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牙狼<GARO>―黄金の嵐(かぜ)―

作者:ハイド
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第一章「失われた黄金」
  #2、銀-Zero-

 
前書き
どうも、皆さん。お久しぶりです・・・。
長い間お待たせして申し訳ありませんでした。
牙狼<GARO>-黄金の(かぜ)-第二話始まります。 

 
「ふぅ・・・、すっかり遅くなっちゃったな・・・」
 真っ暗な夜道、早足で目的の場所へ向かう金髪の青年。彼の名は龍崎有斗(りゅうざき あると)、ごく普通の心理カウンセラーである。
 彼は仕事が終わった後、久しぶりに会った友人と一緒に飲み、帰路へと着いていた。早く帰って、シャワーを浴びて寝よう。そう思っていた矢先・・・、
「うん・・・?」
 ふと、何かガラスの割れる音がする。何だろう・・・。そう思って立ち止まり音のした方を見やる。
「ッ!?」
 それを見た有斗は息を呑む。何故ならば窓ガラスをぶち破り花嫁姿の女性が落ちていくのが見えたからだ。しかも見上げるほど高いビルからである。
 そこから落ちれば無論大怪我どころではないだろう。慌てて携帯を取り出し119に連絡をしようとしたその時だった。
「あれは・・・」
 落ちていく花嫁とは相対的に上っていく銀色の光が見えた。赤い、紅蓮の炎に包まれた銀色の光を。
 その銀色の光は花嫁とぶつかりそのまま花嫁を両断した。だが、なおも上り続ける。高く高く。そして、窓ガラスが破られた所に近づいた瞬間その光は消えた。
「何だったんだ・・・あれは」
 現実離れした光景に有斗はただ呆然とするしかなかったのだった。

―12時間前・・・。

 その日、慎之介は大学の休みを利用して魔戒騎士の昼の業務に勤しんでいた。
「ふぃ~・・・今日のノルマ終わりっ!コレだけすれば、ホラーは出てこないだろ」
「そうだね。お腹もすいたし『Task of Silver』で昼でも食べよっか?」
 ホラーが顕れるゲートの疑いのあるオブジェを封印する作業を終え、アンナが知り合いの魔戒騎士が営んでいる喫茶店で昼食をとろうと提案してきた。
「そうだな。そうと決まれば出発しんこー!」
「ナスのぬかづけー」
「・・・何か懐かしい掛け合いだな。それ」
「そうだね」
 顔を見合わせながら、笑いあう二人。はたから見れば、カップルに見える構図である。もし、魔法衣を着ておらず普通の格好であるのならば、間違いなく周り(特に恋人の居ない男性、女性の皆さん)から嫉妬の目を向けられていただろう。
『・・・お前等、つきあったらどうだ?ってか結婚しろ』
 そんな二人に、ザルバはボソリと呟くのだった。

Side ミサト

 ここ最近、あの男の事ばかり思い出す。・・・それが、オレの最近の心情だったりする。
 あの特撮番組がそのまま現実世界にやってきたかのような出来事から1週間が経った。未だに、あの出来事が信じられなくて、夢なのか?と何度も思ったけど、鎌田先生が行方不明になったと聞き、やっぱり夢じゃなかったという事実を突きつけられる。
 真実を知っているのはオレだけ・・・、本当は鎌田先生は化け物になって倒されたんだって。だけど話した所で信じるはずがない。ヒーロー番組の見すぎだと笑われるのがオチだ。
 あの出来事を忘れようと思い散歩にでも行ってみた。ゲーセンで遊んだり、アニメショップを見ていたら、いつの間にか昼だ。
「腹減ったな・・・どっかに、飯食べれる所は・・・。ん?」
 昼飯を食べる所を探すと、ある喫茶店を見つけた。『Task of Silver』と言うおしゃれな喫茶店だった。
―とりあえず、そこで飯でも食べようか・・・。
 そう思い、俺はその店に向かったのだった・・・。

