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リリなのinボクらの太陽サーガ

作者:海底
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浄化

 
前書き
色々急ぎ足な回 

 
「サバタ……先程無線では“転移で脱出”すると仰っていたのに、まさかロケット型シャトルを奪ってくるとは、この私を以てしても想定外だったわ」

「色々妨害があったんでな、脱出の手段となるものを現地調達しただけだ。ところでラプラスは次元航行艦なのか、エレン?」

「そうね。それも管理局より数世代も先を行く技術で作られた、オーバーテクノロジーが満載の機体。きっとイモータルが世紀末世界と次元世界を自由に行き来するために建造されたものだと思うわ」

「という事はラプラスを使えば、俺達も世紀末世界に帰れるのか?」

「それはどうでしょうね……。ざっと調査してみたけど、いくつか機能にロックがかかっているみたい。人間が使ったら機能制限がかかるようにプログラムされているようね。ロキなら解除ぐらい出来ると思うけど、イモータルは私達の言う事を聞くような存在ではないから……」

「そう簡単には行かないってことか。まぁいいさ。別に世紀末世界に戻れなくとも、“ムーンライト”と同様に次元航行が可能なら使い道はいくらでもある」

それに一人乗りのバイクより、ラプラスを使った方が安心して大人数を運べるしな。シャマルに話をする際、はやて達も付いてくる可能性が高いから、このシャトルを使った方が都合がいい。

「とりあえずオーバーテクノロジーに群がる腹黒い連中が余計な真似をしてくる前に、ラプラスはあなたが所有する個人用次元航行艦として登録しておくわ。そうすれば管理局の人間だろうと迂闊に手出しはしてこなくなるはずだから」

「すまんな、手間をかけさせる。ところで潜入任務が終わったら、途端に口調が耳慣れたものに戻っているが?」

「仕事や作戦の間は丁寧に装うけど、今はサバタが近くにいて安心したせいか素が戻ってるの。要するに仕事スイッチが入ってない状態って事よ」

「なるほど……確かに気の入れ所と抜き所を把握しておかないと、エレンの今いる場所は中々大変そうだしな。組織に属した事が無い俺にはよくわからんが」

「私としてはそもそも、サバタがどこかの組織に入るような時は十中八九来ないと思うわね。あなたは誰かの命令で動くような人じゃないし、自分の意思で動いてなんぼの精神の持ち主だもの」

「フッ……おまえも中々言う様になったじゃないか」

そう言うとエレンは苦笑して俺の額を軽く小突いてきた。やはり昔馴染みで気心が知れた相手だからか、互いに遠慮なく話せる。同じ世紀末世界出身という事もあって、向こうの話もしやすい。はやて達と過ごしていた時はあまり気にしなかったが、実際に同郷の士と会えると自分でも意外な程の安らぎを感じた。

さて……施設を脱出した後、俺達はエレン達と無線で合流ポイントを指定し、ラプラスをそこに向かわせた。ミッドチルダ北部の森林地帯で、ここなら人目に付かずにパイルドライバーで浄化が行えるだろうというエレンの考えを頼ったのだ。それでエレンはラジエル艦載機のヘリに乗って合流したのだが、ここに集まったのは彼女だけではなかった。

「パイルドライバーを使うなら、太陽の使者の代弁者である私が絶対に必要だよね~」

「えっと……私も太陽の力を使えるから、頑張ります!」

「あたしは太陽の力とかは使えないけどさぁ、一緒にいて見守るぐらいはしてもいいだろ?」

上から順にアリシア、フェイト、アルフと続いている。要するにプレシアを除いて彼女達もエレンと共にやってきていたのだ。流石にプレシアは重要参考人の立場である事に変わりはないから来られなかったが、代わりに向こうに残ったクロノによって、モニターを経由して彼女にもこちらの様子が見えるようにしてある。

「しかしなぁ……俺の代わりにパイルドライブをやると、フェイトが言うなんてな……。確かにロキは自分達を嵌めようとしたアレクトロ社の社長だから、落とし前をつけたい気持ちもわからんでもないが……」

「お兄ちゃん……私は別にそんな復讐じみた気持ちでやると言ったんじゃないよ。次元世界のイモータルは、次元世界の人間が浄化するべきだから……お姉ちゃんと共に太陽の力が使える私だからこそ、このパイルドライブは私がやらないといけないんだ」

「それにパイルドライブはお兄ちゃんの身体に凄い負担がかかるんだよね? 過酷な任務を終えたばかりなのに、そこまで全部任せたくないよ。私達のためにお兄ちゃんが戦ってくれたように、今度は私達もお兄ちゃんのために頑張りたいんだ」

フェイトとアリシアは俺が何を言った所で頑として揺るがない決意を込め、そう力説してきた。二人もいつの間にか、そこまで言える程心が強くなったのか……。
ああ、そうだな。フェイト達には早めにパイルドライブの経験を積ませておいた方が、今後のためになるか。俺がいなくなった後でも、彼女達だけで浄化が行えるように……。

