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魔法少女リリカルなのは ~Emperor of the ⅣGOD~

作者:不死廃人
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魔法の力、その名は《白虎》

 
前書き
大変長らくお待たせしました。
本当に申し訳ありません。暇ができたと思ったら、急に忙しくなってパソコンを起動する暇さえなくなっていました。今度からはiphoneでもできると聞いたので外出先でも小説を進められたらと思っています。本当にすみませんでした。
もし、まだ読んでいただける方がいらっしゃったら本当に嬉しいです。それではよろしくお願いします。 

 



お昼をだいぶ過ぎたころ、レイナはジュエルシードを探すのを一旦やめて神社の仕事へと戻り、境内の掃き掃除をしていた。散歩やお参りで来ている他のお年寄りや常連の人たちと何気ない会話をし、その都度自分が持っていた首飾りのことに見覚えがないかなど情報収集もしていた。今はその客足もなくなり、一人いつもの仕事を手慣れた様子でこなしている。
ほんとにどこへ落としてしまったのでしょう....。参拝の方たちに一通り聞いてはみたのですが、誰もお心当たりはなさそうでしたし。神社の周りでは落としてはいないということでしょうか。でも、そうなりますと帰り道やお家のほうで見つかるはず、もしくはすでに誰かに拾われてしまったのでしょうか。それはいけない。やはり一刻も早くあの忌まわしき宝石を見つけなくては。そう考えながら、ふと神社の入り口のほうの階段を見てみると。

「ふぅ、疲れた~。ふらふらだよ~。ん?わぁ!わんちゃんだぁ!野良犬かな?」

いつものランナーの方ですか。あとでお水でも持っていって差し上げましょう。この前も倒れかけていましたし、危ないですからねぇ。おや?あの子犬がなにやらくわえてますね。あれは...

「!!? いけない、離れてくださいっそこの方!!!!」
「えっ.....?きゃっ!!」

突然、子犬のまわりにどす黒い光が起こったかと思うとその光が子犬を飲み込んでしまった。その時、一瞬大きな風が巻き起こりまわりの落ち葉やごみが舞い、そばにいたランナーの女性は足をとられその場にしりもちをつき、小さな悲鳴をあげた。子犬を飲み込んでいた光はしだいに一回り、二回りと大きくなり最後には人間の身長をゆうに越えるであろう巨大な怪物へと変貌していた。その見た目は狼の体躯のようで身体は牛のように大きく、全身が黒い体毛で覆われていた。顔面には左右に二つずつ大きな目玉があり、鋭く太い牙がその大きな口から見えている。あきらかに普通じゃない見た目にランナーの女性は恐怖によりその場で震えて動けないでいる。
このままでは危険だと判断したレイナは懐から何枚かの護符のようなものをとりだし狼の怪物のほうへ飛び出した。それを察知した狼はレイナのほうを振り向き異形な爪を持った脚でレイナに襲いかかる。それに対してレイナは飛び出した勢いを落としてその場で構え、手にとった護符を狼のほうに放った。

「”Stop a movement”」

流暢な英語で言われた“動きを止めよ”と意味する言葉に反応し、護符が魔法陣を発動させる。その言葉通り魔法陣は狼の攻撃を止め、その身体を拘束した。狼は怒りに吠え、力任せに魔法陣から抜け出そうとしている。護符から発動した魔法陣はキシキシという音を立てなんとか狼をその場に食いとどめようと力を働かせている。これなら30秒くらいは持つだろうと思ったレイナは女性ランナーのほうへと体を向け

「今のうちに逃げてください!」

とレイナがそう言葉を向けた女性ランナーを見ると、彼女はその場で気絶していた。レイナはそれを見たあと素早くランナーのそばに行き、彼女を抱え安全な場所へと運び出そうとしたとき狼を縛り付けていた魔法陣がバチィッという音とともに破られた。すかさずもう一枚の護符をとりだしたレイナは再び狼へと放ち拘束する。