Side OUT

―喫茶店『Task of Silver』

「ちーっす、平次さんこんちわー」
「こんにちわー」
「よお、いらっしゃいご両人。最近はどうだい?」
 ドアを開けて入る慎之介とアンナに声をかける金髪に黒のメッシュをかけた『ダンディ』と言う言葉が似合う中年。
 彼の名は涼邑平次(すずむら へいじ)。この喫茶店の店主で、前回登場したレオンの父親でもあり魔戒騎士でもあるのだ。
「ん~、特に何も。昨夜は相手が素体ホラーだったから難なく倒せたし、アンナとザルバのお陰で陰我のあるゲートも特定できたからね」
『それに、今日はエレメントの浄化と封印としっかりやっといたからな。今夜はホラーが出ることは無いと思うぜ』
「成る程ね、んじゃあ今夜はヒマになるって事だな」
 慎之介とザルバの言葉に平次はニヤリと、「丁度良い」と言いたげに笑い一本のワインボトルを差し出す。
「今夜、アンナちゃんや親父さんとそいつで一杯やると良い。たまにはそんな夜もいいだろ?」
「おおー、平次さんふとももだなぁ」
「それを言うなら太っ腹でしょ?でも、本当にいいの?これどう見ても高そうなワインみたいだけど」
「いいのいいの!これ、キャバクラの娘からのもらい物だから」
「「さ、さいでっか・・・」」
 かんらかんら笑う平次を見て、慎之介とアンナは呆れ混じりに苦笑する。平次は、超が着くほどの女好きで暇さえあればキャバクラへと行っては女の子を口説いたりするのは勿論の事、お持ち帰りしたキャバ嬢とホテルINしちゃったりするのである。
 酷い時には、風俗店に行ったりする事もしばしば。まぁ、その所為でレオン本人は出費とかそういったのに頭を痛めているとか何とか・・・。
「そういや、レオンの奴はまだ帰って来てないみたいだけど・・・」
「ああ、レオンならメンテナンスが終わった『シルヴァ』を取りに行った。もうそろそろ戻ってくると思うんだがな」
『成る程ねぇ・・・。おや?シン、アンナ、誰か来たようだぜ?』
 慎之介と平次がレオンのことについて話しているとザルバが誰かの気配を察知する。
「レオンか?」
『いや、違うな・・・この気配は・・・』

―カランカラン・・・。

「へぇ~・・・中々おしゃれな店だなぁ・・・ん?」
「「へ?」」
『やっぱりな』
「ん?誰だ、この子?」
 突如入ってきた、一見男の子に見える少女。それを見て、慎之介とアンナは呆気に取られた顔を、ザルバはふぅ・・・。とため息をつく。初見であった平次は目を瞬かせながら2人に問いかける。等、様々な反応を取った。
「「「あああああああああああああああああああああああ!!!?」」」
 すでにお気づきであろうが、この少女は八潮ミサトである。まさかの再会に、3人は驚きの叫びを上げたのだった。

―暫くして・・・。

「へぇ~、そんな事がねぇ」
「あはは・・・」
 ミサトとの一件を話し終え、ミサトとの因果関係を理解した平次はそう言って、慎之介とミサトを見る。アンナは苦笑しながら昼食のパスタを食べていた。
「ま、まさかお前らがここの常連だったなんて驚いたぜ・・・」
「ああ、世の中は狭いんだなって改めて思い知ったよ」
 ジト目で慎之介を見ながら言うミサトに、慎之介は苦笑交じりに答え注文していた昼食のサンドイッチを一齧りする。
「ミサトちゃんだっけ?・・・昨日の事、覚えてるんだろ?」
「・・・まぁな。アレは一体・・・何なんだ?」
『アレはホラー。古より存在する人を喰らう魔獣だ』
「声・・・一体何処から?」
 おそるおそる慎之介に問いかけるミサトにザルバが代わりに答えた。当然、いきなり慎之介とは違う声がしたのでミサトは辺りを見回す。
「お、おい、ザルバ!!人前で喋るなって何度言えば・・・」
『いいじゃねぇか、隠す必要も無いだろ?』
「え!?ゆ、指輪が喋ったぁ!!?」
 カタカタと口を鳴らしながら喋るザルバを見てミサトはびっくりして危うくイスから転げ落ちそうになる。が、何とか持ちこたえた。
「そういや紹介してなかったな。こいつはザルバ、俺の相棒なんだ」
『よろしくな、嬢ちゃん』
「じょ、嬢ちゃんって言うな!オレにはミサトって名前があんだよ!」
『まだお前さんは子供だから嬢ちゃんで十分だ』
「何だとぉ!!!」
「あのー、お二人さん。喧嘩は辞めて貰えませんかね?話が進まないから」
 一触即発なザルバとミサトに割って入るように慎之介がそう言う。ミサトはザルバを一瞥しちぇっと舌打ちをして目を逸らした。
 ひとまず場が収まった事を確認し慎之介はミサトに言う。
「こほん・・・話を元に戻そうか。ミサトちゃん、これから話す事は誰にも喋っちゃいけない。勿論、家族や友達にもね」
「その点に関しては心配しなくていいぜ。どうせ、クラスの奴らはオレの事信用しねぇよ・・・それに家族もいないしな・・・」
「・・・すまない」
 いけない事を言ってしまったな・・・。そう思い、慎之介はミサトに言う。
「別に気にしてなんかいねぇよ。それよりも話してくれねぇか、そのホラーってのと、魔戒騎士だっけ?アンタらがやってるその仕事についてさ」
「・・・ああ、分かった」
 ミサトの催促にそう頷き、慎之介はホラーの事・・・そして魔戒騎士の事を話すのだった。

