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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico17親友寄れば難無く苦無く

 
前書き
親友寄れば難無く苦無く/意:固い絆で結ばれた親友が力を合わせれば、どんな苦難も乗り越えられるというたとえ。 

 
†††Sideすずか†††

管理局のお仕事が休みなのを利用して、私、なのはちゃん、アリサちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん、アルフの6人で、第15管理世界アネアへとやって来た。次元港を出て、タクシーで郊外まで移動。そこからはセレネちゃんとエオスちゃんに貰ったマップを確認しながら深い森の中を歩く。

「大丈夫、アリシアちゃん?」

「うぅ、なんとか・・・」

一番後ろを歩く私とアリサちゃんの目の前をふらふら歩くアリシアちゃんに声を掛ける。私たちはバリアジャケットを着ているけど、アリシアちゃんはただの私服。一応、私の魔法でアリシアちゃんを魔力で覆っているから外傷は防げるけど、疲労ばかりはどうしようもない。

「貰った地図だとこの辺りに入り口があると思うんだけど・・・」

「すんすん・・・草木の匂いに混じってカビ臭い空気が風に乗って来てる。近いよ」

先頭を歩くフェイトちゃんとアルフが立ち止まって周りを見回した。私とアリサちゃん、アリシアちゃんの隣を歩くなのはちゃんも倣って見回すけど、それらしい入り口はどこにも無いって思うんだけど。“スノーホワイト”に「どう? 入口は近いらしいんだけど・・・」訊いてみる。

≪マップと地形を照らし合わせてみたのですけど、この辺りで間違いないと思いますわ、スズカ≫

探査能力に一番優れてる“スノーホワイト”もこう言っているんだし、遺跡への入り口は確実にこの近くなんだ。分散して周囲を探索していると、「ちょっと休憩~」アリシアちゃんがフラフラと岩に座った。その瞬間、「にょわぁっ!?」アリシアちゃんの姿が消えた。

「「「アリシア!」」」「「アリシアちゃん!」」

アリシアちゃんの姿が消えた場所へと駆け寄る。そこに在ったのは子供1人がようやく入れるような小さな穴。真っ暗な穴の中から「目が回るぅ~~~!」っていうアリシアちゃんの悲鳴と何かが転がる音が聞こえてきた。
そしてドッシーンと大きな音が聞こえたかと思えば、「いっったぁぁーーーい!」またアリシアちゃんの悲鳴が聞こえてきた。良かった、魔法でアリシアちゃんを護っていて。護ってなかったら、痛い、じゃ済まなかったかもしれない。

「行こう!」

なのはちゃんとフェイトちゃんとアルフが松明代わりの魔力スフィアを創り出して、私たちは急勾配の螺旋階段を急がず焦らず、でも気持ち的に早足で降りて行く。アリサちゃんが「結構深いわね・・・」壁のくぼみにある燭台に火を灯していく。アリサちゃんの言うように2階建ての家よりずっと深い。結局、「やっと着いたね・・・」50階建てくらいの階段を降りたような気がする。

「「アリシア!」」

「フェイト、アルフ!」

階段を降り切ってすぐ、通路の壁にもたれかかって体育座りをしてるアリシアちゃんを無事に発見。アリシアちゃんとフェイトちゃんとアルフが再会の抱擁を交わす。抱擁を終えたアリシアちゃんが「すずか、ありがとう。すずかの魔法のおかげで傷1つなかったよ」って私に笑みを向けてくれた。

「うん。どういたしまして」

「さてと。無事に合流を果たしたし、出発しようじゃない」

みんなでマップを確認して、2手に分かれてる通路をどっちに進むかを決める。向かうは右の通路。そっちに進む前に、「アリシア。あたしの背に乗んな」アルフが人型から狼形態に変身。アリシアちゃんは即「お願~い。ちょっとだけ休ませて~」アルフの背中に乗って、「ゴー♪」通路を指差した。

「じゃ、行くわよ」

フェイトちゃんとアルフの代わりに私とアリサちゃんが並んで先頭に立って、私は探査、アリサちゃんは壁に等間隔に並ぶ燭台に火を灯していく。通路は思ったより狭くて、3人が横に並べるかどうかって感じ。ゆるりとカーブと描く通路を警戒しながら進む。