「……おまえ達の熱意には負けた。今回のパイルドライブはフェイト達に任せてみよう」

「うん、ちゃんと為し遂げて見せるから!」

「じゃあさじゃあさ? 私達がパイルドライブをしてる間に、お兄ちゃんはマキナの手術ができる医者の人を連れてきたらどうかな? 手術だって時間が必要なんだし、出来るだけ余裕はあった方が良いでしょ?」

「あ~……確かにアリシアの言う通りかもしれないが、俺は初めてのパイルドライブが成功するかどうかで、念のためにおまえ達を見守っておきたい。不測の事態が起きてもすぐに対処出来るように、近くにいた方が良いからな」

「む~。そこまで心配しなくても、フェイトと私ならちゃんと出来るよ~!」

「そうは言うがな……パイルドライブ中はイモータルのエクトプラズムを弾くために大量のエナジーが必要なんだ。もし回復が間に合わず体力が力尽きたりしたら、すぐに救出して浄化を引き継がなければならない。イモータルの浄化は絶対に失敗する訳にはいかないんだ」

それにパイルドライブ中は、イモータルも自らの能力を駆使して必死に抵抗してくる。実力はわかっているが、それにフェイトがやられないという保証はないから、後ろに控えておきたい事をしっかり伝えると、彼女達も自分たちの事を思って言ってくれているから、強く反論できずにいた。だがそこにエレンが近寄ってきて、俺を彼女達から少し引き離すと優しくささやくように言ってきた。

「それなら大丈夫よ、サバタ。だって今、ここには私がいるのよ」

「エレン……いや、しかし」

「先代ひまわり娘の下で一時期修業したから、私もエナジーの使い方は熟知しているわよ? “エンチャント・ソル”も、ザジと同様に私だって使える。浄化のサポートなら十分務まるわ」

「………仕方ない、そこまで言うならエレン。フェイト達を頼むが……しくじるなよ」

「ふふ……はい、頼まれましたよ」

「……何がおかしい?」

「いや、悪い意味で笑ったんじゃないの。サバタって昔から心配性だなぁ、と思って微笑ましく思ったのよ。ザジの時だって、あなた、先代ひまわり娘に彼女を頼むみたいな事を改めて言ったんでしょ? 先代ひまわり娘からちょっとだけ教えてもらったわ」

「チッ……あの女、余計な事を余計な奴に易々と……!」

「まあ、そう邪険に言わないであげて。年寄りはどうしても子供が可愛くて構いたがるものなのよ。ザジの境遇も境遇だったから、ちょっかいに更に拍車がかかっていたみたいだし、それに……」

「同じ魔女だから、か。……それで結果的にアイツの心が救えたのなら構わないが、かと言ってエレンにバラす必要は無いだろう……」

「あら、私もサバタがいなくなって結構寂しかったのよ? 私だって繊細な女の子だから、仲の良い人と別れるのは辛いもの。それに当時はミズキの事もまだ完全には吹っ切れていなかった時期だから、余計にね……」

「…………」

そうだったな……エレンは親友を失ってすぐの頃に俺達の旅に合流したのだから、先代ひまわり娘の下に着いた時期でも、心の傷が鮮明に残っていて当然だった。それなのに理由があったとはいえ俺までもが去ってしまったから、エレンもトラウマが刺激されてしまったのかもしれない。

「悪かった……」

「謝る必要は無いわ。私だってサバタが去った理由はちゃんと納得していたし、イモータル相手にあの時の私達が適う訳が無かった。あなたは私達を守るために身を引いたのだと、私もザジもとっくの昔に理解してるわ」

「そうか……」

「……もしかして今も、誰かを守るために自分を酷使してたりは……しないわよね?」

「さあな」

「さあなって………」

あまり自覚していないような言い方が少し癇に障ったらしく、エレンが俺を軽く睨む。彼女のターコイズブルーの瞳が一瞬だけ銀色に光ったと思うと、急に口元を抑えて息を呑んだ。

「ッ…………そういう事だったのね」

「今……何をしたんだ?」

「ただの検査魔法よ。けど……それでわかってしまった。あなたの身体はもう……」

「それ以上は言うな。気付かれた以上、今後おまえに隠すつもりは無いが……あいつらにはこの事を伝えていない。あいつらには俺の事を気にせずに過ごしてもらいたい。それに……これは俺が選んだ道だ、後悔は無い」

「………わかりました、私が何を言ってもあなたの覚悟は揺るがないのね。せっかく5年ぶりに再会できたのに、それが束の間の出来事だなんて……旧友としてとても悲しいわ」

「…………」

エレンが目を伏せて悲しそうな表情を浮かべた理由を、少し距離が開いて上手く聞き取れなかったフェイト達は意味がわからずにポカンとしているが、モニター越しでプレシアはおおよそ察してしまったようで、モニターの向こうで彼女は心中複雑な表情で俺を見ていた。