「10秒くらいで破られてしまいましたね....これではこの方を逃がしてあげることは不可能と考えます。あなたはどう思いますか?」

そう上空へと問いかけるレイナ。それに

《ソウダナ、ソイツヲ置イテキャオマエハ助カルゼ。》

と誰かが答えた。するとレイナは怒った様子で

「馬鹿言わないでください。ジュエルシードで変貌してしまった動物に一般人を襲わせてしまったなんてこと私が見過ごせるとお思いですか?」
《無理ダロウナ。ダガ、ソウシナイト共倒レハ確定ダゼ?》
「.........かくなるうえは、私があなたの力を使って倒すほかには手がありませんね。」
《ソレコソ無理ッテイウモンダ。アンタノ今ノ魔力ジャ俺サンタチヲ使エナイ。使エタトシテモアンタノ魔力ガ底ヲ尽キテリンカーコアガ消滅シチマウ。》
「そんなことは全然構いません。一度だけでも使うことができれば私がどうなろうと。」
《オイオイ、正気ナノカ?》
「もちろんです。私が落としたジュエルシードのせいで人が亡くなってしまうなんてこと....二度とあってはなりませんから!!」
《......ッタク、ショウガネェナ。ジジイニハ俺サンカラ話シトイテヤルヨ。安心シテ成仏シナ。》
「ありがとうございます......。“白虎“よ、我が身にあなたの力を!!!!」

すると、晴れ渡る上空から光が走り、突如発生した竜巻がレイナのもとへと落ちていった。落ちた竜巻は地上に留まり轟音を立てレイナの姿を飲み込んでいく。
だが、次の時にはフッと竜巻が跡形もなく消えてしまった。

「!?なぜ!!?なぜやめるのですか、白虎!!!」
《俺サンハヤメテナイゼ?言ッタロ、魔力ガ足リナイッテヨ。》
「そ、そんな........!ここまで落ちていたなんて....。」

ここまでなのか。自分は自分の犯した大きなミスを、他人を巻き込んでしまったのに、償えずにまた罪を重ねながら死んでしまうのか。そう絶望したレイナは魔力切れもあってかその場に崩れ落ちてしまった。だが、この場にただ一つ自信を持った声が響いた。まだ諦めていない、むしろ楽観的な調子で

《ソウ悲観的ニナルコトハナイト思ウゼ。ホラ、ヤットゴ到着ダヨ。》
「.........え?」

白虎がそう言うと階段のほうから聞き覚えのある、いや毎日聞いている声が聞こえた。そこにはこの世で一番巻き込みたくなかった孫の姿があった。


____________________________________________

神社のほうで大きな光をみた俺は、さらに速度をあげて走り出した。なにかがあったのは間違いない。朝の仕事を休んでいたばあちゃんは絶対あの場にいるそう燈嗣は確信していた。心がざわついている、ばあちゃんがいるからなのかもしれないがそれとはまた違った人生が変わってしまうようなものを感じる、そう思うのだ。あそこにジュエルシードとは違ったなにか大きな力がいるのは間違いない。その大きな力がきっと自分を呼んでいるのだ。俺は神社へと続く階段の前まで着くとそのまま階段を一気に駆け上がり、門をくぐった。くぐった先で目に入ったものは黒くて恐ろしい見た目の巨大な獣と気絶しているであろう女性を抱えたばあちゃん、そして空中で輝く白い宝石が俺の目に入った。

「ばあちゃん、無事なの!!?」
「大丈夫ですよ、トモ。それよりなぜここに........。白虎、まさかあなたが呼んだのですか?」
《オット、ソリャ誤解ダゼ?俺サンハナァンニモシチャイナイサ。コイツガ勝手ニキタダケサ。》
「え?まさか、その宝石が喋っているの?」
《応トモヨ。俺サンノ名ハ “白虎” 。俺サンノ力ヲ今カラオ前サンニ使ワシテヤル。ソウダナ...ッテ自己紹介シテル場合ジャネェナ。オイ、ブラザー、スグニ俺サンヲ使イナ。》
「!?白虎!!!トモには魔法を使わしては.....!」
《今ハソンナコト言ッテル場合ジャネェト思ウゼェ、コノ状況アンタジャァ解決スルコタァデキネェヨ。ソノ一般人ヲ救ワナキャナラナインダロ?》
「..................やむを得ませんね。トモ、すみません...その白虎のいう事をよく聞いてなんとかその怪物を止めてください。」
「.....わかったよ、ばあちゃん。白虎、君があいつを倒せる力を俺に与えてくれるの?」
《モチロンダ、俺サンノ力ヲ使エバアンナノチョチョイノチョイヨ。》
「よし。じゃあ、頼むよ白虎!!」
《ヨッシャ、イクゼェ!魔装、展開!!!》