「この近くにトラップがあるみたいだね。・・・スノーホワイト。探査よろしく」

≪かしこまりましたわ≫

“スノーホワイト”の探査能力を最大限に利用して、マップにマークしたトラップ発動のトリガーを発見するのが私の役目。“スノーホワイト”はすぐに床にセットされたスイッチを見つけてくれた。

「みんな、この色違いの石板を踏まないように気を付けてね」

しっかり見ないと判らないけど、色違いの石板の足場がトラップ発動トリガーだ。コレを踏んだらどんな目に遭うのか判らない。みんな、その足場を避けて進む。それから30分くらい通路を右に左に、数あるトラップトリガーをクリアしながら進んで・・・

「広い空間ね・・・」

「セレネちゃんとエオスちゃんはここで一休みするのが良いって」

学校の教室4部屋分の広さと体育館くらいの高さの在る大部屋に着いた。至る所に穴が開いてたり崩れたりと何かが戦った形跡がある。貰ったマップにはデフォルメされたセレネちゃんとエオスちゃんの似顔絵が描かれている。
セレネちゃんの吹き出しには、この階層の守護者と戦闘。でも勝利♪って書かれてる。エオスちゃんの吹き出しには、もう一安心。ここで一休み❤、って書かれてる。というわけで、この広間でちょっと休憩することになって、あちこちにある瓦礫に腰かける。

「アリシア、大丈夫かい?」

「アルフに乗せてもらってたから全然平気だよ♪ アルフの方こそ疲れてない?」

「平気さ、これくらい」

「ここを出てからはちゃんと歩くからね。わたしの事なんだもん。ひとりラクするなんてヤだもん」

「おお、えらいぞ、アリシア!」

アリシアちゃんとアルフを微笑ましく見守っていると、「今、どの辺り?」アリサちゃんが燭台に火を点け終えて私のところに来た。マップを確認すると、いま居るのは第4階層。私たちが入って来た階段で第1から第3までの階層をショートカット出来たことになる。で、私たちの目的――魔力強化の鉱石が在るのは第6階層だから、「――あと、2階層だね」でもここからはもっと気を付けないと。

「第5階層から、殺傷性の高いトラップや強暴生物が増えてくるって書いてある。だから気を引き締めて行かないとね」

「ええ」「「うん」」「おー!」「あいよ」

10分間の休憩を終えて広間を出て、すぐ近くにあった下層へ降りるための階段を使って第5階層へ降りる。細心の注意を払いながらボロボロな階段を二列縦隊で降りつつ、「かなり傷んでる。みんな、気を付けて」後ろを歩くみんなに注意を促した。その直後、「へ?」アリシアちゃんから抜けた声が漏れた。

「どうしたの、アリシア?」

「アリシア。早く進んどくれ。後がつかえてんだ」

最後尾を歩くフェイトちゃんとアルフ(人型モードに変身した)がそう言うと、冷や汗をダラダラ流すアリシアちゃんはそんな2人や私たちを見て首を横に振るばかり。口を開いたかと思えば、「なんか踏んじゃった」ってアリシアちゃんは自分の足元を指差した。
一斉にそっちを見ると、アリシアちゃんの右足が踏んでる足場が他の足場より1cmほど沈んでた。私は「スノーホワイト。コレってもしかして・・・」訊いてみると、≪トラップトリガーですわ、残念ながら≫やっぱりな返答が。

「ちょっ、セレネとエオスのマップにはそんなの書いてなかったわよね!?」

「えっと、そのはずなんだけど・・・」

私たちの現在地とマップを確認するんだけど、この階段にトラップが在るなんて記されてない。う~ん、セレネちゃんとエオスちゃん、出来ればもうちょっとしっかりと調査してくれると嬉しかったんだけど・・・。とにかくどんなトラップからスキャン。調査の結果、足を退けた瞬間に発動するトラップで、階段が崩れて下層へ真っ逆さまというものだった。

「アリシアちゃんの体重以上の重さの岩を足場に乗せれば大丈夫」

「ちょっと待ってな。あたしがさっきの広間から持ってくるよ」

「お願ね、アルフ」

アルフが階段を上がって戻って行った。確かにあの広場の瓦礫を持って来ることが出来れば、トラップはきっと発動しない。アルフを見送ると、「ごめんなさーい」アリシアちゃんがガックリと肩を落とした。

「気にすることないよ、アリシアちゃん」

「そうだよ、アリシア」

「そうね。元はと言えばあの2人がしっかりとトラップの在り処をマッピングしなかった所為よ」

なのはちゃん、フェイトちゃん、アリサちゃんとアリシアちゃんを慰める。私も「大丈夫だよ」って続いて、「スノーホワイト。記載漏れがあるかもしれないから、これからは10m進む毎にスキャンして」と指示を出しておく。