「サバタ……あなたが今どのような想いで戦い続けているのか、私では推し量る事は出来ないかと思う。でも……あなたを想う者がここにもいるって事は、絶対に忘れないで」

「フッ、何も今すぐ会えなくなる訳じゃないぞ? その時が来るまで、まだしばらく猶予はある。それまでは普段通りに接してくれ、その方が俺も気が楽だ」

「……そうね。じゃあ今は当初の目的を果たしていく事をお互いに専念しておくわ、その時が来るまでね……」

そう言ってエレンは辛い気持ちを抑え込んで、微笑んでくれた。そしてエレンはフェイト達に俺が一旦地球に戻る旨を伝え、マキナの頭を優しく撫でていた。
一方で俺はラプラスを再び起動させ、地球への次元間航行を開始した。地球にいるはやて達に事情を説明する時間も必要だが、マキナの手術の時間も考えると、あんまり長く話し過ぎる訳にはいかない。かと言って管理局が関係している事で敵意を抱かせてしまい、意固地になりにでもしたらそれこそ悪手だ。
ふぅ……ミッドチルダに来た当初の目的は、闇の書の存在を隠蔽して彼女達に安らかな生活を取り戻させる事だったのに、気付けば彼女達に協力を求めるしかない状況になっている。ままならないものだな、世界の流れとは……。

ちなみに“ムーンライト”はエレンが気を利かせて地上本部から回収してヘリに乗せていたため、今はラプラスに運び込んでいる。カーミラの贈り物であるこのバイクを置いていくのは、俺も避けたかったから彼女の配慮はつくづくありがたく思える。それとスニーキングスーツもラプラスの収納スペースに放り込んでいる。潜入任務が終わった後も着る意味は無いからな。





そして……来た時と違い、帰りは行き先を設定して真っ直ぐ地球に向かったため、大して時間がかからずに地球に戻る事が出来た。ただ、“ムーンライト”の帰還場所は月村家の庭で設定していたのだが、その感覚のままラプラスもそこに降ろしてしまったのだ。大きさとかバイクと比べて明らかに全然違うのにな……。

「えぇっ!? な、なんかシャトルがうちの庭に降りてきたよ、お姉ちゃん!!?」

「すずか、聞いて。先週の木曜の事よ。私は車で家に帰る途中だった。家まであと2マイルほどの所……ふと目を上げると東の空にオレンジ色の光る物体が見えたの! とても不規則に動いていた……そして次の瞬間、あたり一面が強烈な光に包まれ―――気がつくと私は家に着いていたわ……。どう思う?」

「どうって……そんな発狂まがいの事を今話されても、どう返事すればいいの!?」

「わかった……もういいわ……」

「そもそもこのシャトルと全然関係ないよね、今の話!」

やはりというべきか、月村家がパニックを起こしていた。このまま放置しておくのも面白そうだが、事は急を要するため、さっさと外に出ることにした。
見たことのないシャトルからいきなり俺の姿が現れると、月村家は余計混乱…………はせず、むしろ『あ、やっぱり……』と逆に納得していた。

「お帰りなさい、サバタさん! でもシャトルに乗って来るとは予想外でした。私はてっきり、行った時と同じように“ムーンライト”で帰ってくるものだとばかり……」

「色々予定外の事情が積み重なってな……。それよりすずか、俺は用事を果たしたら、すぐに向こうへ戻らなければならない」

「そうなんですか?」

「ああ。向こうで心臓の近くに埋め込まれた……爆薬みたいなものを摘出する手術を行わないと、明日の夕方に命が尽きる少女がいる。シャマルなら手術が出来るから、急いで呼びに来たんだ」

「心臓の近くに爆薬って……! わかりました、シャマルさんって確かはやてちゃんの所にいる薄い金髪のお姉さんですよね? それならうちの車に乗ってください! 超特急でサバタさんを送り届けます! ノエル!!」

「仰せのままに。ではサバタ様、こちらへどうぞ」

「すまない……世話をかける」

すずかの計らいで、俺はノエルが運転する自動車に乗せてもらい、八神家へと爆走した。ちなみにすずかも一緒についてきたのだが、車内で何やら携帯電話を使ってどこかへ連絡していた。だがそれに耳を傾けている場合ではなく、俺は彼女達にどう説明したら良いものかとずっと悩んでいた。

「着きましたよ」

結局考えの整理がつかないまま、車は八神家の前に到着してしまった。こうなったら回りくどい事はせず、正直に伝えよう。その結果、最終的に断られようが構わない。急いで他の医者を探すまでだ。