白虎はそういうとその宝石の本体を煌々と輝かせ、俺のほうへと飛んできた。それは俺の目の前までくるとゴウッとなる大きな風により発生した竜巻と魔法陣と共に俺を包んだ。魔法陣に包まれた俺は身体の中に大きななにか、いや白虎が入ってくるのを感じた。
魔法陣と竜巻が消える頃、そこには装甲がついた服を身に纏っている俺の姿があった。ノースリーブのアンダーシャツのような服を上半身に身に着け、下半身は膝下まであるような真っ白の半ズボンの裾をちょうど膝の部分で結んでいるようなものをはいている。脛のあたりを強固な装甲で覆ってあり、足には爪を模したものがついた金属製の靴、腕にはのガントレットを装着していて手首の部分には爪を連想させる浮き出た装飾がしてある。脇腹と腰のまわりには薄いが堅そうな装甲が何層かあり、腰の後ろ部分には尻尾に似せた1mほどの鎖がぶら下がっている。これらはすべて銀色に鈍く輝いている。髪の色がいつもの暗い銀髪から濁りのない白い髪色に変色していて瞳も金色へと変化していた。その身体にはシュウシュウと風を纏っていた。

《イヨ~ッシ、準備完了!!サア、チャッチャトアノ化ケ犬ヲヤッチマオウゼ。》
「って俺なんにも武器持ってないよ!?杖とか!」
《杖~?ンナモン要ラナイゾ。》
「じゃあどうやって封印するの??」
《封印???ソウカ、封印デキル魔導士ガイルンダナ。ダガアイニク俺サンハ闘ウコトシカデキナイモンデネ。トリアエズ封印シヤスイヨウニボコボコニシチャエヨ。》
「どうやって?」
《ソリャァ、素手ニ決マッテンダロ。男ナラ拳デ語レ、ッテナ。》
「そんな無茶苦茶な.......、!?」

そっちのけで白虎とのんきに話していたのが気に食わなかったのか、いつのまにか動けるようになっていた狼の怪物が襲ってきた。とっさにいつものように回避行動をとるとある変化が起きた。回避に使った力がいつもより多かったらしく避けた方向にすっとんでしまったのだ。思わず木にぶつかってしまった俺はびっくりしてぽかーんとしてしまった。

《ナニヤッテンダ、ブラザー!シッカリシテクレヨ。》
「いてて、なんかいつもより力んじゃったみたいで。なんでだろ?」
《ソリャ、魔法デ強化サレテイルカラに決マッテンダロ?》
「それ先に言ってほしかったなぁ...。」

当然でしょう?みたいな反応されても困るんだよ、白虎。と付け足して狼に向き直る。おそらく狼の身体は俺の身体の何倍もある。こういう四足歩行のやつを倒すには横から衝撃を与えるのが一番有効だ、と熊と闘った経験のある兄貴がいつか教えてくれた。

「白虎、このバリアジャケットって防御のための服だから多少の無理をしてもダメージ喰らわないよね?」
《ン?マア、ソウナンダガ、俺サンノハチョットバカシ違ウ。ドッチカッテイウト攻撃ノタメノ装備ナンダ。》
「?どういうこと?」
《試シニ殴ッテミロッテ。ソラ、来タゾ!!》

話している隙をついて狼が前足での攻撃を繰り出してきた。俺は回避できないと思い、右手の拳で迫りくる狼の前足を殴り合わせた。爪とガントレットのぶつかったせいでガギンッ!と鈍い音が鳴る。するとどうだろう狼の爪が根元からボロッと折れてしまったのがみえた。悲鳴をあげ後ずさりする狼。俺は驚いて自分の右腕を確認する。ガントレットには傷一つついておらず、もちろん俺の腕にもなんの支障もなかった。

「す、すごい....これなら!!」

白虎の力に感嘆の言葉をあげて俺はその場を思いっきり駆け出した。一息で狼の側面につき、両足を地面にしっかりとつけ前に拳を突き出す。これはただの正拳突きだけど全体重をかけた踏み込みを自分の呼吸と合わせたその一撃は毎日習っている型の、今ちゃんと繰り出せる唯一といえる、攻撃方法だった。俺の放った一撃は見事狼の脇腹あたりに命中した。当たった部分から大きな風が起こり、それ全体が収束して小さい風圧が発生した。その風圧は見た目に合わず街全体を轟かすような振動を起こし、狼を吹き飛ばす。狼は短い悲鳴とともに神社の鳥居のあたりまで吹き飛ばされ、その動きを停止させた。