「お待ち~。アリシア、足を上げずにちょっと横にずらしておくれ」

「う、うん」

アルフさんが一抱えある岩石を持って戻って来た。アリシアちゃんが言われたとおりに右足を足場の端ギリギリにまでズラすと、「よっこらせっと」ズシンと岩石を足場に置いた。

「アリシアちゃん。ゆっくり足を退けて。アルフはこっち側へ。みんなは逃げる準備を」

万が一のトラップ発動の際にこちら側とアルフ側が隔てられるような事は避けたいから、アルフをこちらに来させる。そして私はアリシアちゃんの手を握って、いつでもダッシュで逃げられるようにしておく。アリシアちゃんが足場から完全に足を退けた。トラップは「・・・発動なし。もう大丈夫」発動しなかった。みんなで安堵の息を吐いて、「行こう」先へ進む。

「――えっと、そこの壁にトラップトリガーがあるから気を付けてね。あ、そこの女の人の顔が彫られた足場もトリガーだから踏まないように。アリサちゃん、そこの燭台に火を点けちゃダメ。それもトリガーだよ」

「うがぁぁぁ! さっきからトラップのトリガーばっかじゃないのよ!」

「にゃはは。さすがに身動きが制限されっぱなしだと疲れちゃうね」

「体力的にもそうだけど精神的にもキツキツだよ~」

「しっかり、アリシア」

「あたしが背負うって言ってんのに聞かないし。自分の足で進むっていうのは良い事だけどさ、無茶して倒れたりでもしたら・・・」

「あうぅぅ~~~」

アルフにそう言われたアリシアちゃんは、「お荷物でごめんなさーい」屈んだアルフの背に乗った。バリアジャケットを着ている私たちでも疲労が蓄積し始めてるのに、魔力で体を覆っただけのアリシアちゃんはどれだけの疲労感なのか。

「次の階段まで、まだ結構あるよ。みんな、頑張って」

第5階層に降りてから早40分。複雑な造りなうえにトラップの数が尋常じゃない。モンスターが出て来ないのが幸いだけど、それでもやっぱり大変だ。セレネちゃんとエオスちゃん、よくデバイスも無しにこの遺跡をクリア出来たなぁ。誰か助っ人とか居たのかな?

「次の角を曲がったら休憩に適した広間があるって書いてあるから、そこで長めの休憩をしよう」

「さんせ~」

“スノーホワイト”で通路をスキャンして角を曲がった瞬間、「っ!?」通路の奥から通路いっぱいの大きさを誇る火炎球が飛んで来た。先頭だった私とアリサちゃんは元来た通路へと跳び戻って回避。

「何よ、今の!」

「大丈夫!? アリサちゃん、すずかちゃん!」

「ようやくモンスターのお出ましかい!」

「アリシアは下がってて! アルフはアリシアをお願い!」

「あ、う、うん!」

「・・・あいよ!」

アリシアちゃんと、護衛役のアルフが数歩分と通路を後ずさり。それを確認した私は魔法で手の平サイズの氷の鏡を作る。まずは火炎球を飛ばしたのが何なのかを確認しないと始まらない。角からちょっとだけ鏡を出して、「アレかな・・・?」通路の先に在る闇に包まれた広間で何か蠢くのが見えた。

「でもちょっと暗くてよく見えない・・・」

「どれどれ、あたしにも見せて。・・・むぅ、確かにハッキリとは見えないわね」

「明かりが必要だね。どうしよう・・・?」

「私の電撃で何とかなるかな・・・?」

「それならあたしのフリンジングボムの方が効果的と思うわ」

アリサちゃんが“フレイムアイズ”を通常の剣形態ファルシオンフォームから、銃身下に刃を付けたライフル――銃剣形態のバヨネットフォームに変形させた。と、その直後、「また来た!」暗闇の向こうから私たちの身長くらいの大きさにまで縮んで速度が上がった火炎球が飛来した。私は慌てて手を引っ込めた。