家のインターホンを鳴らすと、ヴィータの返事が聞こえた。その後、扉を開いてヴィータが顔を出してきた。

「ただいま、ヴィータ」

「うぉっ!? おかえり、兄ちゃん! みんな~! サバタ兄ちゃんが帰ってきたぜ~!!」

家全体に響くようにヴィータが声を張った途端、ドタドタと騒がしい音を立ててネロが飛び出してきた。なぜそこまで慌ててるのかは知らんが、俺の姿を見た途端に安堵の表情を見せた所から、知らない間に心配をかけていたのかもしれない。ただ、何故か凄まじく赤面しているのだが……そこまで体力を消耗するなら急がなくても良いのに。
そこから庭で木刀を素振りしていたシグナムや、台所に入ろうとしていたシャマルと攻防を繰り広げていたザフィーラもここに集まって帰還を喜んでくれた。そして家主たるはやてはというと、玄関に立つ俺の姿を見つけた瞬間、無言のままゆっくり近づいて来て、マフラーごと抱え込むように抱き着いてきた。

「…………おかえり……サバタ兄ちゃん」

そう呟くとはやては、顔を押し付けるようにして力を強める。ほんの二日間出かけてただけで、ここまで寂しく感じてしまうとは……それほど依存が激しくなってしまったのか?
だがそれはいずれ解決すれば良い。今はマキナの話をしなければ……。

「ただいま、はやて。戻って早々悪いが大事な話がある。全員居間に集まってくれないか?」

「ええよ。それに私達もサバタ兄ちゃんに伝えなきゃあかん話があるし、丁度良い機会や」

はやてが周りにいる騎士達に目配せし、静かに騎士達は頷いていた。何を話すつもりなのかわからないが、こっちの経過報告と同時に伝えてくれるようだ。一応、あまり時間はかけられないが……。

その後、ここまで連れて来てくれたすずかとノエルも流れで含めた、八神家全員が居間に着席。ある意味家族会議な光景の中、俺はミッドチルダでグレアム達と闇の書の今後に関する会談をした事や、フェイト達の裁判が“裏”の根回しのせいで危険な状態であった事、逆転のために“向こうにいた知り合い”の協力の下、アレクトロ社に潜入した事などを短く簡潔に伝えた。
会談の時の話をしている間、はやて達はなぜか苦笑いの混じった表情をしていたのだが、それは置いておこう。裁判の話では、管理局のアレな面を聞いて怒り半分呆れ半分という感じだった。それで行う事にした潜入任務の話の時、ネロが「それでこそ兄様!」とか言って称賛してきたが……問題はここからだ。

「それでアレクトロ社が開発していたSEEDの証拠を求めて調査した所……それは心臓の近くに埋め込む装置だった。SEEDは他者の遺伝子を反生命変化させて利用する事で、使用者にその遺伝子元の人間の能力をコピーするのだが……反生命変化した遺伝子を取り込んでいる訳だから、時間が経てばアンデッド化してしまう。それと反乱を防ぐために、遠隔操作や時間経過で開封する麻薬の入ったカプセルが内蔵されている」

「酷い話や。まるで首輪……操るために植え付けられた、死を呼ぶ“種”やね」

「そうだな……それで俺は潜入任務の最中、成り行きでSEED使用者と戦闘を幾度か行ったのだが……その中に体格がはやてと同じくらいの少女がいて、心情的に放っておけなかったから保護する事にした」

「心情的に? ……何があったのですか、兄様?」

「その少女はある事件をきっかけにアレクトロ社に囚われてからずっと実験体として生き、栄養の摂取がままならなかったから成長も出来ず、実験の過程で声帯を失い、挙句の果てに時限式のSEEDを埋め込まれて、本意じゃない戦いに繰り出された」

「なんとむごい事を……!」

「その後も色々あったのだが、それは後で話す。とにかく俺はその子とリーゼ姉妹と共に脱出した訳なんだが……皆、心して聞いて欲しい。少女の命は……このままでは明日の夕方に失われる」

「な……!」

「理由はもうわかるだろうが、SEEDの麻薬が開封されるまでの制限時間がそのタイミングなんだ。だからただちに手術で摘出しなければならないのだが……彼女の立場上、手術を行ってくれる医者がいないんだ」

「ど、どういう事ですか!? 医者なら助けを求める人を分け隔てなく救うべきなのに……ましてや管理局に所属している者ならなおさら……!」

すずかが管理局の医者の心構えに苛立ちを隠せずに吐露する中、この中で唯一医者であるシャマルはなぜ次元世界の医者が皆断るのか、その理由を訝しんでいた。ヴォルケンリッターの面々とはやても理由を理解できずにいる。純粋なこいつらにとって残酷な真実を、伝えよう……。

「少女の名はマキナ・ソレノイド。闇の書の先代主が遺した娘だ」

『ッ!!!!』

「先代の……娘ですって!?」

納得がいったのと同時に、天地がひっくり返りかねない衝撃を受けたシャマルが呆然とその言葉を紡ぐ。この時俺は知らなかったが、つい先日はやて達は先代についての話をしていたため、その娘が生きていた事と、過酷な運命に翻弄されてしまっていた真実に想像以上の衝撃を受けていた。
やはりこいつらにはキツイ真実だったか……しかし、俺はここから彼女達に頼まねばならない。彼女を救うために、手術を行ってもらいたい事を、そのためには姿を管理局に晒す必要がある事を。