―そして説明が終わって・・・。

「とまぁ、これがホラーと魔戒騎士についてだ。・・・理解したか?」
「・・・正直、話が大きすぎてついていけねぇ。そんな昔に俺達が知らない所でそんな事があったなんてさ・・・」
(ま、無理もないか・・・)
 ミサトの反応を見て、慎之介は胸中で呟く。そんな何処かのラノベのような戦いが、自分達の知らない所で起こってました。なんて事を聞いたら誰だってそうなる。
「・・・とりあえず、君には二つの選択肢がある」
「選択肢?」
「一つは、ホラーの事を忘れ普通の生活に戻る選択。もう一つは・・・俺達と同じ闇の世界に足を踏み入れるかだ」
「っ・・・!」
 慎之介の出した選択肢に、真っ青な表情で息を呑むミサト。よほどホラーに襲われたことが恐ろしいのだろう。そんなミサトを落ち着かせるために表情をやわらかくする。
「まぁ、すぐには答えを出せとは言わない。・・・腹が決まったら、俺を呼んでくれ」
「あ、ああ・・・」
 そう言って自分の連絡先をミサトに渡し、平次に向き直った。
「んじゃ、俺達はもう行くよ。ご馳走様」
「あいよ、お粗末様でした。・・・色々と面倒な事にならなきゃいいんだがね」
「・・・その時はその時さ。じゃ、行くよアンナ」
 平次にそう返し、アンナと共に店を出た。