「あつっ・・・!」

熱気で私が持っていた氷の鏡が蒸発した。普通の氷結系魔法じゃ簡単に打ち負けるかな。治癒魔法の基礎中の基礎、ヒーリングで負った火傷を治す。

「なのは。万が一の為にシールドよろしく」

「了解、任せて!」

アリサちゃんは“フレイムアイズ”を、なのはちゃんは“レイジングハート“のカートリッジを1発ずつロード。そしてまた発射されて来た火炎球が2発。アリシアちゃんが「魔力反応を感知して発射して来てる」ポツリと漏らした。

「みたいだね。まず私がシールドを発動して1発目を受けるから――・・・」

「ほぼ同時にあたしがフリンジングボムを撃ち込んでやるわ」

なのはちゃんとアリサちゃんが打ち合わせを終えて、「今っ!」2人同時に通路を出た。アリサちゃんが“フレイムアイズ”の銃口を広間の方に向けて、足元に魔法陣を展開。同時になのはちゃんがラウンドシールドを発動。それを合図に火炎球が1発放たれて来た。

「いっっけぇぇぇーーーーッ!!」

――フリンジングボム――

発射されるバスケットボール大の火炎砲弾1発。遅れてドォンって爆発音と地鳴りが起きたと思えばなのはちゃんとアリサちゃんが戻って来た。フェイトちゃんが「何か見えた?」って訊くと2人は頷いた。

「狼みたいな4足の獣で、アルフやザフィーラの狼形態ん時よりずっと大きかったわ」

「あと、背中に剣とか斧とか、武器がたくさん刺さってたように見えたよ」

ということみたい。私はマップを確認して別ルートで階下に降りられないか確認してみるけど、「あー、あの広間を通らないと下に行けないみたい」ダメだった。アルフが「床下ぶっ壊すかい?」穴を掘る仕草をした。

「ダメだよ、アルフ。地下遺跡だから何が起こるか判らないし」

「ここで生き埋めなんてことになったら確実に死ぬわね」

それだけはどうしても避けたいから、モンスターをどうにかするしかない。ここで会議。帰りのことも考えて、ここで無力化するのは必須。だけどこの先にもモンスターが居るかもしれないから全力戦闘は極力回避。連携については、これまでに何度かチーム海鳴内でチーム分けした対多数の模擬戦してるからそれを応用。

「アリシアとアルフはここで待ってて」

「ああ。判った」

「気を付けてね、フェイト。なのは達も気を付けて」

アリシアちゃんに頷いて応えて、通路の角に集まる。魔法に反応して攻撃を仕掛けてくるようだけど、それがすべてとは限らないってこともあってあえて魔法を発動した後で広間へ突撃することを決めた。

「まずは私がシールドで防御」

「私がなのはちゃんのシールドを強化」

「で、広間に入ったら即散開よ」

「そして足を集中的に攻撃して、機動力を削ぐ」

今はこれくらいの作戦で十分。そういうわけで、「レイジングハート!」なのはちゃんがカートリッジを1発ロードして通路を出てすぐシールドを発動。

「パワーブースト・シールディングフォース!」

次に私が通路に出て、防御魔法系全般の効果を上昇させるブースト魔法を発動して、なのはちゃんのシールドを強化。なのはちゃんと私の後ろにアリサちゃんとフェイトちゃんが続いて通路を走る。目の前からは視界いっぱいの火炎球。なのはちゃんのシールドに着弾した火炎球が爆発を起こして、通路いっぱいに炎と黒煙が広がった。

『アリシア、アルフ!』

『アリシアはあたしがしっかり護るから安心して!』

『頑張れ、フェイト、みんな!』

2人の居るところにまで炎が届いたようだけど、アルフがしっかりとアリシアちゃんを護ってくれたみたい。なら私たちはこれ以上、アリシアちゃん達に被害が及ばないように急いで広間に進入するだけ。先頭を走るなのはちゃんに続いて私たちも通路を走って、「散開!」広間に入った瞬間に一斉に散る。

「で、デカ!!」

「お、大きい・・・」

通路の燭台にアリサちゃんが火を点けてくれたおかげで少しばかり広間内が明るい。だから視認できた、なのはちゃんとアリサちゃんが見たモンスターの正体。確かに狼のようだけど、脚の長さだけで私の身長と同じくらい。それに体だけじゃなくて脚や頭にまで武器が20本以上と刺さってた。