そう思って改めて言おうとした時、ふと気づいた。はやても、ザフィーラも、シグナムも、ヴィータも、シャマルも、そしてネロも……皆強い決意を秘めた様子で俺の眼を真摯に見つめてきていた。はやてが前に出て、進言してくる。

「先に謝っとくわ。ごめんな……皆が静かに暮らせるようにサバタ兄ちゃんは四苦八苦してくれたけど……やっぱり私らは闇の書が負う過去の罪を償うつもりや」

「そうなのか?」

はやてに尋ね返すと、彼女を皮切りにネロやヴォルケンリッター達が口を開く。

「確かに私は皆が戦わなくて済む事を望んでいた。せやけど……」

「このまま静かな生活に浸るのは、過去の罪からの逃避となってしまうのだ……!」

「かつて我々のせいで被害や犠牲を被った人達に償っていくのは、主はやての騎士として生まれ変わるために我々が為すべき行為です……!」

「あたしらがさっさと決意しなかったせいで、兄ちゃんに余計な手間をかけさせちまったけど……今度こそあたしらは前を向いて生きていきたいんだ!」

「だからサバタさん、あなたがこの話を持ち出してくれたのは運命なのかもしれません。逃避の道だけで無く、贖罪の道をも示してくれた事は……!」

「兄様は……例え偶然であろうと、どこまでも私達に道を示してくれるのですね。いつか兄様に報いたいのですが、そのためにはまず、私達が壊してしまった一つの運命を救う……否、救いたいのです!」

各々の心情を聞いた俺は、俺の想像を上回る彼女達の心の強さに感服した。だからこそ、改めて決意を聞き届けておきたかった。

「おまえ達は……過去から逃げずに立ち向かう道を選ぶのか。後悔は無いんだな?」

『はい!』

「闇の書は次元世界にとって災厄とも言い表せる程の破壊をもたらしてきた。きっと全ての罪を償いきるのは困難を極めるだろう。それでも……選ぶんだな?」

『はいっ!!』

「そうか……おまえ達の覚悟、この俺がしかと聞き届けた! 過酷な現実、残酷な真実、慟哭の事実、様々な試練がこれからおまえ達を襲うだろう。有象無象が何を言おうと、心が折れる程の事が起きようと、おまえ達は一度たりとも屈してはならない! 決して、諦めてはならないのだ!」

『はいッ!!!!』

呪いから解き放たれた彼女達は、光の世界を渡り歩くために、過去のケジメを付ける生き方を選んだ。逃げる道を選ばなかった程強い心の力、それを確認した俺は……彼女達の持つ真の強さを認識した。おかげで俺が思うより話はとんとん拍子に進み、帰ってくる前にどう説得すべきか悩んでいた事が馬鹿馬鹿しく思えてきた。

「私達の最初の贖罪は、闇の書の先代主の娘であるマキナ・ソレノイドの命を救う事や! 私の騎士として生まれ変わった皆が助ける対象として、これ以上の人間はおらん! 皆、準備はええか!!?」

『応ッ!!』

凄まじいやる気を見せている所悪いが、手術が出来るのはシャマルだけだぞ……。口に出してツッコミを入れるのは野暮だから言わないが。







来た時と同様に月村家に戻ると、そこには二人の少女が待ち構えていた。

「やっと来たわね! ほら、さっさと出発するわよ、サバタ!!」

「うん! 私もフェイトちゃんに早く会いたいし、サバタさん、お願いします!」

アリサとなのはが月村家に着陸させたラプラスの前で待ち伏せていた。すずかに視線を向けると、彼女は含み笑いをしながらこう言ってきた。

「やっぱり皆で一緒に行ってみたいなぁ~って思いまして。せっかくこんなに立派なシャトルがあるんですから、今丁度夏休みの時期ですし、ミッドチルダへお出かけしてみたかったんです」

「はぁ……さっきの電話の意味はこれか。まぁ別に構わないが、家族にはちゃんと許可をもらったのか?」

「当然よ! この私がその程度の事を忘れる訳が無いじゃない!」

「私の所は、サバタさんが一緒に行くって言ったら私も驚くほどすんなりと許可をもらえたの」

「ふむ……アリサの所はともかく、なのはの所は恭也か士郎辺りが心配だとか言ってそうな気がしたが……」

「あ、わかっちゃいます? お兄ちゃんとお父さんはサバタさんが思ってる通りの事を本当に言ってたんだけど、お母さんがちょっとお話したらすぐに許してくれたの!」

「……」

なぜかミッドのナカジマ家を思い出した。そうか……高町家もかかあ天下なのか。美由希の影は相変わらず薄いが……帰っても尚、士郎は大変だな。

「おお、皆でミッドチルダにお出かけやな! これなら向こうでも賑やかになりそうやな~♪」

「旅行に行くわけじゃないんだぞ、はやて……」

という訳で俺と八神家一同の他に、なのは、アリサ、すずか、を含んだ面子でミッドチルダへ再び向かう事になった。想定外にぞろぞろと引き連れる羽目になったが、要件を済ませた後に余程の事が無ければ、本当に旅行としても良いかもしれない。フェイト達も嬉しく思うだろうし、ちょうどエレンにこいつらとの顔合わせが出来る。冷静に考えると、色々都合がいいな。

そうして、ラプラスは再びミッドチルダへ発進した……。


・・・・・・・・・・・・・・・・

~~Side of フェイト~~

「…………太陽ォー!!」

パイルドライブ、開始!