―その帰り道・・・。

「ねぇ、しんちゃん」
「ん?何だ?」
 アンナが慎之介に声をかけてきた。
「コレで良かったのかなって思ってさ・・・」
「ミサトちゃんの事か?」
「・・・うん」
 アンナが頷くのを見て、慎之介はうーん・・・。と考えながら答えた。
「アレが正しかったのかは分からないや。でも、俺は彼女の意思を尊重をしたいと思うんだ。おじさんが俺にそうしてくれたみたいにさ」
「お爺ちゃんみたいに?」
「ああ。俺が魔戒騎士になれたのも・・・おじさんが俺の意思を尊重してくれたお陰だからね」
「・・・そっか。ごめんね変な事聞いちゃって」
「別に気にしなくていいよ・・・。・・・んん!?」
 アンナの謝罪に頭をボリボリかきながら慎之介はそう言って、ある二人に気づく。男女が一組歩いていた。。片方はロングコートを着た赤いツンツンヘアーの少年。もう片方は黄色の洋服を着た栗色のアホ毛突きのショートヘアの少女であった。慎之介とアンナはこの二人に見覚えがあった。
「アレ・・・レオンとひまわりか?」
「みたいだね。おーい!」
 アンナがその男女に声をかける。女性のほうがこちらを振り向いた。その顔は紛れもなく慎之介の妹、ひまわりその人だ。
「あ、お兄ちゃんにアンナさん。今帰ってる所なの?」
「まぁな。ひまわりもか?」
「うん、買い物帰りなの。レオンに荷物持ってもらってるんだ~♪」
「・・・シルヴァを受け取って、さぁ帰ろうとしたときに鉢合わせるとは・・・不幸だ」
 レオンに視線を移すと、大量の買い物袋を両手に持ち沈んだ表情で呟いていた。それにムッと来たのか、ひまわりがレオンに食って掛かる。
「むぅ、不幸って何よ不幸って~。こーんな可愛い女の子と一緒に居られるんだから幸せでしょ~」
「寝言は寝て言え。・・・こんな大量の荷物持たされる身にもなってみろ」
「男なら荷物の一つや二つぐらいでケチケチしない!」
『もう、二人とも喧嘩しないの』
 レオンとひまわりの口喧嘩を制したのは女の声。それも、レオンがはめている左のグローブからだ。グローブの甲には狼の仮面を被った女性の顔のレリーフがはめられていた。
 このレリーフもザルバと同じ魔道具である。名はシルヴァ。レオンの相棒を勤めている魔道具だ。
「そうそう、シルヴァの言うとおりだ。荷物の半分は俺が持ってやるからさ」
「さっすが、お兄ちゃん♪レオンも見習わなきゃね」
「・・・ふん」
 シルヴァに続き、仲裁に入るとレオンが持っている買い物袋の半分を持ち、帰路へと向かう。
「おめでとー!」
「幸せになれよー!」
「もげろー」
 近くの建物に差し掛かった時、声がしたので見やると花嫁と花婿が周囲の人間に祝福されながら歩いてる。結婚式だ。
「わぁ・・・あの人綺麗なウェディングドレスだなぁ」
「そうだねぇ、一度でいいから着てみたいよね。ウェディングドレス」
「分かる分かる♪」
「ガールズトークが始まったな・・・。俺としてはさっさとコレをお前等の家に置きたいんだが」
「たはは・・・」
 花嫁が着ている純白のウェディングドレスを見て、きゃいきゃいと話し始めるアンナとひまわりを見て、ジト目になるレオンと苦笑する慎之介。

―ハラリ。

「あ、花びらが・・・ッ!?」
 花嫁の持つブーケの花から花びらが散り、風に乗って此方にやってきた。それをアンナはキャッチすると同時に何かを感じ取る。
 ここで説明するが、アンナは生まれつきモノに触れる事で人の想いに触れることが出来る特殊な能力を持っているのだ。そのため、人間に憑依したホラーを見分ける時などにこの能力は発揮される。
「?どうした、アンナ」
「あの花嫁・・・ホラーだよ」
『アンナの言うとおりだ。俺とシルヴァもアイツの存在を感知した。・・・どうするよ、シン?』
「やれやれ、家に帰って久しぶりに父ちゃんと一杯やろうかなと思ったんだけどなぁ・・・」
 アンナとザルバの言葉に、慎之介は暫く考え込むと、口を開く。
「・・・ま、しょうがないからとりあえず番犬所に報告だな」
 そういうわけで、報告、指示を貰う為に自分達が所属している春日部の番犬所に向かう事となった。

―春日部の番犬所。

 薄暗い空間の中に白く浮かぶ部屋。傍らには丁寧に彫られた狼のレリーフが印象的な小さな祠が設置されていた。
 ここが番犬所と呼ばれる所であり、魔戒騎士や法師達の監督役である『神官』が住まう場所である。そこには3人ほどの人影がいた。無論その3人は慎之介、レオン、アンナだ。
「・・・あれ?彼女が居ない」
 真っ白な祭壇、そこに居るはずの人物が姿を現さない事に慎之介は怪訝な表情を浮かべた。彼女は何処に居るのだろう・・・。そう思い、キョロキョロと辺りを見回す。
『シン、あの部屋に番犬の気配がする。あそこにいるんじゃねぇか?』
「・・・あそこか。兎に角行ってみるか」
 ザルバからの指摘を受け、早速その部屋の扉へと向かう。んで、ドアノブに手をかけ
「ここに居るのか?・・・ってぇ!?」
『ありゃま・・・これはこれは・・・』
 ドアを開ける。そして、目の前の光景を見た瞬間、慎之介は顔を真っ赤にしてたじろき、ザルバは驚いたようにカチカチと顎を鳴らす。
「・・・」
 慎之介の目の前には薄い茶色のショートヘアの少女。・・・格好はまだ着替えの最中なのだろう、下着姿の状態であった。・・・まぁ、俗に言うラッキースケベな状態である。
「あ~・・・お着替え中・・・でしたか?」
「な、何やってんですかぁ!?慎之介さんッッ!!!」
 苦笑いを浮かべつつ、問いかける慎之介に少女は怒声と共に返事代わりの渾身の右ストレートを放つ。狙いたがわず、拳は慎之介の顔面にクリーンヒット。
「ドゥブッハァ!!?」
 顔面を殴られ、鼻血を噴出しながらもんどりうって倒れる慎之介を見て、レオンとアンナは『やれやれ、またか』と言いたげに肩をすくめていた。