『広間の燭台に火を点けてくるわ!』

『私とフェイトちゃんで引き付ける!』

『私は援護に回るよ! なのはちゃん、フェイトちゃん、大火力砲撃は使用禁止の方向で!』

『『うんっ!』』

アリサちゃんが広間の壁のくぼみにある燭台に火を点けに走って、なのはちゃんは「シューット!」魔力弾アクセルシューターを8発と発射。フェイトちゃんは“バルディッシュ”を大鎌のハーケンフォームで狼の脚に斬りかかるけど、「速い・・・!」狼はその俊敏さで2人の攻撃を避けた。

「重そうな武器がいっぱい刺さってるのに・・・」

なのはちゃんがシューターを操作して、大きく私達から距離を取った狼へ向かわせる。私は「パワーブースト・ガンファイアフォース!」射砲撃魔法全般の威力・速力を強化する魔法を“レイジングハート”に掛ける。

「パワーブースト・スラッシュ&フィジカルフォース!」

フェイトちゃんには斬撃の切断力と身体能力を上昇させるブーストを掛ける。するとシューターは狼の動きに追い付いて、フェイトちゃんも通常のライトニングフォームで狼の動きに付いて行けてる。

「すずか! あたしにもブーストお願い!」

「うんっ! パワーブースト・スラッシュ&フィジカルフォース!」

壁4面にあるたくさんの燭台に火を点け終えたアリサちゃんにもブーストを掛ける。なのはちゃんのシューターで狼の動きを制限して、アリサちゃんとフェイトちゃんの挟撃が狼を襲う。狼も大きな口から火炎球を連発して反撃してくる。私たちはそれを走っては飛んで避けて・・・

「壁に張り付いた・・・!」

出っ張りやくぼみに利用して壁に張り付いた狼が大きく咆哮を上げた。すると体中に突き刺さってる武器が光り出して環状魔法陣が武器の数だけ展開されると、ゾクッと悪寒が全身を駆け抜けた。

「みんな気を付けて!!」

私が声を上げた直後、武器の先端から赤・青・黄色、火・氷・雷の光線が無差別に発射されて来た。しかも1発1発が途切れる断続発射じゃなくて持続発射。さらには冷気の光線は氷の轍を、炎の光線は炎の轍を、雷の光線は電撃の轍を床や壁や天井に幾筋も作った。

「厄介な魔法を使うじゃない!」

「しかも魔力量もかなり高い! 食らったらかなり危険だよ!」

光線が途切れるまで避け続けないといけないし、光線が作った3属性の轍にも気を付けないといけない。そんな中でも、「シューット!」なのはちゃんはシューターを、「ファイア!」フェイトちゃんはプラズマランサーを、「うりゃぁぁぁ!」アリサちゃんはフレイムバレットを、狼へと向けて発射。

「スノーホワイト!」

≪フローズンバレット!≫

私も冷気弾を8発と発射。だけど狼の何十本っていう光線が私たちみんなの魔力弾を全て薙ぎ払っちゃった。攻撃を当てるにはまず、あの光線をどうにかしないと。砲撃は広間を壊しかねないからやっぱりダメ。だったら・・・

『私が狼を壁から落とすから、なのはちゃんはバインドで拘束を。アリサちゃんとフェイトちゃんは攻撃をお願い!』

『『うんっ!』』『判ったわ!』

狼の意思とは別に強制的に壁から落とせば空中ではどうすることも出来ないはず。そこをなのはちゃんのバインドで拘束すれば、ほんのちょっとでも攻撃の手が緩むと思う。

(氷の轍が熱で溶けて水になってる。この水を利用すれば・・・)

「すずかちゃん、いつでもいいよ!」

広間の壁面全てが水浸しになってる。それを利用する。なのはちゃんの合図に頷いて、狼へと右手を翳して、「アイシクルスタチュー!」氷結魔法を発動。狼のお腹を突き飛ばすように壁から氷の柱を出現させた。本来の効果は相手を氷の柱に閉じ込めるものなんだけど、今回は壁面の水を利用して氷の柱を突き出させた。いきなりお腹に一撃を貰った狼は苦悶の声を発して宙を舞った。もちろん光線の放出も止んだ。

「レストリクト・・・ロック!」

落下する狼を拘束する桜色に輝く魔力ロープ。すかさず「はぁぁぁぁぁっ!!」アリサちゃんとフェイトちゃんが狼のお腹の下に潜り込んだ。

「悪いわね・・・!」「ごめんね・・・!」

――バーニングスラッシュ――

――ハーケンスラッシュ――

2人は狼のお腹を十字に斬った。ぎゃおおお、って苦痛に満ちた叫び声を上げた狼。レストリクトロックが消失して狼がドサッと床に落下した。そろそろと警戒しながら近づいて行く。狼はこれまでと違って狂気に満ちた瞳じゃなく、どこか安堵を湛えた瞳を私たちに向けて、くぅーん、と一鳴きしたと思えば光になって消えちゃった。残ったのは体中に刺さってた武器と、「首輪・・・?」だった。

