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緋弾のアリアGS  Genius Scientist

作者:白崎黒絵
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イ・ウー編
燃える銀氷
  31弾 アドシアード

 アリアの『子供は出来てなかったから!』発言から数日後。自学自習をモットーとするアリアは図書館の資料で生命の神秘について『小学生の理科』の植物レベルからやり直し、己の保体知識が『シェイクスピアはマックシェイクの一種』というのと同じくらいの大間違いだったことを認めたらしい。しばらくは俺に出くわす度に赤面して脱兎の如く逃げ出したり石化したりしていたが、今では多少のぎこちなさを残すものの、前と同じように接してきていた。

 それと『あ、あたしは別に、そ、そういうことは……してあげても……』とゴニョゴニョ言われたんだが、あれは何だったのだろうか。聞き返したらぶん殴られたので本人には二度と聞かないが。

 逆に、白雪はあれからパッタリと姿を見せなくなった。

 前はあれ程甲斐甲斐しく俺の世話を焼こうとしていた筈の白雪は現在、何が何でも俺に接触しないようにしているらしく、すれ違うことさえない。これを幼馴染離れと喜ぶべきか、それとも悲しむべきなのか。

 まあ、そんな感じでなんやかんやあり、今日も今日とて俺は平和な食堂で昼飯のオムライスを食っている訳なのだが――――

「薬師丸くん。ここ、いいかな?」

 俺の隣の空いている席に座るだけのことに、ご丁寧に断りと入れるこの爽やかイケメンスマイルの男は不知火。2年A組所属、強襲科(アサルト)の秀才不知火(しらぬい)(りょう)である。

 こいつは一年の頃、俺やキンジとよくパーティを組み依頼に当たった、いわゆる戦友というヤツだ。近・中・遠どの距離での戦闘もそつなくこなすバランス型。ちなみにランクはA。教師陣や生徒の信頼も厚い優等生。

 かく言う俺自身もこいつのことは気に入っているしそこそこ頼りにもしているのだが、いかんせんこの胡散臭い笑顔が信頼度を下げている。ついでにイケメンで女子にモテるのも気に喰わない。リア充死すべし慈悲は無い。今付き合ってる奴とかはいないらしいが、彼女が出来たら俺が真っ先にぶん殴って祝福してやろう。

「聞いたぜミズキ。ちょっくら事情聴取させろ。逃げたら轢いてやる」

 不知火の反対側から俺の皿を押しのけるようにしてトレイを置いたこの暑っ苦しいのは、お馴染み車輌科(ロジ)の武藤だ。普段だったら面倒なことが起きる前にとっとと逃げ出すところだが、つい数日前にこいつには助けてもらったばかりなので我慢することにした。決して轢かれるのが怖いわけではない。

「なんだよ事情聴取って」

「ミズキお前、星伽さんと喧嘩したんだって?」

 流石は武偵校。情報(ウワサ)が広まるのが早いな。

 武藤がいつになく真剣な顔で言う。

「星伽さん、相当落ち込んでたみたいだぞ?なにやったんだよ」

「不幸な巡り会わせと盛大な勘違いの連鎖の結果だ。別に何がどうこうしてどうしたって話じゃない」

「んなわけねえだろうが。星伽さん、温室で物憂げに溜め息吐きながら花占いをやる程沈んでたらしい」

「花占い?」

 って、あれか。花びらをちぎって占う、自然に真っ向から喧嘩売ってるみたいな占い。

「で?本当のところはどうなんだよ」

「それは僕も知りたいかな。どうして別れちゃったの?もう愛が冷めたとか?」

 むきゅぅ!