―それから暫くして・・・。

「成る程、そういう事だったのですか。銀牙騎士、そしてラキスケ黄金騎士・・・報告ご苦労様です」
「セイルさん・・・何さり気に余計なモノつけてんすか?」
 神官服に着替え終わり慎之介達の報告を聞いたここ、春日部の番犬所の神官である『セイル』は労いの言葉をかける。が、『ラキスケ黄金騎士』と言われたのが気に喰わなかったのか慎之介は抗議。
「だって事実でしょう?今日に限らず何度も何度も着替え中に入ってくるのは。しかも聞く所によれば別の場所でも、女性の着替え中や入浴中にその場に入ってきたりするそうではないですか」
 セイルの言うとおり、慎之介はどういう因果か女性の着替え中や入浴中にうっかり入ってくるという『ラッキースケベ』なトラブルをやらかしてしまうのである。その回数は某幻想殺しのお人やTo loveるなハレンチなお人とかに匹敵するほど。
 その為、ついたあだ名が『ラキスケ黄金騎士』と言うわけなのだ。
「事実って言っても、ありゃ事故だって・・・。ってか誰だよ、ンな情報垂れ流したの・・・」
「アンナですが?」
「アンナ!お前が犯人か!?」
「だって本当の事だし」
「身から出た錆だな、諦めろ。ラキスケ黄金騎士」
「」
 アンナとレオンの容赦のない言葉に慎之介撃沈。そのまま、地面に倒れ伏しそのまま起き上がらない。・・・哀れなり。
「さて・・・と、話を元に戻しますがその女性に関しては番犬所の方でも把握していました。お陰で指令書を出す手間も省けましたね」
「と言うことは、今夜の指令はその花嫁を?」
 レオンの言葉にセイルはええ。と頷き答えた。
「彼女はホラーに憑依されています。魔戒騎士慎之介、レオン。及び魔戒法師アンナは直ちにこのホラーの封印とゲートの浄化をしてください」
「分かった」
「分かりました。ほら、しんちゃん早く行くよ」
「ほい・・・(ぐすん)」
 セイルの指示を受け、慎之介、レオン、アンナは答えると番犬所を出たのであった。なお、慎之介は未だ立ち直っていない為、アンナに引きずられてであったが・・・。

