の戦で陥ちた、これで天下は完全に定まり幕府は長い泰平の中に入った。だがその泰平も終わる時が来た。
 ペリーが黒船と共に来た、その黒船を見てだった。
 日本の誰もが驚いた、その異様に。
 そしてペリーもだ、部下の士官達に驚いて言った。
「見たか、日本の大砲を」
「はい、鉄砲もですな」
「他の武器も」
「何といいますか」
「かなり古いですな」
「全くだ」
 こう驚いて言うのだった。
「あの大砲はそれこそな」
「我が国の建国より前の」
「三十年戦争より前のものです」
「あの様な古い砲がまだあるとは」
「それにです」
 さらに言うのだった、士官達も。 
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