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炎の王

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2部分:第二章


第二章

 そのうえでだ。彼は鹿の角を構える。何があろうと引かないつもりだった。
 スルトはそれを見てだ。また言った。
「だからだ。何故そうする」
「戦うその理由か」
「何故だ」
 また言うのだった。
「それは何故だ」
「私はだ」
 その理由をだ。遂に話すのだった。
「確かにアース神族ではない」
「そうだな。それでも戦うのは何故だ」
「私は彼等と共にいた」
 そのアース神族と、というのだった。
「その時は実に長いものだった」
「それはその通りだな」
「その長い時を共に過ごしてきてだ」
「彼等に心が移ったか」
「そうだな。その通りだ」
 まさにそうだと言ってであった。あらためて身構えてみせた。
 そしてそのうえでだ。こう話すのだった。
「彼等と共に生き。共に戦い」
「そして共に死す、か」
「私の願いはそれだ」
 まさにそうだと言うのだった。
「それがだ」
「わかった、それではだ」
「貴様も戦うのだな」
「その通りだ」
「仲間、か」
 スルトは言った。
「だからだな」
「そうなるだろう。ではいいな」
「うむ」
 巨人は彼のその言葉に頷いた。そうしてだった。
 燃え盛る炎の剣を振りかざす。スレイも角も構えた。
 二人の戦いがはじまった。世界に残るのは二人だけだたった。
 その戦いの果てにだ。遂にだった。
 フレイはだ。動きを止めたのだった。
「うっ・・・・・・」
「炎にやられたな」
「やはり。私は」
「これで滅びるのだ」
 そうなるというのだった。
「貴様がこの世界で滅びる最後の者だ」
「この世界は」
「消える」
 スルトは言った。
「完全にだ」
「そうなるか」
「安らかに眠れ」
 その倒れようとするスレイに告げた。
「いいな」
「これが運命か」
「全ては何時かは滅びる。神であろうと世界であろうと」
「では貴様もか」
「おそらくな。ではだ」
「さらばだ」
 こうしてだった。フレイは背中からゆっくりと倒れた。そうしてそのまま息絶えたのだった、
 スルトはそれを見届けてだ。右手に持っていたレーヴァティンを振り上げてだ。地面に向かって投げた。
 剣は大地に突き刺さるとそこから燃え上がり炎で世界を覆った。
 世界は紅蓮の炎に包まれ息絶えていた者達も何もかもを焼き尽くしていく。スルトはそれを見届けてから何処かに去った。
 後には何も残らなかった。焼け跡だけがあった。全てが焼けてしまい何もかもがなくなった世界だけがそこにあったのだった。
 世界は滅んだ。神々も何もかも。しかしそこに光が差し込めてきた。再び何かが生まれようとしていた。
 炎の王はそれを何処からか見てだ。一人呟いた。
「またはじまる。世界が」
 そしてその手にはあの剣が戻っていた。世界はまた生まれ息吹きを出しはじめていた。彼はそれを一人何処からか見守り。そうして己の役割をその中に見ているのだった。炎の中で。


炎の王   完


                 2010・9・29
 
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