―んでもって、結婚式場

「ククク・・・」
 その控え室にて、邪悪な笑みを浮かべながら鏡を見る花嫁姿の女性が一人。・・・そう、ホラーに憑依された花嫁である。
「もうすぐだ。もうすぐ、食事にありつける・・・ククククク」
 ホラーにとっての食事。それは人間の肉体と魂を喰らう事。花嫁は、鏡を見ながらいずれ来るであろう食事の時を待っていた。そこへ、扉が開かれる。現れたのは赤いシャツに黒いジャケットとズボンといった服装の青年。・・・そう、慎之介だ。
「ここに居たみたいだな」
「あの・・・どちら様でしょうか?」
 花嫁は突然来訪してきた慎之介に問いかける。返事代わりに花嫁の目の前にライターを差し出すと着火させた。
 緑の炎が灯り、揺らめく。するとどうだろうか?花嫁の瞳は白く濁り、魔導文字が浮かびあがった。そう、彼女がホラーである証拠である。
「くっ・・・シタナ、ナサリシチサ!?(訳:貴様、魔戒騎士か?)」
「トルガ。ソソイシカミヲルバリヤアスケノヤサッケムア?(訳:そうだ。此処に来た理由は言わなくても分かってるな?)」
 魔戒語で話してきた花嫁に魔戒語で返す慎之介。それを聞いた花嫁の顔が怒りで見る見るうちに赤くなる。
「テッサスオチョスヂヨヂャナタメケカナムサ!
チエ!ナサリシチ!!!(訳:折角の食事を邪魔されてたまるか!死ね!魔戒騎士!!!)」
 その言葉と共に、憤怒の形相を浮かべ花嫁は殴りかかる。それを軽くいなし、背中に蹴りを叩き込む。
「カハッ!?」
 背中を蹴られ花嫁がよろめく。その隙を突いて追撃の拳を振り上げる。その刹那だった。
ボウッ!!
「っちぃ!?」
 花嫁が振り向きいつの間にか手に持っていたブーケを慎之介にかざす。同時に、エネルギー弾が発射され慎之介に直撃。幸い、瞬間的に腕をクロスさせて防いだ為ダメージは無い。
「もう一発喰らえッ!!!」
 再び、エネルギー弾が放たれる。だが、二度もやられる慎之介ではない。
「遅いッ!!」
斬!!!
 手に持っていた魔戒剣を抜き放ち、エネルギー弾を両断する。そしてそのまま接近すると呆気に取られた花嫁に一閃!!!
「ぎゃああああああっ!!?」
 逆袈裟に胴体を斬られ、鮮血がドレスを汚す。だが、それでもなお、花嫁は死なない。が・・・、このまま花嫁が負けるのは時間の問題だろう。
「さて・・・、トドメを刺させてもらうぜ?」
「くっ!!!」
「っ!?目くらましか!」
 苦し紛れに花嫁がエネルギー弾を再び放つ。それを両断しようと魔戒剣で斬った次の瞬間眩い光が部屋を照らす。その眩しさに目を細めた隙を狙って、花嫁が逃走を図った。
「逃がすかよッ!!!」
 すぐさま、逃走する花嫁を追いかける慎之介。追走戦(チェイス)はすぐさま終わった。大きな扉の前にて、花嫁に追いついたからだ。
「ぐっ・・・!」
「追いついたぜ。遊びは終わりだ」
 追い詰められた表情の花嫁に、慎之介はそう言って、再び魔戒剣を振るい花嫁を切り裂く。
「うあああっ!?」
 鮮血を迸らせ、花嫁はよろめくと扉を開ける。
「な・・・なんだ!?」
「あの男!刃物を持ってるぞ!?」
 開けた瞬間に響き渡る悲鳴、狼狽。声、声、声。そして怯え、驚愕そんな表情で慎之介を見る人々。そう、ここは結婚式会場であったのだ。周りには人、人、人。
「だ、誰か!誰か助けて!この男を捕まえて!!!」
 計算通り!花嫁は心の中で勝ち誇りながら助けを求める。ここならばあの魔戒騎士は鎧を呼ぶことは出来ない。倒すことは出来ないものの、追い払うことが出来れば・・・後はここに居る全員を喰らうのみ。
「お、おい大丈夫・・・か・・・」
「なっ!?」
 そのとき、予想外のことが起こる。花嫁を助けによろうとした男性がフラッと倒れふしたのだ。否、男性だけではない。会場にいる全員がまるで糸の切れた人形のように倒れる。花嫁と慎之介。・・・そして、もう一人を除いて。
「眠りの術か。ナイス、アンナ」
「へへ、どういたしまして」
 白いコートを羽織った女性。魔戒法師アンナだ。アンナに賞賛の言葉を送ると、魔戒剣を花嫁に突きつけながら続ける。
「さて、遊びはおしまい。大人しく俺に斬られな」
「糞ッ!!!」
 花嫁は万策が尽きたのだろう。一目散に逃げ出すと窓ガラスをぶち破って逃走した。
「逃げても無駄だってのに・・・」
 そんな花嫁を見て慎之介はふぅ・・・。と息を吐きながら呟き、携帯を取り出した。

―場所は変わって外。

『レオン、聞こえるか?ホラーが窓ガラスを破って逃げ出した』
「ああ、こっちでも確認した」
 式場があるビルの外、慎之介からかかってきた電話に答えながらレオンは上を向く。上には落下していく花嫁の姿が見えた。
『そうか、なら話ははえぇ。とどめは任せたぜ』
「分かった」
 そう慎之介に答え、電話を切ってしまうと二振りの剣を抜き放つ。
「俺たちも始めるぞ」
『了解よ、レオン』
 相棒(シルヴァ)にそういい、その双剣を天にかざし円を描く。円から光が溢れだし、銀色の鎧がレオンの体に装着される。

ビキッ!バキバキッ!!