「ふうっ。」

そう一息つくと白虎が嬉しそうに
《上出来ダゼ、ブラザー!!》
「そういえばさっきからブラザーってなんなのさ?」
《俺サンタチハモウ魂ガツナガッテイルカラサ、ブラザー。》
「わけわかんないよ!!」

俺がツッコミを入れると同時に、俺を包んでいたバリアジャケットは光となって宙に消えていった。その直後だった、俺は膝からうつぶせに倒れて意識が飛んだ。途中でばあちゃんとなのはの声が聞こえた気がしたがよく覚えていない。俺は気づいた時には家の自室で寝ていた。




「あれ....?確か俺は.......。」
《気ヅイタカ。オソヨウ、オ寝坊サン。》
「え!?寝坊っ!!?時間が、学校が、あれ????」
《落チ着ケッテ、マダ今日ノ夕方ダゼ?寝ボケテンゾ。》
「夕方???あっ...。」

思い出した、俺は神社でジュエルシードの生み出した怪物を倒して、気を抜いた瞬間、意識が全部突然襲ってきた疲労で持ってかれていたんだ。そうだ、ジュエルシードは......?

「白虎、ジュエルシードは!!!?」
《無事、アノオ嬢チャンガ回収シテクレタヨ。マ、今カラ話ヲシテヤルカラソコニ座レヤ》
「う、うん。」

白虎から聞いた話によると、俺が気絶した後遅れて到着したなのはたちが封印をしてくれたらしい。狼を倒した後、気絶した原因は白虎にあるという。白虎の発動はなぜか相当な魔力を消費するものだというのだ。だが、普通の魔導士(なのはや俺みたいに魔法を使う人のことをそう呼ぶらしい)は一回の使用で数日の昏睡、最悪の場合は命を落としてしまうことがあると自慢げに話していた。俺はとても珍しいケースで数時間後に目覚めるなんてありえないと上機嫌に白虎は言っていた。そんな危ないことしていたのか俺は。
まあ気絶した後ばあちゃんと連絡をして迎えにきてくれたじいちゃんに家まで運んでもらって今に至るらしい。ばあちゃんたちにはユーノが色々詳しく説明してくれたらしい。


「ばあちゃんたちが何か話したいって?」
《アア、マア察シハツクガネ。》
「とりあえず、行ってみるよ。」

俺はとりあえず部屋着の浴衣に着替え、いそいそと部屋を出た。そういえば白虎の姿がない。さっきからどこから話しかけているんだろう。ユーノたちの言う念話を使って遠くから話しかけているのだろうか。白虎に聞こうとしたらいつの間にか縁側のほうに着いていたらしく、庭のほうにじいちゃんがいた。その顔はいつも以上に険しい表情を作っていた。自然と稽古の時を思い出し、背筋が伸びて緊張した空気になる。

「......燈嗣、こっちにきなさい。」
「...............。」

じいちゃんが回れ右をして歩き出した。俺は黙ってじいちゃんの後ろ姿を追う。庭を横切り、離れの客室を過ぎるとその先にあるのは毎日夕方になると稽古をつけてもらうために通う俺の家の道場の入り口の前に出る。道場は裏口もあるがそっちを使うのは後片付けの一環の雑巾がけをするときバケツに水を汲みに行くときぐらいだ。ガラガラと引き戸を開け道場の奥に進んでいくじいちゃん。俺は、一度大きく深呼吸して道場に足を踏み入れた。道場はいつもより薄暗くしんと静まりかえっていた。道場の大きさは約400平方メートルくらいで高さが9メートルほどある。奥には竹刀やら木刀、薙刀をはじめ様々な木製の武器が壁にかけられたりしている。その真ん中には真っ赤に染まった甲冑が鈍く輝きを放って飾られている。その3メートルくらい前にじいちゃんと先に待っていたばあちゃんが座っている。俺は二人に残り五歩くらいで目の前にいくであろうところで止まり、その場で正座をする。すると我慢できなくなったのか白虎が

《通夜カヨ、オイ!!重ッ苦シイ雰囲気ダシテンジャネェヨ!》
「.............ヌシは相変わらず空気の読めないやつだのう、白虎よ。レイナが前々より燈嗣には魔法の力について関わらせたくないとは知っていただろう。無論、わしだってできる事なら関わらせとうなかったわ。」
《ダカラッテ関ワッチマッタモンハショウガネェダロ。イツマデモ暗ク考エネェデ前向キニ行コウゼ?》
「こいつ、事情を知っていながらよくもそんなことを.....!!」

