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赤い服のアルバイト

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4部分:第四章


第四章

「俺達がサンタクロースになってさ」
「子供達にプレゼントを配る」
「やっぱすげえよ」
 こう言い合うのであった。熱くなりながら。
「よし、じゃあやるか」
「ああ」
「子供達にプレゼントだよ」
 やはりそれであった。
「皆に配ろうぜ」
「日本の皆にな」
「世界の子供達にプレゼントを」
 ここでまたサンタクロースが彼等に告げる。
「それでは皆さん。頑張って下さい」
「よっし」
「じゃあやるか」
「サンタクロースになるのか」
 遼太郎は沸き立つ場の中で比較的クールだった。何処か覚めた顔で橇の中を覗きその赤い服を手に取った。サイズは不思議なことに彼にぴったりだった。
「何か妙なことになったな」
 そしてこう呟く。
「俺がサンタか。どうなんだろうな、これって」
「なああんたもさ」
「おっ!?」
 沸き立つ者のうちの一人に声をかけられた。彼はもう寒いマリンスタジアムの中でその顔を紅潮させている。酒でも飲んだかマラソンをした後のようだ。
「やるよな」
「ああ、そりゃな」
 一日で百万円のバイトだから絶対にやるつもりだった。
「今日はな。やるさ」
「俺達サンタだぜ」
 彼もこの言葉を言った。
「クリスマスのな。じゃあやろうな」
「ああ」
 とりあえず名前も知らない彼の言葉に頷いた。そうしてすぐに夜になった。夜になるとその瞬間にマリンスタジアムから無数の橇が飛び立つのであった。
「さあ皆さん行きましょう」
「はい、サンタさん」
 先頭にいるのは本物のサンタクロースだった。あのスコアボードの頂上にいた。
「子供達にプレゼントを」
「子供達にプレゼントを」
 それを合言葉に各地に散っていく。無数の橇達が空を駆るトナカイ達に曳かれそれぞれの場に向かう。当然遼太郎もまた。彼はまずはあるアパートのベランダに降り立った。
「ここか」
 見ればそのベランダに靴下がかけられてある。白い子供用の小さな靴下だった。
 とりあえず左手に持って背負っているその袋から何かを出した。それは。
「これは!?」
 見ればそれはテレビゲームのソフトだった。それ出て来たのだった。何故それが出て来たのは今一つわからず首を捻りながらそれを靴下に入れる。入らないのではとも思ったがそれでも驚く程あっさりとその靴下に入るのだった。
「入ったな。これでいいのかな」
 何か釈然としないままとりあえずはプレゼントを入れ終えてそのアパートから離れた。するとそのアパートから子供の声が聞こえてきた。8
「凄いや、このソフトが本当に手に入るなんて」
「あれでいいみたいだな」
 とりあえず子供の声が喜んでいるのを聞いてそれでいいとした。そして次の家ではベランダに靴下はないので窓から入った。中から鍵がかけられているのが見えたのにそれでもあっさりと開いた。まるで鍵なぞ最初からなかったようにだった。
「今度は何なんだ?」
 そのあまりにも呆気なく開いた窓を見て首を傾げる。自分が開けたものであったがそれでもだった。
 そのことに首を傾げたままだったがそれでも部屋の中を進んだ。薄暗い部屋の中で小さな男の子がベッドの中ですやすやと眠っていた。見ればその顔は微笑んでいる。
「この子か」
 今度のプレゼントの相手はこの子だとわかった。その大きなベッドの枕元に靴下がかけられている。同時にそこにはこう書かれている紙が入っていた。
『サンタさん、ラジコン御願いします』
「ラジコンか」
 その紙を手に取って読みながら呟いた。
「ラジコンを出せばいいんだな。出るか?」
 袋を探りながらいぶかしむ。そもそもラジコンみたいなものが入っていてはかさばって仕方がないがそんな気配はない。まずないだろうと思いながら探っていると何とそれが出て来たのだった。
「嘘だろ・・・・・・」
 だが嘘ではなかった。戦艦大和の見事なラジコンだ。湖や池に浮かせて動かせばそれだけで壮観だろう。まだ小さいが随分と見事な趣味の子供だった。
「まあいいか」
 とりあえずこの子の趣味には内心感心しながらもそのラジコンを置いておいた。とても靴下には入りそうにはなかったのでとりあえずは彼のベッドのすぐ横に置いておいたのだ。置き終えるとそのまま家を出た。窓を閉めると鍵が自然に閉まったのだった。
「とりあえずこのまま行っていいのかな」
 何事もなかったように終わったのでそれで彼も納得することにしたのだった。
「じゃあ。このまま行くか」
 納得したことにして次の家に向かう。向かう家はトナカイが自然に向かってくれる。そうして次々とプレゼントを贈っていった。そしてある時点でトナカイは急にマリンスタジアムに戻るのだった。またしてもかなり急な行動だった。
 
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