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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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第十二話 るいの涙

全はあれから少しずつではあるが、るいを虐めている者達に関する情報を集め続けた。

あまり大っぴらに動けないというのもある。

なぜならばこの学校での全の神楽院紗華としての悪名はまだ完全に消えた訳ではないからだ。

下手に動けば、るいにも迷惑がかかってしまうかもしれない。

だからこそ、全は静かに情報収集に取り掛かる。

「シン、どのくらいだ?」

『いえ。未だに相手の正体にはたどり着けません。用意周到に自分には手が届かないようにしているのでしょう』

「なるほどな……」

自身が相手取る敵、という解釈において全は最も厄介な敵は二種類いると考えている。

一つ目は、どのような状況においても冷静でいて笑みを浮かべ続ける敵。

相手に恐怖を植え付ける、という点においては常に余裕を見せる笑みを浮かべるのは最適だ。

何せ、他にも何か策を持っているのでは?と相手を疑心暗鬼にさせ、その動きに一瞬の油断を混ぜさせる事が出来るからだ。

油断など、死と隣り合わせの世界においては死、そのもの。

それによって名を上げる暗殺者を全は何人も知っている。

二つ目は用意周到に策を巡らせ、それでいて自身には一切繋がりの無い策を弄する敵。

これが一番厄介だ。

この手合いはまず、敵となる相手に自身の姿を見せるようなへまはしない。それでいて誰かをけしかけ
る。

そして、使えなくなればまた違う駒を使う。

しかし、決して自身に繋がる情報は誰にも言わない。

この手合いは本当に厄介だと全は確信している。

何しろ、相手に関する情報を誰も何も持っていないのだから情報を集めようにもどうする事も出来ない。

こういう場合には、自分の足で生身の情報を探すしかない。

(ま、ありていにいえば聞き込みだな)

どんな人間だって完璧じゃない。必ずどこかでボロをだす。

今は諦めずにそのボロを探し出す。

それしか全には出来なかった。

そんな事をしている間にも、るいに対する陰湿な虐めは続く。

(俺には、何も出来ないのか……)

そんな事を考えていると

「ごめん、皆っ。ちょっとトイレ」

「るいちゃん、大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。ちょっとね……」

そう言ってるいは教室を出て行く。

なのは達は心配そうに見つめながらも、会話を止めない。

心の内では心配しているのかもしれないが、るいは大丈夫だと言ったので大丈夫だと信じたんだろう。

しかし全は知っている。

女の子の大丈夫は全然大丈夫ではないのだと。

前世でも全の幼馴染は全にずっと「私は大丈夫だから。だから、無茶だけはしないでね?」と言っていた。

その陰で泣いている事も、全は知っていた。

だからこそだろう。

全は読書を中断し、るいの後を追った。

るいSIDE

私はなのは達にちょっとトイレと言って席を外した。

これ以上あの教室の空気に耐え切れなかったからだ。

なのは達も察してくれていたんだと思うとやっぱり助かる。

ちなみに今私がいるのはトイレじゃない。

普段は昼休みにしか開放されない屋上だ。

そこの扉の陰で私は蹲っている。

「うっ……うぅぅぅ……わぁぁぁぁぁぁぁ…………!」

私は思わず泣き出してしまう。

時々こうやって泣かないと、内にどんどん溜め込んでいってしまうとわかっていたからだ。

前世でも泣く事によって暴発するのを防いでいたから。

「う……ぐす……よし、思いっきり泣いた!これで大丈「大丈夫だとは思えないぞ」っ!?」

私が泣き止み、よし帰ろうと思った矢先声を掛けられた。

私は驚きその声の聞こえた方を見る。

その人物は扉の前から私を見ていた。

そしてその人物に私は驚いていた。なぜなら

「ったく。女の子ってのは何でこう……一人で抱え込もうとするかね」

そこにいたのは

「んなプライドみたいなもん、捨てちまえ」

神楽院……いや、橘全だった。

SIDE OUT

全はるいが向かった場所に関してある程度当たりをつけていた。

女の子は一人になりたい場合、女の子しかいかない場所には決していかない。

ならばどこにいくか?

答えは簡単だ。その時、誰も来ない場所に行ってひっそりと泣く。

そして休み時間の今。誰も来ない場所といったら屋上しかない。

行ってみたら案の定。やはり泣いていた、という訳だ。

「な、何で……?」

るいの顔には困惑しかない。それもそうだろう、誰も来ないと思っていた所に全が来たのだから。

「今、教室でお前が仲間はずれにされている事に気づいてる」

「っ!?」

るいは泣き腫らした顔で驚愕する。

「俺は今、この事態を引き起こしている人間を洗い出している」

「何で……?何で、あんたが私に味方すんの……?」

「味方してはいけない、なんて言われてないからな」

そう言って全はるいの隣に静かに座る。

「ぐすっ……何で隣に座んのよ……」

「んな言葉が出せるんなら、まだ大丈夫だな」

全は空を見上げたまま








































「大丈夫だ」







































ただ、一言だけ、そう言った。

「っ……あんたに大丈夫って言われても説得力あると思ってるの……?」

「あるとは思ってない。だが、これだけは信じてほしい。俺だけは、絶対にお前を見捨てない。たとえ、誰も味方しないって言われたって俺だけは味方でいてやる。だから頼む、泣かないで、笑っていてくれよ」

「!!!」

るいは驚いた顔をしたまま、固まってしまう。

全はそれ以上何も言わずに来た時と一緒で静かに屋上を後にした。 
 

 
後書き
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