パイルドライバーの4つのジェネレーターから増幅された太陽光線が棺桶の中に注がれ、中にいるロキから浄化の煙が吹き出る。急激な光で身体が焼かれて、イモータル・ロキが苦痛の声を上げる。

直線に投げてくる西洋剣と回転して円弧を描きながら迫る曲刀による猛反撃を回避しながら、私は棺桶から離れたエクトプラズムをエンチャント・ソルの力を込めたバルディッシュを振るって押し戻し、浄化を進めていく。実際にやってみてわかったが、防御力の低い高速移動型の私にとって、拠点攻略みたいなこの行動はかなり厳しいものがあった。速度を上げ過ぎるとエクトプラズムを追い越してジェネレーターを停止させられるし、かと言って遅すぎると攻撃に当たってしまう。ディフェンサーも暗黒物質で一時的に生み出された武器相手では防ぎ切れない。そのため際どいタイミングの回避を繰り返しながら、体感時間以上にかかるパイルドライブを進めるしかなかった。

それにしても考える事がある。ロキはイエガー社長として26年前、母さんを陥れた張本人。ヒュードラの事故があったから、姉さんは人としての命を失い、追放された母さんはプロジェクトFATEの研究を行った。そして……私が生まれた。
そう考えると私がこの世に生きている理由の一つは、このイモータルという事になる。別に感謝とかそういう感情は当然、全く湧き上がって来ないんだけど……少なからず思う所はある。ただ、それだけ……。

浄化が佳境に迫った時、ロキの反撃が更に激しくなる。正面から西洋剣、左右両側から曲刀が私目掛けて迫ってきて、咄嗟に私が取った対処は……ミッド式ゼロシフトで正面突破だった。西洋剣は私をすり抜けて後ろに通り過ぎ、曲刀も何も無い空を切る。だけどそれを見届けたせいで、私はもう一本の西洋剣に気付くのが遅れてしまった。

『サー!!』

「ッ!!」

ギリギリ防御が間に合ってバルディッシュの柄と西洋剣が正面衝突するが、西洋剣の威力が予想以上に大きく、バルディッシュのフレームにひびが入ってしまう。

「大丈夫、バルディッシュ!?」

『もう一本来ます、サー!』

「くっ……!?」

続けざまに迫る曲刀に向けてバルディッシュの切り上げを放つと、曲刀の軌道が上に大きく弾かれて霧散した。だけど……!

『すみません……サー』

謝罪の句と共にバルディッシュのフレームが砕けてしまう。途端に魔法のコントロールが難しくなってしまったが、さっきの連続攻撃はどうやら最後の悪あがきだったらしく、浄化も完了していた。地上に降りると、エクトプラズム越しにロキの姿を睨み付ける。

「ククク……私の浄化を果たしたのが、プロジェクトFATEの成功体、アリシア・テスタロッサのクローンとは……! これも因果か……!」

「私はクローンだけど、クローンじゃない。私はフェイト・テスタロッサ、あなたが散々利用した大魔導師プレシア・テスタロッサの娘だ!」

「おまえの中でそう決めていようが、全ての人間がそう見るとは限らん! プロジェクトFATEの成功例、人造魔導師、クローン、それらの意味でおまえを見る者の方が世界には多い!」

「そうかもしれない。でも……私を理解し、受け入れてくれる人もいる! 色んな人が受け入れられなくとも、私には友達がいる! 家族がいる! そして……私達家族を救ってくれた、大好きなお兄ちゃんがいる!! それだけで、私は未来に生きていける!!」

「生きていける、か。ならばいつか思い知るだろう、フェイト・テスタロッサ。優秀な人造魔導師として生きるおまえは、この世界における争いの“種”だ。おまえの存在をきっかけに世界は更に混沌を極め、人の手では止められない大きな戦いを招く。その時こそ、おまえは自らの意思に反する世界に対して、真に絶望するだろう! 私は地獄の底で、おまえ達が希望を失い、絶望の底に沈むのを待つとしよう。フハハハハハ!!!!」

まるで呪いの“種”のような事を告げると、耳障りな笑い声を発しながらロキの姿はおぼろげに消えていき、完全に消滅していった。パイルドライバーも動作を停止し、ジェネレーターが魔方陣の中に降りていった。どうやら浄化をちゃんと果たせたみたいだ。