辺りの空気にピリピリと緊張が走る。じいちゃんは苛立ちを隠そうとせず、発する言葉にもそれぞれに怒りを乗せている。そんな空気を半ばあきらめたような悲しそうな声でばあちゃんが鎮めた。

「いいのですよ、白虎の言うことは正しいです。なってしまったものは仕方ありません。トモ?あなたはその魔法の、いえ、白虎の力を聞きましたか?」
「...うん、俺の中の魔力を使って白虎は俺に魔法の力を与えてくれる。その時に、白虎の力を使っている間は常に魔力を消費していてその消費量がとんでもなく多いんでしょう?」
「そうです。普通の、大人の魔導士でも一歩間違えればその魔力の原でもあるリンカーコアというものを吸い取られてしまうことだってあります。もし、リンカーコアを失った場合、ほとんどの人が死を迎えることになります......。」

そういうとばあちゃんは暗い顔をしてうつむき、ぎゅっと拳を握った。じいちゃんが言葉を繋げるように

「わしらは力を使いすぎてしまった者の結末をこの目で見てきている。だから長い間、家族であるお前たちにもこのことは秘密にしておいたのだ。ただ、魔法の力に関わってほしくなかったのだ。」
「................。じゃあ、じいちゃんたちは随分前から、魔法を知っていたみたいだけどどうやって知ったの?」
「知った、というのは正しくないかもしれん。わしは正真正銘、生まれた時から日本男児なんだが、お前のばあさんがあっちの世界『ミッドチルダ』というところが出身でな。」
「ミッドチルダ?」
「魔法の力がごく当たり前の日常で使われている世界です。私は生まれがミッドチルダで育ちがイギリスなのですよ。見た目や言語がほとんど同じような世界だったのもあって地球にはすぐに慣れましたが、その地球にくるときに私はとんでもないものを持ち込んでしまったのです....。」
「とんでもないものって?」
「......ジュエルシード。ロストロギアと呼ばれる、非常に危険で膨大な魔力の結晶です。」
「!!!!」

後で聞いたことなんだけど、ロストロギアというのは遥か昔、ミッドチルダや地球とはまた違う文明的にとても栄えた世界があったそうだ。その文明は魔法の力を自分たちの手に余るほど発展させてしまったらしく、何かのきっかけで魔法の力が暴走してしまってその世界自体を滅ばしてしまった。その滅んだ世界の失われた魔法の技術がごく稀に様々な世界で発見されることがあるというのだ。そのロストロギアの一つがジュエルシードということだ。
...なるほど、だからばあちゃんはジュエルシードを持っていたのか。向こうの世界、ミッドチルダだっけ、の出身だからジュエルシードがどういうものかわかっていたんだ。常に身に着けていたのもそのためだったんだ。でも....

「でもさ、ばあちゃん。ジュエルシードはユーノがあっちで最近見つけて、そこでトラブルが起きてこっちの世界にやってきたって言ってたよ?なのにばあちゃんは何年も前にジュエルシードを持ってきたって一体.......?」
「ユーノさんが言っていたのですが、おそらくロストロギア単体による時空間転移の魔法が発動したものによるタイムスリップみたいなものじゃないかと。ジュエルシードを運んでいる最中だった船が事故に遭ったと聞きました。その時に散らばってしまった一つが偶然、私の所に来たのでしょう。実は私自身もこちらに来る前はジュエルシードなんて持っていなかったのですよ。着いたときに気づいたら手元にあったものだったのでよくわからないのです。」
「そうだったんだ...。」
「さて、昔話はこの辺で切り上げて本題に入ろうではないかレイナよ。」
「そうですね。」

二人がこちらに顔を向け、緊張した空気が流れる。

「トモ、先ほども言った通り私たちはずっと家族にだけは魔法のことに関わってほしくないと思ってそれを隠し、過ごしてきました。その思いだけは今になっていても変わりません。今からでも遅くはありません、今回のジュエルシードの件はもう忘れることはできませんか?」
「これはお前のことを慮って言っていることなのだ。ロストロギアの力は恐ろしく、計り知れないものだ。これ以上は関わってほしくはない。」
「あなたの考えを聞かせてください、トモ。」

二人が本当に心配してくれて、俺のことを考えてくれて、何より不安がっていることがわかった。その上で、俺の意見を聞いてくれているんだ。できることなら諦めてほしいと。それでも、それでも俺は。