「どこかで飼われていたのかしら・・・」

「解らないけど・・・。でも、もしこれが自然的なものじゃなくて人為的にモンスターに変えられたとしたら・・・」

「許せないね・・・」

「うん」

私は首輪を拾ってポケットにしまい込む。遺跡を出たら、どこか温かな場所に埋葬しようと思う。とにかく今は先に進もう。フェイトちゃんがアリシアちゃんとアルフを迎えに行って、私たちは広間を通って下層へと続く階段を下りた。

「次の階層に、あの鉱石があるんだよね・・・?」

「セレネとエオスのマップ通りならね」

「ところどころ漏れがあるけど、さすがに目的地のミスは無いと信じたいけど・・・」

ちょっと不安が残ってるけど、今はこのマップを信じて進むしかない。さっきまでと同じように通路をスキャンしながらトラップトリガーを見つけてはクリアして行く。それを繰り返して進むこと20分ちょっと。アリシアちゃんが「なかなかに順調だね」って陽気な声を上げた。目的の物が近いおかげかテンションは下がってない。

「あんたはそうでもこっちはなかなかにハードよ」

「トラップだけじゃなくてモンスターの相手もしないといけないしね」

「この階層に降りてきたらどっと増えたもんね~」

モンスターの出現率が高まったのは本当。しかも戦闘の最中でもトラップに気を付けないといけないからすっごく苦労した。でも救いなのはとても弱くて、しかもスライムっぽい姿だったことで、良心もあんまり痛まなかった。

「あ、みんな、待って」

みんなを呼び止めて壁を見回す。みんなからの「どうしたの?」っていう疑問に、「この辺りに隠し通路があるみたいなんだけど」って答える。マップに描かれたセレネちゃんのデフォルメイラストの吹き出しには、ここに隠し通路♪ってある。みんなで壁を叩いたりしてみるんだけど、なかなか見つけられない。

「スキャンしてもダメなの?」

「この辺りだけダメみたい。何か妙な力に妨害されてるっぽい」

フェイトちゃんに答える。さっきから何度も試しているけど、どうも上手くスキャン出来ない。と、ここで「もしかして・・・」アリシアちゃんがそう言って床に膝を付いて、床と壁の繋ぎ目を見始めた。

「アリシア・・・?」

「セレネとエオスが動物形態で進んだ場合、わたし達の人の目線じゃ気付かないかもしれないし」

さすが観測眼が一番優れてるアリシアちゃん。スクライア一族は遺跡探索のために小動物の姿に変身できるようにしてる。その事をすっかり忘れちゃってた。私たちもアリシアちゃんに倣って繋ぎ目付近を見る。

「あ、あった! ここ! 小さな穴がある!」

「でもどうやって入るわけ? あたし達には変身魔法なんてないわよ」

「どうにか崩さないようにして穴を開けるしか・・・」

下手に崩して遺跡崩落ということにならないようにしないといけない。それを踏まえてみんなで策を練っていると、「なんか来るよ・・・!」アルフが通路の先を睨みつけた。さらに「ヤバい、なんかヤバい!」アルフが怯え始めた。ここで「っ!」私たちも感じ取れた。とんでもない威圧感。明らかに普通じゃない何かが・・・奥に居る。

「さっきの狼なんて目じゃない程の禍々しい何かが近付いて来る・・・!」

アリサちゃんが“フレイムアイズ”を構えた。私もなのはちゃんもフェイトちゃんもデバイスを構えて、アルフはアリシアちゃんを連れて後ろに下がった。そして「来る!」それは姿を見せた。通路半分くらいの大きさを誇る蛇だった。普通の蛇と違うのは、歯が全て剣で出来ていて、上あごと下あごを1本の槍が貫いてる。それに目が8つもある。そんな蛇の口の奥に見たことの無い魔法陣が展開された。

