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マニトー

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9部分:第九章


第九章

「絶対にじゃ」
「それは何でだ?」
「聞きたいんだけれどな」
「術を破られたからじゃ」
 だからだと二人に言うのだった。
「それでじゃ」
「俺達が恐れるものを出した」
「それでも破られたからだな」
「左様」
 その通りだというのだった。二人は老婆と話しながら倉庫の中を調べていた。とりあえず人間が行う犯罪に見られるようなものは見当たらなかった。怪しいものばかりが見えるだけだ。 
 ひからびた獣の毛に人のものには思えない牙のある髑髏にこれまた得体の知れないものが入っている鍋にだ。そんなものばかりがあった。
 そうしたものを見回しながらだ。二人は言うのだった。
「俺達も確かに恐怖はあるさ」
「それはな。しかしな」
「しかしなのじゃな」
「それは克服できるからな」
「びびったけれどな。やってやったさ」
 こう老婆に答えるのだった。
「それで結果としてな」
「悪霊は逃げたって訳だな」
「あんた達は本当に強いのじゃな」
 老婆は二人に対して言った。
「自分達が恐れるものを倒せたのじゃからな」
「それで事件を解決できたっていうか終わらせられたのか」
「そういうことか」
「そういうことになるな。では事件は終わりじゃな」
 老婆の声が落ち着いたものになった。
「マニトーが去ったからのう」
「今度来てもぶちのめしてやるさ」
「何で出て来てもな」
 こう言う二人だった。
「何度でもな」
「それで今度こそ捕まえてやるからな」
 勇者達は不敵な笑みを浮かべて言うのだった。デトロイトの奇怪な事件はこれで終わった。署長も二人からの報告を聞いて言うのだった。
「相手の恐れるものに化けて襲うか」
「ええ、報告させてもらった通りです」
「心を呼んで、ですね」
「まさに悪霊だな」
 署長はここまで聞いて述べた。
「実際にいるとは思わなかったけれどな」
「そういう相手でした」
「逃げられたのは」
「ああ、それはいい」
 署長はそれはいいというのだった。
「悪霊みたいなのはそう簡単に捕まえられないからな」
「だからですか」
「それはですか」
「そうだ。御苦労だった」
 署長はあらためて二人に言った。
「では特別ボーナスと賞状を用意しておくからな」
「ええ、じゃあ今から」
「また行って来ます」
 ボーナスや賞状の話を聞いても軽く笑うだけでだ。二人は何処かに行こうとするのだった。
「スラムの方でヤクの密売の話がありましたから」
「捜査に行って来ます」
「言っても無駄だろうが穏やかにな」
 署長は一応注意もした。
「どうかな」
「それはできない相談ですね」
「俺達には俺達のやり方がありますから」
「全く。相変わらず荒っぽいな」
「じゃあ。ちょっとゴミ掃除に行きます」
「そういうことで」
 署長の言葉をよそに外に出てだ。またしても派手に暴れる二人だった。だがそこには悪はなかった。荒々しいが確かな善と勇気があった。


マニトー   完


                    2010・5・13
 
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