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鏡に映るもの

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4部分:第四章


第四章

「だからなんだな」
 ここでオスカルは納得したのだった。
「あの鏡が幸せをもたらすっていうのは」
「幸せを?」
「そうだよ、幸せをだよ」
 このことを話すのだった。
「だってそうじゃないか。あの鏡は人の本当の姿、心を映すんだよ」
「本当の心をね」
「そうだよ。それを見せてくれるから」
 だからだというのである。
「それで幸せをもたらせてくれるんだ」
「そうだったのね」
「人の本当の姿は目には見えないんだ」
 オスカルはこのことも知った。
「けれどあの鏡にはね」
「映るのね」
「そうだったんだよ。あの鏡はそういうものだったんだ」
 言葉をさらに続けていく。
「まさにね」
「凄い鏡だったのね、本当に」
「そうだね。そして」
「そして?」
「守り神だよ」
 オスカルの言葉はここで明るいものになった。
「僕達のね。ただ」
「ただ?」
「それは目印でもあるんだ」
 それでもあるというのだ。
「僕達の心も映し出すから」
「私達の本当の姿も」
「今はありのままの姿だけれど」
 二人の場合はだ。鏡に映るその姿はまさにそのままである。何も変わりはしない。まさに普通の初老の夫婦の姿なのである。
「悪いことをしていればね」
「悪魔になるのね」
「そういうことだよ。悪戯小僧になったりもするんだよ」
 甥のことをここで思い出しもした。
「気をつけないとね」
「そうね。本当にね」
 リヴはオスカルの言葉に頷いた。そのうえで鏡を見ている。その鏡に映る二人の姿はというとだ。いつもと変わりがない。やはりその初老の姿でにこりと笑っていた。


鏡に映るもの   完


                2009・12・14
 
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