「バルディッシュ! マルチディフェンサー!」

「レイジングハート! エクセリオンシールド!」

「フレイムアイズ! ラウンドシールド!!」

「スノーホワイト! パワーブースト・シールディングフォース!」

みんなの防御魔法すべてを強化する。その直後、蛇の口の奥からどす黒い魔力砲が発射された。最初にフェイトちゃんの多重シールドに着弾。少しの拮抗の後、1枚目を粉砕して2枚目に着弾。これなら防ぎきれるって安心したのも束の間、バキン、ガキン、メキメキ、シールドに何か硬い物が連続で当たる音が響いてきた。しかもシールドが次々に破壊されていってる。

「砲撃の中に武器が混じってる!」

なのはちゃんが叫んだ。よく目を凝らすと、シールドを破壊していってるのは砲撃じゃなくて、砲撃に紛れて飛んで来る剣や槍といった武器だった。その武器がフェイトちゃん、なのはちゃんのシールドを全て粉砕。最後は「あたしのシールドも長くは保たないわ!」アリサちゃんのシールドだけ。

「スノーホワイト! アイスミラー・ロングサーペント!」

みんなを後退させてからのアイスミラー7枚の多重シールドを発動。一時撤退をすることに。今は身を隠してやり過ごして、居なくなったところで壁の攻略に挑むことを決めた。急いでアリシアちゃんとアルフの元へ、って駆けだす私たち。

「アリシア、アルフ、一旦、ここから離れ――アリシア、アルフっ!!」

先頭を行っていたフェイトちゃんの悲鳴が通路の角の向こうから聞こえた。一番遅れた私も角を曲がって、「うそ・・・」その光景に呆けるしかなかった。さっきまで私たちの目の前に居た蛇が、こっちの方に移動していた。

「アリシア、アルフ! しっかり!」

「すずか! 治癒魔法! 急いで!」

「私とアリサちゃんで時間を稼ぐ!」

「けどなるべく急いで!」

蛇のすぐ側には床に倒れたアリシアちゃんとアルフの姿が。その2人の名前を必死に呼び続けるフェイトちゃん。なのはちゃんはシューター、アリサちゃんは斬撃で蛇の鼻っ面に攻撃を与えてく。

「スノーホワイト!」

≪承知しておりますわ!≫

私もアリシアちゃんとアルフの側に駆け寄って、「ラウンドガーダー・エクステンド!」ユーノ君直伝の高位結界魔法を発動。防御と肉体・魔力の回復を一緒に行えるすごい魔法だ。フェイトちゃんにも蛇の迎撃を任せようって思って顔を見る。

「あ・・あ・・・!」

「フェイトちゃん・・・?」

フェイトちゃんは私の背後に目を向けていて顔を真っ青にしてた。振り返ると、そこにも蛇が居た。なのはちゃんとアリサちゃんは今も蛇と戦闘中。そう、蛇は移動したんじゃなくて2匹いたんだ。終わりを覚悟した。なのはちゃん達も2匹いたことを確認して顔が青褪めた。

「砲撃が来る! すずか、防御!!」

後ろから来る蛇に向かってフェイトちゃんが駆け出した。今、どうにか出来るのは私とフェイトちゃんだけ。怖気づいてなんていられない。砲撃が口の中の魔法陣から発射されるなら、閉じてしまえばいい。
そう思って氷の茨型のバインド、アイシクルアイヴィを発動しようとしたとこで、「きゃあああああ!」なのはちゃんとアリサちゃんの悲鳴が背後からした。振り向く前に、2人が私の足元へ滑るようにして転がって来たけど、すぐに立ち上がった。背後の蛇に振り向くと、そっちもまた砲撃発射態勢だった。

「絶体絶命ね・・・!」

今、2匹同時に砲撃を発射されると確実に撃墜・・・ううん、武器に串刺しにされて死んじゃう。それだけはどうにかして避けないといけない。だけど間に合わない。諦めかけたその時、「全員、伏せなさい」女の人の澄んだ声が聞こえた。有無を言わさないような声色に、私たちは一斉に伏せた。

瞬神の風矢(ソニック・エア)・・・!」

2匹の蛇の砲撃も臨界というところでそれは起きた。背後の蛇のさらなる奥からとんでもない魔力が発せられて、それが頭上を一直線に通り過ぎて行った。と、思えば前や後ろからガシャンって金属が床に何十個と落ちた音がした。恐る恐る伏せていた上半身を起こす。