「やったね、フェイト! 初めてイモータルの浄化が出来たね!」

「うん、姉さん。私、お兄ちゃんの力になれたよ。お兄ちゃんの代わりに務めを果たせたよ」

「そうだね。それと、あんなヤツの言葉なんか気にしちゃダメだよ。フェイトはフェイト、私の大事な妹なんだから、ね?」

「うん。大丈夫、全然気にしてないから」

姉さんにはそう言って笑顔を見せたけど、内心ではロキが最後に言った事はあながち全部が間違いでもないとわかっていた。どんな経緯があっても、私は人造魔導師。それも魔力量がAAAランクと、他の多くの魔導師と比べてはるかに豊富だ。ただでさえ魔導師の能力にはバラつきがあると言うのに、自分で言うのも何だが人造魔導師にこんな才能豊かな人間がいるとわかれば、プロジェクトFATEの研究が色んな場所で推し進められる可能性は十分高い。
……だから、最初の一人である私がやらなくちゃいけない。これから先、救いを求める多くの人造魔導師を助けるために、私は……!

「……エレンさん。“嘱託魔導師”の資格って、私でも取れますか?」

「ええ、問題なく取れますわよ。それに裁判でこちらの誠意を示すという意味でも、減刑のために嘱託魔導師の資格を取ったりする事例もよくありますわ。フェイトさん、あなた嘱託魔導師になるおつもりですか?」

「はい。でも、家族皆一緒で幸せに暮らすのは諦めていません。ただ……私も前に進みたいんです。後ろを向いたり、立ち止まったり、守られてばっかりだった私は、今度こそ自分の足で歩きたいんです! お兄ちゃんのように……誰かに誇れる生き方をしたいんです!」

『フェイト……こんなに立派になって……! うぅ……!』

なんかモニター越しで母さんが感極まって泣いてるけど、そこまで驚く事かなぁ? それと、別の世界の私だったらこの道を自然と選んでたような………。まぁ、流石にそれは気のせいだね。

「プレシア……今のあんたの姿を見てると、どうして前はあんな風になってたんだろうなぁ~ってつくづく思うよ」

アルフ……それは多分、母さんだから、という一言で済んじゃう気がする。今なら私も理解出来るけど……。

「そう……なら私もサポートしてあげます。流石に時間をずっと取れる訳じゃないので、時々という形になりますが……その分クロノ君やリンディ提督も協力してくれるはずですわ」

『ちょっ!? か、勝手に決め……』

「ねぇクロノ、嘱託魔導師の資格試験の勉強、教えてくれないかなぁ……? やっぱり……ダメなの?」

『う! ま、まあ……良いんじゃないか? 僕達もフェイトが嘱託魔導師になってくれたら嬉しいし、協力は惜しまないよ』

「勝った……計画通り……(ニヤリ)」

ね、姉さん……。そこでその台詞を言わないでよ、なんか私が言ったみたいになっちゃうじゃん。確かにはやての所でDVDを見たし、凄く面白かったけどさぁ……。
ちなみに無意識でちょっと上目づかいになっていたらしく、クロノの後ろで母さんが鼻血を吹き出していた。あ~あ、クロノの背中にべったり引っ付いちゃって……洗濯大変だろうなぁ。

「……とりあえず私もクロノ君もお互いに暇な訳じゃないので、空いた時間にちょくちょく指導していく流れとなるでしょう。それぞれ時間が空くタイミングも異なるでしょうから、そういう意味では丁度良い指導体制かもしれませんね」

微笑みながらエレンさんは早速、時間割とかを考えてくれていた。多分、時間ごとにエレンさんやクロノ、リンディさんが教えてくれるようになってるんだろう。
え……サルタナさん? あの人って、そもそも時間空くの? というより私のために時間を作ってくれるのかな?

「閣下はあれで意外と教え上手ですよ。なにせ私も閣下の指導の下で学んだ結果、1年ぐらいで執務官の資格を取りましたから」

『1年!?』

最初は次元世界の常識を知らなかったエレンさんが、たった1年で執務官になる程とは……あの人ってそこまで教え上手なの? それともエレンさんが優秀なだけ? とにかくエレンさんとマキナ以外の全員が声を揃えて驚愕してしまう程の衝撃だった。特にクロノは自分が試験に何回か落ちているため、より一層衝撃が強かったみたい。

「それと、生徒はどうやら“一人じゃない”かもしれませんね」

「え?」

エレンさんが空を見上げてそう呟き、私達も同じように空を見上げてみた。すると私が思うよりパイルドライブに時間がかかってしまっていたのか、始める前に出発したラプラスが時空間転移のゲートを通って戻ってきていた。
どうやらお兄ちゃんの方は説得が意外と早く済んだみたいだけど、それよりも生徒が一人じゃないってどういう事なんだろう……?