 全身に装着されると同時に左半身がひび割れていく。その割れ目から紅蓮の炎を吹き出して。
「うぅぅぅぅぅぅ・・・うおォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」
 月夜に照らされて咆哮を上げる銀色の狼。かつて黄金騎士と共に戦った伝説の魔戒騎士が一人・・・その名は・・・。
『銀牙騎士・絶狼(ゼロ)
「ッ!?」
 此方に気づいた花嫁がブーケをかざし光弾を放つ。だが、それに怯む絶狼ではない。
「ふっ!」
 地面を蹴って飛び上がり、その両手に持った双剣・銀狼剣で光弾を切り裂く。そしてそのまま、重力に引かれる事無くあがっていく。体から噴出す炎を推進力にして。
「ひ・・・ひぃぃぃっ!!?」
 こちらに近づいてくる絶狼に恐れをなし更に光弾を撃つ。撃つ。だが、絶狼に当たりはしない。絶対に。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
 雄たけびを上げ、花嫁に肉薄するとそのまま銀狼剣でクロスさせるように斬り裂いた。そして、花嫁は断末魔の悲鳴を上げ消滅する。
「・・・ふぅ」
 窓ガラスを破った場所に着地し、鎧を解除する。
「お疲れ、レオン」
「・・・ああ」
 にこやかに笑みを浮かべる慎之介にレオンはフッ、とかすかに笑みを浮かべる。
パシン。
 そして互いにハイタッチ。
「ちょっと、暢気にハイタッチしてないで会場の人たちの記憶消去手伝ってよー!」
 ふと声がかかり見やると、アンナが一人で会場に来ていた人たちの記憶消去をやっていた。
「おっと、ホラーを倒せたから安心しきってこってり忘れてたな。分かった、今行くぜ」
「『『それを言うならうっかりだろ?(でしょ?)』』」
 アンナに返答する慎之介のいい間違いにザルバ、レオン、シルヴァは異口同音でツッコミを入れたのだった。

―話は変わって、別の場所。

『ハァ・・・ハァ・・・。ロルゾユシチバチッケリカザ・・・ナタサジユザシチナゲサツサペイシケリカコバ・・・(訳:黄金騎士は知っていたが真逆、銀牙騎士まで春日部に来ていたとは・・・)』
 花嫁の持っていたブーケがふよふよと浮きながら呟いていた。そう、このブーケこそが本体であったのだ。
『ソオソコヨ・・・ラオサカイ・・・ラオサカイチマテエパ・・・(訳:この事を・・・あの方に・・・あの方に知らせねば・・・)』
「残念だが・・・、そこまでだ!行けっ羅号ッ!!ホラーを喰らうのだ!」
『!?』
 突如、力強い年季の入った声と共に、暗闇から鋼の犬のようなものが飛び出しブーケに噛み付き、砕き、喰らう。ブーケは断末魔の悲鳴を上げる事無く羅号の餌となってしまった。
「・・・やれやれ、相変わらずツメが甘いなシンの奴は」
 鋼の犬が飛び出した方向から声の主であろう男が現れる。マントを纏い、獅子のように逆立つ黒髪の壮年の男。その背後には3人の人影(シルエット)・・・。
 果たして、この男と3人の人影は敵か?味方か?・・・まだ今は分からない。そう、まだ今は・・・。


つづく。 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
・・・本当に、長い間更新できなくて申し訳ありません・・・。最近メガテンシリーズ(ソウルハッカーズや真・女神転生4)にはまりにハマった結果。このような事態に・・・(滝汗)
おまけにまだこの小説とかが終わっても居ないのにまた新しい小説の構想が浮かんできたり・・・と言う始末・・・。ただ、ただ猛省するばかりです。
次回からは、早めに投稿したいと思っております。

では、次回予告。

ザルバ『いつも通りの日常を歩んでいる俺達の前に遂にあの男が現れる!その男の名は・・・おっと、コレは今ここじゃ言えねーな。次回「来訪-Visitor-」そして運命は動き出す』

次回もお楽しみに~、それでは~。 
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