 あ、不知火の言葉でアリアが頬張っていたももまんを喉に詰まらせた。やめろよ不知火。うちのホームズはまだお子様なんだから。過剰反応しちゃうだろ。

「どうもこうも……そもそも、俺と白雪はただの幼馴染だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「幼馴染、かぁ。はぐらかし方としては割りとポピュラーだね。風の噂では神崎さんと星伽さんが薬師丸くんを取り合って()りあったって聞いたけど。僕の予想では、最終的に神崎さんを選んだ星伽さんをフったんじゃないかなって思ってるんだけど。だって神崎さん、強襲科でもいつも薬師丸くんの話してるしね。凄く楽しそうに」

 がごんっ!

 今度はテーブルに思い切り額を打ち付けるアリア。リアクションとしては鉄板だが、実際に見るとただただ痛々しいだけなのだった。あー、赤く腫れてるし。

「あのなぁ、確かにアリアと白雪がドンパチやらかしたのは本当だが、アリアはパートナーである俺との連携が取りづらくなるから白雪を追い払っただけで、好きだとかそうゆうんじゃないんだっての。なあアリア?」

「え?ええええええええええええ、ええ!そ、そうね!そうよ!」

 なにやら慌てた様子のアリアは、顔を真っ赤にして首をブンブンと縦に振る。そして直後に『やっちゃった……』って顔で溜め息を吐く。どうしたんだ?

「それより不知火。お前、アドシアードはどうするんだ?代表とかに選ばれてるだろ?」

 いい加減不知火の悪ノリに付き合うのもうんざりしてきたので、俺は多少強引に話を変えることにした。

 アドシアードとは一年に一回開催される武偵の競技会のようなもので、全世界の武偵校の代表たちが集まりその実力を競い合う。当然、これによって各校の学校としての評価が試されるので、専ら教師達や就職が近い三年生が熱意を向けるのである。そして信頼性が高く成績優秀な不知火なら選手に選ばれていてもおかしくは無い。

「たぶん競技には出ないよ。補欠だからね」

 なんだ、不知火は補欠か。蘭豹のヤツも見る目が無いな。

「じゃあイベント手伝い(ヘルプ)か。何やるんだ?」

「まだ決めてないよ。どうしたものやら」

 本当はお前全然困ってないだろ。笑顔を浮かべる不知火に心の中でツッコミを入れ、俺はアリアに向き直る。

「アリアはどうするんだ?アドシアード」

「あたしも競技には出ないわよ。代表には選ばれたけど、辞退したし」

「じゃ、お前も手伝いか。もう何やるか決めたのか?」

「チアよ。閉会式でやるやつ」

 ちなみにここで言うチアとは言葉通りの、恐らく一般人が真っ先に思いつくあのチアリーディング。ではない。

 イタリア語で武器を表す《アルマ》日本語の《(カタ)》を合わせた《アル=カタ》というナイフと拳銃による演舞を、かろうじてぎりぎりなんとか頑張ればチアリーディングに見えなくもないダンスと混ぜ合わせたものだ。それを武偵校の女子たちは臆面も無く『チア』と呼ぶ。

「ミズキはどうするの?」

「俺は、そうだな……お前が踊るなら、バックで演奏でもやるか」

 武偵校の閉会式のパレードでは、女子がフロントでアル=カタを。男子がバックでバンド演奏を行う。何か不測の事態があったときに対処しやすいように、俺もアリアと同じくパレードに参加すべきで、そうすると後ろで楽器を弾くしか選択肢は無い。幸い、俺は一通りの楽器は扱えるしな。

「あ、薬師丸くんがそれやるなら僕もそれにしようかな」

「バンドか。面白そうだし、女子にも……よしッ!やるか!」

 俺がバンド演奏への参加を発言すると、不知火が便乗してくる。ついで武藤のヤツも。

「み、ミズキが後ろで見ることに……ど、どどどどうしよう。ほ、本番では絶対に失敗するわけにはいかないわね。で、でももう既に緊張してきたかも……」

 一方アリアはなにやらブツブツと呟いている。アリアが変なのはいつものことだが、今日はそれに輪をかけて変だ。

「でも神崎さん、競技会の代表を断るなんてもったいないことするね。知ってる?アドシアードのメダルを持ってると、進路が薔薇色になるらしいんだ。武偵大には推薦入学、武偵局にはキャリアで入れるし、どんな有名どころの武偵企業も二つ返事で就職させてもらえるんだって」