「フェ~イ~ト~ちゃ~ん~!!」

「ッ! この声は……!」

待ち切れなかったのか、ラプラスから飛び出してきて私を呼んだのはピンク色の魔力光に白いバリアジャケットの少女。その特徴に当てはまるのは私の知り合いでは一人だけ……そう。

「なのは! こっちの世界まで来てくれたの?」

「うん、フェイトちゃん! また会いたくて思わず来ちゃったよ!」

着地するラプラスをよそに、なのはと私は再会を喜んでいた。天真爛漫な笑顔を見せてくるなのははその後、私の近くにいた姉さんやアルフにモニター越しの母さん、クロノに挨拶をしてくれた。それは人として当たり前の行為で嬉しいんだけど……流れでそのままマキナにも言葉をかけてしまった。

「あなたとは初めて会うね。初めまして、私は高町なのは。名前を教えてくれるかな?」

「……………」

「ええと……あ、あれ? 私とお話してくれないの?」

「な、なのは……その子は……」

知らないとはいえ、ちょっとこれは見過ごせない。だから私はなのはの腕を引いて、皆と少し離れた位置に連れてきた。彼女は困惑してるみたいだけど、世の中には無自覚で人を傷つける状況がある事を伝えなければならない。

「フェイトちゃん? 急にここまで私を引っ張ってくるなんて、どうしたの?」

「なのは、落ち着いて聞いて。マキナは……」

「あの子マキナちゃんって言うんだね。うんうん、それで?」

「マキナは……話せない」

「……………………え? い、今……なんて……?」

「アレクトロ社の実験に利用され続けたせいで、あの子は声を出せないんだ。だからなのは……さっき『お話してくれないの』と言ってたけど、それはマキナにとって酷な事を強いてしまってる事になるんだ」

「そ、そんな……じゃあ私、知らなかったとはいえマキナちゃんに酷い事を言っちゃってたの!?」

「そう……なっちゃうね。ごめん、なのは。もっと早く私が気付いておけば……」

「フェイトちゃんは悪くないよ、私が一方的に先走っちゃっただけだから……。私……マキナちゃんに謝ってくる!」

思い立ったら即行動、と言わんばかりになのははマキナの所に駆け寄ると、彼女の前で頭を下げて「ごめんなさい!」と声を大にして謝っていた。すぐに自分の過ちに気付いて謝ったなのはの姿を見て、マキナは……。

ぐにぃ~♪

「ふぇっ!?」

なのはの頬を引っ張っていた。なんか伸縮性があって餅のようによく伸びていた。

「ふぁ、ふぁひははぁん! ほっへ、ふぃっはんはいふぇ~!?」

どうやらなのはは『マキナちゃん! ほっぺ、引っ張んないで~!?』と言ってるみたい。手足をバタバタしているなのはの頬をしばらく堪能するとマキナは手を放し、彼女の手の平に指で文字を書いていた。

『コレデ、アイコ』

「うぅ~、ジンジンするぅ。で、でもこれでチャラにしてくれるんなら、別に良いかな」

涙目で頬をさするなのはだが、すぐに差し出した手をマキナは掴み、二人は仲直りの握手をしていた。これでなのはとマキナの間に溝が出来てしまう事は避けられたようだ。良かった良かった。

「さて、ゲストとの仲直りも済んだようですし、そろそろ本題を進めるとしましょうか」

「そうだな。裁判の事とか、はやて達の事とか色々話さなければならないが、今はマキナの手術を優先すべきだしな」

「ええ。では皆さんをこれから私達の戦艦ラジエルへご招待いたします。そこで話し合いの場を設けるとしましょう。医療室の準備は説明している間に済むでしょうから、時間の都合も丁度良いでしょう」

「ああ。それじゃあ案内してくれるか、エレン」

「お任せあれですわ、サバタ」

そう言ってエレンさんはお兄ちゃんやはやて、なのは達を案内しようとしたけど……皆は何故か魂が抜けたかのように呆然とした表情でエレンさんを見つめていた。

え? え?? 皆、急にどうしたの? なんで皆、信じられない人を前にしたみたいに唖然としてるの?

「……サバタ、もしかして……話しました?」

「ああ」

「やはりですか………」

ひそひそと会話したエレンさんとお兄ちゃんは、徐に耳を手でふさいだ。私も姉さんも訳がわからずに困惑した……次の瞬間。

『えええぇぇぇえええぇぇぇええええぇぇぇぇええええぇぇぇぇえええええぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~!!!!!!!??????』

ラプラスに乗ってきた全員が一斉に周囲が轟く程の驚き声をあげた。あ、あまりの声量で、耳が……!

 
 

 
後書き
今回は原作キャラ成長回とも言えます。こんな感じでぼちぼちと進めていきます。

追記、サバタがFOXDIEのことを言わなかったのは、そのナノマシンの存在を公にしたくなかったのと、麻薬が原因でもやる事は同じなので、説明の時間省略も兼ねているのです。
今回、ラプラスに搭乗していたはずのリーゼ姉妹の姿が無かった理由は、次話にて判明します。 
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