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アテネとメデューサ

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3部分:第三章


第三章

「ここなのね」
「はい」
 梟は神殿の前に来たアテナに答えた。
「間違いありませんよ」
「そう、ここなの」 
 アテナは神殿を前にしてどうにも首を傾げていた。
「何か?」
「いえ、案外大人しい造りだと思って」
 神殿を見て彼女もそう思ったのだ。
「アフロディーテの神殿だったら薔薇で、アルテミスの神殿は銀で飾られているのに」
 どれもそれぞれの神の象徴である。アテナもアテナで自身の神殿をオリーブで飾っている。
「デメテル叔母様のだったら豊かな穀物だし。そういうのはないのね」
「そんなのメデューサ様には必要ありませんし」
 梟は言う。
「本当にお奇麗ですから」
「本当に是非見てみたいわ」
 アテナは何気なく言う。
「じゃあ今からね」
「はい」
 女神とその従者は神殿の中に入った。中もさして広くはなくアテナの神殿や宮殿とは比べくもなかった。だがそこに差し込む光や立ち込める香りは。とても普通のものではなかった。
「この香りは」
 かぐわしくかつ優しいものだ。ふと梟が見せてくれたあのメデューサの姿が思い浮かぶ。
「メデューサ様の香りですよ」
「そう、やっぱり」
 梟の言葉に頷く。
「生憎香りは忘れてしまったので」
「いい香りね」
 アテナはその香りの中に身を委ねながらこう述べた。
「落ち着くわ」
「はい」
「そのメデューサもそうなのかしら」
「ええ、そうですよ」
 梟はそれに答える。
「ですから一度御会いになられればと」
「そうね。じゃあここに来たのは正しかったのね」
「そうですね」
「で、彼女は」
「もう少し先です」
 アテナの前を飛びながら言う。
「奥におられますよ」
「もう、じゃあ」
「はい」
 アテナは梟の案内を受けてそのまま進んだ。そして。遂に彼女と会うことになったのであった。
「貴女達は」
 神殿の一番奥に彼女はいた。その姿は梟が見せてくれたのと全く同じだった。優しげで可愛らしい少女の姿をしていた。小柄であの虹色の髪もある。それを見てアテナは内心に抱いている複雑な感情をまたもたげさせた。
(全く違うわね)
 まずは自分自身の姿と比較した。
(何もかもが。私と)
 彼女は背が高く、凛とした顔立ちをしている。美貌を誇ってはいるが決して可愛いというのではない。可愛さなぞ彼女には無縁であった。優しげな雰囲気もない。彼女自身は心優しい方だがそれよりも規律を重んじる為どうしてもそれが表には出ないのだ。そうした自分自身と比べてどうにも心中穏やかではなくなったのだ。
(けれど)

 
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