「じいちゃん、ばあちゃん。ごめん、俺はこのまま起こっていることを無視することはできない。ジュエルシードは確かに危険なものだし、それを探す事だってこの先なにがあるかもわからない。」
「だが、燈嗣よ。それは同時に白虎らの力を借りて、常に死と隣り合わせになって行動するということでもあるんだぞ。それを踏まえてもその考えが突き通せるか?」
「.........うん。俺はそれでも考えを変える気はないよ。白虎の力は確かに強大で危ないものなのかもしれない。でも、だからって自分にできることをせずにただ傍観して過ごすなんてことは俺には考えられない。ユーノと約束だってしたんだ、手伝うって。してしまった約束を破るのは失礼だからね。なにより、女の子一人を危ない目に遭わせるなんてことできないよ。そうでしょ、じいちゃん?」

問いかけるとしばらく難しい顔をして黙って話を聞いてくれていたじいちゃんは顔をバッとあげ高らかな声で笑った。隣でばあちゃんが「やっぱりね」という風にやれやれと首を振っている。

「もっともらしい理由を言われてしまったな、レイナよ。こりゃまいったなぁ、はっはっはっは!!!!!」
「笑い事ではありませんよ!まったく、あなたも白虎も引き止める気無いんですからもうっ!」
「まあまあ、可愛い子には旅をさせよと古来より日本では風習になっているじゃあないか。」
「それはことわざデス!.....こほん。それにロストロギアを集める旅なんてそんなことわざに従ったとしても、危険すぎます。トモ?考え直してはくれませんか?」
「なぁに言ったって無駄だよ。こいつはこのわしの孫だからの、頑固さも遺伝してるに決まっておろう。なあ?」

そういうとじいちゃんは、わしゃわしゃと俺の頭をつかんで髪の毛をもみくちゃにする。ばあちゃんはまだ怒っている。
じいちゃんから解放された俺は乱れた髪の毛を手で整えながら

「ごめん、ばあちゃん。危ないってことはわかっているし、心配かけちゃうのもごめんって思ってる。でも、俺の力で誰かを助けられるならできる限りのことはしてみたいんだ。だいじょうぶさ!できないことを無理矢理やるってわけじゃないんだし、白虎もついてくれてるし。」
「その白虎たちの力の影響が一番心配なんですけどね.....。そうですね、無茶を絶対にしないということであれば認めてあげましょうか。ゴウたちには何か理由をつけて隠しておきましょう。トモも魔法に関することは一切、他言無用ですからね?」
「うん、わかってるよばあちゃん。ありがとうね!」
「さて、燈嗣よ。これからは朝の修行にも出てもらうからな。我が武術の全てを明日からみっちりたたきこんでいくからな!覚悟しておけよ?はっはっは!!」
「うへぇ~、朝練かぁ。が、頑張ります......。」

朝にはほんと弱いんだよなぁ。最近は何度か早起きできたけど、たまたまだし。でもまあ、強くなるためならしょうがないかな。まずは、早起きの修行だな、うん。
少しだけ目標が違う気もするが決意を固めた俺であった。するとさっきから妙に静かに話が進むと思っていた原因がやっと言葉を発した。

《...フワアアァァ。ン?ヤット終ワッタカ?オメェラ話長インダヨ。モウチット手短ニ話ソウゼ、手短ニ。》
「..........静かだと思ったら、ほんとにあなたは空気というものが読めませんね白虎........。」
《デバイスダカラナ俺サンハ。ブラザーノバイタルハ常ニ読ミ取レルガ、空気マデハ読ムコトナンカ専門外ダゼ。》
「やれやれ、お前さんは仮にもインテリジェントデバイスの端くれだろうに。さて夕飯にするかの、今日の夕飯はなんだレイナよ。」

ザ・KYの白虎はどうやら眠っていたようだ。ばあちゃんらにため息をつかれながら、人間ッテノハヨクワカンネェナ、と言っている。
とりあえず、今日は休もう。白虎を使った影響なのかまだ身体のけだるさがとれない俺はただ自分を休めることだけを考えていた。明日になったらなのはたちにこっちの事情を話せばいいかな。
こうして俺の長い長い一日は過ぎていった。



______________to be continue____________
 
 

 
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
急いで投稿したもので誤字脱字のチェックなどを怠っておりますが大目にみてください。すみません。
それでは、これからもなんとか早めに投稿することを目標に頑張っていきたいと思います。
これからもどうぞとろしくお願いいたします。 
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