「もう大丈夫ですよ」

背後から聞こえた女の人の声。振り向いてみると、20代前半くらいの女の人が居た。手にしているのは美術品のような弓。蛇が居たところの床には何十っていう武器が落ちてる。さっきの狼と同じ。間違いない。この女の人が倒してくれたんだ。
私たちは「ありがとうございました!」って頭を下げてお礼を言うと、「はい、どういたしまして」とても柔らかな微笑みを浮かべてくれた。そしてアリシアちゃんとアルフも無事に目を覚まして、女の人に私たちは自己紹介。

「わたくしは、フィヨルツェンといいます。ところであなた達はどうしてこのような危険な場所へ? こう言ってはなんですけど、子供が来るような場所ではありません。わたくしがお送りしますから、早く出ましょう」

やっぱり怒られた。でもここまで来て引き返すわけにもいかない。アリシアちゃんがここへ来た理由を、フィヨルツェンさんに教えた。すると「判りました。その目的をまずは果たしましょう」って歩き出したから私たちも続く。そしてフィヨルツェンさんが通路と隠し通路と隔てる壁に前に立って弓を構えると、右手に風を集束させて1本の矢にした。その矢を弓の弦に番えて・・・

瞬神の風矢(ソニック・エア)

射った。その矢は壁に直径2mほどの大穴を開けて、すぐに消滅した。壊したと言うより削り取ったって感じで、どこも崩すことはなかった。そのあまりにアッサリ事を済ませたことに呆けていると、「さ、行きましょう」フィヨルツェンさんが歩き出した。慌てて追いついて、「あ、トラップがあるといけないので」って私は先頭に出る。

「ここの通路に入るのは初めてですが、トラップが発動する仕掛けがどこにあるのかは判りますので大丈夫ですよ」

フィヨルツェンさんは風の流れを読むことで建造物内の異変や違和感を感じ取れるとの事。確かにマップに記されたトラップトリガーを危なげなくクリアしてく。

「あの、フィヨルツェンさんはどうしてこの遺跡に?」

「・・・ボランティアです。遺跡内で亡くなった方の亡骸や遺品を捜索して外へ運んだり、先ほどのような怪物の撃破をしています。あんなものが外に出るなどもっての外ですから」

「やっぱり亡くなってる人もいるんですね・・・」

「ええ。この遺跡は全18階層という広大なもので、第8層からは通路の至る所に亡骸があります。怪物についても先ほどの蛇が可愛いと思えるほどのモノがごろごろ居ます」

そんなに深くて、危険な場所だったんだねココ。今さらながらにとんでもない場所に来たって思う。それから20分。ようやく目的地へと到着した。セレネちゃんとエオスちゃんのデバイスに埋め込まれていたあの鉱石で出来た柱が乱立してた。

「アリシア。さあ」

「う、うん」

フェイトちゃんに促されたアリシアちゃんは恐る恐る柱に近付いて行って、「これでいいんだよね・・・?」柱に触れた。

「「「「わあ♪」」」」

「こりゃすごいね・・・」

アリシアちゃんが触れたら鉱石の中に星空のようなものが生まれて、室内を不思議な光で照らしだした。室内はまるで星空のよう。あまりの神秘的な光景に私たちは見惚れた。

「目的の物は手に入れることは出来ましたね。水を差すのは気が引けますけど、遺跡を脱出してください。入り口まで送ります」

鉱石の柱を私たちの人数分に分断しているとフィヨルツェンさんにそう言われた。目的を果たした以上は下手に残って危ない目に遭うこともないと解ってるから素直に頷いた。それからフィヨルツェンさんを先頭に遺跡を逆走して、「空気が美味しい・・・!」外へと出た。

「フィヨルツェンさん。改めてありがとうございました」

「「「「ありがとうございました!」」」」

アリシアちゃんに続いて私たちもまたお礼を言う。フィヨルツェンさんは「はい。ではわたくしはこれで失礼をしますね」そう言って遺跡内に戻って行った。

「みんなもありがとう! みんなが居てくれたから、こうして鉱石を手に入れることが出来たよ。本当に、本当にありがとう!」

アリシアちゃんの満面の笑顔が、私たちの最高の報酬だった。こうして私たちの遺跡探検は終わった。

 
 

 
後書き
ラーバス・リータス。ラバ・ディアナ。ラーバス・ヴァーカラス。
朝起きて、その日1日のテンションを下げる出来事。それは録画予約していた番組が録画されていない事! そうです! アニメ「ViVid」の第3話の録画にミスりました! どれだけショックだったか! もうその日はテンションダダ下がり! ちくしょう! ブルーレイの発売日まで待てと言うのか! そんな殺生な!!
 
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