「そ、そんな先のことはどうでもいいわよ。あたしは今、やらなきゃいけないことがある、競技会の練習なんてしてる暇はないの」

 アリアのやらなきゃいけないこと。

 それはアリアの実の母親である神埼かなえさんに着せられた多くの冤罪を無実だと証明すること。そのために危険な無法者たちの組織《イ・ウー》と戦い、勝利すること。こんな暗く重い十字架を背負って茨の道を歩き続けなければならないアリアには、寄り道なんてしてる余裕は無い。

 また、パートナーである俺もそんなアリアを傍で支え、助けるために。そして自分の――――『神代』のことを知るために。

 戦い続けると、そう決めたのだ。

「だからミズキ、明日から朝練するわよ」

「……はい?」

 俺が決意を新たに頑張ろうと気を引き締めていると、アリアがなんか言ってきた。

 え?朝練?おいおい、流石に冗談だろ。もしくは空耳。

「ハイジャックであたしと一緒に戦えるようにはなったけど、まだまだパートナーとして完全に機能してるとは言いがたいわ。もちろん、私もね」

 なるほど。つまり二人の息を合わせ、本物のコンビになるために一緒に練習をしようと。

「わかったよ。朝練をやることに関しては了承した。ただ、ぶっちゃけ俺は寝起きのいいほうじゃない。起きれないかもしれないから、あまり早く始めるのは――――」

「大丈夫。ちゃんとあたしが起こしてあげるわよ♪」

「……くれぐれも、発砲はしないでくれよ?」

「善処するわ」

 どうやら明日から俺の一日は、初っ端から命を賭けるハードモードになるらしい。 
 

 
後書き
皆さんお久しぶりです!白崎黒絵です!
前回までは文章量が一章に比べると少なめでしたので、今回は戻してみました。次回がどうなっているかは……お楽しみということで

内容に関して:不知火登場。イケメンは死すべし。だからミズキも(自主規制)

それでは次は恒例のこのコーナー!
「理子りんプレゼンツ!あなたの情報くださいな♪」
それではどうぞ!

理子「はーいどうもー!司会の私でーす!」

メヌ「いや、その紹介では誰か分かりませんわよ。ゲストのメヌエット・ホームズです」

理子「メヌメヌ真面目!でもそこが可愛い!ぎゅー!」

メヌ「いいからさっさと進めますわよ。前回みたいに尺が足りなくなることなど無いように」

理子「それもそだね!それじゃ早速行ってみよー!今回は……ミーくんについてだっけ?」

メヌ「ええ、そうですわね。お姉さまのことについては過去、貴女に関しては未来を推理するので、ミズキは現在について推理してみましょう」


理子「まあ、ぶっちゃけ前回のは推理でも何でもないただの暴露話だったけどね!」

メヌ「それを言ってはおしまいですわ。さて、それでは始めましょう」

理子「どきどきわくわく」

メヌ「小舞曲(メヌエット)ステップの如く、順を追って説明しましょう。彼の、神代(・・)ミズキの能力と、その出生には――――」

理子「には?」

メヌ「――――あるイロカネと、一人の男が関わっていますわ。夜と負を司る××色金。創造の力を持つ、神に等しき少年。これ以上はネタバレになるのでやめておきます」

理子「くぅ~~~!!!いいところで情報を止めるねぇ!理子りん早く続きが知りた~い」

メヌ「ならば先程からそこで『巻きで!巻きでお願いします!』とカンペを出している作者に言うのですね。それでは皆様、また次回にお会いいたしましょう」


メヌエットさん分かってるなら無駄に文字数増やさないで頂けませんかね!?

それでは今回はこの辺で。次回の更新も頑張ります!
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